目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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波の国編終了につき、活動報告にて幕間劇に関するアンケートを取りたいと思います。興味がおありでしたら是非覗いてみてください。




40:波が運ぶは人か感情か~終~

<黙雷悟>

 

 夕日が視界を染めて、目を細める。気がつけば自分の視界にはかつて前世で自分が住んでいた町が広がっていた。

 

「ここは……いったい……夢でも見ているのか。確か俺はガトーたちを殺し……うっ……」

 

 不意に自分が行った虐殺劇を思い出し、吐き気を催す。だが気を確かに持ち思考は止めない。自分が必要だと思ってやったことだ。後悔をするわけには行かない。

 

 現状確認のため視界に広がる町の散策にでる。人の気配はしないし、一部の家屋は靄がかかったようになっていて視認ができない。しばらく知っている道を歩いて自分の家の前までたどり着いた。

 

「はは……十数年ぶりの我が家だけど、恰好が忍び装束のままだからか違和感がすごいなぁ」

 

 現代にそぐわない忍びの恰好のまま、玄関のドアノブに手をかけ開ける。扉の先は真っ暗な空間が続いていた。驚いて後退しようとするも、その暗闇から人の手が伸びてきて俺の胸ぐらを掴む。

 

「ちょっ! なんだこれ怖!!」

 

 抵抗する暇もなく、手に引き寄せられ暗闇に引き込まれ落ちると少しの浮遊感の後、草原へと尻もちをついていた。くらくらするが辺りを見渡せば、いつもの精神世界(・・・・)の草原が視界を占める。前方では俺と同じ格好をしたあいつが木の下でこちらを見ていた。

 

『人の申し出を無下にして、さらには精神世界を勝手にさまよって……君って思っていたより、数倍自分勝手なんだね』

 

 呆れたようにこちらに語りかけてくる。お互いに仮面を被っているが感情は伝わってくる。

 

「……あんたからの申し出は……大切なことだから。他人(・・)に任せるわけには行かないと、思っただけだ」

 

『他人……か。僕のことを一人の人間として見ているってこと? 面白いね』

 

「少なくとも感情があるようだし、どうやら俺の知らない過去もあるようだからな。……あんたが何者かは正直どうでもいいんだ。俺がしたいと思ったからやったことだ」

 

『……そんなにも苦しんでいる癖に。精神的にダメージを負っているから寝込んでここに今いるってこと自覚してる? わざわざごろつき共まで丁寧に殺して、色々飛躍しているよ君』

 

「……なんとなく自覚はしている。だけど再不斬たちを助けて、はいそれで終わりとはいかない。再不斬が殺すはずだった……やるべきことを肩代わりしただけだ。ある意味再不斬たちを助けた責任を取った、とも言えるかな」

 

 彼には少しだけ申し訳なく思う。一応同じ体を共有している者同士の気まずさを感じる。

 

「なあ、そういえばずっと気になってたんだけどお前……って姿が同じなら多分名前も一緒なんだよな? 呼びかたとか考えた方が良い?」

 

『(独特なペースしているな彼……)はあ……なら取りあえず苗字を分割しようか、僕が「(もく)」を担当しよう。君が「(らい)」だ。これでいいかい?』

 

「まあ、どうせ俺たち以外知りようがないと思うからお互いがわかれば何でもいいか。なあ黙、お前は一体なんなんだ? 言動からして俺とは違う経験をしているようだけど俺じゃないんだよな? 九尾みたいな存在なのか?」

 

『何れ説明しようとは思っているんだけどね。だけどまだその時じゃない』

 

「……俺はそういう『その時じゃない』ってもったいぶるの好きじゃないんだけどな、ドラマでも小説でも。ちなみにその時じゃないという理由は?」

 

『僕が君を完全に信頼していないというだけさ。僕の存在や、君の存在。真実を知って君に潰れられたら僕が困るしね』

 

「潰れ……って。黙、その言い方は何かありますと言っているようなもんじゃ……」

 

『僕が存在している時点で、自分が真っ当な存在じゃないとは雷も感付いているでしょ? まあ、強いていうなら雷にやって欲しいことがあるってこと。2つほど……いや3つかな』

 

「なら内容を」

 

『まあまだ僕たちの「魂」が同調しきってないから伝えれないこともあるのさ、そろそろ交信限界だし』

 

「はっ?」

 

『それじゃあおはようだ(・・・・・)雷。そうだね、予定通りに行けば次は「木ノ葉崩し」の時に会おうか。それまではここ(精神世界)で君を見守っているよ』

 

 納得がいかない俺が木の下にいる黙に向かい手を伸ばすが、気がつけば伸ばした手は虚空を掴み、手を超えた先の視界には木造の天井が見えていた。俺は気がつけば布団の中にいた。

 

「……ほぇ?」

 

「マヌケな声出して悟、寝ぼけてる?」

 

 ふと声のする方に顔を向けるとカカシさんが布団で横になって呆れた顔でこちらを見ていた。

 

「っ! あ、仮面は着けたままか、良かった……。ってあの後どうなりました?!」

 

 仮面が顔を隠していることに安堵するがすぐに自分が気を失った後のことを心配してカカシさんに質問をする。するとカカシさんは身体も起こさずに手だけで俺の反対側を指さす。

 

 そこには再不斬が寝ていた。さらにその奥には白もおり、俺は安心した。俺たちは4列で仲良く個別の布団に入っていたようだ。シュールだなあ。

 

「タズナさんも豪傑な方だ。自分を狙っていた暗殺者を自身の家で休ませるなんて……。まあ、悟の行動を尊重してのことらしいし。あとでお礼言っときなさいよ」

 

「りょ、了解。……そういえばナルト達は?」

 

「ナルトとサクラは橋の建設作業の手伝いをしに行ってる。サスケは、白の千本で一時的に仮死状態になっていたから橋にはいるけど体を休めて作業を見学しているはずだ」

 

「そうですか……。なら俺も作業を手伝いに……」

 

 そういって膝をつき立ち上がろうとすると

 

「その前に悟、一ついいか?」

 

 カカシさんがまじめな声で問いかけてくる。ああ、あの事はやっぱり聞かれるよな(・・・・・・・・・)

 

「お前があの時幻術を使ったのには納得した。だがその時……俺に何か見せたんじゃないか? 変化の術を使って(・・・・・・・・・)

 

 そう、草笛の音を使って幻術をかけるときには必要な要素がいくつかある。その一つ、相手が精神的に構えていない状態であること、又は抵抗力が低い状態でないといけないことをあの時一人だけクリアしていない人物がいた。  

 

 俺はチャクラの感知でカカシさんだけが、幻術に対抗してくると読めていた。タズナさんやガトーら、ナルトとかは元から抵抗力が低いから問題ない。サクラも少し幻術にかかるか怪しかったが、傷ついたサスケの様子を見て動揺してくれたおかげで幻術にはめることが出来た。  

 

 再不斬もカカシさんの忍犬による拘束で動揺していたから良かったが……。カカシさんだけはどうしても、自力で動揺させなければいけなかった。だからこそ、霧隠れの術で視界が悪いことを利用して、雷切を使うカカシさんのトラウマである「のはらリン」さんの姿を変化で見せる必要があった。

 

「さあ? あの時は術が使えなくて、イチかバチかで草笛の音の術を使っていたので変化まで使う余裕はなかったですよ」

 

 さらりと噓をつく。けれど苦しいか……。最悪自身のトラウマのせいだと納得してくれるのが一番なんだけど。

 

「……そうね。了解、悪いね尋問みたいに聞いちゃって、少し気になっただけだから」

 

 カカシさんはニコッとして雰囲気を明るくする。そして

 

「引き留めて悪かった。それじゃあ、悟。自分が壊した分も橋を直してきてちょーだい」

 

「ははは、了解です……」

 

 カカシさんは冗談を言い俺を送る。

 

 強がっているが精神的に弱っているのであまりプレッシャーをかけないで欲しいな……。

 

~~~~~~

<はたけカカシ>

 

 ……あの「リン」は状況的に見て間違いなく悟の仕業だろう。幻術によるトラウマの想起か、悟の変化か。マリエ繋がりでリンのことを知っている可能性はなくはないが……。警戒は必要かな。

 

 俺が悟について思案していると空いた布団を挟んだ位置にいる再不斬が声をかけてくる。

 

「……あのガキは一体なんだ? 術が使えない素人と思えば、あれ程の力を見せ……。そして俺と白を庇うような仕草をする。何を考えてんのかさっぱりだ」

 

「ああ、それに関しては俺も同感だよ再不斬。感情はわかりやすいんだが、行動が読めん。実質意外性ではナルト以上かなぁ……ははは」

 

「ふん、写輪眼のカカシともあろうものが、自分の仲間のことでわからないことがあるとはな」

 

 再不斬が起き上がれない体をこちらに向け、不敵な笑みを向けてくる。

 

「……鬼人ともあろうものが、そのざまなんだ。俺にだってわからないことの一つや二つあるさ」

 

 先日まで殺し合いをしていた相手と皮肉を言いあう。忍びの世界でも珍しいことだが、雇い主がいるという忍びの性質上ありえなくはないのだろう。そんな奇跡みたいな状況で俺と再不斬は少し先のことを話し合った。

 

「その内俺たちは追い忍に始末されるだろう……」

 

「まあ、だろうね」

 

「だがあの仮面のガキがくれたチャンスだ。最後は忍びじゃなく人らしく白と隠居をしようと思う」

 

「……わざわざ俺に言わなくても良くない?」

 

「ふん、只の宣言だ。鬼人が人として生きるためのけじめみたいなもんさ」

 

「そうかい。まあ、木ノ葉に敵対しない限り俺はどうにかするつもりはないよ。お互いまだまだボロボロだしね」

 

 なんて会話を続けながら、俺たちは身体を休めた。……白って子はまだ目を覚まさない。下腹部に穴が開いたんだ。致命傷をギリギリ避けたところで重症には変わりない。

 

 再不斬は俺のことを恨むだろうか……。まあ、忍びとして生きる以上恨みつらみは避けようがない。

 

 

 ……悟は折り合いを付けられたのか?

 

~~~~~~

<三人称>

 

 

 それから数日、黙雷悟が壊してしまった橋もナルトの影分身による人海戦術と悟の土遁でスムーズに修復が進みあと少しで橋が完成するというとき。

 

 白が目を覚ます。

 

「……随分と賑やかなことで」

 

 白が目を覚ましたとき目にしたものは。タズナの家族とナルト達カカシ班。再不斬と悟が大きな机を囲んで夕食をとっていた光景だった。

 

 両手を何とか動かそうとしている再不斬と食事を食べさそうとスプーンを差し出す悟。その様子をからかうナルトと睨みを効かせる再不斬。呆れるサスケとサクラ。にこやかに見守るカカシとタズナ。イナリはまだ再不斬が怖いのか母ツナミの陰に隠れている。

 

(僕は夢を見ているのだろうか……)

 

 少し離れた位置の布団で寝ていた白は身体を起こすが下腹部に痛みが走り声が漏れる。

 

「……ッ!」

 

 その声に気がついたナルトと再不斬はドタバタと白へ近寄る。

 

「目を覚ましたか白。たっく……」

 

「良かったってばよ! 再不斬のおっさんも滅茶苦茶心配してて」

 

「金髪小僧! それは言うんじゃねえっ!」

 

 その様子を笑みを浮かべて見る白は涙を浮かべていた。それを下腹部の痛みからだと思ったナルトが心配するが

 

「いえ、大丈夫です。この涙は辛いものではなく……嬉しさによるものですから」

 

 白は笑顔でそう答えた。

 

 

~~~~~~

 

 夜更け。森の中で白と悟は二人である場所へと赴いていた。

 

「これが……僕たちの墓……ですか」

 

「ああ、取りあえずのな」

 

 そこには木の杭で作られた簡易的な墓が二つ建てられていた。片方には特徴的な大きな包丁が。もう片方には橙の腹巻が備えられている。

 

「これだけの工作で追い忍を完全に巻けるとは思いませんが、何もしないよりは良いでしょうね」

 

「再不斬がこの包丁を手放すことの意義を考えると、追い忍も納得してくれるかもな」

 

 白は墓に手を合わせ目をつぶる。

 

「……結局、僕は忍びにはなり切れなかった。彼、サスケ君を完全には殺せず、敵だった君に生かされ……。それでも良かったと思う自分がいる。……再不斬さんの道具としての僕はここで眠ってもらいましょう」

 

「それで……白は次にしたいこと(・・・・・)は決まっているのか?」

 

「ええ、ある程度は……。けれどそれもまた、容易では……ん?」

 

 悟の物言いに違和感を覚える白。そして

 

「そうですね。取りあえずは僕の裸を見た責任でも取ってもらいましょうか(・・・)さん?」

 

 意地悪な笑顔を見せる白に悟は仮面の奥の表情を引きつらせ、答える。

 

「ははは……やっぱり気がつきますよね~。それはお互いさまということで胸にしまっておきましょう白雪さん(・・・・)

 

 悟は仮面を外して、頭を下げる素振りを見せる。その後少しお互いに目を合わせ、不意に同時に笑いあう。

 

「まあ、冗談です。悟さん、あなたは命の恩人だ。何かあれば僕たちに頼ってください。どんな些細な事でも助けに向かいますから」

 

「……そんな冗談言うようなキャラだったっけあなた? まあ、そうだなぁ。助け……ということなら実は考えていたことがあるんだ」

 

「それは?」

 

 悟は自身の考えを白へと話す。しばらく話を聞いていた白は驚愕に目を見開く。

 

「……あまりにも突拍子もないというか、無茶な内容ですね……。あなたへのメリットより僕たちへのメリットの方が……」

 

「まあ、そこは気にしなくていいからさ。再不斬と考えておいてくれ。かなり無茶な内容なのは承知しているから実現できるかは約束はできないけど」

 

「ええ、前向きに考えさせてもらいますね」

 

 そうして二人はタズナの家へと戻った。

 

 

~~~~~~~

 

 そしてそれから二週間……。波の国から内陸へと繋がる橋の入り口でタズナ達と談笑するカカシ班。それとは別に離れた位置で悟と再不斬、白は会話をしていた。

 

「でだ……例の件の根回しは出来たのか小僧」

 

「まあ、何とか……まさかOKがでるとは思ってなかったけど……」

 

「よく了承が得られましたね……。正直に話す悟君も変ですが、聞き入れる方も変わっていますね……」

 

 仮面の下で隈を作って眠そうにしている悟は欠伸をしながら肩を落とす。かなりの疲労が見て取れる。

 

「おーーーい、悟帰るってばよ!!」

 

 ナルトに声を掛けられた悟は手を上げ返事を返す。

 

「……? ナルト何泣いてんの」

 

「っいや、これは涙じゃなくて、潮風が……」

 

「ったく、ごーじょーっぱりねあんた。素直にイナリ君と別れるのが悲しいって言いなさいよ!」

 

「ちょっ、サクラちゃん!? それいわないでぇ!」

 

 一同は和やかな雰囲気のまま、橋を渡っていく。

 

……

 

 

「また忍者と戦うAランクの任務やってやるってばよ!」

 

「ダメダメ! 再不斬と白相手に皆無事だったのが信じられないくらいだよ。Aランクはもっと強くなってからだ」

 

 ナルトとカカシが会話をしている。

 

「……守りたいもんかあ……。カカシ先生、忍者ってやっぱり只の道具にならなきゃいけないのかなあ?」

 

「そうだねェ、例え木ノ葉であろうとも忍びは国の道具としての在り方を求められるのに違いはないさ。けれど其のことを悩んで生きていくことが悪いとは、俺は思わないね」

 

「うーん難しいけど……俺は俺の忍道を行ってやる! カカシ先生もすぐに追い抜いてけちょんけちょんにしてやるってばよォ!」

 

「言うねえ! こりゃあ、帰ったらDランク任務を沢山やってもらわないとなあ!」

 

「……それはちょ~とっ嫌だってばよォ……」

 

 遠巻きでその様子を見る再不斬は鼻を鳴らす。

 

「あんなガキを連れた奴らに遅れを取ったなんて、癇に障るぜ……」

 

「いいじゃないですか再不斬さん、僕は……忍びとしての最後の敵(・・・・)が彼らでよかったと思っていますよ」

 

「……ふん、世の中そう争いごとから縁を切れるわけじゃあねぇ。まあだが、そうだな……。あいつらと戦えて良かったと……俺も思っている」

 

 しんみりと会話をする二人を見るサスケは

 

(こいつら……いつまで着いてくるきだ……?)

 

 という思いを浮かべながら歩みを進めた。

 

 

 

 

 

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