目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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少し長くなりました。戦闘描写は間延びしやすいですね。


43:蹂躙

<三人称>

 

 

 下忍6人組は演習の開始と共に全員で纏まって移動を行う。

 

「セオリー通りに行くなら2人一組で捜索に当たるもんだが、相手が相手だ。バラけてて各個撃破されたら勝ち目なんて零も良い所だぜ」

 

 そういうシカマルの指示に従い、紅班の面々は各々の感知能力をフルに扱い悟を捜索する。

 

(奴さんは感知能力もあるようだが流石にこちらの小隊の方が感知は優れている……めんどくせーけど、強みを押し付けていくしかねェなやっぱり)

 

 しばらく森の中、黙雷悟の捜索活動が行われている中、演習場中央にある監視塔では担当上忍たちが集まっていた。

 

「でだ、カカシ。お前が調べたっつー黙雷悟の情報はどこまで正確なんだ? あのシカマルに情報を与えれば、並みの忍びなら直ぐに八方塞がりになると思うんだが」

 

 煙草を吸いながら問いかけてくるアスマにカカシは返事をする。

 

「ナニ? 俺が手でも抜いてるかもって言いたいわけ? 心外だな~俺は俺なりに全力で悟のことを調べ上げたよ。ま、俺もお抱え班の面倒も見ながらだから限度はあるけどね」

 

 忙しい忙しいと肩をすくめるジェスチャーをするカカシ。紅はそんなカカシに問いかける。

 

「今日は随分と楽しそうねカカシ。何かいいことでもあったの?」

 

「ん? そー見えるかな。まあ、単純に悟を煽るのが楽しくってね、それだけェ」

 

 ニコニコと答えるカカシに(結構お気に入りなのね悟のこと。ガイも気にかけている様だし、私も何となく気持ちはわかるわ……)と紅は胸中で納得する。

 

「ただ監視するのもつまらねぇし、演習の成否で賭けでもしねェーか? 俺は自分の班が悟を捕らえると予想させてもらうぜ」

 

「悟」

 

「迷うわねェ……。まあ、自分の班を信じたい気持ちはあるけど成否で言うなら悟……かしらね」

 

 アスマの提案に即答するカカシと悩み回答する紅。

 

「じゃあ、アスマ。この後の親睦会での会計よろしくね」

 

「悪いけどアスマ。そういうことだから」

 

「もう勝った気でいるのかよ、カカシに紅……お前らそんなに悟のことを評価してんのか……」

 

~~~~~~

 

 一方下忍たちはものの数分で悟の存在を感知しその所在を明らかにしていた。悟のチャクラ感知に引っかからないよう、なるべく気配とチャクラを抑えた彼らはシカマルの作戦遂行のために各自配置に着く。

 

 だが、シカマルは悟の様子を伺い警戒度を高める。

 

(小川の流れる見渡しの良い所で仁王立ちとは随分と舐められてるのか、俺たち? それだけ自分に自信があるのかそれとも……)

 

 悟は仁王立ちで腕を組み、何やらブツブツと呟いている。そんな不気味な様子に不安を覚えつつもシカマルはハンドサインを飛ばす。

 

「さあ、零班様とやら。実力御拝見だぜェ」

 

 シカマルのつぶやきと共、奇襲が始まる。

 

「擬獣忍法・四脚の術、喰らいやがれェ! 通牙ぁ!!」

 

 悟の後方から螺旋回転の体当たりを繰り出すキバ。悟はそれに反応し、岩状手腕により巨大な岩の右手で通牙を受け止める。

 

「まだまだぁあ!!」

 

 キバが回転数を上げ、悟の岩の手を削る。その隙をつくように木々をなぎ倒す轟音が悟めがけて突き進む。

 

「肉弾戦車ァ!!」

 

 巨大な肉弾が悟に迫るが、悟は左手も岩の手へと変え受け止める。

 

(あの高火力をあえて受け止めるとは、俺たちのことをなめてるなこりゃあ。後悔させてやるぜ!)

 

 シカマルは茂みから影を伸ばし、左右から回転の猛撃を受けている悟の影へと繋げる。そして悟の動きを完全に封じた状態で

 

「ヨシ、影真似の術成功! イノ! ダメ押しだ」

 

 シカマルの指示で隠れていたイノが心転身の術を使い悟へと精神を飛ばし…… 

 

「二人ともストップ! 私が入ったから! 潰れちゃうゥ!」

 

 そう悟が叫ぶ。イノの術が成功し、悟の身体の主導権を得たイノは成功を口にする。そして両腕の岩がボロボロとくずれさり、隠れていたヒナタ、シノが飛び出した。

 

「縄で拘束だ、両手を塞げば術は使えない!」

 

 シカマルの作戦通りに、影真似で拘束され体の自由を奪われた悟に近づくヒナタとシノ。完全に縄で縛り、拘束すればあとは情報を聞き出して演習は終わる。

 

 余りのあっけなさにシカマルが印を結ぶ手の力を緩めた瞬間、違和感を感じた。その瞬間影真似の術が強引に破られ、シカマルの印が弾けるように解かれる。

 

 その瞬間、シカマルは叫ぶ。

 

「ッ全員悟から離れろ!!」

 

 悟の周囲の4人が叫びを聞き入れた瞬間。

 

 

 

 

「雷遁・地走り」

 

 悟を中心に電流がほとばしる。何とか後方に飛び退く4人だがシノだけは反応が遅れ少し電流を浴びてしまう。

 

「何でェ!? イノが中に入ったはずじゃあ!」

 

 チョウジの疑問の声をスルーし悟は一人動きの鈍ったシノに接近する。

 

「まずは一番厄介なお前からだシノ」

 

 そう言う悟は1人孤立したシノの腹に掌底を喰らわせ吹き飛ばす。そのまま木に叩きつけられたシノは意識を飛ばす。

 

「ちぃ!! イノはどうしたんだ!?」

 

 シカマルの叫びに、ゆっくりと悟が振り向き答える。

 

「俺の(精神)に入るのにはリスクが伴うぞっと……クックック。……俺ァ今無性にイライラしてんだ。八つ当たりの相手になってもらうぞ!! 木ノ葉の忍びどもォ!!」

 

(悟君……変な口調になってる……やっぱり自分の情報知られるの嫌だったんだ)

 

 テンションが可笑しい悟の様子に一瞬ヒナタの気が緩むが、悟の放つ威圧感は凄まじくすぐに臨戦態勢を取る。周囲を囲まれた悟は辺りをぐるりと見渡す。

 

この状況がありえる可能性(・・・・・・・・・・・)か……、カカシさん)

 

 黙雷悟は演習開始前に言われた言葉を目を細め思い出していた。

 

~~~~~~

 

 演習開始の少し前。

 

「何で俺の情報を……わざわざ尾行までして……!」

 

 黙雷悟は珍しく声を荒げて、目の前でのほほんとしている上忍に対して抗議をする。忍びの世界で情報というものは強力な武器へとなりえる。そのことを知っているからこそ悟はカカシの行動を解せないでいた。

 

「まっ……お前の抗議ももっともだ。理由が知りたいんだろ? じゃあ教えてやろう」

 

 カカシの目は冷たかった。その様子に悟は少し怯む。

 

「まずお前は悪目立ちが過ぎる(・・・・・・・)。言っちゃあなんだが、一言怪しいんだよ」

 

「ッ!?」

 

「アカデミー時代の成績は中の下、にも関わらず下忍になった直後から異例の数の任務達成率。少し調べればお前が実力を隠している不自然さには誰でも気づける。つもりそれがどういうことに繋がるかわかるか?」

 

「……」

 

 黙雷悟は押し黙る。自分の存在の客観性。その歪さを自覚し始める。

 

「……まあこういう差別みたいなこというのは俺も好きじゃあないんだけどね。『里出身でもない秘匿主義者が好き勝手なことをしている』としか一部のものには見られないわけだ。お前が良かれと思ってやっているかもしれないことでもな」

 

 カカシも強く叱るように言ってはいるが少し気まずさを感じているのか、目線は幾分か柔らかくなる。

 

「実際お前に関しての不満もいくつか里に寄せられているようだし。俺は実際に確認したわけでもないけど、確実にお前を疎ましく思う存在はいるってことだ、最悪お前が今回の演習の内容のような場面に立たされる可能性が……少し……あるわけね」

 

(そして同時にその才能を欲する人間もっ……とは流石に言えないかな。実際悟の里に対する帰属意識の低さは初めての演習の自己紹介の時から感じていたことだ。それに再不斬たちを里に連れ込む発想自体、木ノ葉からしたらまともとは言えない)

 

 悟は俯き目を伏せている。表情を伺えないが決して良いものではないのだろう。

 

「そこで三代目がお前を心配して、俺に色々根回しをするよう依頼された」

 

「三代目が……?」

 

「三代目はお前を高く評価している。それと同時に心配も。だからこそお前を『木ノ葉の忍び』としてその実力をアピールする案を出された。……かつてお前と同じような優秀な忍びがいたが、皆の目の届かない場所で悲劇を迎えてしまった。そうはならないようにお前を俺たち大人の目の届く位置に置いておきたいんだ」

 

 後半カカシの言葉に熱がこもる。悟は自分が心配されていることに、不謹慎にも嬉しく思う気持ちを抑え逆にそうして周囲に影響を与えてしまっていた事実に自分の考えのなさを痛感する。

 

「……カカシさんの考えはわかりました。えっとその……心配してくださってありがとう……ございます。つまりは任務などで悪目立ちする行動は自重しつつも俺という存在を木ノ葉に有益なものだとアピールすればいいわけですね」

 

「ああ、そうだ。理解してくれて嬉しいよ。ちょっと強引な感じになったが、今回の演習はお前に報酬金がでる正式な任務扱いだ。つまり内容も一部の者には開示される。お前に不満や不安を持つ者にも、見せつけてやれ! 『俺は強い木ノ葉の忍びだ』ってね♪」

 

 

~~~~~~

 

 ふーっと息を突き、悟は目を見開き回想を終える。

 

「抜け忍である俺を捕らえようなんざァ、百年早いんだよッ!!」

 

 そう叫び悟は、小川の上に移動し印を組み右手を上げる。その様子を監視しているカカシは苦笑いを浮かべる。

 

(あれ口調……再不斬の真似かw? 抜け忍って設定だから真似してるのね、結構似てるじゃない。ってあの術は……!?)

 

「水遁・霧隠の術」

 

 悟の足元の水が露散し、辺り一面を濃い霧が覆う。と言っても再不斬のような完全に視界を奪うような性能はまだない。頭上から監視する上忍たちには各自の姿が薄っすらとだが映る。

 

「早速資料にない術を使って来やがったッ! 視界を悪くするタイプの忍術だ、キバは俺と、ヒナタはチョウジと固まって不意打ちに備えろ!」

 

 悟の術に即座に反応したシカマルは、感知タイプとそうではない人物を組ませる。

 

(私の白眼なら、姿を捕らえ続け……!?)

 

 ヒナタが悟を監視する中、悟の影分身が発動し4体分の悟が霧の中、雷遁チャクラモードで辺りを駆けめぐる。チャクラを等分された影分身を見抜くほどヒナタの白眼はまだ精錬されていない。

 

「ひっひぃぃぃいいいい。どうなってるのォ!?」

 

 辺りを飛び交う雷鳴と霧の中に走る稲光に周囲の状況を正しく確認できないチョウジが狼狽える。

 

(霧を効率的に晴らすにはチョウジの部分倍化の術による巨大化させた手で大きく扇ぐぐらいしかねえが、パニックになってそれどころじゃねえな……)

 

「チョウ……じぃいいぃぃぃ!? …………」

 

 シカマルが案をチョウジに指示しようとするも、声を出した瞬間に2体分の悟がシカマルの襟を掴み、奥の茂みへと連れ去る。

 

「えっ!? シカマルぅ!! どうしたのォ!?」

 

「クソッすまねぇシカマルを連れてかれちまった!! 俺たちだけでも固まるぞ!!」

 

 チョウジの心配の声にキバが答える。

 

「ヒナタどこにいる!? 指示をくれ!」

 

 キバの声にヒナタがキバの姿を確認し、自分たちの位置を知らせる。辺りを飛び交う悟に臆しているチョウジにヒナタが耳元で囁く。

 

『チョウジ君、キバ君の姿が見えたら思いっきり攻撃をして!』

 

『えっ? どうして……』

 

『いいから……!』

 

 ヒナタの余裕のなさそうな顔にチョウジがハッと冷静さを幾分か取り戻す。そして

 

「ヒナタ、チョウジ! そこか」

 

 キバの姿をうっすらと確認したチョウジは部分倍化の術で肥大化した腕で殴りかかる。

 

「うおおおおおお!!」

 

「ナニっ!? ッ!!」

 

「イチかバチか……チョウジ君伏せて!!」

 

 チョウジがキバを殴り飛ばした瞬間にヒナタが起爆札を上空に複数枚投げ起爆する。辺りを爆風が舞い、霧が晴らされる。

 

「……あれは!?」

 

 晴れた視界にチョウジが見たものは、殴り飛ばした先にキバから変化の術が解けて姿を現した悟であった。

 

「多分、シカマル君を連れ去ったタイミングでキバ君を地中に拘束して入れ替わったんだよね……悟君」

 

「ちっ流石ヒナタだ……。少し演技クサかったか」

 

 チョウジの攻撃で吹き飛ばされた際にガードで使った腕を振りながら悟はヒナタとチョウジの前に立ちふさがる。

 

「一番厄介なシノを仕留め、次に厄介なシカマルも俺の影分身が行動不能にしているころだ……さあ、お前らも終わりの時間だ」

 

「っ!!」

 

 雷遁チャクラモードでのチョウジを目掛けた飛び蹴り。しかし反応できていないチョウジの代わりに、先読みと白眼を駆使したヒナタがガードをして立ちふさがる。

 

「くうぅっ……」

 

「防ぐだけじゃあ、勝てないぞ!!」

 

 防いでのけぞったヒナタに拳の連撃で追撃を図る悟。雷遁チャクラモードの連撃は加速し、白眼でも見切れきれなくなってゆく。

 

「肉弾戦車ァ!」

 

 チョウジがヒナタを助けようと横から加勢するが悟が一足後ろに飛び退くことで避けられてしまい、再度悟の猛攻がヒナタを襲う。

 

「そらそらァ!! どうした?! この程度か!!」

 

 悟の叫びに、ヒナタが一瞬目を見開く。

 

(強い……強いね悟君。だけど私もやられっぱなしじゃ終われない!!)

 

 悟が放つ攻撃を肩に受け怯むヒナタにボディブローが放たれる。しかし

 

「何!? っつう!!」

 

 攻撃をしていたはずの悟が大きくヒナタから飛びのき距離を取る。態勢を整えたチョウジが不思議そうにその様子を見ると、悟の腕が片方だけぶらんと垂れさがり力が入っていない様子であった。

 

 息を整えるヒナタに悟が問う。

 

「柔拳による経絡系へのダメ―ジ……チャクラモードで軽減していたはずなのに、どうして急に……」

 

「悟君がくれたヒントを参考にしたんだよ……まだ未完成だけど上手くいったみたい」

 

 悟が注意深くヒナタを観察するとヒナタの手には薄いチャクラの螺旋が渦巻いていた。その手によって先ほどのボディブローを防がれたと悟は気づく。

 

「なるほどね……チャクラの螺旋で俺の経絡系に一瞬で何度もダメージを与えた訳か……恐ろしい術だな」

 

 カウンターを警戒していた悟であったが、防御をそのまま攻撃へと転じたヒナタの術に感心する。動かなくなった左腕に悟が目を向けるが、動く気配は微塵もない。

 

 そしてその瞬間。悟に複数のクナイが迫る。

 

「お待たせ!! ちょっとダメージ喰らっちゃったけど何とか戻ってこれたわ!!」

 

 クナイを投げたイノが姿を現す。心転身の術から復帰してきたようだ。それに続き

 

「……通牙ぁ!!」

 

 クナイを避けた先で地面から飛び出てきたキバの奇襲に会い悟は吹き飛ばされる。

 

「固め方が甘いんだよ! 俺なら地面掘って進めるんだぜェ!」

 

 意気揚々とキバは唸る。悟は舌打ちをして、茂みの奥を見つめる。

 

「影分身が消されたと思ったら、いつの間に復帰してやがったのか、シノ」

 

「そう、俺を一番厄介と評価しておきながら気絶させたことを確認しなかったのはお前の落ち度だ悟」

 

 茂みからシカマルに肩を貸したシノが声色を少し明るくして姿を現す。

 

(シノの奴、地味に評価されて喜んでやがるな……)

 

 そのシノの様子にキバが思う。木に叩きつけられて気絶はしたものの、気がついたその瞬間から姿勢を変えずにシノは蟲だけに指示を出し連れ去られたシカマルの救助を行っていた。

 

「はあ……クッソ、全員復帰してきたか……」

 

 悪態をつくかのように愚痴る悟にシカマルが語る。

 

「確かにあんたはクソつえーけど、こっちも6対1なんて甘く見られた設定をされた以上意地があるんでね」

 

 6人に囲まれた悟は俯き、身体を震わせる。そして大きく高笑いをする。周囲の6人がその様子に怯んだ瞬間に悟のつぶやきが響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら俺も少し本気を出そう」

 

 

 

 

 

 

 

 悟の居た地面が爆ぜる。その瞬間にはチョウジが吹き飛び、小川に叩きつけられていた。

 

「なっ……!?」

 

 チョウジが攻撃されたことに反応したキバが身構えるが、瞬時に目の前に現れた悟に首を掴まれ地面に叩き伏せられる。

 

 先ほどまでの悟の動きやスピードからは隔絶した次元の動きにどよめきが走る。

 

 監視していた上忍たちも、関心を示す。

 

(あれは……ガイの八門遁甲か!? 段階はわからねェがスピードもパワーも先ほどとは桁違いだ)

 

 悟の情報が少ないアスマは驚愕する。悟が肌を包帯で隠しているため、八門をどの門まで開けていいるのかの目安はなく誰にもわからない。

 

「っ蟲壁の術!」

 

 悟のスピードを警戒し、シノが無数に蟲を使い自身を覆う。しかしシノの目の前で爆炎が爆ぜ、蟲を吹き飛ばす。

 

「……その姿は!?」

 

「これは初お披露目だぜ、誇れよシノ」

 

 シノの確認した悟の身体は炎の渦で包まれている。シノが接近されたことに気づいたシカマルとイノがクナイと手裏剣で援護をするも悟の腕の一振りで生じた爆炎が全て吹き飛ばしてしまう。

 

「左腕が動かねえのに何で術を!?」

 

 シカマルの疑問に悟は燃え盛る右腕に力を籠め答える。

 

「火遁チャクラモード……純粋なチャクラコントロールの産物だァ!」

 

 悟は叫びながら腕を突きだし爆発を起こす。シノは蟲で壁を作るも、自身と共に吹き飛ばされいくつかの蟲が悟に取り付こうとするも体の炎が蟲を近寄らせない。

 

「……っやは……り。お前は強いな、悟……」

 

 シノはそう呟き気絶する。その瞬間には悟は身にまとう炎を消し、八門遁甲による高速移動に移る。

 

「ちぃ、これならどうだ」

 

 シカマルは周囲に乱雑風にクナイを投げつけ、辺りの木々に差し込む。クナイにはワイヤーが繋がれていた。

 

(高速移動でワイヤーにぶつかればひとたまりも……)

 

 そのシカマルの作戦を察したかのように悟は動きを止めシカマルの直線状に立ち留まる。それを確認したシカマルがさらにクナイでワイヤー張り巡らせる。

 

 悟の動きを封じたことに安心したシカマルは、影真似の術による拘束を試みるため影を伸ばす。しかし

 

 悟は背中の鉄棒を引き抜き大きく振りかぶる。

 

「……は?」

 

 シカマルの声にならない呆けた声が響いた瞬間。悟が鉄棒をシカマル目掛けて投げる。鉄棒は風遁のチャクラを纏いワイヤーを切り裂きながら進む。

 

「滅茶苦茶だろォ!」

 

 そういって鉄棒をなんとか回避するシカマルが次に目にしたものは、悟の履くサンダルの裏であった。

 

 

 

 

 

 

 

 ぬうっと悟が体を動かし、次のターゲットに目を向ける。

 

「ひぃ! こんなの無理よォ!」

 

 イノはそう泣きべそをかきながらもクナイを構える。その悟とイノの間にヒナタ割り込み立つ。

 

「イノさんはチョウジ君の元へ行ってください。まだ何とか意識がある様です」

 

 ヒナタはそういって悟を見据える。先ほどの格闘戦のダメージで呼吸が荒いヒナタはグッと噛みしめ構えを取る。

 

「ヒナタ、お前は強いよ。だから」

 

 悟は八門を開く。

 

「俺もお前に対して手を抜かずに戦う」

 

 そう言って悟は構えた。

 

「八門八卦・剛掌波!」

 

 かつては両手を使い繰り出していたチャクラ弾を打ち出す拳の突きを右手のみで打ち出した。ヒナタは白眼でそれを見切り何とか回避をするものの悟は剛掌波を連続で繰り出し続ける。

 

(これじゃあ……近づけないっ!)

 

 ヒナタの柔拳を警戒して悟は遠距離攻撃に徹する。剛掌波の威力はヒナタが避けたものが後方の木々を砕いていくことで証明している。

 

 じりじりと追いつめられるヒナタ。

 

 悟は剛掌波の一発をヒナタの目の前の地面に当て炸裂させ、石つぶてを飛ばす。広範囲の攻撃にヒナタが怯んだ隙に悟はその場で飛び上がり右足を後ろに振り上げる。

 

「八門八卦・剛乱脚」

 

 そのまま横に振りぬいた蹴りは衝撃波の嵐を発生させる。ヒナタはそれを何とか見切ろうとするも、広範囲に及ぶ衝撃波に対してすでに崩れた態勢からでは手でガードするしか術がなく大きく吹き飛ばされた。

 

「残るはイノ……とチョウジか」

 

 着地した悟は小川に振り向く。そこでは倒れたチョウジを何とか起き上がらせようとするイノがいた。

 

「早く!チョウジ立って! マジでヤバいわよ!!」

 

「う、ぐぐぐぐ……」

 

 イノは焦りながら悟を見ると、八門によるオーラを纏った悟が一歩一歩地面を踏み抜いて近づいてきていた。

 

(怖い怖い怖い! なんなのよ! やっぱり花屋でのこと根に持ってるわけ!?)

 

 イノがチョウジの手を引き上げようと一瞬目を離した隙に悟が目前に迫り右手でイノの首を絞め持ち上げる。

 

「がっあッ! う……」

 

 何とか悟の腕を引っ掻いて抵抗するイノだがまるで意味を成していなかった。その光景を見たチョウジは恐怖に呑まれる。

 

「も、もうやめよう!! 悟の勝ちでいいからイノを放してよォ!!」

 

 涙ぐんだ声で魂胆する尻もちを付いているチョウジに悟は冷たい目線で見下ろす。

 

「……抜け忍がこの程度で済ますと思うか? やめさせたければ力ずくでやるんだな」

 

 再不斬に似た声色で威圧する悟はイノをより強い力で絞め上げる。グウッと呻き声を上げるイノに対してチョウジは恐怖で動けないでいる。

 

「どうした、かかってこいデブ(・・)

 

 悟の煽りもチョウジには届かない。本来ならデブと言われればキレるチョウジだが、こと戦闘においては当てはまらないのかもしれない。

 

 震えて小川に座り込むチョウジに声が微かに声が響く。

 

 

 

 

 

「助、けて……ちょう……じぃ」

 

 

 

 

 忍びとしての覚悟はまだないのかもしれない。何となく過ごしていけば『大人』にはなれるのかもしれない。けれど

 

 

 今仲間を助けれないで、何に成れるというのか?

 

 

 

 

「……イノを放せよぉッ!」

 

 

 

 巨腕が振りぬかれ、悟は大きく吹き飛ばされ小川を跳ねる。悟が岸にぶつかり、その衝撃で小川のふちが爆ぜ雨のように水が辺りに降り注ぐ。崩れるイノの身体をチョウジの大きな手が受け止める。

 

「助けるの遅れてごめんね、イノ……僕……怖くて……」

 

「ゴホッ……たく遅いわよチョウジ……」

 

 2人がつかの間の安堵に浸る中、水が止んだと同時に影が立つ。仮面を右手で少しずらして口から血を吐いた悟は満足そうに小さく笑った。

 

「さてと、じゃあ止めといくか」

 

 悟は腰のポーチから千本を取り出す。そしてそれをおもむろに自身の左腕へと突き刺す。

 

「ひえぇっ何やってんノォ?」

 

「げぇ、何? あいつマゾなの」

 

 チョウジとイノのリアクションに不服そうに唸った悟は左腕を持ち上げ大きく肩を回す。経絡系へのダメージで動かなくなっていた腕を動かしたことで周囲には驚きが走る。

 

(なるほどねぇ、八門と医療忍術。それらの知識から自分の点穴の位置は把握済みだと。おおかた千本の扱い方はあの白くんにでも教わったか……)

 

 カカシが面白いものを見る目で観察する中悟はチョウジらとの距離を詰める。

 

「部分倍化!」「岩状手腕!」

 

 強大な腕同士が衝突する。

 

「うおおおおおお!」

 

 パワーで優るのかチョウジが悟を押しのけようとする中、悟が右手の術を不意に解く。チョウジの左手が空を切る中、右手側に回り込んで手裏剣を投擲しようとしていたイノに目線を向けた悟は片手で(・・・)印を結ぶ。

 

「雷遁・地走り」

 

 悟から放たれた電流が小川を伝わってチョウジとイノを怯ませる。怯んだチョウジに対して片手で再度印を結んだ悟は炎弾を放ち爆炎で吹き飛ばす。

 

 そして最後に残ったイノに対してゆっくりと近づき

 

「……花屋での仕返しだ」

 

「えへへ、やっぱり根に持ってt……ヘブゥッ!!」

 

 八門からのデコピンを額に食らわせ昏倒させた。

 

 

 

 

 

 こうして1対6の演習は黙雷悟の勝利で幕を閉じた。演習を記録していた上忍らの報告書により、黙雷悟の忍者登録書は更新される。それらの内容により火影の提案である黙雷悟の中忍試験参加を1人ですることに上層部が認可を出したことはまた少しだけ先の話であった。

 

 

 

 

 

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