目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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思っていたよりもたくさんの方に読んでもらい感想までいただけるなんて、良いものですね。


5:よい子のための忍びっぽさ講座

気分的には全くの「新しい」朝が来た。今までなら俺は施設の朝食の準備を手伝っていたが、今日はなんと、普通に寝過ごした。

 

「・・・悟ちゃん昨日の今日でこんな事言うのもあれだけどもっとゆっくりしたら?」

 

急いで身支度を済ませ食堂に向かったが朝食の時間はとっくに終わり、マリエさんが洗い物をしていた。ぼさぼさ状態の俺を見てマリエさんは少し笑っている。

 

「習慣が根付いているのか何か手伝いをしないとって義務感がでてしまって・・・」

 

ふと、俺は違和感に気づく。この時間は普段朝食の洗い物を済ませ、洗濯物を干している時間だ。別に家事の時間がずれることは不思議でないが、周りに気を配る余裕のできた俺は昨日の衝撃的な初忍術見学の体験から一つの結論にたどり着く。

 

「もしかしてマリエさん」

 

「なあに、悟ちゃん?」

 

「もしかしてなんですけど “影分身”ですか?」

 

遅れた朝食のトーストを食べながらの俺の質問に、軽く驚くそぶりを見せたマリエさんは恥ずかしそうに

 

「ばれちゃったかあ」

 

とおどけて見せた。

 

俺自身、マリエさんが元忍びだったのは昨日知ったことだ。ガイさんが一楽で上機嫌に武勇伝を語っていたしマリエさんが俺のことを心配して相談事していたことも聞いた。

 

今までこんな施設の切り盛りをどうしているのか(他の職員さんは少ないため)気になっていた。・・・いや気にしてる余裕がなかったが正解か。

 

まあ、つまりは影分身を使えるから文字通り、独り舞台でも問題なかったってことか。

 

「私の手伝いは本当に意味がなかったわけですか・・・」

 

「そんなことないわよ、私嬉しかったわ!でも出来れば元気に遊んでくれていることの方がもっと嬉しいわ!」

 

なんてフォローを入れられる始末。

 

「影分身がいるなら言ってくれれば、、、あっ」

 

あることに気づいた俺と、俺が気づいたことに気づいたマリエさん。

 

そうだ。自分にそのつもりがなくても俺はべったりとマリエさんに甘えていたってことだ。

 

俺が「存在意義」を見失わないよう気を配って秘密にしていてくれたのか・・・。

 

自分の子どもっぷりに笑いがこぼれる。

 

「ふふふ、はっはっはっ!あー、可笑し。私って本当に子どもですね。あー、ちなみに分身体って何人いるんですか?」

 

俺が落ち込むかと思っていたのか心配そうにしていたマリエさんは、俺が気にしていない様子に安心したようだ。

 

「悟ちゃんが落ち込むかと思って言えなかったのよ~。何人だと思う~?」

 

ふむ、影分身はチャクラを均等に分け分身体を作る術。作る人数が増えるほど使うチャクラ量は大きくなっていき最悪術者を死に至らしめる。だから“多重影分身の術”は禁術指定で、それをバカすか使う「ナルト」は

チャクラ量が凄まじいという話なのだ。

 

つまり、多くても二桁は行かないはず・・・。

 

「4人とか・・・ですか?」

 

マリエさんの家事スキルなら4人も入れば十分お釣りがくるはず。これぐらいだろうか?

 

「ふふふ、正解は~?」マリエさんはニコニコしている

 

「正解は?」俺が正解を聞こうと促す。

 

 

 

 

 

「20人」

 

「多くないですか!?」

 

「いや~私のんびり屋さんだから分身体ものんびりお仕事してて、捗らないのよ~。一応悟ちゃんの前だと分身体も張り切ってテキパキするんだけどね~。」

 

ていうか20人のマリエさんに気づかずに施設で3年も過ごしてたのか俺・・・。

 

「でも20人もいると疲労がすごくないですか?影分身って経験とか疲労とかが本体にフィードバックするっていう術じゃないですか。」

 

何気なく俺が質問すると、マリエさんの洗い物を終えてのタオルで手を拭く動作が止まる。

 

マリエさんの顔は笑顔のままだが何か考えている様子だ。なんだ?まずいことでも言ったか・・・?

 

 

 

いや、言ったわ俺!?何で3歳児が影分身の仕組み知ってんだよ!怪しまれる!ていうか怪しい!!

 

俺は自分の失態に気づき目線を下げて、言い訳を考えうろたえる。

 

そんな俺にマリエさんが声をかける。

 

「悟ちゃんって~」

 

 

まずい

 

 

「勉強が好きなのね~」

 

 

・・・・勘違いしてくれてる?

 

「3歳なのに、結構ハキハキとお喋りができるし、受け答えも上手。」

 

大丈夫か?

 

「気が付いたら当たり前のように読み書きができて~。」

 

ん?

 

「教えてもいないのに、1歳半のころから自分の情報が載っている書類を漁っては読んでて~。」

 

んんん?

 

「昨日なんて3歳児が世界を良くしたいなんて真剣に語ってて~。」

 

あっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「演技するなら、もっと上手にね」

 

俺が目線を上げるとそこには、誰も、いない。

 

この食堂から人の気配が消え、そとではしゃいでいる施設の子どもたちの声が聞こえる。

 

心臓がバクバクと唸る。

 

 

 

 

 

「う・し・ろ」

「なあああああああああ!?」

 

後ろから不意に聞こえたマリエさんの声にびっくりして大声を上げる俺。

 

「なーんて冗談♪悟ちゃんがアカデミーでもやっていけそうで私安心したわ~」

 

「はは、ははは・・は」

かわいた笑いしかでない・・・

 

俺が椅子からずり落ちそうになって放心していると、視界に何かが覆いかぶさる。

 

「はい、お面は私が直しておきました!今日も公開演習場に行くんでしょ?気を付けてね~」

 

とそういってマリエさんはボンっと煙を上げて消えた。

 

俺が放心しながらもなんとか食堂を出ようとすると

 

 

「外ではしっかりと演技しろよ」

と耳元ではっきりとマリエさんの声が聞こえた。

 

振り返っても誰もいない・・・

 

 

忍って怖い・・・

 

マリエさんは俺のことどう思っているんだ・・・?

 

一応心配していてくれている・・・のか?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

俺が何とか気力を持ち直し、狐のお面をつけ施設の掃き掃除をしていると同じく掃き掃除をしているマリエさんとバッタリ会った。

 

「・・・」

 

お互いに沈黙が続く

 

次第にマリエさんの顔が赤くなっていく。照れてる?

 

「あの、マリエさん?」

 

「・・・・(公開演習場に行くのって午後からだったね。)

 

小声で俺が公開演習場に行く時間を勘違いしてたことを告げたマリエさん。

 

「えーとその、マリエさん?」

 

「・・・(はい)

 

「さっきのは・・・」

 

俺が疑問を投げるとマリエさんは恥ずかしそうに俯き唸った。それから一分ほど唸ったあと、返事を返してくれた。

 

「実は・・・悟ちゃんが普通の子じゃないことには早くから気づいてて最初は私も少し警戒していたの。けれど本心から怯えている様子から、悪い子じゃないのは何となくわかったの。何か事情があるのは分かるけど無理に聞くことじゃないし・・・けれど私心配だからあまり外では怪しまれることしないでねって意味を込めて、忍びっぽく忠告してあげようと思ってたら・・・」

 

「たら?」

 

「反応が面白くて悪乗りしてしましました・・・」

 

「なっなるほど・・・」

 

やっぱりマリエさんはマリエさんだった。

 

「だってずっと「はい」、「わかりました」、「大丈夫です」ばっかりで会話してくれなかった悟ちゃんが、急にお話ししてくれて私混乱しちゃってて・・・」

 

「ああ、なるほど・・・確かに私のせい(?)ですね。」

 

マリエさんの動揺を抑えるためにとりあえずの同意を返す。

 

だが、俺が不自然なことにマリエさんは気づいていたんだ・・・。思い返してみればガイさん相手にも怪しい態度とってたかも・・・。

 

心配はすれど、深くは詮索しない。マリエさんの親切に俺も答えなくては。

 

「俺」

 

「ん?」

手で顔を隠して恥ずかしそうにしていたマリエさんがこちらを向く。

 

「いつか必ず、必ず事情・・・ていうやつを話すので待っててくれませんか?」

 

俺のこの世界でやりたいことが全て終わったら必ず事情を話す。気味悪がられてもいい。ただ俺に良くしてくれているこの人には正直でいなければ。

俺の言葉にマリエさんは短く

「わかったわ。」と返してくれた。

 

お互いまだ知らないことばかりだが、この信頼の絆は俺の心の力を強くしてくれるはずだ・・・。

 

「あの改めてお願いしたいことがあるのですが、いいですかマリエさん?」

 

俺がお願いをしようとするとマリエさんは嬉しそうに胸を張って答えてくれた。

 

「お願いなんて、何でもしてくれていいのよ!私に出来る事なら!」

 

 

「俺に、忍術を教えてください。出来れば影分身の術を。」

「いいわよ!」

 

食い気味に了承してくれたマリエさんはニコニコしている。

 

「あっでも今日公開演習場に行ったあと、寄りたいところがあるので時間は夜でもいいですか?」

 

「もちろんいいわよ。でも忍術を教える代わりに私からのお願いも聞いてくれる?」

 

「お願い・・・?」

 

「しばらく体のトレーニングは禁止ね。悟ちゃん気づいてないと思うけど体のあちこちがズタボロよ?」

 

ズタボロっていうほど自分の体に痛みとかはないのだけれど・・・

俺が不思議そうな顔をするとマリエさんはおでこに手を当てため息をつく。

 

「悟ちゃんが夜、ろくに寝もしないでトレーニングしてたせいで色々と限界がきているはずよ。忍術には身体エネルギーと精神エネルギーを混ぜ合わせて練るチャクラが必要なの。悟ちゃんは体力もメンタルもボロボロの状態だったのよ?昨日なんてそんな状態でガイ君と組み手なんてして・・・今の状態で忍術なんて教えても意味ないわ。だからしばらくは安静にしてチャクラを練り感じるところから始めましょう。」

 

「ガイさんとのあれは組手と言えるか微妙ですがなるほど・・・だからチャクラのチの字も感じられなかったのか・・・」

 

俺が自分の状態に納得がいくとマリエさんは

 

「それじゃあ、夜帰ってきたら私の部屋に来てね?」

と言って別の部屋の掃除に向かった。

 

確かに漫画とかでも身体とか精神とかの単語が出てたきがするなあ。と考えながら俺も別の場所の掃除をしに行った。

 

~~~~~~~~~

 

昼食をすませた俺は、公開演習場へと向かう。

そういえば、公開演習場はガイさんがボコボコと穴を空けてた気がするけど大丈夫なのか?公共施設を封鎖した挙句荒らすとかかなりの問題行動な気がする・・・。

 

そんなことを考えながら公開演習場につくと、心配とは裏腹にいつも通り人が賑わっていた。穴も塞がっている。

例の立ち入りを制限してたガイさんの「部下」さんが直してくれたのかな?誰かは知らないけど苦労人そうだなあ・・・。

とりあえず良かったと思いながらも、俺はテンテンちゃんを探す。どうしても謝りたいのだ。

 

そう思いながら公開演習場を軽く走って探していると、奥の木々が生い茂っているスペースの丸太が三本植えられたところでテンテンちゃんを見つけた。

 

俺が声をかけようとするとバシンッ!!と音が弾けた。

どうやらテンテンちゃんが棒で丸太を叩いているようだ。こちらに気づかずに丸太に打ち込みをするテンテンちゃんを眺めながら俺はしばらく木陰に座り待っていた。

 

しばらくすると「ふう」と一息ついてテンテンちゃんが振り向き俺と目が合う。

 

俺は立ち上がり謝罪の言葉を述べた

 

「テンテンちゃん、この間はごめんね。急に怒鳴って帰っちゃって・・・」

 

テンテンちゃんはジトーと俺を嘗め回すように見て

 

「さとる君、大丈夫?」と言った。

 

俺が何に対して大丈夫と言われたのか分からないでいると、テンテンちゃんから答えてくれた。

 

「昨日、変なおじさんがさとる君がどんな子かってしつこく聞いてきて、怒らせちゃったっていったら『おれにまかせろー』って言って走って行って・・・。変なことされなかった?」

 

ああ、ガイさんの身辺調査・・・。それで俺の心配をしてくれたのか。

 

「一応大丈夫だったよ。一応」

と俺は笑顔をつくろって答える。お面をつけてるけど雰囲気が伝わるはずだ。

 

そっかー、と言ってテンテンちゃんは

「悪い人は私がこらしめてあげるから、大丈夫!」

棒を素振りする。

 

頼もしい限りだ。

 

「それじゃあ、今日は何して遊ぶ?」

とテンテンちゃんが問いかけてくる。

 

この年の子に謝罪とかの、言葉で言うことは伝わりずらいかもしれないと思い、俺は

 

「一緒にお昼寝してくれる?」と提案した。

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

草原で、少女とお面を外した少年が気持ちよさそうに眠っていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

気が付くと日が傾き始めている時間だ。俺はぐっと背伸びをして起きると隣でテンテンちゃんが笑顔でこっちを見ていた。

 

「私の顔に何かついてる?」と聞くと

「別にー」とニコニコと答える。

 

疑問に思ったが深く考えるのはよそう。今日は行きたい場所がある。

だから

 

「テンテンちゃん、また明日一緒に遊んでくれる?」と聞いた。

今まではテンテンちゃんが俺に話しかけてくれて、遊んでいた。たまにはこちらから誘わないと男が廃るってもんだ。

 

テンテンちゃんは「うん!」と言って元気に返事をしてくれた。

 

するとテンテンちゃんはピースの手をこちらに向ける。これは・・・

俺はテンテンちゃんの意図をくみ取り、ピースの手でお互いの人差し指と中指を結ぶ。

 

「すごいね、さとる君これ知ってるんだ!」

 

「テンテンちゃんこそ和解の印なんて・・・」「本に仲直りの印って書いてあったから!」

 

なるほど、やっぱりテンテンちゃんも気にしてたのか。小さいのによっぽど俺よりしっかりしているよ・・・。

 

「ケンカする印もあってね、こうするの!」と対立の印の仕草をするテンテンちゃん、だけど

 

「それじゃあ、『シー』って言っててケンカにならないよ。」と笑いながら俺は答える。指が一本足りないのだ。

 

「むー、いいもん!さとる君とはケンカしたくないからこれであってるもん!」

とふくれる。テンテンちゃん。

 

俺も人差し指を口の前で立て「それじゃあこれは『ケンカをしない印』だね」と答える。

 

テンテンちゃんは嬉しそうだ。しばらくお互いにに『ケンカをしない印』を続け、笑顔で分かれた。

 

「またねー」と手を振るテンテンちゃんに俺も手を振り返す。

 

心が温まると同時にお腹あたりに何か熱いものを感じる・・・これは?

 

 




無邪気な子どもに負ける大学4年の精神性。まあ今は仕方なかろう
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