<黙雷悟>
死の森中央の塔へとたどり着いた俺は、巻物を開き口寄せされた人物と相対する。
「……あれ、まさかあなただとは……てっきり別の中忍が来るかと」
「その口ぶり、中忍が来ることもお見通しだったってわけか……」
そういうイルカ先生は当然のごとくと言った様子で俺に第2試験の合格を申し付ける。
「さてと……じゃあ、あとはナルト達のことよろしくお願いします。イルカ先生」
そう言うと俺は塔の中にいるスタッフに案内され待合室に通される。
「……ふふふ、随分ボロボロだったが悟もあの時から成長しているんだな。さてとじゃあ、俺もあとはナルト達のことも信じて待つか……」
そう呟いたイルカ先生は再度逆口寄せにより塔から姿を消した。
それから第2試験終了までの間。俺はひたすら眠りについて休息を取った。
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『ねえ、悟ちゃんは何が欲しい? 祭りの屋台にあるモノ何でも買ってあげるわよ~』
『別に……私は……欲しいモノなんて……』
ただ平穏に平和に生きられるならそれでいい……。1人でいたい……。もう繋がりを持つなんて……。
『2歳の誕生日なんだから遠慮しないで! 遠慮する歳じゃないでしょ~?』
『なら……あのお面を……』
誰も信じたくない……誰かに自分を認識してほしくない。だからこそ顔を隠せる狐の面をこの人にねだる。
『これでいいの? ほらもっと沢山甘えてくれても……』
『十分ですすみません……お願いなんてしちゃってごめんなさい……わがままいってごめんなさい……』
『そんな我がままなんて……いいのよぉ? ほらもっと私を頼ってくれても……』
ああ、これは……昔の夢か。
懐かしい。確か2歳の誕生日の時にマリエさんに祭りに連れて行ってもらったときの……。
この時も貴方は地下で1人でずっと我慢していたんですね……。
俺は誰かと繋がりを持つのが怖かった。その繋がりを後悔することになった時の自分の醜さが怖くて……。
貴方は……どんな思いで俺と繋がろうとしていたんですか?
……心が壊れるぐらいの目にあったはずなのに……なぜ俺なんかと?
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「ぶあ……? 夢か……」
ふと目を覚ませば、塔の中の部屋の1つのベッドで横たわる自分に気がつく。
「……あれから大体3日か、ああ腹減った……」
体を動かし、塔内の食堂へと向かう。……毒の影響はもう殆んどない、少しぐらつくぐらいか。相変わらずの自己治癒能力に感謝だ。一応待機スタッフに毒について説明したときに
『すみません、あなたの傷口付近から採取した毒を調べたところ、それに対して効き目のある薬の用意がなくてですね……アンコ特別上忍が戻ってくるまで我慢していただくしか……』
『あ~なるほど……』
というやり取りがあった。俺の反応の薄さにスタッフが拍子抜けしていたのが印象的か。
アンコさんが戻ってきても、大蛇丸にこっぴどく返り討ちにあったみたいで、俺どころに構っている暇は無さそうだったので黙ってたが……。
食堂に着くと、三代目が定食を食べていた。……いきなりシュールな場面に出くわしてしまった。
「ふむ? 悟か、どうじゃ隣にでもこんか?」
「何でこんな所で三代目が食事を……。隣は遠慮します」
そういって自分の分の食事を持ち三代目の正面に座る。
「ふははは……ふむ、お主が1番で試験をクリアしてくると思っておったが、まさか砂の忍びが先を越すとはな」
「……なんですか、唐突に……。大蛇丸と交戦しちゃったんでしょうがないじゃないですか」
俺の言葉に三代目が動揺する。あっ大蛇丸と交戦したこと誰にも言ってねえわ。
「そ、それは……無事で何よりじゃ……」
「そうですね、滅茶苦茶強かったですよ。まだまだ基礎的な部分が成ってないと実感できました」
「ワシが言うのもなんだが……大蛇丸と会ってよく平静を保てるな、お主」
「……? マリエさんのことに比べれば精神的には余裕ですよ」
「そうか、そうじゃったか……」
何ですか、その不憫そうな目は……そう言えば、大蛇丸の野郎(?)唾とか言って俺の首筋を噛んでいたけど……サスケと違って別に呪印を刻まれたわけではなかった……。体調に関しても、毒による影響しかわからないし……何されたんだか少し怖いな。
三代目と小話をして、食事を終えた俺は部屋へと戻ると丁度塔内にアナウンスがかかる。
「第2の試験終了に着き、通過者は一階にある広場まで……」
さて、同期達は合格できているのか。少し心配だ。
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「まずは第2の試験通過おめでとう!!」
アンコ特別上忍の言葉を尻目に、並んだ通過者たちに目を通す。
(同期達は……ん? チョウジがいない……シカマルとイノはいるが……何とか班で通過はしたが、怪我がひどすぎたのか。俺では完璧に治療するのに時間も技術も足りなかったからな……。すまん、チョウジ)
テンテンたちは普通にいた。多分ネジの白眼なら、遠くからで班員を見つけられるから単独行動したんだろうが……俺が知る原作より随分と冷酷じゃないか。
その後三代目により、中忍試験がなぜ同盟国同士で開かれるかの解説が入る。つまりは下忍を使った代理戦争ってことだ。
で第3の試験の前に多すぎる通過者を減らすために予選をすることになって……チョウジは運営の判断で強制的に辞退になった。シカマルと、イノが悔しそうにしている。
「仲間の為だとか不相応に足掻くからこうなる……無様だな」
ふと聞こえた呟きに、怒りが沸く。ああ、お前はそう言う奴かネジ。もし戦うことがあれば容赦はしないぞ……。
その後に薬師カブトが自ら辞退をする。ナルトが残念そうにしている……確か少し仲良くなったんだっけか? 大蛇丸の部下とは知らずに……しかたないかもだけど。
ふと辞退したカブトが会場から出ていこうとしたときに、カブトがこちらを見るような視線を感じる。
「ん? なんですか?」
「ああ、いやごめんよ。特別枠って言うだけあって1人で合格してすごいなぁってね。同じ木ノ葉の忍びとして誇らしいよ。君は……がんばってね」
まさかカブトに声をかけられるとは……大蛇丸関係で何か知らてるのか? まあ、疑ったところで俺が知りようがないのだが。
(間違いない……あの面は……あの人の……)
そんなカブトの思考については気にも留めずに俺は前を向いた。
という訳で長いルール説明を終えて1対1の予選が開始された。
初戦はまあ……原作と変わらずサスケとヨロイって奴だった。……アカドウ・ヨロイ……覚えているようなないような……。
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サスケは危なげだったが体術・獅子連弾を決めて勝利。……表蓮華のアレンジとは恐れ多い。やっぱりすごいなって、安直な感想が出た。
まあ、試合後はカカシさんに連れられ別室に……。呪印を封印するんだろう。
でまあ、次戦、ザク・アブミVSアブラメ・シノ
うん、シノが勝った。まあシノ強いしね。俺も火遁チャクラモードとかメタを張らないと戦うのは遠慮したい相手だし。
「へいナーイス、シノ!」
「ふん……他愛もない。悟、お前も勝ちあがってこい」
中々の強者セリフじゃないか……機会があれば真似するか。
はい次戦、ツルギ・ミスミVSカンクロウ
カンクロウの勝ち。特にいうことはない、うん。
次戦、ハルノ・サクラVSヤマナカ・イノ
中々壮絶だった試合。2人とも意外にも体術面での伸びが良いのか接近戦で応酬が続いていた。
最終的にはイノの心転身の術をサクラが看破して、ダブルノックダウン。2人は少しの間気絶していそうなので、ちょっとだけ掌仙術で怪我を治療をしておいた。
ちなみに前の演習で俺がイノの心転身の術を破った方法は、例のトラックの映像をイノに見せるといったものだった。それでイノの精神を体外に追い出した。黙の存在のおかげか、精神世界での自由度が高い気がするな俺。
ことごとく変な精神性の奴の中に入るイノが少し不憫に感じた、まあ他人事なんだが。
ハイ次、テンテン対テマリ。
……まあ、何というか。相性が悪い、それに限る。
「ハンっ!! 遠距離攻撃で私の上を行こうなんざ、百年早いんだよぉ!!」
テマリの風遁でテンテンの武器は全て撃ち落される。
「……くっ!!」
テンテンは随分と苦しそうだ……手がないのは仕方ないが。やっぱり、何か俺が術でも教えてあげるべきk
「でえああああっ!!!」
急に動きの質を変えたテンテンの飛び蹴りが炸裂してテマリを大きく吹き飛ばす。扇子でガードされたが、ダメージは入ったはず……てっ……
……テンテンの飛び蹴りでテマリの風遁を突き抜けただと? ていうかあの、身体能力とチャクラの高まり……まさか。
俺が驚愕でガイさんに顔を向けるとガイさんもまさかという表情でこちらを見ていた。ガイさんも知らないっていうことはあいつ独学で……
八門を……!? 多分開門段階自体は浅いだろうが、そんな無茶な……俺が言えたことじゃないけど。
「こいつ急に身体能力が……ちぃ!!」
予めばらまかれた忍具をテンテンは強化した身体能力で扱いテマリを追いつめる。
忍具の投擲は風遁を貫通し、テマリへと迫る。それをテマリは巨大なセンスで弾くが、迫りくる投擲の嵐が着実にテマリに襲い掛かる。
「テンテンさん! 頑張れー!」
いつの間にか起きていたサクラが応援を送る。今は優勢にみえるが、八門をテンテンがそう長く維持できるとは思えない。現に動きが鈍くなってきている……っ。
「……テンテンっ!!」
思わず出た俺の声にテンテンが反応したのか、床に転がる鈍器「メイス」を持ち特攻を仕掛ける。
「「ああああああああっ!!」」
互いの武器同士がぶつかり、押し合いになるが……。
「木ノ葉を舐めてて悪かったねぇ……でも、これでしまいだぁあ!!」
テンテンの攻撃をいなして距離を取ったテマリが風遁を展開する。テンテンは……八門の反動で動けないっ!
「風遁・大鎌いたちの術!」
テマリの風遁に対して最後の力を振り絞ったテンテンがメイスを投擲するが自分の身体ごと吹き飛ばされる。
勝者は……
「勝負あり。勝者、テマリ」
審判月光ハヤテの宣告が轟く。……っ!
思わず飛び出た俺はテンテンを抱える。
「大丈夫か!? テンテン!!」
声をかけるが、意識はない。早く治療をっ!
焦る俺は医療班がつく前に応急処置を行う。背後で少しリーとテマリが揉めている。
「それが死力を尽くした相手に投げかける言葉ですかっ!」
「ふん、確かに苦戦はしたが負けは負けだ。負ければそれで終わりなんだよ、へっぽこ」
挑発に乗るリーをガイさんが止めている。俺はそのまま医療班にテンテンを預けついていく。
担架で運ばれるテンテンが目を覚ます。
「……さとる?」
「テンテン、無茶しやがって……ったく心配したぞ」
「ごめんね、わたし負けたく……なかった……まけだぐぅ……グスっ……」
「……ああ」
「わたし……さとるに……おいつきたくて……それで……」
「ああ、わかってるよ。お前はよく頑張った……ほら今度一緒に修行しような……約束だ」
俺は小指を差し出す。それにテンテンも小指で応える。
「ふふふ、指切り何て……なんだか……昔にもどった……みた……い……」
「……っテンテン……お疲れ様……」
再度気を失ったテンテンを見送り、俺は会場に戻る。
……勝負の世界は厳しい。死ななかっただけマシなのだろうが、俺の心はどうしても荒れてしまう。頭ではわかっているつもりでも……。
「大丈夫? 悟君……」
「ヒナタか……ああ、大丈夫だ。テンテンは命に別状はない。だから大丈夫……」
「……悟君は?」
「俺……?」
「悟君、少し前から無理してるよね? なんだか明るく振舞っているみたいだけど、私にはわかるよ……。テンテンさんのことも不安だろうけど、悟君。自分のことも少しは……」
「……ハハっ大丈夫だ。!……というかそれこそヒナタは俺の心配をしている暇があるのか?」
「それは……どういう意味?」
俺は電光掲示板を指さす。俺がテンテンの付き添いをしている間にシカマルの奴は試合を終わらせたようだ。随分とあっさり決着がついたもんだ。
その掲示板に出ている次の対戦者の名前は……
ウズマキ・ナルト
VS
モクライ・サトル
…………ククク。
「さてとヒナタ……お前はどっちの応援をしてくれるのかな?」
多分この時の俺の仮面の下の笑顔はかなり邪悪だったと振り返って思う。