目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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51:叛逆の精神

<三人称>

 

 ヒナタ対ネジ

 

 その組み合わせの発表は悟の心に影を落とす。原作においてもこの組み合わせの結果ヒナタは重傷を負っている。その怪我は一か月後、中忍試験本選まであとを引くほど重いものだ。

 

 それでも悟は不安な素振りは見せずに彼女を送り出す。

 

「さあ、ヒナタ……勝ってこい……!」

 

「頑張れってばよ、ヒナタぁ! 応援してっぞ!!」

 

「う、うん……行ってきます……っ」

 

 2人の声援を受けヒナタは降り立つ。

 

「……ふう、まさかあなたとやりあうことになるとはね……ヒナタ様……いや……日向ヒナタっ」

 

「っ……ネジ兄さん……」

 

 宗家と分家の確執。悟が知る限りでもそれは現在の日向の家に根強く浸透している。ヒアシとヒザシ。両名の公での扱いの差は自然と目に入るからこそ確執を理解する。あくまでヒザシは影武者扱いであること、その肩身の狭さは計り知れない。

 

 そんな因縁深い対決の火ぶたが……

 

「では、試合を始めてください! ゴホッ

 

 切られた。

 

 開始の合図とともに大きく踏み込んだ、ネジの一撃をヒナタは受け止めいなす。お互い白眼を用いた一瞬の攻防は簡潔に見え、その実幾重の攻防が織り交ぜられている。

 

「……あなたに棄権しろとはいいません。なのでどうか……

 

 

 

 

 

死なないでください」

 

「っ! ……ハアっ!」

 

 ネジのその言葉は暗に殺すという脅迫めいた意味を示す。本気の殺意。ヒナタは恐怖に呑まれそうな自分を鼓舞して牽制を繰り出す。

 

「……クククっまるで、成ってない! 貴方の柔拳は己を守るために振るわれるだけの弱者の拳だ。宗家の人間が、この程度とは…………ふざけるなっ!!!」

 

 怒りに任せるような荒々しいネジの柔拳は、確実にヒナタの経絡系にダメージを浸透させ、傷つけていく。

 

「お前みたいな価値のない人間のために、才能無き者のために。何故肩書の差だけで有能な者が虐げられなければならないっ!」

 

「……っ!」

 

 ネジの怒りは宗家を目の前にして、膨れ燃え上がる。

 

「そう……これは……叛逆だ。俺の運命に対しての叛逆の始まりっ! 俺は日向などという肩書に縛られなどしない!」

 

 ヒナタの腹部への一撃が炸裂。大きく仰け反って、口から血を吐くヒナタは苦しそうに俯く。

 

「フンッ…………あなたも可哀想なお方だヒナタ様。その名だけで周囲に期待され、無理やりこの場に立たされている……。本当なら今すぐにでもこの場から逃げ出してしまいたいと思っているのに」

 

 大きくせき込むヒナタは口から血を流しながらもネジの目を見続ける。

 

「どんなに繕っても、俺の白眼には見通せてしまう……人の本質が。あなたは足掻いて見せているだけで、その実他者の期待に応えることすら出来ない臆病者だ。本質は何も変わってなどいないのだ。……そう自分を変えるなんてこと絶対に出来

 

 

「「出来る!!!」」

 

 会場に響き渡る怒号。ネジはその2つの音源を無言でジッと睨みつける。

 

「人のことかってに可哀そうだとかっ! 臆病者だとかっ! 決めつけんなバーーーーーカっ!! ンな奴ぶっ飛ばしてやれ!!」

 

「……人の本当の本質は確かに変えようがないのかもしれない……だけどそれが(イコール)人が変わらないことにはならないんだ……っ! 本質の引き出し方なんてそれこそ人それぞれだっ!! だからこそ今の君の力を見せてあげるんだっ!!」

 

 

「「ヒナタ!!」」 

 

 ナルトと悟の叫び。荒々しい応援。見守るような声援。その2つの心の力はヒナタに力を与え……

 

「……あり……がとう、2人とも……っ!! 私は……私は……っ!!」

 

 震える体を持ち上げ、その両目に闘志を宿して再び立ち上がらせる。

 

「……その状態で立ってくるなど……」

 

「私は……大好きなあの2人のように強く……なりたいのっ! いえ、なって見せます……!! まっすぐ……もう自分の言葉を曲げない……私も……それが忍道だから……っ!」

 

「……無駄だ、あなたはもうチャクラを練ることができない。勝負は着いている」

 

 そのネジの言葉を合図にヒナタは攻め込む。煩わしそうに構えるネジは驚愕する。チャクラの流れを止める点穴は既に幾重にも突き、練れるチャクラなど雀の涙ほどもないはずのヒナタ。

 

 そのヒナタの攻撃の鋭さは、幾段にも上がりネジに迫る。そしてヒナタの掌底を防いだ腕の感覚の鈍りに驚愕するネジ。

 

(……っ何が!? なぜチャクラを練れる……なぜ俺の経絡系がダメージを……っ!?)

 

 ヒナタの気迫に押され大きく退くネジ。白眼での観察により、事象の原因を探る。

 

 ヒナタの腹部には、クナイが刺さっていた。それは自傷行為にほかならない。けれどそのクナイは点穴を突かれ閉じた経絡系の道を無理やりこじ開けている。

 

(……っあの演習で黙雷悟が見せた秘策をクナイでするなど……それに)

 

 ヒナタの右手に宿る、チャクラの塊。朧気にそれはまるで獅子の顔を型取り、渦巻いている。そのチャクラの塊が自身の経絡系へのダメージを加速させていると瞬時にネジは判断する。

 

 ネジに猶予を与えないようにヒナタが攻勢にでる。右手による攻撃を注意し避けるネジ。

 

「種が割れればそんな小細工などっ!」

 

 勢いが増したにしてもすでにヒナタの動きは、経絡系の負った重傷と自傷により乱れている。冷静に脅威になりうる右手の動きを捌くことでネジの優勢は揺るがない。

 

「……ハアっ! ……ハアっ! ……っ!!」

 

 ヒナタの苦しそうな呼吸が、ネジの勝利を彩り始める。

 

(所詮、最後の悪あがきだ……練れる僅かなチャクラを右手の術にまわしている以上他が疎かになる)

 

 ヒナタ唯一の武器だと思われる右手による攻撃も、スピードが落ちネジは完全に見切る。纏うチャクラの隙を突いて柔拳を叩きこみ、右腕の点穴を完全に塞ぐ。それによりヒナタの渦巻くチャクラは消失。

 

(勝っ……!!)

 

 完全に相手の最後の牙を折ったことによる勝利への確信。その瞬間

 

 

ゴっ!!!

 

 

 会場に鈍い音が響く。

 

 

 そして大きく吹き飛ばされるネジ。

 

 

 会場にどよめきが走る。

 

 

 吹き飛ぶネジが見た光景は、大きく振り抜かれたヒナタの左手の拳であった。

 

 

「日向の人間が……剛拳(・・)を……っ!」

 

 観戦しているカカシの驚きの声が響く。

 

 柔拳による右手での攻撃を囮にした左手での拳骨。相手の力量を決めつけ、慢心していたネジはそのヒナタが繰り出すはずのない一撃を読めずにもろに喰らった。

 

「よっしゃー! ナイスだぁ!! ヒナタぁあ!!」

 

 ナルトの歓喜の声が会場に轟く。そしてその声に笑顔で応えたヒナタは

 

 

 

 

 

 そのまま地面へと倒れこむ。

 

 

 ……そして対照に立ち上がるネジ。

 

 

 

「……勝者、日向ネジ…ゴホッ」

 

 

 非情にも審判は下された。しかし

 

 ネジは再び構えを取る。

 

「っネジ君……もう試合は終了ですよ……?」

 

 月光ハヤテは訝しむ。離れた位置にいるにも関わらず構える、ネジの内包するチャクラはありえない一撃に憤怒して増加している。審判のハヤテがそれに気づき間に割って入るよりも早くネジによる一撃は放たれた。

 

「八卦空掌っ!!!」

 

 放たれたのは急所を射抜くチャクラによる真空の衝撃波。それがヒナタに迫る。

 

 その不意の攻撃に対処できるものはこの会場には

 

 

 

 

 

 

 

 

 黙雷悟しかいなかった。

 

 

 

 

「八門八卦・剛天っ!」

 

 

 ネジの一撃をヒナタの前に現れた悟がかき消す。

 

「……これ以上やるなら俺が相手だ……っ」

 

 悟の放つものは紛れもなく殺気であった。

 

「ッ……フンっ……貴様の婚約者だからか? そんな落ちこぼれを守るとはなっ!!」

 

「そんなことは関係ない……」

 

「……貴様はっ……何なんだ貴様は黙雷悟っ!! お前は紛れもなく天才の側のはずだっ!! 日向に認められっ!! 父上にも認められっ!! 数多の力を操るお前がなぜっ!! わざわざ愚図共の味方をして助けるっ!!! お前は何故足手まといのためになぜそこまでっ!」

 

「そんなこと……知りたければ教えてやるよ……けどそれは今じゃあない……」

 

 そういう悟の背後ではナルトがヒナタに駆け寄り、医療班が集まっている。

 

「本選で待ってろ……」

 

 悟の放つ確信をもったその言葉をネジは受け止める。

 

「良いだろう……貴様を殺して……否定しやろう貴様の考えをっ!! そして証明して見せる、この世は」

 

 

 

 力が全てだと。

 

 

 

 そう言い残したネジは会場から姿を消す。

 

 それを見届けた悟はすぐさま、ヒナタに付き添い医務室についていった。

 

 会場から2人の通過者が消えども、試合は続く。

 

 ロック・リーVS砂漠の我愛羅

 

 そして犬塚キバVSドス・キヌタ

 

 リーは忍者生命を危ぶまれる重傷を負い、キバもまた接近戦に強いキヌタの音波を駆使した忍術に敗れ去る……。

 

 かくして中忍試験第3の試験予選は幕を閉じた。

 

 本選はトーナメント形式で一か月後に開かれる。

 

 会場から姿を消した日向ネジと黙雷悟は代理でくじが引かれその組み合わせが決定する。

 

 第一試合は

 

 

 

 黙雷悟対日向ネジであった。

 

 

 

 

 

 

 




サクラ「悟ってたまに口調変わる時ありません?」

カカシ「さあ……保護者の影響じゃない?」
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