目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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52:各自の激戦が明け……

<三人称>

 

 木ノ葉の里にある病院の一室。その中からは揉め合う会話が聞こえる。

 

「通してください! 僕は……僕は努力しないとっ!」

 

「だ、駄目です! 今は絶対安静にしていないといけません……キャッ!」

 

 その内の男性の声の主、ロック・リーが病室のナースを押しのけ片手片足のみ使って病室の戸を開け飛び出る。

 

 その瞬間、飛び出た拍子で倒れそうなリーを支える人物が1人。

 

「リーさん、焦る気持ちはわかりますが、女性を突き飛ばすのは感心しませんよ?」

 

 リーが顔を上げると、無地の仮面が目に入る。背後のナースもまた、仮面の人物が支えていた。

 

「は、離してください悟君! 僕はまだ……!」

 

「ダーメ」

 

「うっうわ!」

 

 リーをひょいと持ち上げた悟は、そのまま病室のベッドまでリーを連行する。ナースを支えた影分身は会釈をしてボフンと姿を消した。

 

「リーさんは自分が相手しますので、後は任せてください」

 

「は、はい……」

 

 中忍試験の予選から数日。黙雷悟の顔(仮面)は木ノ葉の里でも知られるものとなった。このナースもまた悟を知っており、紳士的な態度とその手腕(物理)を信頼して病室を後にする。

 

「……オラぁ!!」

 

「痛ったあ!!」

 

 ナースが出ていったのを確認した悟は、愚図るリーの額にデコピンをかます。

 

「何してんですか……たくっそんな体で無茶を……」

 

「いてて……無茶じゃありません! 修行です!」

 

 ベッドの横の椅子に座った悟は仮面を手で押させ頭を振る。

 

「何かしていないと辛い気持ちはわかるけど、それで周りに迷惑かけるのは間違っているってわかってるでしょ?」

 

「グッ……でも……」

 

 もう一度デコピンを構える悟に、リーは額を隠し黙ってベッドに沈み込む。

 

「まあ、休息を取るのも修行の内……オーバーワークは非効率だ。今はほら、これでも読み込んでて」

 

 そう言うと悟手に持つ紙袋から数冊本を取り出す。

 

「それは……?」

 

「体術に関する理論書とヨガについてと、あと家で出来る健康法などなど……暇を潰せる読み物を、お見舞いにね」

 

 そういって悟が置いた本を手に取るリー。

 

「……ふむふむ。よしっ! ではさっそく、次回から病院食を一口百回噛んで食べることにしますっ!」

 

 『家で出来る健康法』……その一ページに書かれた内容を5倍ほど増して宣告するリーに苦笑いが零れる悟。

 

「……すみません、悟君……安静にしていないといけないとわかっていても……僕は体を動かす努力しか知らなくて……」

 

「……」

 

 リーの気持ちを何となく理解している悟は黙る。かつて後ろ向きに努力を重ねていた自分にリーが重なる。

 

「……まあ、誰かの言葉を借りるなら『ただ自分の為だけにする努力』を悪いという気はない……だが悪い……てね」

 

 しみじみと語る悟にリーは(変な貫禄がありますね……本当に年下なんですか悟君)と思う。

 

「自身の行く末が不明慮だと怖くて、無茶苦茶な努力をしがちだけどそれは自分を信じ切れていないからってことだと俺は理解している。リーは努力の天才だ! 周りにも配慮した努力が出来るって信じてる」

 

「努力の天才……しかし天才というなら君やネジ……のような」

 

「俺やネジだって万能じゃないし、人間の範疇は……出ていないはず。どんな忍術にも弱点があるように、人にも欠点がある。だからそれを補ってくれる誰かが人には必要なんだ。リーを必要としている人の為にも無茶な(・・・)努力は慎むようにっ!」

 

「僕を必要とする人……? 心当たりが……」

 

 ないと言いたげなリーに悟は天を仰ぐ。

 

「ガイさんだよっ! 言わなきゃわからんのかっ!」

 

「ガイ先生には欠点はありませんっ!」

 

「あるわっ! ありまくるから、お前が支えろって話っ! そのためにも安静にしててねって話ぃ!  たくっ真面目に語ってこっぱずかしいっ!!」

 

 顔に熱がたまり、手で顔を仰ぐ悟。仮面のせいでほぼ意味を成さない行動だが。

 

「コホンっ……それじゃあ、俺はまた別の人のお見舞いに行くから」

 

 そういって悟は立ち上がり、病室のドアに手をかける。

 

「お見舞いありがとうございました悟君。……悟君?」

 

 ドアに手をかけたまま、立ちすくむ悟をリーは不思議に思う。

 

「もしもだけど……」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

「もしも俺はリーが我愛羅と戦ったらこうなるって知ってて止めなかったっていったらどう思う……?」

 

「君は……何を……?」

 

「戦うのを止めて欲しかったですか?」

 

「……」

 

 お互いに目を合わせずに無言の時が少しすぎて……

 

「そうですね……僕があの時もしも悟君に『怪我をするから戦うな』と言われて提案を受けたら……

 

 

 

 

 

君の顔面を殴ってでもお断りします」

 

「……っ」

 

「どんな状況だろうと、戦わなければいけない時はあるんです。僕にとっては、我愛羅君との戦いがそうであったように。……なるほど、君にも随分と心配をかけてしまっていたということを痛感しましたよっ! だいじょーぶ、僕はこれから全力で安静にしますので、心配をせず他の方のお見舞いに行ってください!」

 

 そういうとリーは本を手に取り、顔を本に近づけ顔を隠す。

 

「……それじゃあ、お大事に」

 

 そういって悟はドアを引き、病室を後にした。

 

(いつか……悟君……君にとっても必要な人間に僕はなって見せますよ~っ!)

 

 そう硬く決意したリーは、全力で安静にすべく悟の持ち込んだ本を穴が開く勢いで読み漁った。

 

 

~~~~~~

 

「忍びってのは……ままならんもんだなぁ……」

 

「病室に来て早々何よ悟」

 

 ベッドで雑誌を読むテンテンの病室の床で悟は項垂れている。

 

「……なんつーか、俺も人の子だなって」

 

「そう? 割とバケモンでしょアンタ」

 

「……ひっでぇ……」

 

 お互いに軽口を言い合う仲に、先の悲劇をしっているからこそ、回避しないという選択を取った自分を責めている気持ちが幾分か軽くなる。

 

「……あんたは何でもかんでも気負いすぎんのよ。何? 私が怪我したことでも落ち込んでんの?」

 

「…………別に……」

 

 明らかに一段落ち込んだ様子を見せる悟に、テンテンは顔を引きつらせる。

 

「傲慢にもほどがあるわよ、アンタ。私が負けたのは実力不足だった私のせい。それ以上でもそれ以下でもないわ。落ち込んでる暇あったら、少しでも私を喜ばせなさいよ」

 

 そう言ったテンテンに悟は紙袋からお見舞いの品を取り出す。

 

「……中華まん……?」

 

「……手作り」

 

「そ、そう……。アンタがテンション低いとなんか調子狂うわね……ていうか病院に中華まんって……まあ、嬉しいけど……」

 

 少し顔を赤らめるテンテン。取りあえず中華まんを口にして、その美味しさから顔をほころばせているテンテンに更に悟は紙袋から巻物を取り出し手渡す。

 

「モグッ……ん、今度は何……?」

 

「禁術」

 

「っぶっはあ!!」

 

 あんまりな回答を聞いたテンテンは吹き出し、傷口に痛みが走りうずくまる。心配した悟が掌仙術をかける。

 

「変なこと言うなバカーっ!」

 

「いや、その……ごめん」

 

「あ~~ったくもう……。で、一応聞くけど内容は?」

 

「正確には会得難度Sランクの時空間忍術なんだけど、会得が難しすぎて禁術指定喰らったらしい。俺は時空間忍術はからっきしだから、テンテンならって……」

 

「アンタがどうやってそれを知ったとかはこの際気にしないけど……会得難度Sって……禁術をさらっと幼馴染に勧めないでよ……」

 

 そう言ってテンテンはやれやれと頭を振る。

 

「……そう言えばテンテンはどうやって八門を……八門も一応禁術なんだけど?」

 

 予選でのテンテンの戦いを思い出した悟は疑問を口にする。

 

「あ~それはガイ先生が、表蓮華の素質を見る時に軽く触りだけは教えてくれていて、でもリーは出来ても私は見込み薄だったの。でも実際悟の動きを見てると出来るとすごいんだろうな~って思って何とか一人で形に……」

 

 テンテンが説明している最中から悟は少し怒りの感情を露わにする。仮面で隠せど、幼馴染には感情は筒抜けである。

 

「えっアンタなんで怒ってんの?」

 

「ガイさん、テンテンが八門開けること自分は知らないって顔でこっち見てきてたのに……きっかけ教えてたのあの人じゃんかっ!」

 

 まあまあ、と悟をたしなめるテンテン。

 

「まあでも、負けたくないって思って実戦で使ってみたけど駄目ね。私は開門以上の開放は無理そうだし、反動もバカでかいし……。合ってないっていうガイ先生の言葉もよく分かるわ~」

 

 ホント反動キッツイ、といって悟に肩を「ん」と言って差し出すテンテン。悟はやれやれといった様子で肩をもみ始める。

 

「まあ、その禁術の巻物。暇つぶしにでも読んでみるわ。出来そうならやってみるし、駄目なら他の手段を探して強くなるだけね」

 

「ん、わかった。修行には俺もつきそうよ」

 

 そういった悟は「はいおしまい」と言ってテンテンの肩もみを終える。フイーッと息をついて肩を回すテンテンは思い出したかのように「あっ」と声を上げる。

 

「アンタヒナタちゃんと婚約してたって? 良いの? こんな他の女のところに来て……周りに浮気してるって思われるんじゃない? www」

 

「……この後ちゃんとヒナタの所にも見舞いに行くよ……。 それにたかが見舞い程度で浮気だのなんだの言われてたまるか」

 

「あっそう……ねえ何となくだけどさ……アンタ」

 

「……何?」

 

「ぶっちゃけ結婚する気ないでしょ? ヒナタちゃんと」

 

「……………っ……………………………何でそう思う?」

 

「そんな長い沈黙……まあ、理由らしい理由はないけどそうねぇ……幼馴染の勘よ!」

 

 そんな馬鹿なとジト目になる悟に、ニコッと笑顔を見せるテンテン。

 

「……話変えるけどテンテンはそういう話はないのか? 好きな人とか?」

 

「露骨に変えすぎよ……そうねぇ実は気になっている奴はいるのよね~」

 

 テンテンの回答に意外だと悟は驚く。

 

 

 

 

 

「ネジよ」

 

 

 

 

 

 悟はその中身にも驚くことになるのだが。

 

「……マジでいってんのか?」

 

「大マジ。別にゾッコンていうわけじゃないけどちょっと気になるって感じ、そうね何でって言うなら……

 

 

 

 

昔のアンタを見ているみたいでほっとけない……からかな」

 

「……そういう……まあ……うん、ああ~少し……理解した。……っはあ~~あ~~~……そういう所あるよな~テンテンさあ~……っ」

 

「へー意外。アンタ分かってくれるんだ。じゃあ私の将来の為にも! あのバカネジのねじ曲がった根性本選で叩きなおしてきてね♪」

 

「了解……何でこんな話してんだ……俺たち……」

 

 悟はそう言いながら椅子から立ち上がり「それじゃあお大事に」と言って病室を後にする。

 

「バイバーイ」

 

 と手を振ったテンテンの元気な声を背に悟はまた別の病室へと向かった。

 

 

~~~~~~

 

「悟さん……」

 

 病室に入った悟に声をかけるのは日向ハナビ。

 

「やあハナビ……ヒナタの調子は……」

 

「姉様、まだ目は覚まさないけど、今は容体も落ち着いています……時折、チャクラの流れが乱れて身体に悪影響を及ぼしているそうで、その時はとても苦しそうですが……」

 

 余りにも元気のないハナビの様子に、悟もどうにかしたいと思案するがこれといった解決策は思い浮かばない。

 

「そうか……大丈夫だ。ヒナタは良くなるよ絶対。それまでにはハナビも元気な顔を出来るようにしておこうな」

 

 仮面の奥で笑顔を作る悟。ハナビは白眼を使っていないが、悟はハナビの前では笑顔を絶やさないようにしている。

 

「一応見舞いの品、ここに置いておくな……ってこれ……」

 

 悟は持ち込んだ紙袋からぜんざいを取り出すが、既にお見舞いの品の数々の中にお汁粉が置かれていた。

 

(……? 誰かは知らんがダブったな)

 

 そう思いながらもぜんざいを置いた悟はそのまま静かに病室を出ようとする。しかし

 

「おっと……すまない。おお……悟か久しぶりだな」

 

 出入り口で男性と接触。相手は日向ヒアシであった。

 

「ヒアシさん……ご無沙汰しております。その……」

 

「ふむ、お前が心配していることを当てようか……」

 

 唐突なヒアシの提案に悟は生返事をすることしかできない。

 

「私はどちらを支持するか……であろう? 娘の婚約者であるお前か、日向の名を持つネジか」

 

(……別にそういうことじゃなくて、娘さんが大怪我しているから貴方がまいってないか心配しただけなんだけど……)

 

 この人、弟のヒザシさんに比べて天然の気があるよな、あと人の話を聞かない。っと悟は心の中で思う。

 

「私は中忍試験では悟の応援をするつもりだ」

 

「はあ、それには何か理由でも……?」

 

「立場上……という建前があるが正直に言えば……娘をこんなにした輩の応援など出来るはずもないっ!」

 

「それもそうですね」(そりゃそうか。つーかアンタも大概ヒナタに強く当たってることは自覚してください)

 

 仮面の奥での作り笑顔は余りにも不自然だがヒアシに気づかれることはない。

 

「父さま、あまり大きな声を出さないでください……病室です」

 

「うむ、そうだな……すまないハナビ。だがな悟よ、ネジについては我々も手をこまねいておる。あやつほど日向の才能に祝福された者もいないであろう。……ヒザシと比べてもな」

 

「まあ、確かにそうれもそうですね。なまじ力があるせいで、力が全てと思うのも無理はないと思います。……ヒザシさんを見ていれば尚更……」

 

 悟の一言に、ヒアシは唸る。宗家と分家の格差というものはかつて必要とされていたことであり、決して意味のないルールであるわけではない。しかし昔の通例ということだけで盲信してきたことも事実である。それを痛感しているヒアシは『力』というもののままならなさを感じる。

 

「名声、富、血継限界……それらを持つというのも……苦労するな。悟よどうか、ネジのことよろしく頼む」

 

「ええまあ……幼馴染からも頼まれていますし、俺自身。今のネジを放っておくきはさらっさらないですよ」

 

 悟の言葉は力強く響く。それに安心したのかヒアシはふうっとため息をついて肩の力を抜く。そして

 

「ハナビ、お前もあまり根を詰めて病室に通うのは良くない。悟よ、ハナビを外に連れ出してはくれんか?」

 

「グッ……でも姉様が寝込んでいるのに……」

 

「承知しました、お義父さん(・・・・・)。ほらハナビ、気分転換に外で組手でもしようか」

 

「……っわかりました。父さま、姉さまをどうか見ていてください」

 

「ああ、わかっている」

 

 そうして悟はハナビの手を取り病室から出ていく。

 

「……もしもあの時、私の目を差し出していたなら……」

 

 運命は今と違っていたのか……ヒアシは過去の後悔を拭えぬまま、娘のベッドの隣に座り込んだ。

 

~~~~~~

 

 外に出た悟たちは、公開演習場へと向かう。その途中。

 

「おっ……悟じゃねえか……その子は、ヒナタの妹か?」

 

 ハナビは軽く頭を下げる。

 

「ああ、キバか。お前、予選での怪我の方は良いのか?」

 

「まあ、俺は怪我ッつーか。無理やり気絶させられたからそこまで外傷はねーし。ああ、赤丸……やっぱ悟は嫌かぁ」

 

 軽く挨拶をするキバと悟。その瞬間でも赤丸は悟に怯え、キバの服の中に潜る。

 

「可愛い! ワンちゃん触ってもいいですか!」

 

 目を輝かせるハナビにキバは屈んで目線を合わせる。

 

「おう、いいぞ! 赤丸も悟以外の奴なら歓迎だからな!」

 

「…………疎外感」

 

 微笑ましい光景の中、地味に傷つく悟。

 

「そう言えば悟はあれか、ヒナタの見舞いの帰りか?」

 

「ああ、そうだ。で帰りに軽く体を動かそうかなってハナビと公開演習場にでも……」

 

「お前、仮にも本選に出る奴が公開演習場に行く気かよ……ちゃんと手続きして演習場借りてこい」

 

「まあ、ごもっともで……」

 

 赤丸のため、キバと少し離れて会話する悟に声をかける人物が1人。

 

「おや、悟君。施設の外で会うとは珍しいですね」

 

(……って滅茶苦茶美人の姉ちゃんじゃねえか!! 悟の奴ヒナタの婚約者の癖にどういう関係だぁ、ああ?!)

 

(すっごい美人な人……悟さんこういう人が好みなのかな……)

 

 その白い肌の女性が親しそうに悟に声をかけることで、嫉妬が2つ生まれる。

 

「ああ、白雪。今同期のお見舞いに行ってきたところで、帰りにちょっと体を動かそうかなって。白雪は?」

 

「僕ですか? 僕は施設のガタが来ている所を修理してもらうために、依頼を出しに行ってました。まあ、只のお使いですよ」

 

 クスクスと談笑して笑う白はそれだけで絵になる。周囲の男性の注目を集める白に悟は少し咳ばらいをする。

 

「そういえば、お互いに知らないどうしだよな。えーとこの二人は俺の知り合いの犬塚キバと日向ハナビ。っでこいつは白雪、俺の施設の……同業者? かな」

 

「ふふ、どうぞよろしくお願いしますね」

 

「オッス……えーと!! よろしくっす!!!」

 

「はい、よろしくお願いします。白雪さん」

 

 珍しい組み合わせが出来たところで、悟は思い着く。

 

「せっかくなら白雪も演習場に来るか? ちゃんと演習場も借りて体動かしたいからな」

 

「良いんですか? 確かに僕も暇している所ですし、同じく少し体を動かしたい気分ですからね……」

 

「悟っ! 俺もついてって良いよな! つーか駄目ッていわれてもついてくぞ!」

 

「……キバさんテンション高い。男の人って美人に弱いのって変わらないんだ……」

 

 こうして悟たちは演習場へと向かった。

 

~~~~~~

 

 里の中心から少し離れた演習場。

 

「通牙っ!」

 

「やっぱり威力はあるよな、通牙。 ちょっと真似してみるかな……」

 

 螺旋回転をする体当たり「通牙」を素手で弾きながら考え事をする悟に

 

「てめぇ!! もうちょい本気出せや!!」

 

 何度も通牙を繰り出すキバ。

 

 そんな二人とは少し離れた位置で組手をするハナビと白。

 

「白雪さんって忍者……じゃないんですか? 動きに無駄が全くないですよ?」

 

「いやあ、僕のこれは護身術を教えてくれる大人がいるので……。忍術とかはからっきしです……ふふふ」

 

 息を切らさず軽く組手の相手をする白にハナビは驚く。自身の動きに対してまるで子供をあやすかのように受け流す白にハナビは世界の広さを痛感した。

 

「あの~白雪さんって悟さんと同じ家に住んでいるんですよね……?」

 

「ええまあ、そうですよ?」

 

「……実は悟さんのことが好きだったりとかは……」

 

 内緒話のように声を静めるハナビに付き添い白も声を潜める。その内容は随分と可愛らしいもので、白はつい笑みをこぼす。

 

「それはどうでしょうか? ふふっ確かに悟君は頼りになりますし、僕の目から見ても魅力的に映りますからね」

 

 意地悪をするかのような白の発言に、本気で心配するハナビ。

 

(こんな美人の人相手……勝ち目なんて……っ!)

 

「でも、僕には別に好きな人がいるので」

 

 からかいすぎて涙目になりかけているハナビを不憫に思い、白はさらっと真実を告白する。

 

 

 

 

(……何話してんだろう……流石に女子の会話を盗み聞きはしないけど気になるなぁ……)

 

「おい、よそ見すんなっ! 喰らえ通牙ああああ!! あああ、クッソぉ何で片手で受け流せんだよっ!!」

 

 

 

 

「悟君を好きになるのにはそれなりに覚悟が必要そうですが……ハナビちゃんなら何となく大丈夫そうですね」

 

「そ、そうですか? 悟さんは姉さまと婚約……はっ!?」

 

 咄嗟に口を塞ぐハナビ。

 

「……っ今のは聞かなかったことにしますが、悟君は貴方のことを多分大切に思っていますよ」

 

 ハナビのカミングアウトに一瞬余裕を崩されそうになる白だが、気を持ち直しハナビを励ます。

 

「そうですか……?」

 

「まあ、悟君はどちらかと言えば恋愛に関しての意識は今は皆無だと思うので長い目で見る必要があると思います……。頑張ってくださいハナビちゃん」

 

「……っはい、頑張ります!!」

 

 女性の秘密の会話は和やかに終わる。

 

 

 

「なあ、四脚の術のやり方とかないのか?」

 

「秘術の内容バラすわけねーだろっ! お前ナルト並みに馬鹿か!!」

 

 男性の会話のバカ騒ぎは続いた。

 

 

 

 

 

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