目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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54:才が投げる賽

<日向ネジ>

 

 黙雷悟、奴が俺の目の前に現れたのは何時の頃からか。直接相対することは少なくとも奴はいつも目障りな存在であった。

 

 何時の頃か日向の屋敷に出入りし、何時の頃か父上から柔拳の手ほどきを得……何時の頃か家の者に認められていた。

 

 最初は、皆警戒していたはずだ。齢3歳児がまさか宗家の人間の誘拐を阻止するなどあり得るはずもない。だが奴は……。

 

 もし本当に奴が現場に居合わせたとして何ができた? ただヒアシ様の邪魔になっていただけではないのか? 父上が目を失う原因は……奴にあったのではないのか、そんな考えが頭にこびりついて離れない。

 

 確かめようもないが、父上は目を失うばかりか本格的にヒアシ様の影武者扱いを受け分家としての屈辱を受け続けている事実がある。

 

 公には日向ヒアシは目を失ったことになっているからだ。日向のお家として業務では父上が駆り出され、ヒアシ様は変装し御つきの者として安全を確保している。

 

 ……実際、記録にはないが幾度も命を狙われることがあったらしい。白眼のない父上はその度に怪我を負う。それを知らぬ悟がマヌケにも柔拳を教わりに来る様は俺の腹を煮えくり返らせる。日向ナツに「ヒザシ様は用事があるから」と追い返される奴を見るたび、何度殺してやりたいと思ったことか。

 

 日が経ち奴は、ハナビ様をも助けた。迷い込んだ森で賊に襲われたハナビ様を、右手に重度の火傷を負ってまで助けた奴はどんどん日向の者を認めさせていく。……かつては人一倍奴を警戒していた日向ナツまでもが何時しか、ヒナタ様やハナビ様を安心して預けるようにもなっていた。

 

 ……結局は力なのであろう。他者を納得させるだけの力さえあれば、全てを掌握できる。奴は力を証明し続けていた、だから認められた。

 

 ヒアシ様は、いや日向そのものが分家の父上の才能を恐れた。古き体制を変えうる存在、出る釘が打たれたのだ。そして父上は屈服した、日向の血という力に。

 

 

 

 俺はそんなクソったれな運命には従わない、力なき弱者どものために強き者が犠牲になる必要なんてどこにある?

 

 

 

 なのに……

 

 

 『……これ以上やるなら俺が相手だ……っ』

 

 

 奴は常に、弱者を守るために闘う。己も傷つき、苦しんでいるはずなのに。何がそこまで奴を駆り立てる? 

 

 本選で奴はその理由を教えると言っていた……フンッ面白い。

 

 

 待っていろ、黙雷悟……っ。力こそ全てだ、勝者こそ正義だ!! 全てを屈服させ、究極の個として俺が火影になり、声を上げるだけの無能どもを根絶やしにしてみせる。

 

 他者との無駄な繋がりが枷であることを俺が貴様に見せつけてやろうっ!!

 

 

~~~~~~

<黙雷悟>

 

 ネジと接触する機会は殆んどなかった。過去に対面したのも、ヒナタとネジの組手に割って入ったあの時ぐらいか。それ以降俺を刺すような視線が続いた。

 

 ネジからしたら俺はどのように見えていたのだろう。俺が誘拐事件に関与しなければ、結果が良くなっていた可能性というのはきっと事情を知らない第三者からすれば当然思いつくことだ。

 

 俺だけが知っていた未来の出来事であるヒザシさんの死。それを回避したがゆえに、ネジは日向の闇を父を通して見続けてしまったのかもしれない。

 

 ネジは「力が全て」だと言っていた。……力とは? ヒアシさんが言っていた、富や名声……そして血継限界……。力というものは数多くある。

 

 ネジの言う力とは恐らく他者を屈服させるモノのこと全てを示しているはずだ。……日向の分家に刻まれる額の呪印のような。

 

 ……力さえあれば……とは、俺も何度も考えたことだ。でもある時気づいた。自分には限界があると、どんなに忍術を体術を幻術を得ようが手の届かない命があると。

 

 だからこそ、三代目やカカシさんが俺の存在を広めようとしていることにも納得がいった。俺の力は普通ではない、誰かに狙われる可能性がある。だからこそ、俺にとっての繋がりを増やすように彼らは仕向けた。

 

 今、ネジの繋がりは細く少ないのだろう。それでも彼を心配する人間はいる。テンテンや彼の父親のように。

 

 ……繋がりなんてものはそう簡単に切れるものではない。切ったつもりでも見えないどこかで繋がっているもんだ。それをネジに自覚させることは俺の役目……いややりたいことだ。

 

 ……お互いになまじ力があり、天才と呼ばれるもの同士だ。俺の方が、実年齢が重なっている分余計なおせっかいを焼いてやろう。

 

 

 

 

 

「何とか新術……というか新モードも形になったな……」

 

「まさか、私の投擲全てを見切るなんて……それこそ白眼みたいねそれ(・・)

 

 演習場での修行。退院明けで俺の修行に付き合ってくれるテンテンには感謝している。

 

「でも無茶苦茶集中しないと、維持ができないし……使いどころを考えないとな」

 

「……どう、ネジには勝てそう? ネジの班員の私が悟にこんな事聞くのも変な感じだけど」

 

 少し不安そうにするテンテン。ただ勝つだけなら、恐らく問題はない。むしろ

 

「へん、どうやってあの天才の心をバッキバッキにしてやるか今から楽しみなぐらいだよ」

 

 示さなければならない。彼が見えていないものを。

 

「そういえば当日は施設の人も見に来るんでしょ? 張り切らないとね!」

 

「わざわざ、施設を空けてみんなで来ることないのになぁ。恥ずかしい……」

 

「それだけ、アンタの晴れ姿を見たいってことでしょ? マリエさんも悟のこと大事に思っているのは私でもわかるし、いいとこ見せて安心させてあげなさいよ!」

 

「……うっす、がんばります……」

 

 テンテンに背中をバチンと叩かれ気合を入れられる。さてと今日はもう帰ろう。

 

 

~~~~~~

 

 

 夕方、施設に帰りマリエさんの部屋の扉をノックする。

 

「たくっ……何時まで俺と顔を合わせない気ですか……明後日には本選の会場に来るんでしょう? ほら、ドアを開けて~♪」

 

 俺の呼びかけに答えるように、ドアが少し開く。隙間からマリエさんが顔を覗かせる。

 

「……悟ちゃん、私たち(・・・)のこと気にしていないの?」

 

「は? 気にしていますよ、心配もしていますし、どうにかしたいとも思ってます。でもそれは今じゃない。マリエさんがもっと俺に心を開いてくれるように頑張ってからです」

 

「……はあ~何時から私たちの立場は逆転したのかしら~。昔は悟ちゃんの心を開かせようと必死だったのに気づけば……」

 

「何だったら下のマリエさんにも会わせてくださいよ、色々話したいこととか……」

 

「それは絶対ダメ!! ただでさえこの間貴方が下に行ったせいで、彼女若干覚醒状態になっているのに……あまり刺激しないで頂戴」

 

 私たちの事情は本当に深刻なんだから。そういうマリエさんは酷く辛そうだ。

 

「……わかりました。でも俺は諦めませんよ? いつか必ず2人をホントの意味で笑顔にして見せますからね」

 

「わかったわよ、もう……。悟ちゃん、応援しているわ。あまり私を心配させないでね……」

 

「………………なるべく善処します」

 

「そこははっきりと、はいって答えてくれたら私うれしかったのに~……ふふふっ」

 

 お互いにこうやって話し合うだけでどれだけ心が救われるか。同じ思いをマリエさんにも感じていて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりあの2人が笑顔でないとこの施設はしまりが悪いよな」

 

「ええ、そうですね、新参者の僕たちもそう思いますよウルシさん。ね? 桃さん」

 

「……まあ、あいつらが辛気臭えとガキどもにもめんどくせぇ影響があるからな……」

 

 

 

 明日はゆっくり体を休めよう。明後日はネジとの本選。

 

<黙>

 

 そして木ノ葉崩しが待っている。

 

 

 

 

 

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