目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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58:大切なモノ

<三人称>

 

 本選会場では、うちはサスケの千鳥により怪我を負った我愛羅が動揺している。

 

(そろそろか……っ)

 

 黙雷悟が身構えた瞬間。会場全体を対象に幻術が行使される。木ノ葉の忍び達は幻術返しにより、術を跳ねのけ臨戦態勢を取る。

 

 一瞬悟は施設の子どもたちへと目線を向ける。

 

(ウルシさん……は何とか幻術返し出来てるか、流石だ)

 

 それを確認した悟は、誰よりも先に会場の屋根へと移動し潜む。

 

 会場が戦場へと変わる中、カカシやガイと言った手練れたちは敵を減らし、ナルトとサクラへと指示を出している。

 

(サスケは変容した我愛羅を追った……あっちはナルト達に任せれば問題ない。あとは)

 

 風影が三代目火影ヒルゼンを連れ屋根へと上がってきたのを確認した悟は生門を開き、雷遁チャクラモードを発動する。

 

「……飛雷脚!!」

 

 風影めがけて繰り出したその攻撃は、すんでのところで躱される。ヒルゼンの拘束を解いた悟に周囲にいる暗部たちは驚きをしめす。四隅に配備している4人の音の忍び達は様子を伺う。

 

「あら……お前は……また私の前に立つとは、随分と勇気があるのね。それともただの蛮勇かしら?」

 

「いいや、実際怖いけどそんなこといってられないだけだ」

 

 風影は変装を解きながら、悟へと殺気を飛ばす。

 

(……前回での接敵が噓だと思えるぐらいの殺気……気は抜けない……!)

 

「……大蛇丸、貴様か……」

 

 ヒルゼンは目線を変装を解いた大蛇丸へと向け呟く。

 

 膠着した状況になり、一瞬静まり返ったその瞬間

 

 

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 

 

 奇妙な轟音が響く。まるで獣の咆哮のように聞こえるそれは会場から遠く離れた施設「蒼い鳥」方面から聞こえる。

 

 一瞬それに気を取られた悟をヒルゼンが蹴り飛ばす。それを合図のように大蛇丸の指示が飛び、大蛇丸とヒルゼンは「忍法・四紫炎陣」により囲われる。

 

「っ三代目!! 何を……!?」

 

「悟よ、お主がいるべきはここではない……施設へと向かえ!」

 

 悟の疑問にヒルゼンは羽織を脱ぎ捨て、忍び装束になり指示を出す。

 

「だけどこのままじゃ……!」

 

 三代目が死ぬ。その未来を知る悟の感情をくみ取ったのかヒルゼンは優しい笑顔をむけ語りかける。

 

「心配するでない……ワシは火影じゃ。この里を……皆を守るために命を張る覚悟などとうに出来ておる。……三代目火影の名において第零班黙雷悟に命ずる!!」

 

 ヒルゼンは息を吸い声を張り上げる。

 

「蒼鳥マリエを……救え!!!!」

 

「っ……!! ……はい……必ず戻ります! 三代目どうか、それまでご無事で……っ!」

 

 動揺しながらも悟は雷遁チャクラモードによりその場を離れる。

 

「蒼鳥マリエ……確か『国落とし』とも呼ばれた忍びだったかしら……あれ(・・)、壊れたと聞いていたけど?」

 

「ふん、まだあやつらの未来は決まっておらぬわ。じゃが大蛇丸よ、貴様の未来は……死じゃ」

 

「老いましたか……随分とずれたことを言いますね、猿飛先生。……今や私は貴方をも越える!」  

 

 至高の忍び同士の戦いの火ぶたが切られる。

 

 

~~~~~~

 

 中忍試験会場にも轟く咆哮に反応を示すものが2人

 

「おい、カカシぃ!! この音はまさか……」

 

「ああ、そのまさかだねっと!!」

 

 敵と交戦しながら、ガイとカカシは互いの嫌な予感を擦り合わせる。

 

「どうする! 俺たちが行かなければ到底止めようがないぞ!」

 

「いや、この音量……恐らくマリエは元に戻っている(・・・・・・・)……俺たちでも無理だ! それにここを空ける訳にはいかない」

 

「っどうするカカシぃ!?」

 

 焦るカカシが会場の屋根を見上げる。三代目と大蛇丸が結界に覆われる中、その屋根から飛び出る雷光が一つ……。その光を確認したカカシは苦し紛れの笑みを浮かべる。

 

「……まっここは信じるしかないでしょ。マリエと……あの子を!」

 

「っ~~~~~! クソぉ悟よ!! 本当に頼むぞぉ!!!」

 

 己の不甲斐なさを悔やむかのように敵をなぎ倒すガイを尻目にカカシは昔をふと思い出す。

 

(あの雨の日……マリエが拾った命が今マリエのために……っ頼んだよ……悟)

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 黙雷悟は屋根を高速で渡り飛び、施設へと急ぐ。その方角では、岩で出来た巨人が暴れ狂っている。

 

(あれが……マリエさんなのか!?)

 

(……僕が知るマリエさんの暴走形態より、ずいぶんとデカい……15メートルはあるね)

 

(どうして……!? 白や再不斬たちが向かっているはず……こんなにも早く接敵なんてするはずもないし……!)

 

(マリエさんについて僕たちがまだ知らない情報があったということか……クソっ……)

 

 黙の認識ではマリエは敵との接触により暴走してしまうとなっていた。いつも彼女は誰かを守るために敵の前に立ち、感情を失くしていた。まだ敵が内部まで攻め込んできていないはずなのに暴走し始めているマリエに黙は動揺を隠せない。

 

 黙の思考が停まる中、雷は影分身を10体出し全員で雷遁チャクラモードを発動させる。

 

(雷……! 何をしている! チャクラを無駄に使うなっ!)

 

(考えててもマリエさんがああなった以上、周囲に被害は出させれないだろ?! 建物はどうしようもなくても、周囲の人間は絶対にマリエさんに傷つけさせられない!)

 

 影分身体はチャクラ感知により里に散らばる民間人を特定し、避難を促す。

 

 

「「「「今、木ノ葉は戦闘状態です!! 一般の方々は避難をしてください!!」」」」

 

 

 素早く動けない老人や怪我人は悟が抱え、施設周囲の人間を避難所へと大急ぎで誘導する。攻めてくる忍び達は雷遁で牽制し、避難を優先する。

 

(っ! 早く早く早く!!)

 

 施設周辺は人が少ないが、零ではない。異変を感じて家屋に逃げる子どもとその親を悟は窓を飛雷脚でぶち破り抱え込む。

 

「説明している暇は無いです! ゴメンナサイ!!」

 

 そういって窓周辺をさらにぶち壊して、屋根を駆ける。後方では先までいた家屋が巨人の手によって崩壊している場面が映る。

 

「ひいいいい!!」

 

 悟は悲鳴をあげる抱えている女性とその子どもを避難所になっている病院へと直送する。

 

「……! こちらへ!!」

 

 病院の出入り口では、年老いた忍びが誘導を行っていた。悟を確認したその忍びは声を出し誘導する。

 

「怪我人はそのまま中へ、健康な方は外の広場へと連れて行ってください」

 

「っはい!」

 

 忍びの誘導にしたがい、避難を行う悟たちがなだれ込むように病院へと駆けつける。

 

「怪我人です!!」「乱暴でごめんなさい!」「……飼い犬はどこに連れていけばいいんですかぁ!!」

 

 そう叫ぶ影分身の悟たちに年老いた忍びはあっけに取られる。

 

「……こりゃあ、ワシも負けておられんですな」

 

 

~~~~~~

 

 

 施設周辺の見晴らしのいい大通り。岩の巨人となって暴れているマリエは群がる敵の忍びを一蹴し、途中からあらわれた巨大な口寄せ蛇を殴打し殲滅していく。

 

 人気がない大通りの先では、悟が立ちすくみその様子を見ていた。

 

(……恐らくだが、あれが本来のマリエさんなんだろうね……)

 

 黙り込んでいた黙が語り始める。

 

(僕が今まで見てきたマリエさんの暴走は半身(・・)の状態だったんだ……それでもかなり厄介で止めようがなかったのに……)

 

(なんとなく俺にも覚えがある……あの時、うちはの居住区で動けない俺の近くで暴れていたのも多分マリエさんだったんだ。……俺を心配して見守っていたけど、暗部が俺に止めをさそうとして……)

 

 暴走する彼女を眺める悟は拳を握る。

 

(あの時はカカシさんとガイさん二人係で止めていた……)

 

 かつて八門を解放したガイの昼虎とカカシの雷獣走りの術によって動きを止めたであろう暴走を、今悟は1人でどうにかするしかない状況に立っている。

 

 分身たちが避難を進める中、1人悩む悟に声をかける人物が2人。

 

「っ悟君! あれはマリエさんなんですか?! 施設に近づいたとたん中からあれが飛び出てきて……」

 

「厄介だな……あれが噂に聞く『国落とし』の本来の力か……」

 

 白と再不斬だ。2人とも軽く怪我をしているが、深刻ではなさそうである。

 

「……2人とも……お願いだ。周辺の人の避難を頼みたい。あれはマリエさんだけど……今は正気を失っているみたいだ」

 

「そんな……悟君は1人でどうにかするつもりですか!? なら僕たちも手伝いますよ、ねっ再不斬さん!」

 

「……いや、俺たちは避難誘導に徹するぞ白」

 

 白の提案に再不斬が異を唱える。白が疑問を口にすると再不斬は悟を見る。

 

「……あいつを止められるのは、土遁に有効な雷遁を使える小僧が確率として高い……それに見ろ、敵があの巨人に群がっているが土遁が自動で迎撃している……俺たちが手を出しても恐らく焼け石に水だ……」

 

「っそれでも何か僕たちにも出来ることが!!」

 

「白、状況を見ろ! 今は小僧のチャクラ消費を抑えるために避難活動を俺たちが替わるのが最善手だ、感情に流されるな……!」

 

 再不斬の判断に、白が迷いを示していると悟は自身の仮面を外し白へと差し出す。

 

「白……これを預かっていてくれ、多分着けてたら壊しちゃいそうだから……マリエさんから貰った大事なものだ……」

 

「っ……わかりました……悟君、約束してください!! 絶対に2人で戻ってきてください……無事に……絶対にっ!!!」

 

「……俺もこの短い間だが、施設でマリエの手伝いをしているのは……楽しいと思えた……。頼んだぞ、悟!!」

 

 白と再不斬はそのまま、飛びあがり周囲の避難を進める。 1人素顔をさらし、チャクラを練り続ける悟は瞳を閉じて集中を深めていく。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 避難所となっている病院では敵が攻め込んできて戦闘が起き始めている。

 

「水遁水龍弾の術!!」

 

 老忍者の術が敵を蹴散らす中、病院内へと忍びが1人舞い込もうとする。

 

「しまった……!」

 

 老忍者が振り向くその先、侵入を試みた忍びは大きく吹き飛ばされ壁へと叩きつけられる。

 

「おじさん、僕も手伝うよ!!」

 

 そう言うのは骨折の怪我で入院していたチョウジ。包帯を巻きながらも片腕を肥大化させて敵を殴りぬけていた。

 

「助かります、今は一刻を争う……お互い全力を尽くしましょうぞ!」

 

 他の木ノ葉の忍びが応戦し戦場と化した現場に、不意に病院全体を覆う様に幾つもの氷で出来た鏡が出現する。

 

「これって……うわあ!!」

 

 チョウジがその鏡に気を取られた隙を狙い敵がクナイを突き立ててくるが

 

 

 

 その忍びは勢いを失くしてその場で倒れ伏す。よく見れば首筋には千本が刺さっている。

 

 

 

「びっくりしたなぁもう~って君は……」

 

 

 チョウジの目の前には黙雷悟の仮面を着けた人物が千本を構え立っていた。

 

「……悟ぅ? 君ってこんなきれいな術も使えたの?」

 

 服装やら体格やらが色々違うにもかかわらず、チョウジはその人物を悟と呼ぶ。老忍者は先ほどまで避難活動をしていた忍びの面だと認識する。

 

「……君は……木ノ葉の味方ですな?」

 

「……ええ、僕は今『黙雷悟』として木ノ葉の味方をします。……この力にかけて、全力でここを死守します!!」

 

 そういうと悟を名乗る人物は、消えるように移動をして辺り一帯の敵へと飛び攻撃を始める。

 

「流石悟だなぁ~。よ~し僕も負けてられないぞう!!」

 

 そう言って張り切るチョウジに老忍びは

 

「ええ、彼は『黙雷悟』……そういうことにしておきましょうか」

 

 と賛成の意を示す。

 

 傍らで避難を誘導する再不斬は呟く。

 

「あいつ……熱くなりやがって……最近後先考えなくなってやがるな」

 

 それでもそう言う顔には、笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

『貴方のことは、ちゃんと私が守って見せる。だから泣かないで悟ちゃん』

 

 

 

 黙は何度も見たその光景を思い出す。

 

 

 木ノ葉が襲撃を受けたその日。彼が何度も繰り返した『その日』にマリエはそう語り、敵へと向かっていった。時には自分を守るために。時には施設の子どもを守るために。時には民間人を助けるために。

 

 

 そうして彼女はいつも精神に異変をきたし、暴走してしまっていた。……その後『あの男』が現れ暴走を終えて気を失っている彼女にクナイを突き立てる。

 

 

『こ奴は木ノ葉の不穏分子である。皆も見たであろう、暴れ狂うこ奴の姿を……今ここで処刑せねばならぬ』

 

 

 

 もう

 

 

 

 そんな光景を見るのは……沢山だ……っ!

 

 

 

 

(雷……僕は覚悟を決めたよ)

 

 暴れる巨人を見据え、集中する悟同士の会話が始まる。

 

(今ここで、マリエさんを止められるのは僕たちしかいない……例えこの身が朽ち果てようとも……今回(・・)こそは彼女を助けてみせる……っ!)

 

(やっと覚悟が決まったのか黙。年上なんだからもう少しシャキッとしてくれよな)

 

(……想定外のことが起きても、意外に君の方がしっかりしているようだね雷。君も覚悟はいいかい?)

 

(愚問だな……マリエさんを助けるためなら、何だってしてやるさ)

 

 最後の自身の影分身が術を解き、チャクラと情報が流れてくる。

 

「避難活動は終わった……マリエさんによる人に対しての被害は深刻じゃない……後は」

 

(彼女を止めるよ……雷)

 

 目を見開き、その緑の両目で岩の巨人を捉える。

 

(全力の一撃でマリエさんをあの岩でできた巨体から引きずり出すよ。恐らくあの術は土遁・岩状鎧武(がんじょうがいむ)……マリエさんを核としてチャクラが巡るあの巨人は土遁を扱い地形を味方につける、範囲に入れば僕たちも自動で攻撃対象だ。あれから引きずり出せばマリエさんは大半のチャクラを失い暴走を止められるはず……)

 

(岩状手腕の発展形……術1つでここまでの規模になるなんて、マリエさんは半端ないな……。だけどあの巨体からマリエさんがどこにいるか特定できるのか?)

 

(問題ない……僕が力を貸す。君は全力の一撃を放つことに集中して、雷!)

 

(了解!)

 

「八門遁甲……第六景門……開!!」

 

 今開けることが出来る最大門を解放する悟。そして

 

「コントロールに失敗したら多分死ぬけど、今はやるしかない」

 

 あふれる膨大なチャクラを、雷遁チャクラへの変換を始める。

 

 ネジとの戦いで見せた雷眼チャクラモードは第三生門まで開き、強化部位も目や足に集中することで行使を可能にしていた。

 

 現在、第六景門を開きその全てのチャクラを雷遁チャクラモードへと充てている。暴れ狂うチャクラが、一部の血管を破り、腕や足からは流血が始まる。

 

「景門……でも……本気で動けば……反動が重いのに……それ……でチャクラモードは……無理があるなぁ!!」

 

 口から漏れ出る弱音をかき消すように唸り力を溜める。鼻からも血を滴らせ始める悟は痛みにコントロールを失いかける。

 

(しまった……!!)

 

 暴走し始めるかと思えたチャクラは何とか安定を保つ。

 

(っ……チャクラコントロールができるの君だけじゃない、僕だって手伝うさ……!)

 

 コントロールの綻びが生じそうな部分に対して黙がフォローを入れる。黙の声が辛そうであることからその負担がうかがい知れる。

 

(無茶すんなよ、黙っ!)

 

(お互いが無茶しなきゃ、いけないだろ? 僕たちは今や2人で1人、全力を尽くすまでだ!)

 

 次第に渦巻く雷光が収まり安定の兆しを見せる。しかし

 

 

 

 

 

 不意に悟へと奇襲をかける忍。

 

 

 

 

 

 

 悟がそれを認識する前に、水龍が忍を穿つ。

 

 

「……っ何が……?」

 

 

「隙を晒しすぎだ……とは流石に言えねえな……お前は集中しろ、俺が守ってやる」

 

 

 現れた再不斬は周囲の家屋から調達した出刃包丁を構える。

 

「お前を狙って辺りに敵が潜んでやがる……だがまあ、安心しな。首切り包丁よりランクは随分と下がるが俺も最近はこっちの包丁も使い慣れているからな」

 

 冗談をいう再不斬は霧隠れの術を使用して悟が周辺を隠し、それを合図にするかのように周囲で金属がぶつかる音が響く。

 

 

 

 戦闘音を聞きながらも、髪を逆立たせチャクラモードを安定させる悟は歯を食いしばる。そして

 

 

「成功だ……言うなら雷神チャクラモード……少しでも油断したら、身体が物理的に爆ぜそうだ……ぜっ」

 

(長くは保てない……! 雷、準備を!)

 

 

 全身を纏う緑の雷光は高密度の雷遁チャクラで形成されている。再不斬にも、もはやこのチャクラの壁を突き抜ける攻撃は存在しえないと思わせる程に圧倒的なその力を保ち、悟は低い姿勢になり、両手を前に着く。

 

(距離は目測1キロぐらい……スピードに『目』が追い付かないが……)

 

(大丈夫『目』は僕が用意する……マリエさん目掛けて後は……)

 

 

 

 

 

 

 突き進むだけだ

 

 

 

 

 

 霧のなか、誰にも気がつかれないで黙雷悟の目に朱い光が宿る。

 

 

 

 

 

 そして大地を蹴り飛び出た瞬間、周囲の家屋や屋台を衝撃波で吹き飛ばし霧を晴らす。

 

 あまりの衝撃に再不斬が崩れる家屋に吹き飛ばされ叩きつけられながらも叫ぶ。

 

「いけぇええ! 小僧!!」

 

 

 

 黙雷悟の視界は、辺りを認識している。超越したスピードで移動しているのにも関わらず、目は周囲を確認し目標を真っ直ぐに捉える。

 

(まるで時の流れが遅くなったかのような……それにこの目に映るものは……チャクラ(・・・・)なのか?)

 

 悟の視界に映るのはチャクラの流れ、そして色。捉える岩の巨人の胸骨の先に人型のチャクラの塊を見る。

 

(あそこに……マリエさんが……!)

 

 悟がマリエの所在を確認した瞬間に、目の前巨大なに石つぶてが降り注ぐ。

 

(土遁による自動反撃だ! 僕たちの膨大なチャクラに反応している、避けて!!)

 

「……っ……オラあああ!!」

 

 大通りを塞ぐ勢いで降り注ぐ岩の隙間を閃光のごとくすり抜け、勢いをそのままに岩の巨体へと接近する悟。

 

 岩の巨人はその巨大な腕を構え、チャクラを収束させている。手の間では巨大な立方体のブロックの様な力場が発生し、悟の目にチャクラの色を見せる。

 

(三つのチャクラの質が一つに……!? あんなのが発射されたら、里が粉微塵になるぞ!)  

 

(止めるんだ、雷!!!!)

 

 

 巨人の足元へとたどり着いた悟は大きく踏ん張る。地面を砕きながら滑り、巨人の胸元目掛け跳躍する。

 

 

(少しでも威力を……技借りるぞ、キバぁ!!)

 

 

 

 

 

 

 

「通牙ぁあああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 雷をも凌ぐその螺旋の一撃は巨人を穿ち、その巨体を少し浮かせるほど。順調に岩を砕いていたその一撃はしかし、次第に衰えを見せる。

 

 巨人が術の行使をやめ、螺旋回転する悟を両手で掴みつぶそうとしているからだ。

 

 回転は岩の手を砕きながらも、威力を削られる。

 

(このままじゃあ、威力が足りない……!)

 

 驚異的なまでの岩の再生スピードと、頑丈さ。有効な雷遁を纏った状態での突進をも受け止めるその鎧に、次第に勢いが落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

(雷……聞こえるかい)

 

 精神世界で向き合う黙雷悟どうし。

 

(ああ、何だ!! もう限界は越えてるぞっ!!)

 

(お願いがあるんだ……どうか僕の代わりにこれからもマリエさんを見守ってていて欲しい……)

 

(黙……お前何言って……)

 

(下手したら僕の存在は消えるかもしれない……だけど、君なら……雷なら未来を託せそうだ……もっと早く、君に出会い、君を信用していたら良かったって今なら思うよ……)

 

(おい、縁起でもないこと……!)

 

 

 

 

(後は頼んだよ……黙雷悟)

 

 

 

 

 

 精神世界に留まる黙は自身を構成するチャクラを使い術を発動する。目の前の黙の体が薄れるのを確認した雷は手を伸ばすが、空を切る。

 

 

 現実世界、岩の手で被い押しつぶされそうな悟を真っ青なチャクラが覆う。

 

 

「これが……僕の……今までの全てだ!!!」

 

 

 

 

 黙が発現させるその術の名は……『須佐能乎』

 

 

 

 

 

 突如として悟の周囲に現れるチャクラで出来た青色の骸骨。あばら骨の様なものが悟を守り、巨大な骨の腕が岩の腕を押し返す。

 

 悟の両目はより真紅に染まり、映す紋様は「直巴」のようにも見える。

 

 そして

 

「「っぁぁぁあああああああああああああ!!!!」」

 

 最後の力を振り絞る。身体中の筋肉は断裂し、目からも血を流す悟たちの螺旋回転は一瞬大きな輝きを見せる。

 

 

  

 

 

 

 

 お願いだ、生きて

 

 

 

 

 

 

「おかあさん」

 

 

 

 

 

 

 巨人の胸を貫通する螺旋の雷光。

 

 はるか上空へと舞い、自由落下を始めるその物体は崩れ行く青いあばら骨に覆われる。

 

 巨人から大きく離れた位置に落下し家屋に衝突した骨は砕け散る。

 

 

 

 

 

 大きく壊れた屋根の家屋の中、そこには息をする2つの命が……確かにあった。

 

 




「本当に何時かで良いの……貴方がおかあさんって呼んでくれたら……私嬉しいわ」
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