<黙雷悟>
里全体あげて行われた三代目や木の葉崩しで亡くなった方の葬式が終わり、暗い雰囲気を残す中人々は日々の暮らしに戻っていいく。
雨も上がり、カカシさんと組手を終えた俺は彼の奢りということで午後から営業を再開した茶屋に来ていた。
「で、マリエの暴走の後の厄介事って?」
席に着き茶をすする俺にカカシさんは話を切りこんでくる。
「それですね……え~と、ざっくりと説明しますと……」
三代目を看取った後病院に移動したときに起きた厄介事をカカシさんに説明することになった。……気持ちのいい内容じゃないからあまり話したくないが、カカシさんはマリエさんにとって結構密接な方なので話さないわけにもいかないだろう。
~~~~~~
二日前
「……っいたいた。やあ、白雪」
病院に足を引きずりながら来た俺は、怪我人でごった返している中白雪を見つけ声をかける。
「ああ、悟君ちゃんと来ましたね。……改めて見ると酷い怪我ですね、すぐにでも治療を受けた方が」
「いやいいよ、俺は……何とか動けてるし、命にかかわることでもなさそうだからな」
「そうですか……見た目とてもそうは見えませんが、君が言うなら。僕たちもマリエさんの事情は少しだけですが聞きました、よく頑張りましたね」
「……ああ、誰かをマリエさんが傷つける前で良かったよ」
「まあ、一番危険だったのは施設に近寄っていた僕たちですからね。……事情を隠した君の指示のおかげで」
ジト目で抗議の意を示す白の視線に、「……うっ」と言い俺は目線を逸らす。
「本当にすみません……」
「あはは、別にいいですよ気にしてません。僕たちのことを信頼してくれての行動だったと勝手に納得していますから、マリエさんは奥にいます着いて来てください」
白雪はあっけらかんにそう言うと、俺をマリエさんのいる場所まで案内をしてくれた。……危険に晒したのは事実だし、何時かお詫びをしたいと思う。
「はい、止血は出来ました。患部はあまり動かさないでくださいね」
白雪の案内で、病院のロビーまで来るとマリエさんは半身を包帯で隠した状態で怪我人の治療を手伝っていた。
「マリエさん、ここにいて大丈夫ですか?」
俺は心配になってマリエさんにそう声をかける。
「あら、悟か。……気分が良いんだよ、今のところ。私の感情の大半は10年近い歳月のおかげか、納得は出来ないが受け止めることは出来るようになっていたみたいだ。……他人事みたいだけど、実際私は2人になっていたしね」
「そうですか……今回の……そのきっかけは……」
「……私がかつて九尾と接触したのが原因だろう。いつの間にか九尾のチャクラと精神エネルギーを少し取り込んでいた私は、元来の生体感知能力が影響を受けて悪意、殺意を感じ取れるようになっていたみたい。覚醒しかけていた私が今回の事件でそれを感知してしまったことが直接の要因ね」
「なるほど……今は」
心配する俺の声にマリエさんは被せるように話す。
「今は、何も感じない……。生体感知も出来ないしチャクラを練ることも出来ない。恐らく、暴走していたときに九尾の影響を受けた部分を発散させたからだろう。それで私の経絡系が大きなダメージを受けていると考えられる」
無意識下に影響を与える九尾のチャクラは、俺も経験済みだ。感情を抑えることが出来なくなる、その力を気づかず取り込んでいたとは精神的に不安定だったマリエさんにとっては悪影響しかないだろう。それが取り除かれた今……。
「
「……経過観察は必要だ。今、私は私自身を信用していないからな」
そう言ってマリエさんは話を切り上げ、別の人の治療に向かおうとする。俺も今は掌仙術を使えないが、怪我の処置の知識は一応ある。
マリエさんの手伝いをしようとした俺は、唐突にロビーに響く声に驚いた。
「蒼鳥マリエはいるか?」
その声に振り向けば、暗部の仮面を被った忍びが2名いるのが見える。
……わざわざ、暗部がこんなところに。とその瞬間、俺の記憶がフラッシュバックのように蘇る。内容的には恐らく『黙』の記憶だろうが。
その記憶は今まで『黙』が見てきたマリエさんが処刑される場面であった。その時、マリエさんを連れていく暗部の……『根』の忍びは今ここに来た2人だった。
病院関係者が声を抑えるように暗部に近づき語りかけるものの、腕で押しどかされズイズイと病院の中に入ってくる。
暴走した件を持ち出し、マリエさんを処刑する気の彼らにマリエさんは渡せない。白と再不斬も素性が知られるとマズイので、ハンドサインで隠れさせる。
「先の戦いで、岩の巨人となって暴れていた忍びがいるはずだ! 志村ダンゾウ様の命により、そのものを木ノ葉の敵とみなして処刑する!」
白雪は焦るような表情をしながらも、人ごみに紛れる。
病院は騒然となり「ダンゾウって誰だ?」「木ノ葉の偉い人の1人だって聞いたような」「あの岩の巨人になっていた奴がここに……?」「三代目が亡くなったっていう話があるのに……もう厄介事は勘弁してくれ……」
と人々の不安が掻き立てられる。
三代目の死は、噂として既に里中に広まっている。……これも恐らくダンゾウの仕込みだろうと『黙』の記憶から予測する。
俺は自分の体で、マリエさんを隠すようにするがマリエさんはスッと立ち上がり声を張る。
「……私が、蒼鳥マリエだ! 用があるならサッサと連れていけ!」
「……なっ!? マリエさん! 処刑するって相手がいってんのに……!」
俺は驚きマリエさんを止めようとするも彼女は根の忍び達の目に既に止まっている。
「潔くていい。さあ、サッサとこい!」
マリエさんはこれ以上周囲の不安を煽りたくないのと、自分が暴走した負い目からか自ら歩みを進み始める。
ふざけるな! 絶対に行かせるわけには行かない!!
そう思い俺がマリエさんの前に立つよりも早く、声を上げる人物が出てきた。
「はて……岩の巨人は……彼女は果たして木ノ葉の敵と言えるのですかな?」
その人物は根の忍びと俺たちの丁度中間に立ち、根の忍びに声をかける。
「何を言う! こ奴が暴れている姿、里の者が見ているはずだ。言い逃れなど出来るはずも……」
声を上げた人物は、避難誘導をしていたあの老忍びだった。この人は……?
「彼女は暴れていたのではなく……立派に木ノ葉の敵と戦っていた。そう、それを見たものはこの場にもいるはずですよ」
そういう老忍びは言葉を続ける。
「彼女が戦っていた付近では、木ノ葉の関係者の死傷者は出ていませんでした。それはワシが確認したので間違いはありません」
マリエさんの暴走時、俺がひたすら高速で救助活動をしたから、建物以外の被害は出ていない。そのため、老忍びの意見に賛同する者が少しずつ出てくる。
「確かに……巨大な蛇たちとも戦っていたし……」
「敵の多くが岩の巨人に群がって蹴散らされているの、私あの仮面の子に抱えられながら見たわ!」
「爺さんの言う通りなら、あの人は味方じゃないのか?」
「病院でも、自分も辛そうなのにあの人は治療をしてくれていたぞ……そんな人が木ノ葉の敵な訳ないだろう!」
大衆はマリエさんのことを守るように根の忍びとの間に並び立ち始めた。……っ!
黙の記憶では、罵られ罵声を浴び木ノ葉の敵としてマリエさんは処刑されてしまっていた。……凄惨なその記憶を塗り替えるように、目の前で広がる光景に胸の奥が熱くなる。
……わかっている。マリエさんが危険な存在だというのは……本来俺がいなければ、多くの犠牲が出ていたはずだということも……だけど
俺が、マリエさんに生きていて欲しいと思う。
それ以上の理由は、俺の行動にはいらない。
「貴様ら、その女の危険性を」
「……この人が危険だというダンゾウの命令が正しいと、言い切れる根拠はあるのか?!」
根の忍びの言葉を遮り俺は声を張り上げ問う。
「ダンゾウ……とか言う奴は何をもって、そんな命令を出してるっ!」
「……それが木ノ葉のために必要n
「命を張って戦った三代目やっ!! ここで怪我をして治療を受けている忍者たちっ!! 里を守るために決死の戦いに挑んだ人たち相手に、『何もしていない』ダンゾウとやらが口を挟むんじゃねえ!!」
「貴様! ダンゾウ様に対して……!」
「事実だろう! 今回の事件で、ダンゾウは……お前らは何をしていた! その傷1つない外套に仮面をつけてどの面さげてここにいる!」
俺はダンゾウについて詳しくは知らない。
けれど彼が原作で『ペイン襲撃』において、何も手を出さなかったことを知っている。そう思えば恐らく今回の事件でも静観に徹していたのだろう。
俺は大義名分を振りかざす。名誉の負傷、戦い傷ついた者の名分を。
……人々がどちらの味方になるのかは明白だ。
表の感情は熱くしかし、心は冷静に酷く落ち着いている。ダンゾウという存在が、黙を通して俺に復讐心を芽生えさせる。
俺の声を皮切りに、病院の人々は根の忍びに押しかかり外へと追い出す。
喧騒が落ち着く頃には根の者たちは既に撤退しており、一息ついた俺は老忍びに声をかける。
「……ありがとうございます。俺たちの側に立っていただき……」
「何、若い者がこうも必死になって守ろうとするもの。それをこの老兵も守りたいと思ったまでですな。実際、君たちの活躍は多くの者を助けた。……多少の
「……改めて、俺は下忍の黙雷悟と言います。貴方は……」
「ワシも君と同じ、しがない下忍で名をまるほしコスケと言います。どうかお見知り置きを」
「コスケさん……下忍なんですね、てっきり上忍ぐらいの方かと」
「カッカッカッ! ワシ見たいな老骨は縁の下がいるのが性に合っておりますので、いつか君が中忍、上忍になったときにでも部下として使ってくだされ」
「いやそんな……俺はそういうの苦手何で……部下とかそういう関係はなしに仲間として協力していきましょう」
俺の言葉に満足そうにうなずいたコスケさんは、再び怪我人の処置の方へと回っていった。
騒ぎを聞きつけて様子を見に来ていた再不斬と、隠れていた白が心配そうに寄ってくる。
「……っマリエさん! 何あんな奴らに素直についていこうとしてんですか!」
俺が怒ってマリエさんそう語りかけるのをなだめる2人。
「……私が原因でもあるからな。だが確かに、頑張って私を抑えてくれた悟ちゃん達にも、私自身が自分のことを容易く諦めるのは良くないわよね……繋がりを持つって難しいモノね……」
反省するマリエさんを俺はため息をつきながら諭した。
~~~~~~
「ってな感じです。根の連中がマリエさんを処刑しようとしてきたってことで」
俺は仮面を少しずらして茶をすする。
「……ダンゾウに、根……やっぱりマリエに絡んでいたか」
カカシさんは納得した様子で、目線を落として何かを考えている様子だ。
「この後はカカシさんどうしますか? 家にマリエさんの様子でも見にきます?」
「……ん、いやそれはまた今度余裕がある時にガイと一緒に行くよ、これから少し忙しくなりそうだからな」
カカシさんの返答に「そうですか」と言って俺は団子を噛み、飲み込む。
「……そういえば、マリエさんの事情は大体俺も聞いたんですけど……」
「そうか、まあマリエがお前に話すのも無理はない。悟がいなければ、最悪の事態になっていたのは想像に難くないからな。俺としてもホッとしたよ」
「マリエさんが赤子の俺を拾ってくれたときにカカシさんも一緒にいたんですよね?」
「……まあ、お前には悪いけど俺は正直反対だったけどね」
「結果としては色々と手を回してくれたそうじゃないですか、ありがとうございます」
俺が頭を下げると「よせやい」とカカシさんは嫌そうな顔をする。……三代目やカカシさんがいなければ、俺はここまで成長するチャンスすらなかったわけだ。感謝はしてもしきれない。
頭を上げた俺は、支度をして席から立ち上がる。
「……それじゃあ、俺はこの後ぶらぶらしてから帰ります。奢り、ありがとうございます
パパ♪」
「ぶっッッ!! おま、急に何言ってんの気色悪いよ!!!」
「実質そうじゃないですか? カカシさんて」
「実質そうじゃないよ! 全く、まだ26の歳でそんな呼ばれ方をするなんて……あ~ヤダヤダ!」
カカシさんは手で払う様に「シッシ」と俺を追い払う。
俺は意地悪な笑顔を仮面に秘め、手を振りながら茶屋を後にした。
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で、その帰り道。
「見つけたぞ、黙雷悟」
「……なに用かな、日向ネジ」
俺は声をかけられる。白き眼は真っすぐ俺を見据える。こめかみに血管が浮き出ている様は中々に、機嫌が悪そうに見える。
「……俺は貴様を認めていない」
「……へ?」
「確かに、俺はお前に負けた。だがそれは俺に力が足りず、お前が強かった。それだけのことだ」
……何が言いたいのか、ネジは滅茶苦茶に睨みつけてくる。
「……俺はさらに強くなり、お前を必ず超えて見せよう! 今後は……父上に稽古をつけてもらう。……首を洗って待っていろ、
「……ふふ。ああ、いいだろう何時でも挑戦を受けてやるよ! だが、俺もそう簡単に負けてやるほど甘くはないからな精々技を磨けよ
ネジは目を閉じ鼻を鳴らす。
「随分と強気だな、まあ言いたいことはもうない。さらばだ」
そう言ってスッと去っていったネジの後姿を見る。……ネジなり何か吹っ切れたのだろう。随分と原作より攻撃的な気がしないでもないがそれは知らない。
「ネジ兄さん、少し雰囲気が変わりましたね」
「……急に後ろから話しかけてこないでくれ、ハナビ」
そういって俺が振り返ると、ハナビとヒナタがいた。
「……何、日向がそろって……俺に何か用でも?」
「そういうわけじゃないんだけどね……ネジ兄さんが『悟の奴に会うにはどうすればいい』って聞いてきたから……一緒に私とハナビも探すの手伝ってたの」
「そうそう私たちも一緒に悟さんを探してたってわけ。姉様相手にネジ兄さんから話しかけるのはかなりレアだったわね~」
なるほどね……、ヒザシさんとヒアシさんは上手いことネジと話し合いが出来たのだろう。
「……そうだ、2人とも。毒の件で色々心配かけたしこの後家に来ない? お詫びがしたいんだけど……」
「悟君……あの件は本当に……反省してね?」
「あの時の悟さんの意図は知らないですけど、たっぷりとお詫びを受け取りましょうか姉様♪」
そういう2人を連れ、俺は施設へと帰る。途中影分身をナルトの元へと送りナルトも呼ぶ。ナルトにも心配をかけたからな。
施設に戻って、俺は食堂で甘味を作る。……フレンチトーストとか、そういう簡単な奴だが。
それを振舞うことで、少しでも心配を掛けた分をチャラに出来たらと思う。
途中、匂いにつられた再不斬と白が顔を出してきて「俺たちにも詫びがあるだろう?」って顔で見てきた。
……影分身を追加の材料を買うお使いに出す。
まあ、皆には本当、感謝しかないなぁ……ははは。
ああ、本当にこういう幸せは