64:今はまだ青き木ノ葉
木ノ葉崩しにより、里の力の低下を招いた木ノ葉の里。
三代目火影の死の噂を聞きつけた他里の謀略に対するために、里の忍び達は尽力して防衛に当たる。
「……大規模の戦闘の跡、まだ近くに誰かいるな」
第零班黙雷悟は、単体の戦力を見込まれ1人里外に出てパトロールをしていた。その際に見つけた戦闘痕をたどった悟は岩隠の部隊とみられる負傷者を多数見つける。
(かなりの手練れの仕業だな……取りあえずこいつらは侵入者だが、既に虫の息。先にこれをやった人物を探すか)
そうしてチャクラ感知をして岩隠の部隊を撃退した人物の捜索に出た悟はすぐに馴染のチャクラを感じ取り、気を緩める。
対象者にワザと気配を悟らせながら、近づく。
(変に気配を隠していって攻撃されても敵わないからなぁ……特にナルト相手だと勘違いで手裏剣投げてきそうだし)
そう思いながら悟はうずまきナルトとまるほしコスケに声をかける。
「第零班黙雷悟です。岩隠れの部隊と接触したのはあなた達ですね?」
「……っ悟か! 良い所に来てくれたってばよ!」
「おや……君はあの病院での……」
全員が顔見知りであるので、悟は態度を崩しナルト達から報告を受ける。
……
「つまり、それなりに人数の揃った部隊が近くにいるってことか……」
「ハヤマ隊長たちが足止めしてくれてるけど、早く助けに戻らねえとっ!」
焦るナルトを手で制止して悟は影分身を1人分出す。
「俺の分身を残す、コスケさんの怪我の治療をしてからナルトは里に戻ってくれ。そのハヤマ隊長とかやらは俺に任せろ」
そういう悟は首を鳴らし、身体の柔軟を始める。
「いいのですかな? 君1人で……」
心配をするコスケに悟は仮面の奥の自信にあふれた目を覗かせ告げる。
「まあ、大丈夫ですよ。木ノ葉崩しの怪我もある程度治ってきたので、ここらでちょっと体を動かしておきたいと思っていたところです。大丈夫です……」
八門第一開門と、雷遁チャクラモードを併用し薄く緑色の雷光を纏った状態の悟は言葉を残し、その場から跳躍して姿を消す。
「俺は速いので」
そういう悟を見送り、コスケがその速さに二代目火影の面影を少し見たところでナルトの様子に気がつく。
「どうしましたかなナルト君?」
「いや、やっぱあいつってすげえなって……。俺も負けてられねえってばよ……!」
同期の中1人頭抜けた実力を持つ黙雷悟に対して、対抗心を燃やすナルトは握りこぶしに力を込めた。
~~~~~~
後日、「施設蒼い鳥」
「聞きましたよ、岩隠の大部隊相手に1人で立ち向かい見事勝利を勝ち取ったって。君も良くやりますね」
昼前、悟は施設の掃除をしている最中に白に声をかけられる。
「……まあ、見事に目立ってしまったよ……俺以外にもコスケさんとか木ノ葉の忍びが居たんだけどなぁ」
「今の時期、木ノ葉は他里に牽制することに重きを置いています。『下忍が1人で部隊を追い返す』という捏造により、戦力が落ちていないことをアピールする意図があるのでしょう」
「……しょうがないのは分かってるけど……
「『
クスクスとからかう様に笑う白の様子に悟は照れて顔を背ける。ある程度慣れては来ているが未だに悟は白のふとした瞬間に見せる笑顔などを直視できないでいた。
(……ああ、相変わらず滅茶苦茶綺麗だな白は)
そう思う悟は逃げるようにその場を後にした。
施設の中を移動し、台所で昼食の準備をしているマリエを見つけた悟は声をかける。
「マリエさん、こんにちは。手伝いましょうか?」
「……ああ悟
少し素っ気なく答えるマリエに、悟は「ははは……」と苦笑いを浮かべる。
(あれからマリエさんの精神が暴走する兆候は見られない。それは良い事なんだけど同時に、チャクラを練ることも出来なくなっている状態が続いている様だ。最近は再不斬と白が施設の仕事に慣れてきたから、他の職員の方たちと力を合わせてマリエさんの影分身に頼る必要はないんだけど……)
心配そうに眺める悟の視線に気づきマリエはムッと表情を変える。幾分かの時間が経ち、マリエの姿は元の健康体に戻っているためすでに顔には包帯はない。
「……なんだ? あまり施設のことを気にしないでもいいのよ。お前は自分のことを考えていろ、シッシ!」
そういうマリエは手で払いのけるようなジェスチャーをして悟は追い払う。
悟が演習場に行くと告げ苦笑いのままその場を後にした後、マリエは1人顔をしかめて唸る。
(……いざ彼が異世界の人間で元々20前後の年齢だと聞かされても、実感は湧かないな。けれど顔を見ると不思議と意識して緊張してしまうし、声も少し上ずってしまう……呼び方もちゃん付けは今更恥ずかしいし……ああ、もう少し普通の子でいてくれたらって私が思うのは筋違いだよなぁ)
マリエは悟との距離感に迷いを持っていた。
「だから、昔お風呂に一緒に入るのとか拒否してたのね~。ああ、納得できる場面はそれなりにあるのがそれはそれで悩ましい……」
複雑な感情を抱くそのマリエの呟きは湯が沸いた音にかき消され、日常へと溶けていった。
~~~~~
仮面をつけ施設を出て悟は、演習場に向かう前に腹ごしらえにと一楽へと向かう。
「何となく、だけどナルトが居そうだな」
そう呟きながら一楽の暖簾をくぐると、元気よくラーメンの注文しているナルトを目にする。
「……やっぱり」
「……あ? ああ、悟かっ! お前も昼飯にラーメン食べに来たのか?」
テンション高めのナルトに「ああ」と簡潔に返事をして、店主のテウチに悟は注文を済ませる。
「ナルト、この前のコスケさんと一緒にいった任務はどうだった?」
悟はラーメンを待つ間に、世間話にと数日前の出来事を振り返る。
「いやあ、コスケの爺ちゃん、滅茶苦茶強かったってばよ。下忍って言ってたけど色々なつえー術使ってたし……後、鍋のご飯もかなり上手かった」
「鍋ってあの背負ってた奴か……背面は傷だらけだったから盾にしてたんだろうけど、それでちゃんと調理もするのか。経験の豊富さを感じるなあ」
「最初は変な爺ちゃんだと思ったけど、コスケの爺ちゃんを見てたらやっぱり下忍とか中忍とかってのはあまり大きな問題に思えなくなってくるからすげえよな」
話を膨らませ、最終的に二人とも中忍なれなかったことに対して冗談を言い合う様になる。黙雷悟が中忍になれなかったのは、大切な本選前に毒を受けたことが後になりわかったからである。中忍として部隊を預かる人間が、大事な件の前に問題を起こしていることはありえない。よって悟の中忍選抜に落ちた結果はわりと早期に知らされた。
ナルトの言う様に飽くまで「身分」というものに悟は重きを置いてはいない。確かにあれば有利になるかもしれないが、それは同時に枷にもなると考えているからだ。一長一短、それは多くのことに当てはまる。なるべく自分のしたいこと・やりたいことを優先したい悟は下忍のままでも問題ないと考えている。
しばらくして注文したラーメンが完成し、その味を堪能している二人に来訪者が現れる。
「聞いた通り来てみりゃ……本当にラーメンばっか食っとるようじゃのォ……ついでに仮面小僧もおるとは幸先良いのォ」
~~~~~~
一楽に来た自来也は自作小説の取材旅行のお供としてうずまきナルトと黙雷悟を指名した。
最初は興味を示していなかったナルトは自来也が「千鳥よりすごい術知ってるのになぁ~?」という自来也の呟く餌に食いつき同行を即決する。
悟は話の内容から(……綱手捜索の奴かこれ……)と推測する。
(何で俺まで巻き込まれているかはわからないけど、自然エネルギーについて学べるチャンスだな!)
そう思い悟も同行を了承し、準備をしに施設へと戻る。
「……という訳でしばらく里の外に出ます。任務などについても自来也さんが、里の上層部に話をつけてくれているそうなので何とかなるみたいです」
そういう悟の言葉にマリエはポカンとお口を開ける。暫く動きを停止させたマリエは何とか考えをまとめ言葉を捻りだす。
「……そうか。……う~~~~~~ん……頑張って……こいな」
ぎこちないマリエの言葉に、悟はまたしても苦笑いを浮かべる。マリエとの距離感が少しおかしいのは悟もわかってはいる。原因が自分が異世界人云々をカミングアウトしたことであることも。なのでしょうがないと思いながらも悟はバックパックを背負いそのまま挨拶を済ませ玄関へと向かう。
悟が玄関にある連絡板に『黙雷悟:長期外出』と記入し、サンダルを履いた時にマリエが慌てて走り寄ってくる。
「悟くn……ええいっまどろっこい!! ……悟ちゃん! 必ず元気で、笑顔で戻ってきなさい! 貴方が何者だとか、そんなのどうでもいいのよ! 貴方は私にとっては大切な家族の一人! だから!!」
目を点にしている悟にマリエは顔を赤くして告げる。
「もう、悩まない。貴方のことを信じてるから、元気でね」
そういうマリエに悟は笑顔をこぼれさせ、返事をする。
「ええ、貴方が嬉しいと思ってくれるように、貴方を安心させられるように。強くなってきます! では」
行ってきます。そう告げた悟は玄関から姿を消した。
「……はあ、どっと疲れたわぁ」
「お疲れ様です、マリエさん。自分の感情に正直になるのは良いことですよ」
「っ! し、白雪ちゃん!? 聞いてたの!?」
「それはもちろん。随分と大きな声でしたから、多分施設の皆に聞こえていますよ。まあ、貴方風に言うならマリエさんの元気が戻ってきたようで僕は嬉しく思いますね」
少しにやけてからかう白の言葉にマリエはその場にへたり込み、うつ伏せになり顔を隠す。
「……全く事情はわからねえけど、マリエと悟はいつもぎこちなくなったり仲良くなったりしてるな」
影で見守るウルシはそう呟く。その呟きにウルシの背後の再不斬が答える。
「ふん……雨降って地固まるて奴だな。困難を乗り越える程絆は強くなるもんだ、そういう関係は少し……羨ましくも思えるな」
「桃さんアンタ……けっこうロマンチスt」
「黙れ、ウルシお前午後から任務があるんだろう。お前もサッサと用意を済ませてこい!」
ウルシの言葉を遮るように再不斬はまくし立て、洗濯籠を手に持ちながらもウルシに蹴りを入れた。