悟たちが旅路を行く中、自来也は捜索対象である綱手についてナルトに説明をする。
「んで、綱手ってどんな人?」
「……そうだのォ……一言で言うとヤな奴で……あとは賭け事が死ぬほど好きで顔は国々に知れ渡っとる」
その後ろで悟は先のイタチたちとの戦闘について思いふけていた。
(……途中までは……自分の力が通用すると、勘違いしていた。しかし実際にはイタチさんと鬼鮫、確実に……どちらにもまだ俺は勝てない……)
鬼鮫もイタチも本気ではなかった、と悟は高みにいる忍びの実力にある種の恐怖を覚える。自分がしたいことを成す、そのためにはあのまだはるか先に感じられる実力者たちに連なる力が必要である。そして……
(俺には猶予も……あまりないな。長い目で見てあと
悟は猿飛ヒルゼンの最後の言葉を思い出していた。そして彼の音にならなかった呟きの部分、目に焼き付いたその光景を後に調べた読唇術に照らした内容についても。
(『ダンゾウに気をつけよ』っか……。元々狙われていたらしいマリエさんは今は忍びとしての力を発揮できずにいる。つまり、今は……俺が狙われている可能性が高いってことか……)
もし自身が狙われているということは必然的に周囲の者たちも巻き込むことになる。そうなることを悟は望まない。
「ハア……」
思わずため息の漏れる悟に自来也が語りかける。
「どうしたァ? 元気がないのォ! 取りあえずはこの街で綱手についての情報収集をする。ついでにナルトともに気分転換でもしてこい!」
自来也がそういい指をさした先には、地面をくりぬいたような地形の中に活気あふれる街が広がっていた。
~~~~~~
町に着き、はしゃぐナルトのお目付けのように悟は隣で唸る。
(……自来也様とは、一応別行動になったが……別れ際にナルトの財布を持って行ったな……どうなるのか
「忍びの三禁とかなんとか知らねえぇけどよぉ~。やっぱ三百両(大体三千円)ばかしじゃ出来ることが限られるってばよ~。なあ、悟」
「……そうだなぁ。あの変態仙人がどういうつもりかは知らないけど、まあ言われた通り暫く時間を潰そうぜ。ちょっとなら俺も金を出してやるからさ」
「マジでっ! やっぱ持つべきは友だってばよ!」
(調子のいい奴だな……ふふっ)
ちらちらと悟のバックパックに目を向けていたナルトに乾いた笑いを出しながら、悟は提案をした。それでも心の中ではそれほど悪い気はしていない。悟にとっては手のかかる弟の面倒を見ている気分であった。
「よっしゃー! じゃあまずは金魚すくいからやろうぜぇ! 悟! どんだけ取れるか勝負だってばよ!!」
「……ふふ、上等。お前、器用さで俺に勝てるとでも本気で思ってんのか!」
~~~~~~
そして一通り、街での遊戯を楽しんだ二人。
「……結局、輪投げとか射的とか……全部悟の勝ちかよ……やってらんねぇってばよ……」
「大人気なくて悪かったなぁ? 俺は勝負ごとには基本、手を抜かない性分だからな」
「知ってる……っつーか何が大人気ないだなんて同い年だろ俺と悟は! ……はあ~あ、まあ落ち込んでても仕方ねぇ! 残りの金でエロ仙人に何か食いもんでも買っていってやるかな」
そういうとナルトはイカ焼きの屋台の元へと向かっていった。
(そろそろ自来也様と合流するか、あの人のチャクラは特徴的で探知しやすくて助かる)
そう思い悟はスムーズに合流するために感知能力を働かせるが……
「げ……」
「おう悟、どうしたんだ? 取りあえずお前の分もイカ焼きおまけで貰ってきたってばよ、ほい!」
「おう、ありがとう。いや、いま変態仙人の感知をかけたんだが……見つけたチャクラが乱れに乱れててな。恐らく酒を飲んでるなこりゃあ……」
「はあ!? 綱手って言う人の情報を集めてんだろぉ!? 何やってんだエロ仙人の奴!」
ぶつくさいうナルトを案内した悟は、直ぐに店の外まで響く豪快な笑い声が耳に届きため息をつく。
「……あそこ」
そういって悟が指さした先の店にナルトが勇み足で向かっていく。
……少しの時を待ち。
チャクラ密度の濃い反応に悟が気がつき、待機していた店の前の暖簾から少し立ち位置をずらす。
(ふむ……これでも
悟の目線は轟音を響かせ、店の暖簾をぶち抜きその向かい側にある水風船の屋台に突っ込む2人の男を追う。
(これが
店から出た自来也は、螺旋丸で吹き飛ばした男たちから掏った財布を水風船の屋台の店主に渡し、あるだけの水風船と風船を買いたたく。
「ナルトォ、悟! ついてこいのォ! 修行をつけてやる」
「……オッス!!」
「了解です」
(……ナルトの財布の金使いこんだことをうやむやにしたな変態仙人め)
ふと悟はそのことに気がつき、自来也への人的評価をまた一つ下げたのだった。
~~~~~~
数時間後
「むむむむむむ!!」
開けた場所でひたすら水風船を掴み唸るナルト。そのすぐ近くでは木に背中を預け自来也が昼寝をむさぼっている。
ナルトが螺旋丸習得に向け修行を開始してから、第一段階のチャクラを回して水風船を割る段階を実行する中悟の姿はそこにはなかった。
「むむむ……ぷはーーっ!! ぜんっっっぜん割れねえ……、ただ中の水がグルグルと回るだけだってばよ……」
修行に集中するナルトはふと自分とは別の言付けを受けた悟について思いをはせる。
(……悟の別メニューってなんだろうな?)
~~~~~~
悟は街から少し離れた森の中で、座禅を組み座っていた。これは里にいたときも、たまにしていた集中力を高める修行であるのだが
(
黙雷悟は心配性である。前世においても心配性故に常に「もしも」と口にし、様々なことを想定・予測し生きていた。つまりは……本質的に言えば落ち着きがない性分である。
そんな悟に自来也は数時間前にこう伝えた。
『お前さんは自然エネルギーの活用について教えようと思うのだがのォ……。如何せん
『ええ、それでもお願いします自来也さん。俺には……力が必要なんです』
『言うてもなぁ出来ることは
自来也の説明に原作の知識からも納得し、現在森の中でひたすらジッとしている悟。
しかし数時間の時を経て、頭の中は雑念に溢れかえっていた。
(……あ、もしかしたら火遁の術って使い方次第で身体強化や医療忍術にも応用が……水遁の天泣……もうすこし工夫すれば威力をあげれそうだよなぁ、それこそ螺旋丸の技術を使えば……)
試したい、練習したい、鍛えたい。ただひたすらにそんな思いが募る悟。彼の修行に対する熱心さも集中力も心配性の業によるものである部分が大きい。はたまた師の一人である碧き猛獣の影響か……。
それでも信念は固く、高みを見据え悟はひたすらにはやる気持ちを抑え座禅を続けた。
~~~~~~
数日後
「オオオオオオオォォォォォォオオオオオ!!」
螺旋丸を会得せんとするナルトは第二段階、一点集中によるチャクラの爆発的な威力を形成する修行を見事こなした。
ナルトの手のひらのゴムボールははじけ飛び、生じた風圧は術者のナルトすらも吹き飛ばす。しかし
「おっと……どうやら第二段階、終了だの」
そのナルトを受け止めた自来也は顔に笑みを浮かべる。それはナルトの持つ資質に対してであるが、それこそ孫を見守る祖父のようでもあった。
「うう……早く第三段階……を」
数日ぶっ通しで修行に励んだナルトはすでにボロボロなっている。それでも更なる修行を自来也に催促するが
「それは一先ず後だ……。これから
そう言って自来也はナルトを抱え、起き上がらせ旅支度をするように泊っている宿に荷物を取りにいかせた。
その間に悟の修行の監視を任せた蝦蟇を口寄せする自来也。
「どうじゃ、首尾は?」
口寄せされた小さく若い蝦蟇は肩をすくめて、こう答えた。
「あいつはイカレやろうじゃ! 近くにおるのも恐ろしい……しばらくは俺を呼ばないでくれな!」
その答えに自来也はハテナを浮かべるが、蝦蟇は悟の居場所を伝えて直ぐに煙を巻き上げ帰っていった。
そして、蝦蟇の伝えた場所。悟の修行場所に赴く自来也は、直ぐに異変を感じ取る。
(このバカげた量の自然エネルギー……!! まさかとは思うが……)
額に汗を浮かべた自来也が自然エネルギーの集まる中心まで行くとそこには悟が居た。
座禅を組んだ悟は、ぶつぶつと何かを呟いているようでその自然エネルギーの多さから異変を感じている野生の動物たちが草葉の陰から悟を囲う様に観察している。
(仙人の場……妙木山の環境に行かずともここまで自然エネルギーを集めるとは……しかし妙だ。これほどの自然エネルギーを集めているにもかかわらず、体内には殆んど取り込めてはいないようだのぉ)
自然エネルギーを感じ取れる自来也は少し臆す気持ちがあるが、悟の背後に回り背を強く叩く。
バンッ! と音が響くと同時に僅かな仙術チャクラを纏った打は集まった自然エネルギーを霧散させた。
「……っ痛ったい!! お!? あ!? …………自来也さん? あれ……俺……今……何してたっけ?」
「はあ……全くお主、どれ程座禅を続けていた? 様子を見させていた蝦蟇が怯えるほどの自然エネルギーを集めおって……」
「座禅……ああそうか。ええと、初日はあまり集中が続かなかったので取りあえず慣れるために数時間続けて……それで、一端宿に戻って……」
悟は朧気に記憶をたどり、ゆっくりと口に出す。
「その次の日からは、妙に頭がすっきりしていたから座禅が長く続いて……あれ……? 今何時ですか?」
悟の問いに自来也は寒気を覚える。
「……もうあれから数日は経っておるぞ……」
「そんな馬鹿な……俺の感覚だとまだ、数時間かそこらの……いや……?」
ふと悟が立ち上がろうとして、ふらつき倒れる。身体に上手く力が入らない様子に自来也が手を貸し立たせてやると悟の声は驚きの色を見せる。
「体の調子が……すごく良い?けどすごく悪い……何だこの感じ……」
(飲まず食わずの極限状態で自然エネルギーを糧にしておったと予想するがのぉ……。取り込むという概念とは別の、自然エネルギーをそのまま己の糧にするなど、それこそ初代火影千手柱間様のような……)
自来也は驚きを隠しながらも、悟に肩を貸し宿へと向かう。
「全くバカみたいに座禅をしおって、加減を知らぬのかお主は。まあ、あのガイの弟子なだけあるのう」
「バカみたいッて、座禅を限界までしろって言ったのは貴方でしょうに……でも……座禅をしているときに、懐かしい夢を見ていたような……」
何かを呟く悟を無視し自来也はため息をつく。
(ナルトも悟も……限界などあっさり超えて修行に食らいつく……筋金入りのど根性持ちの……大馬鹿者どもだのぉ!)
2人の根性の硬さに少し嬉しそうにする自来也だが、その2人の体力はかなり落ちてしまっているためその日は2人の体力の回復に時間を割き明日改めて出発することにした。
~~~~~
次の日
探し人の綱手がいるという情報があった「短冊街」に既にたどり着いた悟たちは賭場を回り綱手の情報をかき集める。
と言っても
「綱手の奴、そう遠くには行きっこないハズだが……」
余り状況は良くはないようだ。唸る自来也をよそにスロットに床に落ちていたコインを入れて遊んでいるナルトとそれを見守る悟。
「うっひょー! 何かよくわかんねぇーけど7が沢山そろうってばよ!!」
「……えげつねぇ運してるな、ナルト」
「小僧ども! サッサと移動するぞぉ!」
自来也の一言で直ぐにその場を離れるナルト達だが、スロットから出た分だけ換金をすれば先日自来也に使いこまれしょぼくれていたがま口のナルトの財布がはちきれんほどの膨らみをみせる。
「術の才能はないのに……」
「おい悟! 小声で滅茶苦茶バカにしてんだろ!」
「うっさいのぉ! そんなことより、城に昇るぞ。上から綱手を探す」
自来也が先に立ち、短冊城へと向かう一行。しかし
「……どう見ても瓦礫の山にしか見えないんですが……」
「どこに城なんかあんの?」
悟とナルトは疑問を口に出す。それもそのはず、目線の先は天守閣が崩れ落ちた
「のォ……」
驚き呆けた声を絞り出す自来也に通行人が声をかける。
「……! アンタら城に行くのは止しときな! 上には大きな蛇の化け物がおるで!」
その言葉に悟たちは全員反応を示す。
「ふむ、その
~~~~~~
「で……結局。綱手さんは見つからなかったと」
「うむむむ……確実にあの場には居たはずだが一足遅かったかのォ……」
「エロ仙人~腹空いたってばよ~」
「うっさいのう、取りあえずここで飯にするか……」
崩れた城跡では、結局綱手を見つけることが出来なかった一行は夕飯を食べるために居酒屋に立ち寄る。
店に入った途端、ガタンと机を叩く音が響く。
「……! ん……あの人」
音の元凶である位置に目線を向ければ、金髪で豊満な胸をもった女性が驚いたような目を悟たちに向け机に手を突き立っていた。
「っ綱手!!」
「……っ自来也……!?」
自来也と綱手が互いに気づき名を呼び合う。
「え!? あのネエちゃんが50歳の綱手って人? ……詐欺じゃん……」
「おまっ……余り女性にそう言うこと言うのやめとけよ……」
~~~~~~~
綱手とその付き人、シズネと同じ席に座った悟たち。自来也はさっそくとばかりに話を切り出す。
木ノ葉の里からの五代目火影就任の要請を。
ナルトは聞かされていない情報に驚き夕飯を詰まらせ、シズネに背中をさすられる。ともに驚いたとリアクションをして見せる悟だが、内心で「知ってた」と呟く。
「……あり得ないな……断る!!」
「「「「!」」」」
その誘いに対しての綱手の返事に各自、驚きを示す。
「……ふん思い出すな、そのセリフ。いつかお前に付き合えっつって同じように断られたのォ」
「あ゛~~~取材とか何とか言ってたのは何だったんだってばよ~!」
混乱するナルトを落ち着かせようとする悟。気を失っているサスケとカカシを看て貰う話や、火影就任の話があたまでごちゃまぜになっているナルトに自来也は綱手について話す。
「どっちみち火影はこの綱手しかありえない。大戦時代の功績、肩を並べるもののいないその医療術……さらに初代火影の孫であり木ノ葉の忍びとしての血はまさに誰よりも
正統だのぉ。綱手が火影になれば里に帰ることになる。そうなれば2人を診てもらえるはずだ」
自来也の説明に一応の納得を見せるナルト。しかし
「火影ねぇ…………私のじいさんも、二代目も。自来也、お前の弟子だった四代目も……そして今回、三代目までも、皆里のために命を懸けてまで……。命は金とは違う、簡単に懸け捨てするのは………馬鹿のすることだ」
「……心でどう思おうが、それを口にまで出すとはな……変わったな綱手」
綱手は自来也の言葉に、歳月を理由にする。いつまでも夢見る子どもではいられないと。
「火影なんてクソよ、馬鹿以外やりゃしないわ……」
その言葉に反応しナルトは綱手に殴りかかる。自来也に止められ、ナルトは唸るが、そのナルトの脇を影がすり抜ける。
「俺の前でじいちゃんや四代目をバカに……っ!」
ナルトが叫ぶ瞬間
パシンっ!! と乾いた音が居酒屋に大きく響き、盛り上がる居酒屋の雰囲気をシンっとしたものに変える。
「……全く……実は根っこはナルトとそうたいして変わらんのぉ。
呆れて顔を片手で隠す自来也。内心自来也も苛立ちを覚えていた手前、ナルトを止めた時点で油断していた。
「……大切なモノを守るために命を懸けて……それが馬鹿だと……?」
拳を突き出した悟は、その仮面の奥の目を見開き低く呟く。
その拳を受け止めた綱手は鼻で笑う。
「いい度胸だね……三忍の一人であるこの私に向かって……表に出なガキども」
~~~~~
夜道。暗がりのなか、綱手と向かい合う、悟とナルト。
「……面倒なことになったのォ……」
「すみません自来也様、綱手様も……決して……」
「あいや、わかっとる。だが夢見がちなガキどもは納得せんのだろうのォ……」
腕組みをしシズネと会話する自来也は呆れながらも、少しの
「来な、下忍のお前らなんて
そう言う綱手は人差し指を立てて見せる。
並び立つ2人は少し話し合い、声をそろえる。
「「……女だからって関係ねェ!! 一発ぶん殴ってやる(ってばよぉ)!!」」
言葉と共に悟が駆けだす。
「飛雷脚!!」
電光石火の飛び蹴りを放ち綱手に迫るが
「ふん、
そう呟く綱手が手を横に振る。
綱手の人差し指と、悟の足が接触した瞬間。悟は大きく弾かれる。
「っナニ……グッ!」
地面に叩きつけられる悟だがすぐに態勢を整える。その間に既にナルトが綱手に接近されていた。
「オラぁ!!」
クナイで切りかかるナルトだが、綱手に人差し指一本で動きを制され額にデコピンを喰らう。額当てもはじけ飛ぶその威力は本物である。
「ぐわぁぁあ!」
数メートルは吹き飛んだナルトを尻目に再度悟は八門の段階を上げ綱手に突進する。
(雷神モードだとパワー不足か……っ?! なら……!)
チャクラコントロールをかなぐり捨てることで雷神モードを止め、八門を第六景門まで開放する悟。
「ほう、八門遁甲ねぇ……」
綱手は少し関心を示す。パワーに重きを置いた悟の拳は
綱手に軽く受け流される。
「っ!?」
「ふん、全くなってないな。所詮は下忍程度、
全ての攻撃を人差し指だけでいなされた悟は蹴りを放つために振り上げようとする足にデコピンを先置きされ足ごと弾かれる。
攻撃の出始めを崩され膝を着いた悟の胸元に、綱手が思いっきり力を溜めたデコピンが炸裂する。
「ゴッッ!!」
おおよそデコピンが放つものには思えない鈍い音が響き、悟が地面を土煙を巻き上げながら転がっていく。
自来也の元まで吹き飛んだ悟は自来也に受け止められた。
「づあ……痛っ……!」
「おっと……相変わらずの剛力だのぉ」
「キミ! 大丈夫ですか!?」
綱手の付き人のシズネは吹き飛んできた悟の様子を見る。
「……お前ら……何で火影の名にそこまでカミつく……」
ふとそう呟く綱手に何かを答えようとする悟だが、胸の痛みで言葉が上手く出ない。
「オレってばお前と違って……ぜってぇ……火影の名前を受け継ぐんだ……」
代わりとばかりに先に吹き飛ばされていたナルトが立ち上がりながら答える。
「火影は……オレの夢だから」
その言葉を受け、動揺を見せる綱手。ナルトの言葉は彼女の思い人たちを想起させ感情をぐらつかせる。
「……っ」
その綱手の隙に、ナルトは修行中の術を構える。
「……集中」
ナルトの呟きを聞きフォローに入るため、痛みをこらえて悟は体勢を整え影分身を1人出して雷遁チャクラモードになり、夜の闇を雷光で照らして突進する。
綱手は直ぐに正気に戻り、悟への対処を行う。
「……っふん、甘いね」
2人分の連撃を体捌きと人差し指一本で受け流す綱手に、悟はある感覚を得る。
(……この人を始め大蛇丸や、自来也さん。そしてイタチさんらの多くの強者たちと俺との差。何となくだが、掴めそうな感じが……っ)
「! こっちが影分身か」
人差し指を横なぎ一閃し、悟の影分身を防御の上からかき消す綱手。その攻撃の隙を突こうとした悟は八門・雷眼モードに切り替え、綱手を観察しながら柔拳と剛拳を織り交ぜて繰り出す。
(……雷遁チャクラを眼にだけ集中させるとは、この仮面のガキ。自来也が連れてるだけはあるねぇ)
その攻防は10秒にも満たない。しかしその中でのやり取りで悟は綱手から、『忍び』としての戦いの在り方を感じ取る。
(こっちが雷眼モードで動きを見て後出しをしているにもかかわらず、綱手さんはそれ以上の反応で対処を……いやこれは
不意な綱手の人差し指の突きの攻撃が悟に迫る。
(コイツッ!?)
綱手の攻撃に対して悟は……先と同じように回避を行う。しかし、その
(ほう、忍びとしての才を活かしきれていない印象だったのだがのぉ。こいつぁ……)
自来也も悟の動きの変化に気がつく。本来『戦闘』というものと縁の無かった世界の住人であった
戦いへの『慣れ』であった。
ここ数か月、時には強敵と時には近しい実力の者との戦闘をこなしてきた悟だが、その戦い方は『用意していたカード』を使うのみになっていた。予め用意しておいた忍術、戦法を繰り出すだけ。ガイやマリエとの修行を通し、悟は十分に力をつけていった。
(けれど、それだけじゃ不十分だったんだ。根本的に俺自身が戦いと言うもモノを勘違いしていた。強力なカードさえ用意しそれを出しさえすればそれで勝てると。飛雷脚や雷眼モード、威力や効果が優れていると自負するが、それを使う俺自身が……)
悟が自覚し身に着け始めているその感覚を言葉で言うなら慣れであり、技術としていうなら『見切り』と言える。パターンの予測、経験則、突き詰めるところは戦闘に対しての『嗅覚』。言葉を連ねればいくつか該当するものがあるがつまりは
勝負はノリが良い方が勝つ。ということ
そして
「チッ‼ 調子にノルんじゃぁ……っ!」
綱手の動きを雷眼モードで観察し、見てからの対処ではなく予測して予め対処し始めるようになった悟に痺れを切らした綱手が大きく一歩踏み込む。地面を砕くその一歩は綱手に攻撃の意図がなくとも衝撃波を生む。それに体勢くずされる悟の脇を
忍界一の
その高速で飛来するオレンジの影の行使する術に綱手は驚きを露わにする。
(こ……この術は!?)
驚きと、忍びとして根付いた直感が、咄嗟に綱手に左の拳を握らせ繰り出させる。
ナルトの渦巻くチャクラを纏った掌底と綱手の拳がぶつかり……
ナルトが大きく吹き飛ばされる。
後方で控えていたナルトの影分身がその吹き飛ばされた本体にぶつかり勢いを殺しながら消え去る。
そのナルトの様子を見ていた悟は大きく体を震わせる。
(今ナルトが放とうとしたのは螺旋丸なのはわかる。だが……アイツまさか……)
後ろで控えていたナルトの影分身がそこにいた理由。高速で接近してきたナルトの本体。そして悟が感じた直前のチャクラの反応……
「風遁を……烈風掌を……あのナルトが……使ったのかっ!」
原作ではナルトは螺旋丸と影分身を主軸に戦い抜いていた。その知識を持つ悟はナルトの予測していなかった成長に、身震いする。かつてミズキとの戦いで2人が行ったコンビネーションをナルトは影分身と行ったのだ。
「ほう、本体の自分を風遁で飛ばし飛び道具扱いとは……バカなことするのうアイツは! カッカッカッ!!」
嬉しそうに笑う自来也に、綱手が問いかける。
「自来也、お前四代目の螺旋丸を……こんな夢見がちなガキに教えるなんて……だから火影になるなんて戯言を言い始めんのさ」
「……ふむ、夢見がちだしガキなのはまったくもって同意はするがのう。綱手、お前に拳を握らせる程度には
「……っ!」
大きく吹き飛ばされたナルトを心配して、悟はナルトの元へ駆け寄る。
(今は俺の方が
ナルトに対してその成長の速さと、自分にはない戦いの最中における
「っそうだってばよ! ザレごとなんかじゃねぇ……俺は火影になってやる! このラセンガンとかいう術もすぐにでもマスターして……」
「ふん、無理だね! アンタなんかに「三日もありゃこんな術マスターしてやらぁ!」……フン言ったねガキ。男に二言は無いよ!」
綱手の無理、という言葉に触発されナルトは大きく宣言をする。その場のノリの良さは評価をするがその無鉄砲さに悟はナルトを支える手と逆方向の手で仮面を押さえて顔を振りため息をつく。
(……この子、苦労人気質な感じがして共感できそうかも……)
その悟の様子を見ていたシズネは心の中で悟に同情した。
~~~~~~
その後、ナルトに綱手は一週間で螺旋丸を習得してくるように告げる。その賭け事に出された質は、初代火影が持っていたとされる特殊な鉱石が着いた首飾りであった。
シズネはそのことに酷く狼狽えた。また、習得できなければ
「アンタのこのがま口財布、この有り金全てを私が頂く!」
戦闘中いつの間にか掏られていたナルトの財布を手に持ち綱手が告げる。その様子に
(……ナルトの財布……三忍にこき使われる呪いでもあるのか……)
と細目になる悟。あとは大蛇丸か……なんて思う悟を尻目に綱手は自来也に誘われ夜の街に消えた。
残された悟とナルト、シズネは取りあえず今晩の宿を取るために移動を始めた。
~~~~~~
自来也と綱手が酒を飲み始めて幾分かの時が立ち……。
「……そういえばあの仮面のガキだが……」
大切な弟とナルトを重ね、悲しみに浸っていた綱手は気分を変えるために話題を変える。
「ん……? ああ、あやつか。得体の知れなさはお前もすぐに気がついたかのぉ」
「得体の知れないって……おまえそんなやつを連れてるなんて、どうかしてるんじゃないのか?」
「ハッハッハッ! そうだのぉまあ所謂それが面白いと言う奴だ。根が悪い奴ではないとわかっているから今は様子見と言ったところかのぉ」
酒も随分と入り、呂律が怪しくなってきている自来也にうっとおしさを感じ始めた綱手は正気があるうちに会計をすませ屋台から逃げるように立ち去る。
屋台で何やら声を上げる自来也を遠巻きに見、自身の宿に帰ろうとした綱手はふと感じた懐かしい感覚に浸るため目を閉じる。
「おじい様……」
(居るだけで大樹のような安心感を周りにもたらした、あのおじい様のような雰囲気……。僅かとはいえなぜ、あの仮面のガキからそれを……感じたのか)
綱手は最初に悟の存在を知覚した時の感覚を思い出し、懐かしさと気持ちの良い夜風を堪能した。
~~~~~~
一方宿に着いた3人。着いたとたんにシズネは、綱手が賭けに出した首飾りについて熱弁を始める。
既に知っているその内容は聞いているフリをし、そもそも話の輪に入っていない悟はふと気になったことを確認するために目を閉じ集中する。
(あー、あー、もしもし聞こえていますか? 私はいま貴方の頭の中に直接……)
(何をふざけたことをぬかして居る……)
悟は念話を九喇嘛へと飛ばし、その反応はすぐに返ってきた。
そのままナルトの精神世界で対面する2人。
「よっす! 九喇嘛」
「……貴様らガキどもの気楽さにはワシも呆れるわ……なんだワシに用か?」
「いや先の戦いでさ、ナルトが風遁の烈風掌を使ったのが驚きで……。多分だけど教えたのは九喇嘛かな~って」
あまりにもフランクな雷の態度に、封印の柵の先にいる九喇嘛は呆れてため息をついている。
「……ああ、そうだ。お前に初めてちょっかいを出した
「ああ、なるほど……いやでいくら単純とは言えナルトに普通の術が……?」
「大概てめぇもナルトのことバカにしてるだろ……。まあ、確かに骨は折れたがな、貴様がうちはの者と戦っている最中にたっぷりと教え込んでやったわ」
そんな会話をする雷と九喇嘛、ふと九喇嘛はあることに気がつく。
「そういえばてめぇ、
「もう1人? ああ、黙のことかな。あいつは今、多分休憩中って奴かな結構前だけどかなり無茶したみたいだから……」
「ふむ……前から気にはなっていたが……どうやら
「原因? 何の話……」
九喇嘛の言葉に疑問符を浮かべた雷に九喇嘛は告げる。
「貴様たちが
「…………はい?」
雷は言葉の意味を理解できずに精神世界で動きを止め棒立ちになる。
(今、九喇嘛は何て……?)
呆ける雷に九喇嘛はさらに語りかける。
「観察しておったがやはり、
(うちは……マダラに千手柱間……? チャクラを持つ? 確かにこの前、黙は須佐能乎を行使していた。本人に確認できないうちは考えても仕方ないと思っていたが……俺は……黙雷悟はマダラの血縁関係にあるのか? いやでも千手……)
頭の中がぐちゃぐちゃになっている雷を尻目に、九喇嘛は納得したかのように言葉を連ねる。
「少し前に比べ、それらの質は格段に高まってきている。あと数年もこの調子でいったらお前のチャクラの質は想像もつかないことになっていそうだな。まあ
本来は他人の貴様には関係のないことだろうがな?」
「……は?」
「クククッ
「何故、それを……っ!」
「何となくだが察しがついてきたぞ。あのバカ狸ならいざ知らず、聡明なワシだからこそ気がつけたことだな」
得意げに鼻を鳴らす九喇嘛に、雷は息を荒げ動揺で膝をつく。
「じじいの気配といい、なにかの企みがあるんだろうがな。貴様はワシの目から見ても不憫だな、事情を知らされずに」
「おい待て! 企みとかじじいとか何の話だ! 俺が一体何……」
「□□□□……貴様らはそう呼ぶ存在のことだ」
「……あ? 何て言った?」
雷は九喇嘛に聞き返す。
「じじいのことだ。□□□□と呼ばれているだろう?」
「いや、何て言ってるのか聞き取れない……急にことばが……ってアレ……きゅう……ねむ、け……が」
突然ナルトの精神世界の床に倒れ伏す雷。その様子に九喇嘛は眉をひそめる。
「……質が悪いとはこのことか。てめぇ、いや違うなぁ。じじいとも共犯って奴だろう」
九喇嘛の言葉に、通路の奥から姿を現す黙。
「共犯か。確かにね、
「記憶の改ざん……その大元であるじじいの存在とその周辺の出来事を認識できなくしているってとこか」
「なるほど、さすが九尾だ。察しが良いね」
「てめぇに褒められても嬉しかねえぜ。
「弄ぶなんて……これも世界のためさ。まあ、少し前まで僕は自分の大切な人を守れさえすればそれでいいと思っていたけど。最終的に『あの人』を止めないことには結局はそのことにも意味なんてないことを再認識してね。目的のためにも
「……協力ねぇ。明かせない事情がある協力関係なんて都合のいい道具を使う方便もいいとこだな」
九喇嘛は機嫌を悪くする。人間の身勝手に他者を利用するその性質は九喇嘛にとって憎悪の対象であるからであろう。
「……最終的には真実を話すさ。僕にも少なからず罪悪感があるからね、その時が来たら……ね」
後ろめたさを感じたのか雷を抱えた黙は目を伏せ九喇嘛に背を向け歩きはじめる。
「……てめぇ、一体何者だ?」
九喇嘛の問いかけに黙は鼻を鳴らして答える。
「僕自身も正確には知らないけど……『あの人』の言葉が嘘でないなら僕は……
うちはマダラの……息子……かな」
淡白にそう答える黙に九喇嘛は驚愕を露わにする。
「……なるほどな、てめぇが気に食わねぇ理由がはっきりしたぜ」
「そうかい、まあ本当にそうなのかは僕も確かめたわけじゃないから知らないけど……。この身体に千手柱間のチャクラがあることも
そう言い残し乾いた響かせたまま黙はナルトの精神世界から姿を消した。
「歪か……、ちっ……事情を知らずに当たり散らしてたワシが悪い見てぇに感じてヤな気分だぜ……」