目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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67:とある輪廻の始まり

 

 朝、宿の窓から差し込む太陽の光が降り注ぐ。その明るさに少しの眩しさを感じた黙雷悟はうなりながら、仰向けに寝ていたその体をゆっくりと起こす。

 

「……うう……うん? あれ……俺っていつの間にか……寝て……たか……?」

 

 頭が冴えない中、悟が周囲を見渡すと酒瓶がいくつも転がっている。そして自身と同じく宿で用意されていたベッドではなく、畳の上で酔いつぶれている人物が悟の目に入る。

 

「う~ん……つっ綱手さま~これ以上賭け事にお金は~っ……むにゃむにゃ……」

 

 綱手の付き人、シズネが酒瓶を抱いて寝ている様子に悟は一瞬自分の服装に気を向ける。

 

「っ! ……いや、流石に()()()()()はないか……少し、いやガチで焦ったぁ……」

 

 そう言いながら、ため息をつき身支度を整えようと被ったままであった仮面を取りながら洗面所へ向かう悟。昨日の記憶をたどりながら、蛇口を捻り顔を洗う。

 

(……昨日は確か、綱手さんと会って原作通りにナルトが一週間以内に螺旋丸を習得する流れに……その後はシズネさんとナルトと宿を取って……それから?)

 

 顔を洗い終え、備え付けのタオルでひとふきしたことでさっぱりした感覚が悟の記憶を思い起こさせる。

 

(ああ、そうか。ナルトが風遁を覚えたことについて九喇嘛に聞いて、()()()綱手さんの話を聞いたナルトがそのまま熱くなって修行に行っちまって、残された俺とシズネさんで世間話をしていたら……)

 

「このありさまか……俺は酒飲んでないはずだが……いまいちにシズネさんと話していた内容を思い出せないなぁ、場酔いでもしたのか俺?」

 

 記憶をある程度思い出した悟は部屋に広がる光景を目にして、昨日のシズネの様子を頭に浮かべる。

 

「朧気だが……まあ、苦労人そうだしな。色々愚痴りたいこともあったんだろう……さてこの部屋、流石に片付けるか」

 

 思い出せるのは酒を煽りながら泣きべそをかくシズネの様子だけであった。悟は会話の内容を覚えていないようだが、流石に気の毒に思い部屋に転がる酒瓶などの片づけをしながらシズネを起こして身支度を整えさせた。

 

 

~~~~~~

 

 

「たはは~~っ……面目ないですね……。大人の私があんな様を晒してしまうなんて……ホント……ハハっ……ホント……」

 

 すっかり目を覚ましたシズネは、昨晩のことを覚えているらしく顔を赤らめ恥ずかしがっている様子を見せ落ち込む。

 

「大丈夫ですよ、まああまり抱え込むのも良くないですから……どうしますか朝食も済ませましたしシズネさんは綱手さんの所へ?」

 

「ええまあ、そうします。……所で自来也様が見当たらないようですが、悟君達と宿を共にする話ではありませんでしたか?」

 

 シズネの疑問に悟は「そういえば」と思い、自来也がこの場に居ないことを不思議に思う。

 

(流石に原作でここに自来也さんがいたかどうかまでの詳しいことは覚えていないしなぁ、多分酔いつぶれてどっか別の場所で寝泊まりしてるオチだろう)

 

 楽観的に考える悟は

 

「別に気にしなくていいですよ、そのうち合流できるので。それじゃあ俺はナルトの様子でも見に行ってきます」

 

 そう言い残し、宿から姿を消した。

 

 残されたシズネは部屋の隅に片付けられて寄せられた酒瓶を見て呟く。

 

「この年にもなって……みっともないことしちゃったなぁ……悟君は何だか甘えたくなる感じがしてつい愚痴をこぼしちゃったし…………っさて、クヨクヨしてられない! 私も綱手様の所に向かわないとっ!」

 

 二日酔いに頭を痛めながらも、シズネは気持ちを切り替えるために自身の頬を叩きその場を後にした。

 

 

~~~~~~

 

 町外れの荒れ地。悟が大雑把に感知能力を働かせれば、すぐにナルトの居場所を探り当てることが出来た。

 

「おお、やってるやってる。昨夜からぶっ通しだろうな、俺もやりがちだけど流石はスタミナお化けさんだな」

 

 崖の上から様子を伺う悟は眼下に広がる、枯れ木の群に螺旋丸をぶつけ続けているナルトを目にする。自分もスタミナにある程度の自信があるのと、割と無茶をするタイプなので一夜ぐらい通しで修行をすることに違和感を覚えていない悟はナルトに声をかけるどうかを考えていた。

 

(……ぶっちゃけここで、『影分身使えば楽だよ!』って言えばそれで解決何だが……それじゃあ、今後のナルト自身の身にならないよなぁ)

 

 悟が考える()()の様子を思い、下手に答えを与え続けてしまうとかえってナルトのためにならないかもしれないと考えた悟はアドバイスをしないことにしてその場からそっと姿を消す。

 

 経絡系の痛みに震える手を抑えながら修行を続けるナルトの中、悟に気がついていた存在は目を伏せる。

 

(あの様子……昨夜のことは覚えていない……か。ワシの考えが正しければ、あのうちはマダラの息子と自称する方ではなく、雷と呼ばれておる方が今のところは主人格のように見える。……が、何者であろうとじじいの存在が関わっている以上今後碌な目には会わないのは火を見るよりも明らかだろうな……。フンッ……このワシが他人の心配とはな、絆されたような気がして気に入らん。ナルトの奴も、しばらくワシに構っている暇もなさそうだしな……寝るか……)

 

 

~~~~~~

 

 

 静かな町外れの森の奥、妙に頭がスッキリしていない悟は1人座禅を組んでいた。

 

(試したい術とか動きとかはあるけど、それ以前に自然エネルギーを如何にかして利用するかの手立てが欲しいな……っと思えば今はこうして座禅するしか当てがないわけで……自来也さんも何か見つからんし、俺は俺のできることをするしかないか……)

 

 1人瞑想に集中する悟。前回の修行でコツを掴んだのか早くに雑念を振り払った悟はより深く……瞑想に耽る。

 

 意識が溶けてゆき、自身の感覚を感じられないほどに『精神』に潜り込んだ悟は夢を見たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『一度目』

 

 

 

 最古の記憶、思い出せるのは僕に微笑みかけてくれる彼女の……マリエさんの笑顔だった。

 

言葉も碌に覚えていない僕が、彼女を始めて笑顔にしてあげられたのは名前を呼んだ時だったか……正直本当に始めの始め、特に物心ついた辺りの記憶は今では朧気だ、

 

……それが()()なんだろうけどね。

 

 僕には本当に『才能』というものが無かった。同年代の孤児院の子と比べてもそれは歴然としていた。だからだろう、マリエさんも忍びという道を僕には勧めず、何も知らない僕もそんな道があるとは思いもせずに日々を過ごしていった。

 

 そんな、なんて事のない甘えた日常の中。数年も経てば僕もそれなりに施設の手伝いをするようになっていた。当時は里の仕事をする器量などなかったから只、家事や施設の手伝いに励んでいた。まあ、世界に恐怖を感じていない僕は()ほど非常識な手伝い方とかはしていなかったよ。

 

 ある日に施設に普段見ない来訪者が現れた。飄々とした口調、額当てで隠していない片目を半目にしながらその男性はチケットの様なものをマリエさんに手渡していた。マリエさんは照れているのだろうか……その男性はふとこちらを見ると目線が僕とぶつかる。彼は何とも言えないような眼をして、そのままマリエさんに頭を下げて施設を出ていった。……マリエさんが懐かしむようにそのチケットを握りしめていた様子は今でも忘れない。

 

 そのチケットは所謂「座席」を取っていたものであった。予約とでもいえばいいのか、二席分を予め確保していたらしい。何の座席かって?

  

 

  『中忍試験』

 

 

 僕と言う存在にとってその日は本当に、本当に()()()だ。()()()()()()()()中でその日をどれだけ過ごし、自分の無力さを感じてきたか。……まあ、本当に無力だったからしょうがない。いやそう思い込まないと心が前に進むことを諦めてしまう、それだけなんだ。

 

 ()()()その日は、とても楽しかったよ、途中までだけどね。同年代の子どもたちが、己の信念や誇りをかけて戦う姿はとても……良いものに感じた。当時の僕には到底できそうにない次元の戦いを観戦し続けて……興奮する僕をマリエさんは暖かい目で見ていた。

 

 そして……黒髪の少年が雷を纏った突き手を放った辺りで会場に異変が生じる。僕もその異変……幻術の術中にはまり、意識を失くすがすぐに起こされる。マリエさんが幻術返しをしてくれたのだろう。会場が木ノ葉崩しに参加する敵の忍びの襲撃に合う中、マリエさんは痛むのか頭を押さえながらも僕を守るように抱きしめてくれていた。

 

 不安がっている僕に彼女は声をかけてくれた。

 

『貴方のことは、ちゃんと私が守って見せる。だから泣かないで悟ちゃん』

 

 苦しそうな彼女の顔を見て何も知らない僕は、自分の無力さを始めて痛感した。その直後、僕たち二人を狙う忍びが現れた。その忍びの襲撃を受けそうになった瞬間、手に岩を纏ったマリエさんが反撃を……()()()()()()

 

 相手の頭を打撃で砕いたマリエさんは、息を荒げて膝を着く。そして

 

 僕の意識が途絶えた。

 

 気がつけば、既に全てが終わっていた。木ノ葉崩し、その全てが。僕は目を覚ました病院で、マリエさんを探した。非力な僕は唯々、泣きながら彼女を求めて彷徨い……ウルシさんが僕を見つけるまでまだマリエさんがこの世にいると信じて疑わなかった。

 

 ウルシさんから真実じゃない真実を聞かされた。他の情報は僕にとって興味がない、つまりは()()は死んだ、それだけだ。それだけのことを受け止めるのにどれだけの時間が必要だったのだろうか……いや、今もその時の『感情』は消え去っていないし受け止めきれていない。僕が彼女を失ったという事実は、僕の中から消えることはないのだろう……一生、僕が死ぬまで。

 

 それでも時間は止まることはなく、気がつけば16歳になっていた。マリエさんが居なくなった施設は人手不足が続き、下忍のウルシさん一人の稼ぎで維持できないほどになっていた。それでも当時の僕に出来たことは只管に、孤児たちの世話をすることだけだった。……本当に無力だったなぁ。

 

 その時の僕の心の支えは彼女の居た施設を守るという行為そのものだった……だから

 

 

 

 

 さらに数年後、一瞬で木の葉が壊滅したあの瞬間。僕はその時初めて……心が折れる感覚を得た。そう更地になってしまったんだ、全てが。

 

 

 

 

 奇跡的に瓦礫に埋もれながらも死ななかった僕は、絶望した。施設が吹き飛んだこともそうだけどウルシさんが僕を庇って死んでしまっていることに気がついて。何もかもが僕の手から消え去った瞬間でもあった。

 

 でだ……その後どうやら、とある金髪の少年がその里を壊滅させた犯人を倒したらしい。そしたらなんと死んでしまっていた人たちが生き返ったんだ。勿論ウルシさんも含めて。僕は喜んだと思うかい? その時の僕の心の中は一つの感情でいっぱいだった。

 

 怒り

 

 人が生き返ればそれでいいのか? 喪失を経験した心の傷は治らない。目の前で生き返ったウルシさんを目にした僕はその心のどす黒い感情を抱えたまま、支えになっていた施設の瓦礫を呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 その後里の復興が進み、少し経った頃。例の金髪の少年と会話する機会があった。なぜか顔面をボロボロにしたその英雄ともてはやされた少年に僕は聞いた。

 

 何故木の葉を壊滅させた相手を殺さなかったのか、と。その力がキミには備わっているはずだろうって。

 

 ……彼は悲しそうな顔をして答えたよ。

 

 「俺にも……良くわからない。正解ってのが何なのか。それでも前に進むためには……痛みを抱えていくしかないのかもな」

 

 綺麗ごとだと僕は彼を罵った。その後も何て言ったかなんて覚えていないけど、酷いことを言ったのは間違いないのだろうね。彼の仲間と思われる色白の少年が僕を彼から遠ざけた様子からもそう思い出される。

 

 その後……僕は、感情を持たずにただ淡々と生きていった。少ししたら忍界大戦が始まった。……本当に力のある人達はなんて身勝手なんだろうか。もう世界に興味を持たない僕は、ただただ最後()()が守りたかったであろうこの命だけを生き長らえさせるためだけに生きていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと光を浴びたような錯覚の後気がつけば、マリエさんが生きていた。施設も、里も壊れておらず皆が笑顔だった。そして僕には超人的な力が備わっていて……。

 

 人を、敵を拳の一振りで潰していった。逆らうものは何もいないまるで夢のような世界で僕は幸せを謳歌していた。

 

 失わずに済んだ世界。全てを思い通りに出来る力が僕にある世界。

 

 心の赴くままに、敵を殺し続ける。慈悲なんてない、必要がない。悪い奴を殺して何が悪い。敵を殺してこその英雄だろう。

 

 そんな僕を誰も否定しない世界。幸せなその世界がずっとずっと続くのだと思っていた。

 

 ある日。

 

 いつものように敵を殺した僕にマリエさんが何故か悲しそうな顔で語りかけてくる。

 

 「どうしてそんなことをするの?」

 

 「……こいつらが悪い」

 

 「何が悪いの?」

 

 「……人のモノを奪うことが悪い」

 

 「だから殺すの?」

 

 「っ何が言いたいんだ! いままでもっ! これからもっ! マリエさんはずっとずっとずっとずっと……僕の味方だろう!?」

 

 「ええ、私は悟ちゃんの味方よ。そう悟ちゃんの。……貴方は

 

 

 

 

  誰?

 

 

 

 

 そういうマリエさんに向かって僕は、拳を振り上げ…………

 

 

 

 

 

 

 

 気がつけば、僕は繭の様なものの中で目を覚ました。……強くいつの間にか握りしめてた拳には僕の血が滴っていた。

 

 

 

 

 

 

 何のために生まれて、何をして生きるのか。

 

 僕は答えられない人間になっていた。

 

 

 

 

 忍界大戦から数か月後。

 

 

 ウルシさんと僕は、薬師カブトと言う人間が営む里外れの施設で働くことになった。ウルシさんは戦争で怪我を負い、忍びは完全にやめたそうだ。

 

 

 

 

「やあ、君が黙雷悟君だね。話は事前にウルシから聞いてるよ。これからよろしくね」

 

「……はい」

 

 

 彼への第一印象は「人間ぽくない」だった。……凄い、蛇? みたいな顔をしていた。

 

 その後は何度も彼と話をする機会があった。

 

「そう……か。親を……木ノ葉崩しで……」

 

「本当の生みの親って訳ではないんですけどね。……数年も前の事なのに、彼女の……マリエさんのことが忘れ……なくて……っ」

 

「……忘れる必要なんてないよ。大切な人のことはちゃんと覚えていないとね、そのまま自分を見失ってしまう。その人が愛してくれていた自分を見失わないことが、難しいけどとても大切なことなんだ」

 

「失礼ですけど、カブトさんも……そういう経験が……?」

 

「……そう、僕も自分を見失っていた。今の君のように、自分を語る言葉を失くしていたんだ。まあ、ある忍びに説教されて思い出せたんだけどね。だから、君のことは()()()()()でほっておけないのさ」

 

 カブトさんとは何だか気が合った。カブトさんも良く僕の事を気にかけてくれていた。

 

「……君が良ければだけど悟君。組手を……してみないかい?」

 

「組手……ですか? 僕はそういう戦うとかいったことはしてこなかったので……ちょっと」

 

「大丈夫、僕が教えてあげよう。気晴らしだと思って! 遠慮はいらないから」

 

「おいカブト……悟に無茶させんなよ~」

 

 カブトさんの提案に驚き尻込みする僕を見てウルシさんが庇いに来てくれる。……小さい頃は運動が苦手で忍びなんて慣れないと思っていた。ウルシさんもそれを知っている。まあだからこそ、力を持つ『忍び』が羨ましくもあり……。

 

 そして実際に組手をカブトさんと始めたとき、僕はある異変に気がつく。

 

 「戦う」と思い、身構え、息を大きく吸うと何故だか懐かしい感覚に心が侵食される。僕のモノではない誰かの感情。

 

 

「とりあえず一発僕に殴りかかってきて御覧」

 

 そして軽く構えるカブトさん目掛けて、僕はとりあえずがむしゃらに拳を振るう。がむしゃらのはずなのに、まるで知っていたかのように自然に僕の体は動き……。

 

 鋭く乾いた音がパンッと響く。自分でも驚くほど、スムーズに体は動きカブトさん目掛けて繰り出した拳は受け止めた彼を後ろに後退させるほどの威力があった。

 

 意外も意外。自分でもよくわからない感覚に戸惑う僕に、カブトさんは驚いた表情を見せながらも顔の眼鏡を整えながら声をかける。

 

「へ~、筋はかなりいいじゃないか。ウルシの話だと昔はあまり運動できないほうだと聞いていたけど。正に今の一撃は『忍び』のようだったよ」

 

 カブトさんはそう言うと、少しワクワクしているのか声の調子を上げて僕に組手の手順を説明し始める。

 

 ……彼は知識を教えるのが好きなのか、何かの解説をしているときはかなり早口になっていたっけ。

 

 それから晴れて僕はカブトさんの弟子となった、正式なモノではないけどね。

 

 

 

 幼年期、力がないと思っていたはずの僕は『忍びの才』に目覚めていく。カブトさんも元の忍びとしてなのか、僕に技術を教えることにやりがいを感じていたようだ。何でも覚えていく僕に嬉しそうに色々教えてくれたっけ。

 

 一年もしないうちに僕は忍びとなり、カブトさんの施設のために働きにでていた。

 

 その後も、数年ごとに色々と事件は起きるが僕はそれらに関与はせずにイチ忍びとして慎ましく生きていった。

 

 

 

 

 忍界大戦から大体15年は過ぎたかな。ある日施設に同じ顔の少年が大人数引き取られた。同じ顔とは言うが体系とかは少し違っていたので、カブトさんやウルシさんとともになんとか名前を絞り出して一人一人つけていく。

 

「君達は今日からここで暮らします。つまり今日から僕が君達の父親になります。僕の名前はカブト。遠慮はいらないよ」

 

 そういうカブトさんはとても優しそうな表情をしていた。

 

 ふと気がつけば、彼ら……皆で『シン』という名前というのか、そういう団体だと説明されたっけ。彼らが僕をジッと見て

 

 

『……父さん?』

 

 

 彼らはそう僕に問いかけてきた。

 

「いや違っ…………わないか、そうだね。僕たち、カブトさんやウルシさんがこれからは君たちのお父さんになるよ」

 

 我ながら、30歳を過ぎたにも関わらず上手い事説明とかできないのは恥ずかしいと思った。口下手なんだ、僕は。

 

 

 時間はまた少し過ぎて、彼らとの生活にも慣れてきたころ。

 

「父さん、洗い物終わった」「父さん、薪割終わった」「父さん、下の子の面倒見た」「父さん」「父さん」「父さん」…………

 

 シンらは僕だけを父さんと呼び、何故だか結構なついてくれた。カブトさん達相手だと割と普通なのに、僕相手にはとても甘えてくる。

 

 台所で彼らに囲まれた僕は苦笑いを浮かべる。

 

「わかった、わかった。皆偉いよ、だけどいっぺんに来られても僕は1人だからね、1人1人来て欲しいな。そうした方が僕は嬉しいよ」

 

 そういうと、シンたちは皆で集まり相談をし始め……

 

 僕の前に綺麗な列が出来た。

 

「そう言う訳じゃ……まあ……良いか。 ホラっ皆良くできました」

 

 仕方なく彼ら1人ずつの話に耳を傾け、1人1人褒めて頭を撫でていく。

 

 

 こんな生活にも悪くはない。……そう思い始めていた。

 

 

 

 

 なのに

 

 

 

 

 

 その夜

 

 

 カブトさんと珍しく、晩酌……酒は飲まずに茶で済ませていたけど、静かに机を挟んで語り合っていた。

 

 するとシンが1人、慌てたように僕たちの元に来る。

 

「どうしたんだい? 9時はとっくに過ぎて」

 

 そういうカブトさんに目もくれず、シンは僕に抱き着き叫ぶ。

 

「父さん逃げて!!!!」

 

 

 瞬間、爆発に吹き飛ぶ施設。

 

 

 

 

 

 

 

 何が起きたのか。

 

 

 衝撃に眩む感覚に戸惑いながら、火遁の術による爆発だと思われる衝撃から直ぐに立ち上がり、自身の上にかぶさっていたものに目を向ける。

 

 焼けただれた……息子だったものが、目に入る。爆炎から僕を庇ったのだ……。

 

 

「そん……なっ! 何でっ!?」

 

 

 僕の口から出る言葉は、疑問でしかない。何がどうなっているのか、その時の僕にはわからない。

 

 次第に火事になった施設から、子ども達や職員を逃がすシンたちが飛び出していく。

 

 放心している僕はカブトさんが居ないことに気がつく。辺りを見渡しても見つからず、取りあえず僕はシンたちに里に逃げるよう指示を出す。

 

 シンたちは数人を残して皆、避難を優先してくれた。何故か残る数名に僕は声をかける。

 

「君たちも早くっ! カブトさんを見つけたら僕も直ぐにいくから」

 

 シンたちはじっと構えて、燃える施設に視線を送っている。そこで再度、施設が爆発で吹き飛ぶ。

 

 跡形もなく吹き飛び、火を纏った施設の破片が周囲の森に伝搬していく。そんな地獄のような光景の中、施設のあった場所に佇む人影が見えた。

 

 

 より蛇の様な姿になり、角が生えたカブトさんの首を青いチャクラの塊の手ようなものがワシ掴みにしている。

 

「マダ……ら…………」

 

 そう呟いたカブトさんの首を青いチャクラの手が砕き、胴と分離させる。

 

 

貴様ああああっ!!!!!!」

 

 

 その光景を見た僕は、怒りに燃える。そして……

 

 

 視界が一変する。

 

 

 チャクラが目に見えるようになっていた。

 

 

 そのまま、直ぐにそのカブトさんを殺した人物に襲い掛かろうとする僕だが

 

 

 シンに止められる。

 

 

「な……っ!?」

 

「父さんは逃げて」

 

 簡潔にそういうシンたちは、その青いチャクラに突っ込み何やら術を行使して戦う。それでもものの数秒、不意に現れた巨大な刀がシンたちを両断していく。

 

 

 

 

 

 

 

 許せない許せない許せない

 

 

 

 

 

「何なんだ!!!!! お前はっ!!!」

 

 

 圧倒的な力の前に、震える。けれど怒りが僕をその人物に対しての復讐心を煽る。

 

 

「…………強いていうなら『親』……だろうな」

 

 

 青いチャクラを霧散させて現れた人物は、まるで生きていないと感じさせるほどの空虚な表情をしてそう答える。

 

 

「っふざけるなぁああああ!」

 

 

 怒りに狂う僕は火遁・豪火球の術を男に浴びせる。

 

 何度も何度も何度も。

 

 チャクラが切れ、膝を着く僕は目線を男の居た場所へと戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬるいな……」

 

 

 

 

 

 

 男は生きていた。あの青いチャクラを再度纏い全て防いでいたのだ。

 

 男は幽鬼の様な印象を持たせたまま、こちらに近づいて来る。

 

 チャクラの切れた僕はそのまま男に首を掴まれ持ち上げられる。

 

「グ……ゾッ死ね……し……ねっ!」

 

 何とか呪詛だけを呟く僕に男は、拳を腹に突き立てる。

 

 一瞬の痛みの後、腹部に熱がこもる。

 

 血があふれ出て、自身の命が流れ出るのを感じ取る。

 

「やっとだ……これが……おれの……俺たちの……」

 

 男の呟きは、歓喜の色に染まり僕を地面へと叩きつけ腹部の溢れる血をすするためなのか顔を僕の腹部に押し当てる。

 

「……ヅ……あ゛……ぐっ……」

 

 手で押しのけようとするも、男の力にもはや抗う術はない。

 

 一通り僕の血を啜った男は、顔を上げ嬉しそうに高笑いをする。

 

「ぐへッ……ぐっふふふふ、ハハハハハハハハハハっ! ついに、俺はっ!! 俺はっ!!!! かん……完全に……柱間と一つにぃぃ!!」

 

 男は巨大な青い鎧武者を発現させ、その翼をもってして木ノ葉へと向かう。ついでと言わんばかりに連れられた僕の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辛うじて覚醒した意識は、音だけを拾う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……全て終わりなのか……全部全部……」

 

「まだ……だ。まだ最後の手がある」

 

「こいつか……? マダラが連れていた奴みたいだが……確かカブトのとこの……」

 

「ナルト……良く聞け……コイツを……」

 

 そこで何とか目を開けた僕の目の前に広がる光景は、火の海とかした木ノ葉だった。顔岩のあった場所から見下ろす里は文字通り火に呑まれ、上の街も完全に燃え盛っていた。視界は否応なく火を収める。

 

 傍に立つ声の元の二人の人物は絶望にくれた顔をしている。1人は良く知っている……七代目火影様だ。もう1人は……見たことのない黒髪の男性だった。2人とも血だらけであり、相当疲弊しているようすだ。よく見れば体も一部が欠けているように見える。

 

 2人の相談は終わり僕に近づいて来る。

 

「……目が覚めていたか。悪いがお前には、過去に飛んでもらう」

 

 黒い男は唐突にそう述べる。死にかけの僕に有無を言わさずに彼は言葉を並べる。

 

「方法も事情も詳しくは説明している暇はない。あと少しでここも……俺たちもマダラに見つかる。 里の生き残りも、俺たちで最後……そして過去に戻すには俺と、ナルト……この火影の力が必要だ。つまり過去に行けるのはお前だけ、無茶を承知で頼む、この惨状を……止めてくれ」

 

「俺たちは誰も……守れなかった。この場所にあった顔岩の……先人たちの意思を守れなかったんだ……。ハハッ火影失格だな……オレってば……」

 

「……ナルト……やるぞ」

 

「……ああ」

 

 2人は手を結び、2人で印を形作る。すると僕が横たわる地面に紋様が浮かび上がり……白い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと気がつくと、知らない空間に立っていた。

 

 

 目の前には、顔色の悪い座禅を組む老人が1人。

 

 

 

「お主……一体何者だ……六道の力を感じて様子を見に来てみれば、赤子が1人……」

 

 老人は何を言っているのだろう……

 

「貴方は……?」

 

 声を出す。出したつもりなのだが、何故だろう音として自分では認識できなかった。

 

「……ふむ。予測できるのは未来での異変……という所だろうか。自身を『大人』だと認識しているからこそここでは言葉を発せることができるのだろうが……」

 

 ごちゃごちゃと呟く老人に嫌気がさしてきた。なんだかとても眠い。

 

「ふむ、仕方があるまい。若者……いや赤子にそう言うのも……いや元は幾つかもまだわからんからなぁ。……ゴホンっまあ良い、まずはワシの名を名乗ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……我は安寧秩序を為す者……。名をハゴロモと云う。

 

さあ、お前の話を聞かせてくれ」

 

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