目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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70:叶えたいの事

「おーい、こっちだぁ」

 

「そのセットは此処においてくれ!」

 

「衣装の小道具足りてないわよ~」

 

 冷たい風が吹く大海原を行く船の上では『風雲姫』の映画のスタッフたちが船上のシーンを彩るための準備を進めていた。雪絵も死んだ表情で風雲姫に成るための化粧を受け入れている。

 

「あの姉ちゃん何か苦手だってばよ……」

 

「ハハハッ護衛対象に苦手も何もないだろう、ナルト」

 

 その様子を眺めていたナルトの感想に悟が笑う。

 

「そうだぞナルト、これはAランク任務。苦手な相手だろうと、命をかけてでも依頼人達を守るのは忍びの常だ」

 

「そうなのよねぇ……Aランク任務……ってことは波の国の時と同じ……」

 

 カカシが付け加えたその言葉に反応を示したサクラが顔色を悪くする。それは彼女のなかでは未だ良い思い出に成りえていないことなのであろう。

 

「ああ、僕と戦った時の任務はAだったんですねサクラさん」

 

「……ホントのホントはCランク任務だったのよ。下忍が急にやるには荷が重いわよ、しゃんなろ~……っていうかそのとき敵だった白が今じゃ仲間なんてのもおかしな話ね……」

 

「僕もまさかもう一度こうして忍びになろうとは……ふふふ、今回の任務も実はSランク相当だったり

 

「やめてよぉ、白!! 縁起でもない……」

 

 女子組の話の内容に乾いた愛想笑いを浮かべる悟。

 

(Aランクと言えば相当な任務だけど……ナルト達が漫画でこんな感じの任務受けてたなんて場面あったか? 俺の存在が影響を与えてって奴か、それとも俺が忘れてるだけか……はたまた……)

 

 悟は自身の原作の知識とかけ離れた現状に少し不安を感じつつも、和やかな班員たちの様子に仮面の下で小さく笑みを浮かべる。

 

 ふと悟は船の後方の人がいないスペースでサスケが海を一人眺めている様子に気がつく。

 

 周囲では撮影の準備が出来たのか、スタッフたちの間に緊張の色が見え始めていた。

 

 段々と静かになる周囲をよそに、悟はスタスタと海を眺めるサスケの元へと向かう。

 

「シーン23、カット6、テイク1、アァクション!!」

 

 助監督の合図を背に撮影が始まったのか、雪絵の風雲姫としてのセリフが聞こえる中、悟は船体の縁に両腕を置いた姿勢のサスケに語りかける。

 

「どうしたサスケ? 1人離れて」

 

「……いやなんでもない、特に理由なんて

 

「ハイ噓。俺相手にごまかしがきくとでも思ったか」

 

 撮影中なので距離が十分に離れてはいるが気を使い小声で喋る2人。縁に背中を預けた悟は仮面の奥をジト目にしてサスケの側頭部をデコピンする。

 

「痛て……ちっ、めんどくさい奴に目をつけられたな」

 

「クックック……シカマルみたいなこと言ってんなwww …………あ~~、何となくだけでども、サスケが何で悩んでるのか当ててみようか?」

 

 鬱陶しそうにするサスケに悟は提案を出す。

 

「フンっ……やってみろ、どうせ当たる訳が

 

 

 

 

 

「大蛇丸のことだろ?」

 

 

 

 

「……」

 

 2人の間に沈黙が走る。遠くで雪絵の悲痛な演技の声が聞こえている。

 

「……沈黙は肯定とはよく言ったもんだ。むしろ驚きを露わにしない分、流石サスケと言ったところかな」

 

「……」

 

 顔を自分とは反対方向に向けたサスケに悟は優しい声色で語りかける。

 

「まあ、お前が悩んでることに俺が正解がこうだ! とかこっちの方が良い! とか言える訳じゃないけど……10年近く……ん、そんぐらいだよな? まあ、そんなぐらい仲の俺が言えることは……」

 

 少し茶化しながらも悟は一呼吸置く。

 

「自分のやりたいようにやったら良いと思うぜ?」

 

「……」

 

 相変わらず黙ったままのサスケに悟は話を続ける。

 

「俺も最初は、サスケにもっといい道を示せるんじゃないかぁって……ちょっと傲慢……? になってた時があったんだけどな、今思えばそれって、サスケの意思の自由を尊重して無いような気がして……何だか俺の忍道に反するようなことしてたなぁって」

 

「……お前の忍道は『自分のしたい事を貫く』って奴じゃなかったか?」

 

 ボソッと口を開くサスケに悟は仮面の下の表情を明るくして語る。

 

「そうなんだけど……突き詰めれば『自由』であることに重きを置いているんだと思う、俺は…………多分」

 

「フッ自分のことなのに、多分かよ」

 

「案外わからないものさ、自分のことなんて。だからこそ、自分が何をしたいのか探っていくことが人生であり……夢なんだと思う」

 

「……」

 

「夢は到底、他人に与えられるモノじゃない。誰かしらの影響は受けるにせよ、最終的に自分が頑張って思い描いて、そこにさらに踏み込んで……ジャンプすることに意義があると思うんだ。叶う叶わないはともかく」

 

 しんみりとした声色になり始めている悟の様子にサスケは顔を悟に向けて話をじっと聞いている。

 

「だからこそ、俺はサスケがどんな判断をしようが……応援しようと思う」

 

「……俺の夢が、もしお前の障害になったとしてもか?」

 

「ああ、もしそれで俺の夢が潰えてしまっても良いと思ってるよ……まあ、『今』の俺は諦めが悪いからな。潰れた夢の破片を集めて、何度でもチャレンジしてやるさ」

 

 にししと笑う悟が目線をサスケと合わせる。

 

「どうだ? 少しは心の整理に繋がったか?」

 

 鼻で笑ったサスケは少し笑みを浮かべて答える。

 

「……全くダメだな。お前の人生設計をクソ真面目に聞かされても面白くもなんともない」

 

「おまっ……!? 人が恥ずかしいことを真面目に言ってやったのに……っ!」

 

「だが……ありがとう……俺は……『俺』をもう少し知る必要がありそうだと気が付けた」

 

 サスケからの滅多にない感謝の言葉に、悟のにやけた目線がサスケの顔を射抜く。その様子にサスケは顔を逸らした。悟からはサスケの耳が赤くなっているのが少しばかり見えていた。

 

(こいつはいつもそうだ。俺の心の内を見透かすように……事情を全て知っているかのように振舞う……まるで……)

 

 悟について考えを巡らせようとするサスケに、悟はサスケの背中を叩き映画の撮影を見学しようと誘う。

 

「俺ってこういう収録とか演技してるの見るの結構好きでさ~」

 

「……そうだったのか? 初めて聞いたな」

 

「あれっ言ったことなかったっけ? 俺も昔は演劇のサ……あっ……いや何でもない、取りあえずさっさと行こうぜ!」

 

 早口で喋り、急に話を切り上げる悟。

 

「……演劇のサ? 俺も昔はって……十代前半の俺たちが使うような言葉じゃねぇだろ」

 

 1人サスケは疑問を口にしながらも、やれやれといった様子で悟の後に続いたのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 翌朝、早朝

 

 まだ空が白みがかり、日が射していない時間に二つの影が甲板で会話をしている光景があった。

 

「しかし、忍びの悟殿がこうも演技に興味がおありとは……」

 

「いやあ、忍びとしてやはり演技の上手い下手も重要じゃないかって思ってるだけなんですよ~まあ、命のやり取りに緊張してろくに演技何て出来ないですけどね」

 

 悟と会話するのは三太夫であった。悟は普段の習慣から朝早くに目が覚め、船のマストに足を張り付けてチャクラコントロールの修行をしていたのだが、ふと甲板に現れた三太夫が気になり自分から声をかけたのであった。

 

 三太夫も雪絵のマネージャーとしての業務から、早朝から働くことになれているためか、2人は自然と演技についての会話に夢中になっていた。

 

「それにしても、やっぱり雪絵さんの演技……凄かったですね~、真に迫るものがあるというか……やっぱり生でみると迫力が違いますねぇ!!」

 

「ふふふ、随分と楽しそうに語りになりますね。お面のせいで少し不気味な子だと思っていましたが、こうして話してみるとやはり年相応でいらっしゃる」

 

「年相応……ッ……それはある意味年相応じゃなくて、落ち込むというか……」

 

 ハハハっ……と乾いた笑いをする悟に、三太夫は疑問符を浮かべた。

 

「ともかく、あれ程の演技力……才能だけでなくて余程の努力をしてきたんだろうなって、良ければご指導ご鞭撻をお願いしたいぐらいですよ」

 

「雪絵様は誰かに意見をすることがあれど、基本的には人と関わるのをお嫌う方なので……そういったことはなさらないかと」

 

「ちぇ……やっぱりそうか……そう言えば演技の時の涙、あれも三太夫さんが点してましたよね? 本来ならマネージャーじゃなくて他のスタッフの人たちがやることだと思うんですけど、それも人とのかかわりが嫌だからとか……ですか?」

 

「ええ、この目薬を点すお役目もマネージャーの私以外にはさせたくないと仰っており……メイクなど専門の能力がいる作業は口を閉じて素直にお受けに成るのですが……ハハハ」

 

 そういって苦笑する三太夫の様子は、しかし雪絵の存在を誇らしく思っているのかまんざらでもない雰囲気をまとう。悟は三太夫が握りしめている目薬と、それに紐で繋がれている脇差しに目を向ける。

 

「その脇差しも、雪絵さんの護身用としてお持ちに?」

 

「ええまあ……しかし悟殿や、あのカカシさんの部下の子どもたちの動きを実際に見てみると、私程度が脇差しを持っても雪絵様をお守りできるかどうか……」

 

「ああ、あいつらがスタント兼護衛ごと三太夫さんも蹴散らしちゃった奴ですね。あれはホント……すみませんでした」

 

「いえいいのです。私としてもこんなにもお強い方たちに雪絵様を護衛してもらい心強い限りで……ん?」

 

 会話の最中、ふと三太夫が言葉を止める。会話相手の悟の様子が少し変なことに気がついたのであろう。

 

「どうかされましたか、悟君?」

 

「いや…………何だか,違和感というか……変な感覚が……」

 

 三太夫の心配をよそに、悟は辺りをキョロキョロと見渡す。

 

 悟の視界には海と、遠くの方に巨大な氷山が映るのみであった。

 

(何だ、この感じ……冷たいチャクラのような……前にもこんなことがあったような……? 確かナルトが封印の巻物を盗み出したときの……)

 

 妙な気配を感じた悟が警戒心を募らせる中仮面を着けた白が不意に姿を現す。三太夫は音もなく現れた白に「ひえ」と小さく驚きの声を漏らす。

 

「おはようございます、悟君……あの……妙な気配みたいなものを感じませんか? 近くで寝ていたナルト君も叩き起こして聞いてみても何も感じないといっていたので、君ならと思い……」

 

「白も『コレ』を感じるのか? いや俺も今しがた気がついたんだが……ってナルトもついて来てたのか」

 

 少し神妙に会話をする悟と白に、眠そうな顔に額当ても着けていないナルトが緊張感もなく欠伸を噛み殺しながら声をかける。

 

「何だってばよぉ……朝っぱらから……何か滅茶苦茶さみいぃしよぉお……」

 

「よう、ナルトおはよう。美人の白に起こされてまんざらでもないだろ?」

 

「目ぇ開けたら至近距離に仮面があったら、びっくりするわアホぉ!! 白も悟も、仮面着けてるから見た目物騒で……って」

 

 悟と子気味イイ感じの会話をしたナルトは何かを見つけたのか、「おおおおおおお!!??」と大きな声を上げ、悟と白の間を走り抜け船の縁に乗り上げるように身を乗り出す。

 

「何か見つけたか!?」「どうしましたナルト君!?」

 

 警戒を強めた悟と白の呼びかけにナルトが答える。

 

「何だぁ!! あのでっけぇえ氷の山!!」

 

「……」「……」

 

 ナルトが大きなリアクションを取って驚いて見せたのは、先ほどから海に見えていた氷山が原因であった。

 

「あんなの見るの始めてだってばよ! カキ氷何杯分あるんだぁ~!!」

 

((……警戒して損した))

 

 妙な気配のようなものを感じる2人とはよそにはしゃぐナルト。その声に続々と人が集まりはじめ……

 

「あちゃ~こりゃ船の進路とぶつかってるねぇ~」

 

 めんどくさそうにそう呟くカカシ。

 

「うっわぁ……さっむ……もうちょっと着るもの持ってくるんだったわぁ……」

 

「ほぉ……随分とでかい氷の山だな」

 

 寒がるサクラとサスケも姿を現す。

 

 彼らの様子から、悟と白が感じている違和感を覚えている者はいない様子であり、

 

「取りあえず警戒は怠らずにいましょう」

 

 白のその提案に了解と返事をする悟であった。

 

 すると映画監督のマキノが、その氷山に上陸し映画の撮影を行うと叫び準備を進め始める。

 

(船は後で迂回させるとしても、その間の時間を撮影に中てるとは……ロケって大変だな)

 

 そう思いつつ準備に走り始めるスタッフたちの様子を眺めている悟は、はしゃいでいるナルトに目を向ける。

 

「俺が一番に上陸してやるぅ!」

 

「ふん……なにガキみたいに興奮してやがる……ウスラトンカチが」

 

「あ!? んだよサスケェ! あんなでけぇ氷の山なんて火の国じゃお目にかかれねぇんだぞ! 興奮して何がわりぃんだよ!?」

 

「うっさいわね……バカナルト」

 

 第七班のやり取りを見守る悟は、寒さでテンションの低いサクラに声をかける。

 

「サクラ、寒そうだが大丈夫か?」

 

「…………あんまり」

 

 ただでさえ早朝で、氷山もある気候にサクラはかなりまいっている様子であり、気の毒に感じた悟は自身の巻いている腰布をサクラに差し出す。

 

「ほら、俺は寒いの平気だからこれでも巻いとけ。ちょっとはマシになるだろ」

 

「えっいいの?」

 

「俺は寒さ熱さに強いからな、チャクラコントロール的な意味で」

 

「何それ羨ましい……アンタそういう小技好きよねぇ」

 

 そういうサクラの羽織る外套の下に、自身の腰布をまく悟。

 

「ん……ありがと悟。これ結構いい腰布じゃない? 触り心地も良いし」

 

「だろぉ? 俺も気に入っててさ」 

 

(確かそれってハナビさんからのプレゼント……とかいうのは野暮ですかねぇ……忍びとして実用的に使うのが間違っているとは言えないですが、乙女心的には複雑な心境です)

 

 その様子を微妙な視線で見守る白。そこにカカシが声をかける。

 

「ほら、お前たち上陸の準備だ。まあ、人数もいるし一人ぐらい船で留守番してても良いが……」

 

「カカシ先生、私船で待ってま~す」

 

 カカシの提案に即返事をするサクラ。よほど寒さに体調を左右されているのか、テンションがあからさまに低いのを隠せていない。

 

 サクラを船に残し、船が迂回して氷山の反対側まで回りこむまでその氷山に上陸することになった一行。

 

「こういうのが映画の神様が降りてきたっていうのかな、撮影としては最高のロケーションだろうし」

 

「フンッ……俺にはよくわからん。さみぃって感想と……敵が居たらどこにでも潜んでそうだと思うぐらいだ」

 

 上陸が進み、氷山の上に降り立った悟の感想にサスケが興味なさげに答える。

 

「悟に白、お前らいつも通りの装束だけど寒くないのか?」

 

「俺って火遁使えるし、薄っすらそのチャクラを纏えば寒さも平気なんだよ」

 

「僕は元々寒さに強いので……」

 

「チャクラを漏らしている状態ってのは感心しないけどねぇ……」

 

 テンション高めに上陸したナルトは、炭ストーブで暖を取りながら悟と白に疑問を投げかけその悟の答えにカカシがジト目で感想を言う。

 

「こんな大人数で移動してる状態に忍ぶもクソもないですよ、むしろ……ん?」

 

 撮影の準備が進み、氷山の小高い丘に悪者役の役者がスタンバイをしている場面に目を向ける悟。

 

 そのままチラッとカカシと白にアイコンタクトを送った悟は、すうっとその場から足早に離れる。

 

「サスケ……わかってるな?」

 

「……ああ」

 

 カカシの呼びかけに、サスケが答える。白もその場から姿を消し、そのやり取りに一人だけ追いつけずに疑問符を浮かべるナルトがストーブの前に残っていた。

 

 

 その後

 

 

 一行の映画の撮影が始まった。

 

「よく来たな、風雲姫!! 貴様らの命運もここまでよぉ!!」

 

「魔王!!」

 

 悪役と雪絵のやり取りのその直ぐあと。

 

 突然撮影に割り込む形でカカシが姿を現した。

 

「アンタ、何やってんだぁ!」

 

 助監督の声にカカシが起爆札付きクナイを悪役の後方の氷山と投げながら

 

「全員、下がって!」

 

 と周囲に忠告を投げかける。騒然とする現場に爆破された箇所から人影が現れ、声が響く。

 

「……ようこそ、雪の国へ」

 

「お前は……っ!」

 

 その人物以外の気配を感じ視線を逸らしたカカシはさらに1人のくノ一を視界に収める。

 

「歓迎するわよ、小雪姫。六角水晶は持ってきてくれたかしら?」

 

「っ!? 小雪姫だって!?」

 

 くノ一の言葉にカカシが振り返り雪絵へ目線を向ける。近くに来ていた三太夫は焦りの表情を浮かべ、雪絵も具合が悪そうに顔を歪める。

 

「はっはっは、流石は、はたけかかしこれ以上の接近はできなんだな」

 

 積もった雪から大柄の忍びが姿を現しながら、カカシに賛辞を贈る。カカシの警戒範囲に入っていることに勘付き自ら姿をさらしたのであろう。

 

 3人の雪忍の登場に緊迫する現場で、カカシは声を張る。

 

「サスケ、ナルト。お前らは雪絵さんを守れ! スタッフ全員は船へと戻るんだっ!」

 

 カカシの指示にスタッフたちが困惑を示す中、真っ先に現れた長身の雪忍が他の2人に指示を出す。

 

「フブキ、ミゾレ、小雪姫は頼んだぞ……!」

 

「ふ……やれやれ」

 

 フブキと呼ばれたくノ一、鶴翼(かくよく)フブキは仕方ないといった様子で、指示を出した長身の忍び狼牙ナダレに従い雪絵へと足を向ける。

 

 向かい来るナダレにカカシが前に出て相対する。

 

「久しぶりだなカカシ、今度は逃げないのか? ()()()みたいに……」

 

「狼牙……ナダレ!」

 

 お互いに体術で戦闘を始めたカカシとナダレ。

 

 ナダレの実力を加味したのか、カカシは雪絵たちから離れるように戦いの場を離していく。

 

「よくわかんねぇーけど、まさに映画みたいになってきたぜぇ!」

 

 戦闘の予感に、雪絵を守るために背を向けテンションを上げるナルト。向かい来る大柄の忍び、冬熊(ふゆくま)ミゾレが背負った板を雪面に置き、その上に飛び乗る。

 

 その瞬間に、雪の上を滑るように高速移動を始めたミゾレに対しナルトが相対しようとした瞬間。

 

「飛雷脚!!」

 

「なn……!!」

 

 遠く離れた位置から、弾丸の如く放たれたまさに雷のような蹴りに横からぶつかられたミゾレは大きく吹き飛び、氷で出来た氷山の壁に叩きつけられる。

 

「ふう……奇襲成功、これこそ忍びの醍醐味ってね」

 

「おい、悟ってば!! 俺の見せ場を盗るなよ!!」

 

「んなこといってる場合……っと流石にそう易々とはいかないか……っ!」

 

 蹴りの感触から、違和感を得ていた悟はその場から飛び退く。悟がいた場所にミゾレの剛腕が叩きつけられ、地面が割れる。

 

「ガキが……調子に乗るなよ……!」

 

「ヘンな膜みたいなのが蹴りの瞬間に出てたな……あれで衝撃を受け止めたのか、油断するなよナルト」

 

「おめぇーこそな悟!!」

 

 ナルトと悟のいる反対側からはくノ一の吹雪が責め立てる。

 

「氷遁・燕吹雪」

 

 そのフブキが放つ、氷で出来た燕の弾丸群にサスケは驚きを露にしつつも印を結ぶ。

 

「氷遁……! 火遁・豪火球の術!!」

 

 放たれた豪火球と燕吹雪が接触する瞬間、その間に氷で出来た鏡が割り込み現れる。

 

「あれは……?!」

 

 現れた氷の鏡にフブキは疑問の声を上げる。その鏡は両者の術を吸い込み、フブキの目の前に随時現れた2つの鏡から燕吹雪と豪火球が発射される。

 

「氷遁秘術・魔鏡氷晶……改良を重ねて僕以外の対象も移動可能にしてみました。どうですかサスケ君?」

 

 音もなく傍らに現れた白にサスケは鼻を鳴らす。

 

「フン……それがどうした、今は目の前の敵に集中しろ」

 

「ごもっともです、僕以外の氷遁……見極めてみたいものですね」

 

 2つの術を浴びたにもかかわらず、煙の中から無傷で姿を現すフブキ。

 

「へぇ……雪忍でもないのに、氷遁を……噂の『雪一族』の子かしら……()()()()が喜びそうな素材ねぇ」

 

 不敵な笑みを浮かべるフブキは自らが装着する器具に手をそわせて語り始める。

 

「まあ、どれだけの術が来ようとこの()()()()()()が放つ逆位相のチャクラが全てを無効化するから無駄なんだけどねぇ?」

 

 そう言いながらフブキは舌なめずりをしながら、印を結ぶ。

 

「氷遁・氷牢の術」

 

 フブキの触れた地面の氷が隆起し、サスケと白を飲み込もうとうねりを見せる迫る。

 

 それらから逃げながら白とサスケは会話を続ける。

 

「君の写輪眼でなら、彼らの氷遁を見極めることが出来るのではないですか?」

 

「無理だ、血継限界は扱うのには体質が……いや待てもしかしたら……」

 

 目を凝らすサスケは何かに気がついたのか、集中するために動きを止める。

 

「燕吹雪!」

 

「魔鏡氷晶!」

 

 動きを止めたサスケにフブキの燕吹雪が襲い掛かるも、盾のように展開した白の魔鏡氷晶がそれを吸い込みフブキへと撃ち返す。

 

 フブキはその攻撃を避ける素振りを見せずに、仁王立ちで受ける。

 

「っ……あれが先ほどから彼らが無傷でいられる原因ですか……まるでチャクラで出来た膜に保護されるように……」

 

 燕吹雪はフブキの眼前で紫色のチャクラの膜で弾かれ、無効化される。

 

「私たち雪忍にはこのチャクラの鎧があるのよ。貴方たちが何人がかりで来ようと、無意味なのy……ガっっ!?」

 

 悠長にチャクラの鎧について再度語ろうとしたフブキを視界外から飛び込んできた悟が、飛雷脚で弾き飛ばす。

 

「チャクラが通らないのはあっちの大男相手で何となくわかったが、衝撃までは完全に防げないようだな!」

 

 大きく空中へと弾かれたフブキは、羽のような機械を展開して空で制止する。

 

「……空を飛べるなんて万能だな、チャクラの鎧とやら……俺もそう言う移動手段を何か考えないとな」

 

 横やりを入れた悟は再度ミゾレとナルトの戦いに横やりを入れるためにその場から跳躍して姿を消す。

 

「相変わらず悟君の動きは自由ですね。しかしサスケ君」

 

「ああ、あのチャクラの鎧とやらは忍術やチャクラを弾くのみ……ならば!」

 

 白は千本を、サスケは手裏剣を両手で構え、連続で雨のごとく投擲する。

 

「目の付け所は良いんじゃない? でも……」

 

 空中に居るフブキは手をかざし、紫色チャクラの膜を能動的に展開して忍具を弾く。

 

「出力調整をすれば、こんなこともできるのよ。装着者のチャクラをも増幅する、それを持って強固な壁を展開する、まさに最強の鎧!!」

 

 誇らしげにそう語るフブキに攻めあぐねる白とサスケ。自らの攻撃が無効化され、一方的に不利を押し付けられる展開に苦戦を強いられていた。

 

 そんな戦闘の様子を眺める雪絵はその場から動けずに立ちすくんでしまったいた。ミゾレに対して数多の影分身で殴りかかるナルトと八門を開いて拳打を繰り出す悟はミゾレの展開するチャクラの膜を破れず一端距離を取る。

 

「しっかし、硬いな……俺たちの攻撃を弾き続けるなんて……」

 

「だーもう!! あいつ守ってばっかでせこいってばよぉ!!」

 

 愚痴を言い合うナルトと悟。背後に居る雪絵に対して悟は注意を促す。

 

「雪絵さん、早く船に戻ってください! ……雪絵さん?」

 

 呆然と、サスケの火遁とフブキの氷遁のぶつかる様を眺める雪絵は頭を抱えてうずくまる。ブツブツと何かを呟く雪絵の様子を心配する悟。すると

 

「姫様~!」

 

 そう叫びながら、雪絵へと走り寄ってくる三太夫が現れる。

 

 その様子を見た雪絵は

 

「三太……夫、アナタ……!?」

 

 何かに気がついたかのような素振りを見せながらも不意に気を失ってしまった。

 

「!? ナルトっ! 影分身で三太夫さんと雪絵さんを船まで運んでくれ!」

 

「っ了解だってばよ!」

 

 悟の指示に、ナルトが印を結んだ瞬間

 

「させるか、氷遁・土豪雪崩」

 

 ミゾレの忍術が、多量の雪雪崩を巻き起こし悟たちに迫りくる。

 

「火遁・炎陣壁!」

 

 悟は火遁の壁を口から吹く炎で展開するも、相手の術の威力が大きくしだいに押され始める。

 

 部下たちのピンチにカカシがナダレとの戦闘を切り上げ、助太刀に向かおうとするも

 

「お前の相手は俺だカカシ、氷遁・一角白鯨!!」

 

 ナダレが装着したチャクラの鎧の効果で強化した忍術を発動させる。

 

 カカシの進行先の氷で出来た地面が突如割れ、巨大な氷の角を生やしたクジラが姿を現す。その巨大さはナルト達がいる氷山を二分するがのごとく巨大であり、ナダレの忍びとしての実力を指示していた。

 

 その術の衝撃による地響きに各々が態勢を崩す。

 

「間違いない……奴らの氷遁は白、お前の血継限界とは仕組みが違う!」

 

 揺れる大地に足を取られながらも、とある事実に気がついたサスケがそう叫ぶ。

 

「仕組み……? それはどうゆう……っ!?」

 

 サスケに説明を求める白だが、フブキの幾多の燕吹雪を相手にサスケとの距離を強引に取らされる。

 

「そうか……ならば」

 

 一方でカカシは自らの写輪眼をもって、サスケと同じ結論を導き出した。

 

「ナルト!! 奴らの隙を作る、その隙に影分身で全員の撤退を補助しろ!!」

 

 カカシのその言葉にナルトが目を向けた瞬間、ナダレが先ほどと同じ印を結ぶ。

 

「いい術だな……俺も使わせてもらうぞ、狼牙ナダレ!!」

 

 カカシは、写輪眼の観察眼を使いナダレの印を盗みほぼ同時と言えるスピードで印を結ぶ。

 

「「氷遁・一角白鯨!!」」

 

 同時に行使されたその術は巨大な鯨を二匹召喚し、海から氷山を砕くかのように覆いかぶさる。

 

「ほう、流石コピー忍者・カカシ。()()は我々の術の仕組み気がついたか、だが同じ術では決着はつかんぞ」

 

「決着か……悪いがそれはまた今度だ」

 

 ナダレの言葉にその気はないとカカシは返す。カカシの召喚した氷の鯨は、ナダレのモノを受け流すように倒れこみ氷山を完全に砕きにかかった。

 

 その衝撃で生じた波は、映画スタッフたちを乗せた船を押し出し遠くの方まで押しのけていく。

 

 衝撃の大きさに、雪忍たちも退避に専念しカカシたちもそれに乗じて、波に荒れ狂う海を走り船まで撤退していった。

 

 完全に砕かれ、元の氷山の姿の原型をとどめていない流氷の上に着地する雪忍たち。自分の術を上手い事利用され撤退を許したナダレは、口元を歪め逃げ行く船を睨む。

 

「……まあいい、奴らの行く先は、雪の国だ。我々はそこで奴らを待てばいい……」

 

 そう呟くナダレに続き、フブキとミゾレらはその場から姿を消したのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 全速力で動く船の上では転がり込むように、ナルト達が飛び乗って着地をする。

 

「だぁぁぁあああ!?」

 

 勢い余って転がり続け、縁にぶつかるナルトを他所に悟が出した影分身がナルトの影分身が運ぶ人たちの身の安全を保護していた。

 

「っふう……中々に危機的状況だったな」

 

 一息つく悟に続き、白とサスケ、カカシも船の甲板へと姿を現す。

 

 その様子にサクラが心配そうに走り寄ってくる。

 

「ちょっと皆、大丈夫だった!?」

 

「ええまあ、重傷者はいませんね。……しかし色々と疑問点がある戦いでした」

 

 サクラの声掛けに答える白は、カカシへと視線を向ける。

 

「カカシさん、どうして貴方が氷遁を……?」

 

 その質問にカカシは答える。

 

「……どうやら、サスケと俺。写輪眼を持つ者だけが見切れたようだが奴らの忍術にはカラクリがあったんだ。それは……」

 

 カカシの解説に耳を向けていた悟だが、不意に意識を引っ張られる感覚に襲われ気がつくと……

 

 

 ナルトの精神世界へと訪れていた。

 

 

「……は? え、なんで」

 

 急展開に驚きを口にする悟。そのまま恐らく呼び出したであろうその主に目線を向ける。

 

「何の用だよ九喇嘛、今結構興味深い事聞いている最中なんだが……」

 

「悟、てめぇ……何か違和感を感じていたな」

 

 札の張られた檻の奥で、尾獣・九喇嘛は悟へと問いかける。

 

「違和感……ああ、氷山に上陸する前の……白も感じてたアノ……何だ、九喇嘛なら何かわかるのか?」

 

「まあな、恐らくだが……ワシらと()()()()()()()が関わっていると見て間違いがねぇようだ……」

 

「似た……存在? つまりは何だ、尾獣……がいるのか近くに?……んな、まさか」

 

 九喇嘛の言葉にそんな馬鹿なと答える悟。九喇嘛は鼻を鳴らして会話を続ける。

 

「さっきから、というか雪の国とやらに近づくにつれ感じるお前が言う違和感……恐らくそれは精神エネルギーだろう。ワシら(尾獣)が持つ物と似たものだ。白という小娘がそれを感じられたのは恐らく相性の問題か……」

 

「違和感の正体は精神エネルギー? なら白との相性が良いって言うのは、それは」

 

「氷のチャクラ性質を持った尾獣に列なる存在がいるかもしれねぇってことだな」

 

「……ハハッ……マジで言ってる? 尾獣ってみんなで九体なんじゃ……氷の尾獣なんていなかったはず……だよな?」

 

「……てめぇが尾獣について粗方知ってても今更驚きはせんが……つまりは尾獣に類するもだと考えろ。ワシら尾獣は自然環境が顕現したものだと思っていい。つまりは自然エネルギーの塊みたいなものなら、尾獣に近い存在に成りえるということだ」

 

 九喇嘛の言葉に呆然と立ちすくむ悟。

 

「そんなホイホイと九喇嘛みたいな存在が……? インフレやばくない?」

 

「ワシほどの強さのモノは早々……というより尾獣最強のワシに匹敵する奴はまず出てこないと思っても良い……まあ、小規模でならクソ狸程度の奴なら出てきても有り得ん話ではないかもなぁ?」

 

「……いや守鶴ほどの奴もたくさんいたらヤバいだろ……つまりは、何が言いたいんだ九喇嘛?」

 

「カカシの野郎が氷遁を扱えたのは、その()()()()()()()の精神エネルギーが、水と風の性質のチャクラを結び付けるのを補助したからだろう。あの雪忍とか言う奴らはその性質をあの鎧で増幅させていると見て良い」

 

 九喇嘛の解説に、口を半開きにして聞き入る悟は、内心(部隊長が敵に対する考察を説明しているのを聞いているみたいだ)と思っていた。

 

「チャクラを色で見る写輪眼でなら、その精神エネルギー影響具合に気がつき水と風の性質を結び合わせ、一時的に氷遁を扱えるのだろうが……まあ、カカシの小僧程度ならあの規模の術はスタミナが持たないだろう」

 

 ふと悟が現実世界の視点に切り替えれば、カカシが九喇嘛と同様の解説をしていた。ただ、影響の元がどういった存在なのかの目星は着いていないようであった。

 

「カカシさんも、肩で息してるな……写輪眼でのチャクラの消耗に慣れない氷遁を大規模で使ったからってことか……九喇嘛の言う通りなら、俺も使えるかもしれないけど慣れないことは無理してやるもんじゃないな」

 

「そういうこった……でだ、ここからが本題だが……」

 

 九喇嘛は少し口ごもり、その様子に悟が疑問符を浮かべた。

 

「どうかしたか?」

 

「ワシのチャクラを悟、貴様に預けられるだけ預けたいんだがぁ……」

 

 歯切り悪くそう言う九喇嘛に、悟は首を傾げながらもすぐに答える。

 

「いいよ」

 

「二つ返事か……貴様、もう少し考えてから返事をした方が良いと思うぞ……ワシが言うのもなんだが」

 

「まあ、理由はさっぱりだがわざわざ九喇嘛から接触してきての提案だしな。何かそれなりの理由があるんだと思えば協力するのもやぶさかではない

かなって」

 

 そう言う悟は、九喇嘛に対して警戒の素振りなど一切見せずにあっけらかんとしている。

 

「……理由ならちゃんと伝えてやる。ワシが今現在その、()()に対してどうこうできる術がないからな、貴様を利用してやろうという……」

 

「同族的な奴の動向が気になるから、ナルトと俺の二つの視点で見られるようにしたいってことか?」

 

「……」

 

 九喇嘛の説明を、悟なりに解釈したその言葉は的を射たのか気まずそうに黙り込んでしまう九喇嘛。

 

「まあ、九喇嘛は今はナルトの中に封印されているわけで直接何か出来るわけじゃないからな。気になることがあってそれが知りたいってならお安い御用だ」

 

 そういう悟は九喇嘛の檻の前まで来て拳を突き出す。

 

「貴様は何故こうもワシに対して、警戒心がないのか不思議でならん」

 

「……始めて会った時とかはそれなりに警戒心はあったけど、やっぱり必要ないかなって……こう、何回か話してみると九喇嘛って優しいしさ」

 

「優しいだとぉ……? 馬鹿馬鹿しい……ワシを舐めくさりおって……だがまあ、力を貸してやるわけでないことを忘れるなよ? 貴様が死にそうであろうとワシは一切力を貸すつもりはないからな」

 

「了解ですよっと」

 

 檻の間から差し出された九喇嘛の拳と、悟の拳が合わさりチャクラが送られる。

 

「……これぐらいで良いだろう。言ってしまえば渡したチャクラはワシの意思を持つ分身体だ、後で本体であるワシに記憶を還元できるよう下手な真似はするなよ?」

 

「……コレ結構な量じゃないか? まあどっかにチャクラを落っことすなんてことないだろうから心配しなくても良いよ」

 

 拳を離した悟は現実世界の様子を伺う。

 

「ん……カカシさんも説明が終わって休憩室に戻るみたいだし、俺も船の個室に戻るか……それじゃあ九喇嘛、また今度な!」

 

 「じゃ」っと言いながら片手をあげて合図を送った悟はナルトの精神世界から姿を消した。

 

「……イヤな気配やチャクラを持つくせに、妙に親しみやすい気味の悪い奴だ……」

 

 精神世界に一人になった九喇嘛はそう呟き、檻の中でその目をそっと閉じた。

 

 

~~~~~~

 

 その後

 

 しばらくの航海の後

 

 雪の国の港に着いた船から荷降ろしが進む最中、木ノ葉の忍びと、三太夫、映画監督のマキノと助監督は船室に集まり会議を開いていた。

 

 

 

「三太夫さん、アナタ知っていたんですね?」

 

 カカシは少し神妙な面持ちで三太夫に問いかける。

 

「……はい」

 

 三太夫も覚悟を決めているのか真剣な表情でカカシの言葉を受ける。

 

「彼女が……雪絵さんが雪の国に()()()()()()どんな事態になるか、予想できたはずだ」

 

()に……この国に帰ってきてもらうにはこうするしかなかったのです……」

 

 辛そうにカカシの言葉に答える三太夫。その様子を見ている悟は(……護衛任務って訳ありというか……こういう裏事情的なものが絡むの多くないか?)と思いながら隣に座る白をチラリと見る。そんな悟の内心に気がつかない白はその視線に取りあえず仮面の下を笑顔にして悟を見返す。

 

 雪絵を姫と呼ぶ三太夫の言葉にナルトが笑いながら茶々を入れた。

 

「三太夫のおっちゃん! あのネーちゃんが風雲姫なのは映画の中の話でホントのお姫様じゃねえってばよぉ?」

 

 サクラもうんうんとうなずいているが、カカシの言葉に一同は顔色を変えた。

 

「……本物のお姫様なんだよ。女優・富士風雪絵とは仮の名……本当はこの国のお世継ぎ、風花小雪(かざはなこゆき)姫様なんだ」

 

 机に乗り出し、驚きを露わにするナルトとサクラ。話の流れから察していた、悟と白、サスケは内心やっぱりかと思いながらも黙って話を聞く姿勢でいた。

 

 三太夫はカカシの言葉に続き話を紡ぐ。

 

「私がお傍におりましたのは姫様がまだ御幼少の頃でした。覚えていらっしゃらないのも無理はありません」

 

「三太夫さんも雪の国の人だったんですか?」

 

 三太夫に対してサクラは質問をする。

 

 三太夫はその質問を肯定し、雪の国での出来事について語り始めた。

 

 

 

 かつての雪の国の主君、風花早雪(そうせつ)に仕えていた三太夫。雪の国は小さいながらも、昔は平和な国であった。

 

 その平和な国も10年前、早雪の弟であった風花ドトウが雪忍たちを雇い反乱を起こしたことで崩れ去ってしまった。

 

 雪の国はドトウの手に落ち、風花の城は焼け落ちたことで三太夫は小雪姫も亡くなったと思い込んでいた。

 

「10年前……俺一人では、あいつらにはまだ勝てなかった……逃げるしかなかった」

 

 当時雪の国の任についていたカカシは、クーデターの起きた城から小雪姫を救い出していたのであった。

 

 その後、数年の時を経て三太夫は映画に出演していた雪絵を見つける。

 

「あの時、姫様を見つけた時どれ程嬉しかったことか……っ!!!」

 

 当時の思いを振り返り涙を流す三太夫、そこに

 

 

 

「あの時死んでればよかったのよ……」

 

 

 

 雪絵……もとい小雪が船室の入り口にもたれかかった態勢で現れそう呟く。

 

「そんなことをおっしゃらないで下さい……姫様が生きていることこそが私たちにとっての何よりの希望……

 

「生きてはいるけど……もう心は死んでいる……」

 

 三太夫の言葉を、小雪は目に影を落としながら否定する。

 

 三太夫は、富士風雪絵のマネージャーとして小雪を雪の国へと連れていく方法を探っていたことを明かす。それはつまり

 

「ええ!? それって俺たちはあんたに利用されていたってことぉ!?」

 

 助監督はその事実に不満を漏らす。三太夫は慌てて謝罪を口にする。

 

「っ黙っていたことは謝罪申し上げます! しかしこれも雪の国の民のため……」

 

 そのまま小雪の元へと走り寄り、膝を着く三太夫。

 

「小雪姫様! このままドトウを打倒し、どうかこの国の新たな主君と成って下され!!」

 

 そう懇願する三太夫。その姿を見ている悟は少し冷めた目をしていた。

 

「この三太夫、命に代えても姫様をお守り申し上げます!!! どうか我らと共に立ち上がってくだされ!!!」

 

「イヤよ」

 

 小雪は三太夫を見下ろしながら、簡潔にそう述べる。

 

「冗談じゃないわよ!!」

 

「しかし!! 雪の国の民は……!?」

 

「そんなの関係ないわ、お断り」

 

 冷たくそう言い放つ小雪に、三太夫は顔に絶望の表情を積もらせる。

 

「姫様ぁ……」

 

「いい加減……諦めなさいよ!! バカじゃないの!? アンタがいくら頑張ったって、ドトウに勝てるわけないじゃない!!!」

 

 小雪は苛立ちながらそう叫ぶ。ナルトがその小雪の態度に我慢できずに机を叩き立ち上がろうとする瞬間

 

 

「全く持ってその通りだと思いますね」

 

 

 そのナルトの腕を持ち、代わりに悟が立ち上がる。

 

「悟……あの姉ちゃんのいう事が正しいっていうのか!? 三太夫のおっちゃんは命を懸けて、夢を叶えようとなぁあっ!!」

 

 悟の言葉にナルトが手を振り払い、胸倉を掴む。

 

「……悪いが三太夫さんが幾ら命を掛けようと、そんなの無駄だと言わざるをえない。雪忍の実力を実際に見ただろうナルト? 俺たちが苦戦するような、それも一国の存在に対して命をかけてもまさに焼け石に水なんだよ」

 

 その言葉を受けたナルトは抵抗の素振りを見せない悟の首をそのまま締め上げようと力を籠める。

 

「ナルト!」「ナルト君!」

 

 サクラと白が止めに入ろうとするも、悟が手で制止しナルトを睨みつける。

 

「この忍界での、命なんてものはな……少しの行き違いで消える儚いものなんだよ!! 夢のために命をかけるなんてのたまうのは自己満足だ!! 死んで叶える夢に何の意味がある!? 一番最後に、夢を叶えた自分がいないと何の意味もねえんだよぉ!!!」

 

 珍しく怒鳴る悟にナルトが少しだけ怯む。

 

「波の国の時も言ったよなナルト!? 依頼人に騙された忍びが負うリスクとその後の事も!! それに夢を求めて死んだ後に、残される奴の事も考えてみろ!!」

 

 そう言い放つ悟の言葉に、三太夫は床に視線を送り項垂れる。

 

「じゃあ、どうすんだよ!? ワリィ奴らに大切な国奪われても何にもせずに、夢を諦めればいいっていうかよぉ!?」

 

「バカが!! 夢は諦めんな!!」

 

 ナルトの言葉に、悟が高速で言い返す。

 

 その言葉にナルトは目を丸くし、小雪もまた目線を悟に向ける。

 

「自分の命なんて大切なモノかけずに、もっと先に他のモンにすがってでもどうにかすんだよ!!」

 

「他の……モノ?」

 

 三太夫は悟の言葉に弱々しく聞き返す。

 

「相手が雪忍を雇って、クーデターを起こしたんなら貴方も俺たち忍びを雇えばいい。10年前はカカシさん一人でどうにかできなかったとしても、今ここには6人も忍びがいる!!」

 

「悟、お前……」

 

 ナルトの手の力が弱まる。

 

「自分の命をかけるのは最後の最後、本当にそれ以外の手段がなくなったときだ! それまでは、気軽に命なんてかけないでくださいよ、三太夫さん!!! ていうか、命をかけるのは基本的に忍びの仕事ですっ!!」

 

「は、はいぃ……っ」

 

 悟の言葉に返事をしながら顔を上げる三太夫。その様子を見ていた白は(別に三太夫さんも気軽に命をかけるつもりではなかったでしょうに……まあ、周りに事情を話さないリスクというのは確かに大きいものですが)と思いながら悟の言葉に耳を貸していた。

 

「アンタ……結局何が言いたいのよ!?」

 

 悟の言葉に小雪が疑問を言い放つ。

 

「死ぬなんて言うのは夢を諦めるのと一緒だと思うんですよ。その先の未来を生きるために、小雪さんみたいに諦める暇も、三太夫さんみたいに死ぬなんて言ってる暇もないってことです!!!」

 

 ドンッと言い切った悟に、小雪は「滅茶苦茶だわ……」と呟く。

 

 すると

 

「諦めないから夢は見られる。夢が見られるから未来は来る。いいねぇ! 風雲姫完結編に相応しいテーマじゃねぇか」

 

 黙ってそれまでの話を聞いていたマキノ監督が口を開く。その言葉に

 

「か、監督ぅ!? まさかまだ撮影を続ける気じゃぁ……!?」

 

 助監督は尻すぼみに反応を示すが、

 

「この映画は化ける。考えても見ろ、本物のお姫様を使って取れる映画なんてそうめったにあるもんじゃねぇだろう?」

 

「た、確かに!!」

 

 一瞬で監督の言葉に説得されてしまう。

 

「ちょっとぉ!?」

 

 当然そのことに小雪は不満の声を上げるが、そこにカカシが言葉を挟む。

 

「残念ながら選択肢は一つしかない。ドトウ達に存在を知られた以上貴方にはどこにも逃げる場所なんてない。戦うしか……貴方が生き延びる道はないんだ」

 

 カカシが言うその言葉は筋を通してはいる。しかしサスケは(三太夫が無理やり表舞台に引きずり出した結果ともいうだろうがな……)と黙りながらもカカシの言葉に内心思っていた。

 

 場の雰囲気に乗じてナルトは息巻く。

 

「OッK~~任務続行だってばよぉ!! つまりは風雲姫は雪の国に行って悪の親玉をやっつけるぅ!!」

 

「ふざけないでっ!! 現実は映画とは違うハッピーエンドなんかこの世のどこにもないの!!」

 

 ナルトの物言いに反発する小雪、しかし

 

「んなぁものは気合い1つで何とでもなる!!」

 

 マキノ監督は気合が全てだと言い切り、意見を押し切る。

 

「これだけの任務だと、里に救援要請を出すのがセオリーなんだが……」

 

 カカシの言葉にサスケが口を開く。

 

「時間の無駄だ。こちらの存在が知られた以上素早さを欠くのは何よりもの痛手だ」

 

「そうですね、下手に時間をかければ相手にそれだけ対策を許してしまいますからね」

 

 サスケの意見に同調した白は、共に任務続行の意思を表明した。

 

 その場の様子にサクラはテンション低めに悟へと問いかける。

 

「悟ぅ……こういう国の先行きを左右する任務って……Sランク相当……よねぇ?」

 

「まあ、そういう事になるよな。乗り掛かった舟とは言うけど、随分と危険な任務になりそうだ、それなりの覚悟は必要だろうな」

 

 先の展開に不安を感じているサクラに悟はキッパリと自分の意見を言った。その言葉を受けサクラは開き直るかのように、気合を入れるために自身の顔を叩く。

 

「皆様方……」

 

 皆の意思に感銘を受ける三太夫に、悟は近づき言葉を掛ける。

 

「ドトウの事は俺たち、木ノ葉の忍びが何とかします。間違っても、三太夫さん貴方は命がけで差し違えるとかそう言うことはしないでくださいね? 貴方は生きて小雪さんの傍にいてください」

 

「はい……わかりました」

 

 場の纏まりに、マキノ監督は鼻を鳴らし、声を張り上げる。

 

「決まりだな、撮影を続行だぁ!!」

 

 

 

 

 

 

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