目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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72:思いの強さ

 風花ドトウの根城である、旧風花城は夜襲を受けてた。

 

 複数個所での爆発により、責め立てられている城内では雪忍たちが敵を打ち取るために駆け巡っている。

 

「何が起こっているの?」

 

「多分、カカシさん……というか俺の仲間たちが来てるんだと……よし、敵はいないな、こっちだ」

 

 爆破に揺れる城内。牢のひしめくエリアを敵に気づかれないように進む悟と小雪。悟は先ほど自分で治した左肩の関節の動きを確かめながら歩みを進めていた。

 

「…………ねぇ悟」

 

「何だ?」

 

 敵を警戒し、壁から顔だけを出し道を探る悟に小雪は声をかける。

 

「口調が変わってるのはまあ、置いといて……それよりも何で敵から奪ったマフラーで顔隠してるのよ……」

 

 喋るたびに、もごもごしている悟の姿に小雪は疑問を抱いていた。牢を脱した際に倒した雪忍から手早くマフラーだけを奪い身に着けていた悟。その小雪の指摘に悟は

 

「……恥ずかしいから」

 

 簡潔に答え、歩みを進めた。

 

(爆破とかで状況が落ち着いてないから悠長に着替えが出来ないからって、身につけてるものが頭部を隠すマフラーと、ボロのズボンだけなのは……絵が悪いわね)

 

 小雪は目の前のまさに不審者な恰好の忍びの存在に、頼りになるのか頼りないのか心配を胸に抱えていた。

 

 2人が牢の在る城内のエリアをある程度進むと、雪忍が1人悟の前の道に立ちはだかっていた。

 

「よし、先手必勝……!」

 

 悟が相手を認識し、飛雷脚でその忍びの頭を蹴りぬこうとした瞬間

 

「ッ!?!? 僕ですよ悟君!!」

 

 その雪忍は顔の覆面を取り、その美麗な素顔を晒す。

 

「白ぅ!? どわああっ!!」

 

 蹴りを止めても感性で白へと突っ込んだ悟は白に受け止められ、そのまま彼女を押し倒す。

 

「すっすまん……」

 

「いいですから……直ぐどいてください……!」

 

 もみくちゃになり、謝りながらも立ち上がり手を引いて白を立たせる悟。

 

「アンタ……そういうこと(イチャイチャ)は助かってからにしてくれない?」

 

「小雪……今のは事故だって……ってそんなことより、白!」

 

「ハイ?」

 

「カカシさんは無事なのか……!? ていうか皆来てるのか……!?」

 

(あの雪羅の尾獣玉をかき消したのは、恐らくカカシさんの≪神威≫……使えば今のカカシさんなら当分動けないハズだが……)

 

 悟の質問に、雪忍の装束を脱ぎ捨て自身の仮面を被った白は説明を始める。

 

「カカシさんは自身の術で相当消耗していたようです……半日ほどたって、ようやく体が動かせるようになりましたが忍術の行使には問題があるそうで……ナルト君達も、僕も怪我は負っていますが……君ほどではないので……ええ、今は三太夫さんらが用意した爆薬をふんだんに使ってこの城を攻め落としています」

 

「そうか……皆大丈夫なのか」

 

 安堵する悟に、白は仮面を投げ渡す。

 

「忘れ物です、そんなマフラーだけじゃしまりませんよ?」

 

「! サンキュー……だけど、上半身裸に裸足なのはやっぱりどうも格好がつかないな……白、今ちょっと余裕があるしその雪忍の装束貸してk

 

「女の子が来てた服着るの……?」

 

「……寒サハ平気ナノデヤッパイイデス……」

 

 小雪のジト目に悟は自分の行為の危うさに気がつき、訂正をする。

 

(そんなこと気にしている場合じゃない、とは思いますが……ホントに必要なモノなら悟君はそう言いますし大丈夫そうですね、どうみても体はボロボロですが)

 

 悟のようすに安堵した白。そんな彼らの元に、雪忍らを蹴散らしながら第七班が姿を現す。

 

「……無事か悟!」

 

「大丈夫だったか、ねーちゃん!」

 

「小雪さん、無事で何よりです!」

 

 サスケとナルト、サクラの声に悟は仮面のしたで安心の笑みを浮かべる。

 

「……随分と悪趣味な格好だねぇー悟、まっ無事で何よりだ」

 

 3人の後方から「よッ!!」と姿を現したカカシの言葉に悟は「そうですね……」と目を逸らして答える。

 

「思っていたよりもカカシさん、平気そうですね……」

 

「ん? 平気ではないんだが……ま、鍛え直しておいて良かったというべきか、マリエやガイに感謝ってところだ」

 

「ハハハッ……なら良かったです」

 

 

 そんな悟と会話をするカカシに、小雪が喋りかける。

 

「貴方が、六角水晶をすり替えていたのね……」

 

「……ええまあ、敵の狙いは何となく読めていたので、すみません」

 

 小雪は六角水晶の有無を確かめ、カカシが懐から出した本物の六角水晶を受け取る。

 

「こんなもののために……」

 

 そう六角水晶を見つめ呟く小雪。

 

「仕掛けが順次発動している、あまり悠長にしている暇はないぞ」

 

 サスケのその言葉に、小雪が答える。

 

「この城の構造は知っているわ。私に着いて来て!」

 

 その言葉を頼りに、一行は小雪の先導の元先を急ぐであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 しばらく走り続け、とある広い空間で小雪は立ち止まる。

 

「小雪さん?」

 

 サクラのその疑問の声のすぐあと、辺りが光で照らされる。

 

「「「「「「!」」」」」」

 

 

 

 

「クックククク!! はっはっはっはっは!!」

 

「ドトウ……!?」

 

 灯りの中には玉座に座るドトウが高らかに笑う姿があった。驚きドトウの名を口に出すカカシ。

 

「ご苦労だったな…………()()

 

「!?」

 

 ドトウの言葉と共に小雪はドトウの元へと走り去る。それを追おうとする一行の目の前には、3人の雪忍ナダレ、フブキ、ミゾレが立ちふさがる。

 

「まさか……」

 

 カカシの心配を肯定するかの如く、小雪は六角水晶をドトウへと手渡す。

 

「みんな忘れていたようね……私は女優なのよ」

 

 小雪の言葉に衝撃を受ける一行。

 

(小雪さん……)

 

 悟の視線に気がつき目を逸らす小雪。そんな小雪歩み寄り肩に手を乗せたドトウは

 

「そういうことだ、全ては小雪が一芝居売ってくれたのさ」

 

 そう満足気に言い、六角水晶を光に照らし眺める。

 

 恍惚とした表情を浮かべるドトウの隣で小雪は小さく呟き叫ぶ。

 

「そう……全ては芝居…………っやああああああ!」

 

 突如ドトウの脇腹に、小雪は三太夫の脇差しを突き立てる。

 

「……ぐお!?」

 

「だから言ったでしょう……私は女優なんだってっ!!!」

 

 三太夫の脇差しを全力で突き立てる小雪。

 

 完全に隙を突かれた形のドトウは俯き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女優程度が、このワシ……風花ドトウに傷をつけられると思うなぁ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 刺されたはずのドトウは、小雪の首を片手で鷲掴みに宙へと掲げる。

 

「ねーちゃん!?」「小雪!」

 

 ナルトと悟の心配の声をかき消すが如くドトウは叫ぶ。

 

「全ては無駄な努力だったな……このワシが、いやこのワシこそが世界の王となる。そのために……」

 

 ドトウは自身の羽織っていた豪華な着物を脱ぎ捨てる。その下からは、黒々と怪しい光を放つチャクラの鎧が姿を現す。

 

「この最新式のチャクラの鎧そして……人工尾獣……これらをより高みへと昇らせる!!」

 

 ドトウは締め上げている小雪に耳打ちをする。

 

「そうだ、私は優しい……貴様を、父親に……早雪に合わしてやろうか……文字通りになぁ!!!」

 

「何を……うぐっぅ……」

 

 大きく振りかぶり、小雪を宙へと放るドトウ。

 

「!?っ小雪ぃっ!」

 

 それにいち早く反応し、跳躍して空中で受け止める悟だが……

 

 着地地点にはカラクリが仕掛けられており、地面にスッポリと大穴が開く。

 

「しまっ……!」

 

 小雪を抱えながら宙に手を伸ばす悟。その手を掴もうとサスケが手を伸ばすも

 

 

 ダンっ!

 

 

 と音を立てその大穴は閉じてしまう。

 

「さあ、ワシの夢を阻むものは残り少ない……行こうか、()()()()()()

 

 ドトウのその言葉と共に、城は爆発の勢いを強め天井が崩れ落ちる。

 

「逃がすかぁ!!」

 

 激高するナルトは、天井からのワイヤーで逃げるドトウに向かって紐付きクナイを投げつけその動きに追随する。

 

「ナルト!!」

 

 カカシがそれを止めようとするも、城の崩壊が彼の動きを阻む。雪忍の3人もチャクラの鎧のロープでその場を後にした。

 

 いったんその場から引くしかない状況だが

 

「悟君が……!!」

 

 白は穴に落ちた悟を助けようと、穴のカラクリをこじ開けようとしている。

 

「白君!! この場は引くんだ!!」

 

「しかし……っ!!」

 

 カカシの言葉に反発する白。その瞬間

 

「バカ野郎!! てめぇは悟を信用してねぇのか!?」

 

 その怒号が、崩落する城に響く。

 

「サスケ君……」

 

 サクラの心配の声に耳を貸さず、怒号の主は白の胸倉を掴み、叫ぶ。

 

「あいつはこんなことでくたばる様な奴じゃねぇ!! お前もあいつと過ごしてきたならわかるだろォが!?」

 

「……っ」

 

「……サッサとウスラトンカチとドトウを追って、この国の……悪夢を晴らすんだ。あいつは死なない……わかったら行くぞっ」

 

「……すみませんサスケ君。どうやら僕は冷静さを欠いていたようです……彼は殺しても死なないような人だ。小雪さんと一緒に生き伸びると……信じます!」

 

 意見の纏まった2人を含め、カカシらは城を脱出した。

 

 班員の無事を信じて……今はドトウ達の後を追うのであった。

 

~~~~~~

 

 

「きゃああああああああああ!?!?!?」

 

「っ……!!」

 

 大穴に落ちた悟と小雪は自由落下で加速し暗闇の中、縦穴の深部へと落ちていく。

 

「何とか……何とか……壁に……っ!」

 

 落下しながらも、壁に手を付けようと、右手を伸ばす悟。左手で小雪を抱えながら何とか壁に触れるも

 

(勢いが着きすぎてて、2人分の落下を止められない……っ!)

 

 わずかに減速するのみで、落下の勢いは止まらない。すると下方に明るく白い穴が見え、そこにとてつもなく広い空間があるのを確認する悟。

 

「クソっ止まれぁーーーーっ!!!」

 

 その空間に落ちる前に何とか、止まろうと無理やり脚や腕を壁に押し付け勢いを殺す悟。

 

 ギリギリその穴から空間へと至る際に壁に留まることに成功した悟は、落ちてきた穴から指先だけ吸着させぶら下がった状態のままその白く明るい空間を上から眺める。

 

「っはあ……はぁ……危なかった……なんだココは……だだっ広い部屋?」

 

「……ううう……グス…………」

 

 脇の小雪は刺激の強い経験に涙を流している。少し安堵した悟はふと手の先の力とチャクラを緩めてしまい

 

「あっ……しまっt」

 

「えっ……きゃああああああああああ!!!」

 

 指先を滑らせその白い空間へと再度落下を始めてします。

 

(この空間の壁までの距離は遠い……仕方ないっ)

 

「小雪! 舌噛むから口閉じててくれ、後ごめん!!」

 

「はぁっ!?」

 

 謝罪を述べながら悟は片手で印を結び、影分身を空中に出す。そして

 

 その影分身に自分を思いっきりその空間の壁目掛けて投げさせたのであった。

 

「「…………っ!!!!!!」」

 

 当然乱回転しながら壁面へと叩きつけられる悟だが、ぶつかった瞬間にチャクラの吸着を全身でしっかりとして見せ、そのままズリズリと地面へとずり落ちていった。

 

 地面に着きへたり込む悟。抱えられていて、悟と同じく空中を乱舞しながら共に移動した小雪も庇われていたとはいえそのまま、地面へと倒れ伏す。

 

「…………ぜってぇ……何か飛べるような術、覚えよう…………」

 

「……もう……ィゃ……」

 

 そう呟く悟と小雪。悟は息を整えながらその空間の観察を始める。

 

 白い壁面に、白い床。灯りがそこら中に埋め込まれているのか、少し近未来風のその空間はとてつもなく広く

 

(まるで野球ドーム…………ってそれよりも少し広いくらいか……落ちてきた穴がある天井もかなり高い位置にある)

 

 キョロキョロと辺りを見渡せば、前方の壁の一部がガラス状になっていることに気づき、注視する悟。すると

 

「ようこそおいでなさいました!! 小雪姫、そして木ノ葉の忍びヨ!!」

 

 その空間に拡声器の声が響く。

 

「っ何者だ!?」

 

 悟の言葉に声の主は答える。

 

「我が名は風花レンゲ……風花の名を冠してはおりますが末端の人間でありまスルヨ。しかし人は私を……()()()()……そう呼び敬うのデス!!」

 

 悟はその声の人物が、注視していたガラスの先に居ることに気がつく。

 

 年老いた白髪の男性は、先ほど見たドトウと同じ黒いチャクラの鎧を身に纏い大げさに身振り手振りをしながら窓ガラス越しに拡声器での会話を続ける。

 

「さて、あなた方木ノ葉の忍びのおかげで城は多大な損害を~……被った!! しかしドトウ様が風花の秘宝を手に入れさえすれば、全ては解決!! ナノで!!!!」

 

 途端、嫌な予感を感じた悟は立ち上がり構えを取る。

 

(おい悟……来るぞ!!)

 

(分かってる、九喇嘛……っ)

 

 内にいる九喇嘛からの警告の後、空間の中央の床が機械式に空き中から、札の張られた巨大な鉱石と、機械のリングがその姿を見せる。

 

(なん…………どうに……か……助け…………る!)

 

(九喇嘛……? 九喇嘛……っ! ……クソっ)

 

 その瞬間から九喇嘛との意思の疎通が出来なくなり、悟はふらつく小雪を壁にもたれ立たせ息を吐きその鉱石を睨みつける。

 

「木ノ葉の忍び、貴方にはこの我が最高傑作、≪人工尾獣・双頭狼雪羅≫の贄となっていただき今回、上の城での被害の責任を~~~~~とって頂きマス!!!」

 

 マイクが拾ったであろう機械を操作するカチッとした音と共に、以前洞窟の先で見せた工程を踏み、雪羅がその姿を現す。

 

 

「WOOOOOOoooooo!!!!!」

 

「はあ………………やるしかないよな」

 

 

 

 剛拳、柔拳を交えた構えを取る悟は、身体を紅潮させ緑の闘気をほとばしらせる。

 

「……リベンジだっ!!!」

 

 その言葉と共に、駆けだす悟。高速で移動を始めた悟めがけ、雪羅はチャクラ弾を幾度となく放つ。

 

(小雪からは距離を離さないとな……っ!)

 

 悟の思惑通り、雪羅は悟だけを狙い、攻撃を仕掛けてくる。幸いこの巨大な空間がその誘導を容易くしていた。

 

「流石、ドトウ様があのチャクラ装置を使った相手デスね! あれも自信作でしたの二……ムカついたので雪羅の出力をサラニサラニ上げます!!」

 

 レンゲの声が響くと、雪羅に装着されている機械式のリングが光を放ちその拘束を緩めるように少し広がる。すると

 

 雪羅の放つチャクラ弾は威力、連射速度を増し悟へと放たれる。

 

「クッ……まともに避けらんねぇ……なら!!」

 

 そう判断した悟は、壁を駆けあがりながら開門した状態で印を結ぶ。

 

「火遁・鳳仙花・乱舞!!」

 

 雑多に放たれた鳳仙花は、雨のごとく展開され雪羅のチャクラ弾を空中で誘爆させる。

 

 爆風が辺りを埋め尽くしたが、その中を悟は突き抜け

 

「飛雷脚!!」

 

 攻撃へと転じ、雪羅に向け蹴りを放つ。雪羅の片方の頭を弾き上げるも、もう1つの頭の持つ口からチャクラ弾が放たれ悟を壁へと叩きつける。

 

「っヅ……!!」

 

 ダメージを負いながらも悟は動きを止めずに、雪羅の追撃のチャクラ弾をかわす。

 

 戦闘機と生身の人間との戦いのように一方的に見えるその展開に、小雪は叫ぶ。

 

「こんなこともうやめさせてェっ!!」

 

「オヤオヤ!!! 小雪姫ェ!! やめさせてトハ? これは私が被った害を彼に償って貰っているだけですヨ? やめて欲しいのであれば……んんっ!」

 

 

 レンゲはわざとらしく、ゆっくりとその言葉を口にする。

 

 

「貴方が、雪羅に喰われて頂ければ……彼を見逃してアげましょう」

 

 

 雪羅の放つ氷遁の吹雪が悟の動きを鈍らせ、その隙にチャクラ弾が直撃、悟は壁に叩きつけられる。 そのまま雪羅は攻撃を止め、小雪の元へと向かう。

 

 

「クソ、が……駄目だっ……小雪逃げろ!!」

 

 ダメージの蓄積により、壁から立ち上がれずにいる悟は小雪へ叫ぶ。

 

 自身の元へと巨大な獣が迫りくる恐怖に、小雪は涙を流しながらも視界の隅で無理やり動こうともがく悟に目を向ける。

 

(アナタだけでも……悟……生き延びて夢を……っ!!)

 

 大きく口を開き、小雪を喰らわんとする雪羅。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その雪羅のもう一つの首が突如、小雪を喰らおうとする首に食らいつく。

 

 

 

 

 

 

 

「ナンデスト!?」

 

 想定外の行動にレンゲの驚きの声が響く。

 

 目の前で、自傷行為をする獣の存在に小雪はあっけに取られる。雪羅のもがき苦しむ唸りが二重に空間へと響く。

 

 しかし、小雪を守った雪羅の首は反撃にあい食いちぎられしまい、その首は地面へと落ち形成していたチャクラが霧散する。

 

 小雪がその落ちた雪羅の首へと目を向けた瞬間に小さく声が轟いた。

 

「こ……ゆ、き…………い……きろ……春……を……っ」

 

 落ちた雪羅の首が発したその言葉に、小雪は勢いよく膝から崩れ落ちる。有り得ない、けれど理解してしまったその事実に小雪は息を忘れ、かすれ震える声を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父……さん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 呆然とする小雪に再度雪羅のキバが迫る。

 

 しかし爆発音が響く。その生じた衝撃は雪羅の巨体を宙に舞わせ、反対側の壁へと叩きつける。

 

 小雪の目の前には、身体を紅潮させ渦巻く焔に包まれて悟が拳を振り上げた姿を見せていた。

 

「……てめぇやりやがったな……」

 

「ハテぇ?」

 

 静かな、けれど確かに怒りの滲んだ悟の呟きにレンゲはとぼけるような言葉で答える。

 

「風花早雪を……小雪の父親を……雪羅に喰わせたな……っ?」

 

 一連の出来事の原因を悟はレンゲへと問いかける。その言葉にレンゲは……

 

「ウーム……君のように勘の良い忍びは煩わしいぃ……」

 

 肯定を示す言葉を呟く。

 

 そのレンゲの言葉に悟の眼は見開き、食いしばり歯ぎしりの音が轟く。怒りに反応するように悟のチャクラ量は増し、渦巻く炎はより強大なものとなる。

 

 しかし悟はその炎を一旦収め、事実を飲み込むのを拒否するように呆然と涙を流す小雪へと近づく。

 

「……俺の仮面をアンタに渡しておくよ」

 

 悟は自身の仮面を小雪の頭に被せ、そのまま距離を置き風花レンゲの居る窓越しの部屋を睨みつける。

 

 瞬間、第六・景門を解放し火遁チャクラモードの炎を滾らせ悟は言葉を発した。

 

「人を……命を弄びやがって……レンゲ、お前は必ず……殺す」

 

 態勢を立て直し、再度二頭に再生した雪羅が悟へと突進を開始する。

 

 自身の限界に近い、六門・景門とチャクラモードの併用に悟の身体が軋む。それでも悟は、その声にならない怒りの咆哮を伴い雪羅へと突撃する。

 

 人工尾獣と炎の塊のぶつかりあいは、衝撃の余波で巨大なその部屋全体を揺らすものであった。

 

 明らかに限界を超えた悟の挙動。悟は雪羅のチャクラ弾を拳圧で生じた炎の衝撃波で相殺し、その巨躯を仰け反らせるほどの爆炎で攻撃を繰り出す。

 

 攻撃のたびに、八門で紅潮する体に血が滲み、腕を振るえば骨が軋む音が響く。

 

 そんな悟の様子にレンゲは

 

(恐るべき火力……シカシ! 怒りで我を忘れる愚か者ならば、諭してより自滅へと追いこむのが傑作!)

 

 その思考の元、マイクへ言葉を掛ける。

 

「何を怒るのかね、木ノ葉の忍び? 人工尾獣雪羅は、かつての風花の者が、元より災いと呼ばれていた自然現象をチャクラを吸収する鉱石へと封じたモノダ。封印されていたそれに人の魂、生き血を与え()()に形を与えたもの……ドトウ様がクーデターを起こしたあの記念すべき10年前の日、捕らえた早雪に呪印を刻み込み、その鉱石へと括り付け体を喰らわセタ!! ……それ以降も反逆者や、能力の足りん愚か者などに呪印を刻み幾つもの生贄をささげることで、呪印を多く取り込んだ()()の雪羅を制御できる()()へと昇華サセた。そして私の作り上げた制御装置は、その実体を持たなかった魂を縛り制御することに成功し、雪羅を意のままに操るという偉業を成し遂げたのだ!!」

 

 長々と喋るレンゲの言葉に反応するように、悟の火力は怒りの増長に比例するように増していく。

 

 幾つもの命への侮辱を孕んだレンゲの高笑いに、悟の理性はその一線を越える。

 

「しかしマサカ、雪羅に喰われたのにも関わらず娘のために10年の時を経て意識を浮かび上がらせるとは……オヨヨ、これぞ親子の愛とデモいうべきですかな? 今後は親族同士、愛し合おうもの同士を一度に食らわせれば、より雪羅の昇華に……うぬ?」

 

 雄たけびのような爆発音、それは雪羅を壁へと押し込み、幾度も響く爆発音はその衝撃をレンゲの予想を上回る勢いで炸裂を続ける。

 

(ナントォ!?!? いくらなんでも、人間の枠を超えた力……っ! 雪羅が完全に押され始めるなど、予想外!?)

 

 完全に理性を失くしたのか両腕が折れているにもかかわらず、その腕を振るい爆炎を生じさせ続ける悟。

 

 あまりのその力に煽ったレンゲ本人が焦りを見せ始める。……雪羅がやられれば、あの爆炎を次に受けるのは……

 

 その恐怖はレンゲを突き動かす。

 

(こうなれば雪羅の出力を上げ続けなけレバ……!)

 

 手元の機械を操作し、雪羅の制御を緩める。力を増した雪羅は一瞬悟を押し返すも、より大きな爆炎となった悟は雪羅へと襲い掛かり爆発は鳴りやまない。

 

(駄目だ駄目だ駄目だ!! 何だあのガキはっ……っ!? 普通じゃない……!! …………止む負えん、私が死ねば全て意味がない。雪羅を完全解放しても、幾らかの雪忍を犠牲にすれば再度私の制御装置で縛れる……っ! 今はあの化け物を、殺すのが最優先ダ!!!! )

 

 悟の脅威に怯えたレンゲは雪羅の制御装置を切る。その瞬間、雪羅がその解放されたチャクラの圧で悟を強引に吹き飛ばしその姿を変えていく。

 

 青白く半透明だったその姿は、本物の獣のごとく実体を帯びていく。コアの鉱石から漏れ出る赤黒い物体は、その双頭狼を血に濡れた獣のようなモノの姿に変える。

 

 今までに犠牲になった者たちの血肉で構成されたかのようなその雪羅のおぞましい姿。

 

 小雪は、側へと吹き飛んできた悟へと走り寄る。身体の怪我などお構いなしに起き上がろうとする悟に抱きつく小雪。

 

「悟……! これ以上は駄目よっアナタの身体が……っ!」

 

「コロス……コロス……コロス……っ!!」

 

 うわごとのようにそう呟き続ける悟。

 

「お願い悟……帰ってきて……っ!!」

 

 すがるように、小雪の願いがその口から発せられた。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

 

「君は誰かを悲しませてまで、自分の感情を優先するような、そんな愚か者だったかい?」

 

 

 

 よく知っている声が頭に響く。気がつけば俺は精神世界の平原に来ていた。

 

「ここは……俺は……」

 

 意識が朦朧とする俺に、声がかかる

 

「全く……ワシが表に出れないうち、ここまで追いつめられるとはな。存外に貴様の事を過大評価していたのかもな?」

 

「……九喇嘛」

 

 今は、誰かに構っている場合じゃない、一刻も早くあいつを……コロサナイト……

 

 俺の集中を妨害するかのように、突然拳が俺の顔を殴りつけた。

 

「……っ!?」

 

「うちはの一族……僕たちは、この身体はその血を引いている。だからこそ彼らと同じく感情の爆発は大きな力を生む……」

 

 俺を殴ったその人物はやれやれと言った様子で手を払う仕草をし、倒れた俺へと手を差し伸べる。

 

「でも、その力だけに頼りすぎてはいけない。本当の目的まで見失っては意味がないんだ」

 

「黙……!?」

 

 その人物は俺と同じ顔を持つ黙であった。

 

「お前は、しばらく出てこれないって……」

 

「お、やっと正気を取り戻したね。自分と同じ顔を殴るのは存外に気味が悪い、あまり手を掛けさせないでくれ」

 

 俺を引き起こした黙は、九喇嘛へと視線を向ける。

 

「まさか……九尾が()()()()()チャクラを貸してくれるなんてね? 彼の手伝いなしには今は僕もここまでハッキリと存在を保つことは出来ないから」

 

「フンッ……ワシもマダラと柱間によく似た貴様らに手を貸すなんてまっぴらごめんだ。 ……だが今回はワシの思惑のために仕方なく貴様らに力を貸してやる、利害の一致、それだけだ」

 

 目の前で、互いによく思っていないどうしの2人がいがみ合いながらも俺へと向き合う。

 

「雷……君は僕たちの体についてどれだけ知っているのかな?」

 

「……うちはマダラの息子かもしれなくて……、自然エネルギーを上手く集めれるから、多分千手柱間の力も受け継いでるかもって……内心思ってる。確かにマダラの息子で血を受け継いでるなら、うちは一族ってことになるし、マリエさんを助けた時に黙が青い須佐能乎を使えたのもわかる。でも……柱間の細胞を得たマダラの息子ってなると……俺たちの年齢とか時期的に、なんか無理があるような……」

 

「そこは……僕も気になるけど、今の問題はそこじゃない。うちはの一族って病みやすいんだ、精神的に……わかる?」

 

「えっっと……今の俺みたいに……ってこと……か。 確か漫画でも扉間が言ってたような……」

 

「そう。感情の爆発に合わせて、チャクラが増す……けどその力じゃ、君の夢は叶わない……そうだろ?」

 

 優しく諭すような黙の言葉に、俺は精神世界で深呼吸をする。そうだ、俺の目的はあのレンゲとかいう奴を殺すことが本筋じゃない……!

 

「ありがとう、黙。俺ちょっと自分を見失ってた……」

 

「現実世界の小雪さんに、心配を掛け過ぎてるからね、気づいてくれてよかった」

 

「ちょっとどころではないように思うのはワシだけかぁ?」

 

 俺の言葉に九喇嘛がからかうように口を挟む。……うるさいなぁ。

 

「クックック、そうへそを曲げるな。貴様が暴れたおかげでこうしてワシらが表に出れるようになったようだからな、そこだけは褒めてやる」

 

 マスコットみたいな体をした九喇嘛は、その姿を変え大きな九尾の妖狐の顔面を形作る。隣に立つ黙の目はマダラと同じ模様の万華鏡写輪眼へと変わった。

 

 

 

 

「あんのふざけた、ワシら尾獣を、命を舐めたかのように扱う男に本当の尾獣の力をわからせる!! 悟、それとそっちのより気に喰わん方の悟、今だけは貴様らに力を貸してやるから……」

 

「……フフッ僕も九尾がくれた分のチャクラを使って君を全力でサポートするよ、だから……」

 

 

 ぶちかませ!!!!

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 暴れる悟の身体を必死に押さえつけていた小雪は、その抵抗がなくなったのを感じ悟の顔を見る。

 

「……恥ずかしい所見せたな、小雪」

 

 体の紅潮は無くなり、疲れ切ったかのような声でそうささやく悟に小雪は涙を零しながら笑みを見せる。

 

「良かったわよ……ホント、アンタの事思ったより信用してるんだから……っ!」

 

 笑みを交わす彼らだが、悠長にしている暇は無い。実体を形成した雪羅は吠え、狙いを命・魂を持つ悟たちに定める。

 

「小雪……渡した仮面の裏側に、テープで丸薬が1つ括り付けられてるんだ、それを俺の口に入れてくれ頼む」

 

「でも……っ」

 

「大丈夫、もう自分を見失わない。……役者にしてくれるんだろ、頼む」

 

 悟の真剣な眼差しに、小雪は急いで手に持つ仮面の裏側にあった丸薬を悟の口へと運ぶ。

 

 それを噛み砕いた悟は身体を小雪に支えられながら立ち上がる。

 

「少し離れていてくれ……」

 

「うん……」

 

 雪羅が地面を踏み砕きながら迫りくる。それに対抗するように悟も駆けだす。

 

 小雪の願いを背負った悟は大きく深呼吸をするそして……

 

 雪羅の質量を伴った頭突きが悟を押しつぶす。

 

 その光景を見たレンゲは歓喜の声を上げた。

 

「やったゾ!! これで私の野望を妨げるものは…………ハアっ!?」

 

 しかし、雪羅の身体はそこから一度も踏み込めずに硬直している。

 

 その頭突きを放った頭の先では

 

 

 悟が片手で雪羅を抑えていた。

 

 

 受け止めた衝撃により小さく唸る悟は腕には明るい橙色のチャクラを纏っていた。そのチャクラの作用か腕の怪我は再生しており次第に、そのチャクラは全身を外套のように包み込む。

 

 雪羅のもう片方の頭が、悟に向けチャクラ弾を放つ。

 

 爆発により、悟の姿が見えなくなる。レンゲは事態の先が見えないことに困惑しながら、その煙が消えた光景を注視した。

 

 

 煙の晴れた現れた悟は雪羅の頭を押さえた手とは逆の手に、真っ青なチャクラの鎧を身に纏ってその攻撃を受け止めていた。その鎧も次第に身体全体へと形成されていき……

 

「何なんだ貴様は……何なんだぁ貴様はぁ!?!?!?!?」

 

 混乱するレンゲの言葉が部屋全体に鳴り響く。雪羅を殴りつけ、大きく後退させた悟は自信満々に答える。

 

「ちょっとだけ凄い……只の忍びだ」

 

 九喇嘛のチャクラを羽織の用に身に纏い、肩や胴体、腕・脚に青いチャクラの甲冑を顕現させた悟は、量の目を朱く光らせ雪羅を睨む。

 

「雪羅……お前の存在、俺が祓う」

 

 顔に狐の青いお面を上半分だけ形成して被り、かけだした悟。

 

 雪羅は遠吠えを上げ、血に濡れたような氷の槍を幾つも空中に形成し、悟へと射出する。

 

「火遁・豪火球!!」

 

 悟の放つ規格外の大きさの豪火球がその槍を巻き込み消滅させる。

 

(雷、これを使って!)

 

 内なる黙の言葉の後、悟の手には須佐能乎の太刀が形成される。

 

「忍具の扱いは苦手だからな、大雑把に行かせてもらうぜ!」

 

 そう叫ぶ悟は雪羅へと駆ける。チャクラ弾や、氷の槍が無数に襲い掛かるも須佐能乎の太刀で切り落としていく。

 

 雪羅は悟の存在に本能から危機を感じとり距離を取ろうと、離れながら攻撃を浴びせ続ける。

 

「ちょこまかと……」

 

(ワシのチャクラを放てぇ!)

 

 九喇嘛の指示に従い、悟は左手にチャクラを集中させ数珠状に連なる複数の橙色の勾玉を形成する。

 

「八坂ノ勾玉!!」

 

 放った勾玉は、雪羅の遠距離攻撃を撃ち落しながらも進み雪羅へと直撃し爆発を引き起こす。

 

 怯む雪羅に接近し片首を太刀で切り落とす悟。しかし雪羅も抵抗し、前足による打撃で悟を吹き飛ばす。

 

「クっ……!」

 

 空中に弾かれた悟は須佐能乎の羽を広げ、態勢を整える。雪羅に目を向けると、既に雪羅の首は再生を完了していた。

 

 その様子を確認した九喇嘛はめんどくさそうに呟く。

 

(人間の血肉、チャクラ、魂を多く喰らっている奴を倒すのは骨が折れそうだな。ダメージを与えても、直ぐに再生しやがる)

 

「どうすればいい、九喇嘛?」

 

(奴の核……あの鉱石をドでかい攻撃で叩ければ行けそうだが……ワシの残りのチャクラ量では、今のままではジリ貧だ)

 

「クソっ……!」

 

 雨のごとく襲い掛かる雪羅の猛撃を太刀で対処する悟。けれどこのままでは九喇嘛のチャクラが残り少ない悟たちが負けるのは自明の理であった。

 

「ドでかい一撃……か……」

 

 完全体となった雪羅の攻撃を受け続けることも出来ない。悟は、反撃の一撃のために前へと切りこむ。

 

「心当たりがないわけじゃないが……」

 

 そう呟く悟に九喇嘛は反応を示す。

 

(ならそれをやるぞ、どんな術だ?!)

 

「尾獣……玉」

 

 悟は以前自身の目の前で放たれようとしたその攻撃の名を口にする。

 

(オイオイ、確かに尾獣玉ならいけるだろうが……今のワシのチャクラ量だとまともなやつは放てんぞ!)

 

(……でもそれ以外の方法はない……か。九尾、やり方は君が知っているよね?)

 

 九喇嘛の言葉に黙が切り返す。九喇嘛は仕方ないといったため息をつき答える。

 

(アレは何というか嘔吐する感覚に似た感じだが……そもそも、今の悟のような形態でやるもんじゃねぇ……人間の体で扱えるとは思えんが……)

 

「そのための螺旋丸……確か、漫画でもそんなやり取りがあったはずだ! 頼む、九喇嘛協力してくれ!」

 

 雪羅との攻防もそう長くは続けられない。九喇嘛はため息を吐き、悟の提案に了承する。

 

(仕方ねぇ……ぶっつけ本番だ、時間はそれなりにかかるだろう、何とか奴の隙を作らねぇと玉を作ることすらできんぞ?)

 

(……それなら大丈夫、僕に案があるよ)

 

 黙はその提案を口にする。

 

(雷……僕たちにはマリエさんから託された()()()がある。それを使えば、十分に時間を稼げるはずだ)

 

「あれって……上手くいくのか? やり方は教えて貰ってるけど……」

 

(やるしかない……だよ。迷っている時間ももうない、雪羅の四肢を切り落として動きを一端封じたら作戦開始だ)

 

 八坂ノ勾玉を放ち、再度雪羅の隙を作った悟は相手の攻撃を受けながらも、強引に雪羅の四肢の間を飛び抜きその太刀で切り落とす。

 

 態勢を崩し、倒れこむ雪羅の目の前に降りたった悟は通常の姿へと戻る。そして

 

「ふう……行くぞ黙!」

 

(うん、この術に印は要らない……必要なのは)

 

 

「「明確なイメージ!!」」

 

 

 

 

 ≪分裂の術≫

 

 

 

 火・土・風の3つチャクラが、悟の身体を駆け巡りそして術者の身体を、細胞レベルで複製する。

 

(イメージは単純に二等分で構わない。片方の身体に僕の魂を入れるんだ!)

 

 黙の指示に従い、術は行使され悟の身体は二等分に別れる。そして瓜二つの悟が並び立つ。

 

 現実世界で初めて、雷と黙が肩を並べる。

 

「上手く……いったか……何か違和感が凄いな……っ」

 

「感想言ってる時間はないよ。そっちは九尾と尾獣玉を作るんだ。 ……僕は」

 

 黙は前に出て万華鏡写輪眼を発動する。

 

「須佐能乎!」

 

 黙は須佐能乎を展開する。九尾のチャクラを全て雷の側に配分したため、その須佐能乎は先ほどの鎧の姿とは違い、人骨のような形態へと戻っている。

 

 発現した須佐能乎の両腕で黙は雪羅を抑え込む。

 

 

「文字通り全力で足止めだ!」

 

 

 一方雷は九喇嘛と共に尾獣玉の作成に取り掛かる。

 

「チャクラコントロールに自信はあるけど、いけるか……」

 

(てめぇの提案だ、つべこべ言わずやるぞォ!)

 

 雷が構えると、九喇嘛のチャクラが手の形を複数形成し現れ、腕から生えたそれが雷の手に陰遁・陽遁のチャクラを集中し始める。その途端

 

「グオッ!!??……滅茶苦茶……お、重たいィ……っ!!!」

 

 手に集まるチャクラの圧の重さに雷が片膝を着く。

 

(ワシの残りのチャクラ量的に一度も失敗はできんぞ、キバりやがれェ!!)

 

 九喇嘛の咤激励を受けつつ、雷はその形成しつつある尾獣玉の形を保つため高速の乱回転を加える。

 

 尾獣玉のチャクラが、悟の掌が発光するほどの熱量で焼き始める。その痛みは想像を絶するものであった。

 

「ヅっ……グぅぅぅぅっあぁぁぁあぁああああ!!!」

 

 それでも雷の目は、希望を失わず目の前で暴れる雪羅を抑える黙を見つめる。

 

「俺は……一人じゃないっ! ……勝って……ハッピーエンドを迎えて見せる……っ!」

 

 九喇嘛は己の持てるチャクラを集め、悟の腕に圧縮されたチャクラの黒い塊が形成され始める。

 

 しかし、雪羅もその尾獣玉の気配を感じ取り黙の須佐能乎の腕を1つ噛み砕き、再生し始めた脚で態勢を立て直そうと大きく暴れる。

 

「雷っ!! まだか?!」

 

 焦る黙だが、雷の方の術は未だ完成はしていない。

 

(チィっ……やっぱりチャクラが足りねぇ……どうする……っ)

 

 九喇嘛の弱音に、それでも雷は手元のチャクラの塊の回転速度を高め続ける。

 

「自然エネルギーを……九喇嘛なら集められないのか……っ?」

 

(今のワシじゃ、無理だ。てめぇが集めた自然エネルギーをチャクラに変えることなら出来なくもないが……この手一杯の状況だと……)

 

 

 その瞬間

 

 

 雷の背後から、雷の手を支えるように小雪の手が添えられる。

 

「!? 小雪、そんなことしたらっ……!?」

 

 振り向き、小雪に目を向ける雷。直接でもなくとも尾獣玉の熱に小雪の手も焼かれるが、苦しそうな顔をしつつも小雪は笑顔を見せる。

 

「ハッピーエンド……見せてくれるんでしょ……っアンタを信じてるん……っだから!!」

 

 小雪の言葉は、悟の精神を落ち着かせ、小雪の手が支えとなり僅かな余裕が雷に出来た。

 

 その瞬間、莫大な自然エネルギーが雷へと集中する。

 

(一瞬でこの量の自然エネルギーを……自分でチャクラに練り上げられないのが不思議で気に喰わんが、千手の力は本物のようだなっ)

 

 好機とばかりに九喇嘛は仙術チャクラを練り上げ、雷へと還元し始める。

 

 すると次第に、雷の髪が黒色に染まりはじめた。

 

「悟……アンタ髪が……」

 

 驚く小雪に雷が振り返り微笑む。

 

「行ってくる……小雪のお父さんたちを……救けてくる」

 

「……お願い……っ」

 

 小雪の言葉を受けた瞬間、雷の手元の尾獣玉は小さいながらも安定した形を模る。

 

「黙!! 行くぞぉ!!」

 

 小雪の元を離れ駆けだした雷は、黙目掛け走りこむ。

 

 須佐能乎は持ち直した雪羅により、完全に砕かれ今まさに雪羅のチャクラ弾を受けようとしている黙が、駆け寄る雷へと手を伸ばし……

 

 チャクラ弾の爆発が2人を巻き込んだ。

 

「悟……っ!」

 

 小雪が名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 爆発の煙から、上方へと白い髪の悟が飛び出す。

 

「喰らえ……尾獣玉!」

 

 それを予見していた雪羅のチャクラ弾が空中の悟へと打ち出され、

 

 

 貫通する。

 

 

 その分身の術がかき消されたその瞬間煙の中から、雪羅の胴体の下に雷を纏った黒髪の悟が高速で移動し構える。

 

「ひねくれた俺たちが素直に、術をぶつけると思うなよっ!! ……正真正銘喰らいやがれぇ!!!!!」

 

 

 

「「「尾獣玉!」」」

 

 

 瞬間、悟の手元の空間が歪み圧縮して見せ

 

 直後に上方に向けて光の柱が立ち上がる。

 

 今までのどの攻撃にも比べられないほどの衝撃と爆音。

 

 雪羅の胴体を完全に飲み込むその爆発は核となる鉱石は砕き始める。

 

 爆発を制御しようとする悟の手は肘まで高温で発光しており、両手が震えながらもその尾獣玉の指向性を空へと向け続ける。

 

(気を抜いたら、尾獣玉の爆発がワシらも飲み込むぞっ! 踏ん張りやがれぇ!!)

 

 九喇嘛の言葉に、悟は声にならない叫びで答える。

 

「――――っ!!!!」

 

 最後に上空に向けて突き出された悟の腕から、ひときわ大きなチャクラの奔流が流れ

 

 

 雪羅の核を砕く。

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 その空間が静けさを取り戻す。

 

 灯りは衝撃で全て消え天井には穴が開いていた。はるか上方、ドトウの城ごとくり抜いたその穴は間もなく朝を迎える空を覗かせる。

 

 パラパラと、瓦礫の崩れる音が広大な空間に響く。

 

「…………キッツ…………」

 

 上空に向けて突き出された悟の腕の発光は熱が静まることで収まりを見せ、焦げた皮膚を露わにする。髪の色も白色に戻っていた。

 

 一言呟いて前に倒れこむ悟を走り寄ってきた小雪が支える。

 

「……アンタ命をかけるのはバカとか言ってなかった……っ?」

 

 涙声の小雪。

 

「……生きてるでしょ……俺たち二人……はっはっはっはっは」

 

 弱々しくもそういって笑う悟に小雪は一言「……バカ」と言い強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

「生きて返すわけがないダローーーっ!!!!」

 

 途端激高したレンゲが、羽を広げ悟たちの前に降り立つ。

 

「私の……ワタシの最高傑作をぉ……この10年の積み重ねを台無しにしておいて、タダで返してたまるものかぁあああ!!」

 

 そのレンゲに対し、悟は力の入らない両腕を垂れ降ろしながらも小雪の前に立ち、レンゲと向き合う。

 

「アンタ、ドクターなんだろ……慣れないことはしないに限るぞ……」

 

「うるさぁああい……貴様ぁっその腕では印を結べまい……だが私にはチャクラの鎧があるっ!! 無敵の鎧でぇ……私の手で殺してやるっ!!」

 

「へへっ……やれるものなら……やってみろっ」

 

 殺すと宣言したレンゲに対して、悟は小雪の腰帯に携帯されていた脇差しを口で引き抜き駆けだす。

 

 レンゲはチャクラの鎧から、千本を幾つも放つ。

 

 が、悟はその軌道を読み最小限の動きで避けレンゲに近づく。

 

「ひぃい!?」

 

 決して素早くもない今の悟に攻撃を当てられないレンゲは焦り、障壁を展開する。

 

 しかし

 

 その障壁をすり抜け悟は、レンゲに肉薄する。

 

 腕を振り殴打を繰り出すレンゲの攻撃をかわした悟はレンゲに飛びつき、彼の両肩を両膝で押さえつけ組み伏す。そして

 

 肉の切れる音が静かに鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 僅かに痙攣を見せるレンゲの身体に対し、悟は口にした血のついて脇差しを離して呟く。

 

「もう……何度もその障壁を見てんだ、そんで今の俺の眼なら……」

 

 悟の目から、いつの間にか灯っていた()()()が消える。

 

「障壁に弾かれないようにチャクラの波をコントロールすることも出来るんだよ……まあ、アンタがまともに格闘できる人間だったら負けてただろうけどな」

 

 小さくため息をつく悟に、小雪が声をかける。

 

「……死んだの?」

 

「……ああ、悪いけど苦しませてやれなかったのが心残りだ。悪いな、あっさり殺して」

 

「いいわ……もう、悟……ありがとう」

 

 複雑な表情の小雪に、悟は立ち上がり近寄る。

 

「……っ」

 

 その瞬間ふらっと倒れこむ悟に、小雪は慌ててその身体を支える。

 

「大丈夫!?」

 

「いや、流石にもう……キツイ……」

 

 完全に疲れ切った表情の悟に小雪は、自身の膝を枕に成るように屈みその上に悟の頭を乗せる。

 

「アンタは十分すぎる程、頑張って……ホントに頑張って私に希望を見せてくれたわ……」

 

「ああ……頑張った……ぜ」

 

 悟の髪を撫でる小雪。

 

「……お疲れ様」

 

「五分……経ったら……起こして……く……れ……」

 

「フフッ馬鹿じゃないの? ……もうゆっくり寝てて良いのよ」

 

 パラパラと施設の崩れる音が静けさに響く中、明かりの消えた空間の大穴から見える空から射す淡い光が2人を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

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