目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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73:雪姫忍法帳

 

 スー……ス……

 

 

 

 

 

「よし、五分経った!!」

 

「きゃあ!?」

 

 寝息を立てていたと思った悟が、突然跳ね起き小雪は驚きの声を上げる。

 

「……よし、最低限動けるくらいには回復したな」

 

 身体をクネクネと動かし、調子を確かめる悟。両腕は火傷のような変色を見せ、未だ動かせる様子ではなく力なく揺れている。

 

「アンタ……ホントに五分ぐらいで起きるなんて……どんな身体をしてるのよホント」

 

 呆れた感じの小雪の言葉に悟は

 

「……まだ、やるべきことが残ってるからな」

 

 そう答える。

 

「やるべきこと?」

 

「まだエンディングじゃないってことさ」

 

~~~~~~

 

 悟が寝ていた5分の間

 

 

 悟の精神世界の草原で、黙と九喇嘛が会話を交わしていた。

 

「……これで今回の君の目論見は終わりかい、九尾?」

 

「まあな……ワシとしては、雪羅など放っておいても構わなかったが……」

 

「嘘だね、君には聞こえていた……雪羅の犠牲になった人たちの、魂の声が。それを放っておけないとは君も存外人が良い……尾獣だから人が良いとは言わないかな?」

 

「……っケッなんのことかさっぱりだぜ」

 

 お互いに向き合う2人。黙は身体が半透明になり九喇嘛もまたそのデフォルメされた姿は消えかかっていた。

 

「……僕にも少しだけ聞こえていたんだ、怨嗟の声が。まあでも君にチャクラを分けてもらうまでは前回表に出た反動で、ずっと夢を見ているような感じで意識はなかったんだけどね」

 

「何が言いてぇ……?」

 

「……案外、君のことは好きになれそうかなってね……()()()

 

 そう言う黙の言葉に、九喇嘛は心底怪訝だという表情を見せ唸る。

 

「気持ちワリィこと言うんじゃねぇ!! ……たくっワシは雪羅の存在が気に喰わなかっただけだ!! ワシのやりたいことをやるためにてめぇらを利用したにすぎねぇ!! わかったか!?」

 

「……フフッよくわかったよ。今もわざわざ自分のチャクラでこの身体(黙雷悟)の回復をしてくれてる優しい尾獣様?」

 

 クスクス笑う黙に九喇嘛は面白くないと、拗ねた表情を見せる。

 

「それじゃあ、僕はもう寝るとするよ。もう意識を保てなさそうだ……」

 

「……あっちの悟の奴には何か言ってかねぇのか?」

 

「彼は……雷はもう十分に忍びとして成長しているからね、信頼してこの身体(黙雷悟)を任せられる」

 

 そう言った黙は眠るような表情を見せスウッと消えていき……

 

 瞬間クッキリとした姿になる。

 

「…………あれ?」

 

 呆けた黙の声。

 

 そんな黙の代わりとばかりに九喇嘛の姿が霧のように霧散する。そして九喇嘛の声が草原に響く。

 

「てめぇにも貸しを作るのも嫌だからな貴様にワシの残りのチャクラをくれてやる」

 

「……僕のことは嫌いなんじゃなかったかい?」

 

「フンッだから、本体にこの記憶が行かねぇように分体のワシは消える……ワシのチャクラが残ってたら本体がこの気味のワリィ()()を経験しちまうからな」

 

 

 

 じゃあな

 

 

 

 そんな優しい声色の声が草原を巡った。

 

 

「……ははっ、確かにこういう感情は……慣れてなくてむずがゆいかもね」

 

~~~~~~

 

 

 

 そして現実世界

 

 先頭の余波で明かりが消え薄暗く広い空間の中、小雪はレンゲから脱がせたチャクラの鎧を悟へと着せていた。

 

「ええと……多分これで良いと思うわ」

 

「悪いな……ちょっと気味悪かっただろ?」

 

 レンゲの身体に目線を送ってそう言った悟に小雪は答える。

 

「いいのよ……血の繋がりは確かにあるけど、私からしたら憎むべき相手で……清々したわ。それより、アナタその怪我でホントに大丈夫なの? ……たった五分休憩しただけで……」

 

 悟の心配をする小雪も疲れからか、顔色は優れない。

 

 悟はチャクラの鎧に備え付けられていた強靭な糸の装備で、自分と小雪の身体を括りつけるように指示をする。

 

「見た目よりは大丈夫そう……まあ、当分は両腕は動かせなさそうだけど早くナルト達と合流しないとな」

 

 悟の指示を受け小雪が2人の胴体を正面からくっつく。少しの無言の間の後に小雪が口を開く。

 

「ねぇ……今、こんなこと言うのもアレだけど……女優とこうも密着して、何か感想とかないの?」

 

 腕の動かない悟に変わりに糸を結ぶ小雪はからかうような笑みを見せる。その様子に悟は少し顔を赤くし

 

「今更……そんなことより、仮面……被せてくれ」

 

 そういって顔を背ける悟に、小雪はクスクスと笑いながら糸を結び終えた後に預かっていた悟の仮面を着ける。

 

「……役得とは思ってます」

 

「えっ……なんtきゃああああああああああ!?!?!?」

 

 悟が呟いた言葉を小雪が聞き返した瞬間、チャクラの鎧の翼が展開し、城の開いた縦穴を勢いよく飛びあがる。

 

 しかし操作が上手くいかないのか安定しない軌道で上昇を続けることに小雪が不安を感じ叫ぶ。

 

「ちょっとォ!?!? ホントに大丈夫なのォ!?」

 

「チャクラコントロールは得意だから……大丈夫っ!!! のはず……

 

「ちょっとォ!?!?!?」

 

 瞬間、スピードの増した飛行速度で城上空まで一直線に飛び抜ける悟たち。

 

「っっっ……!」

 

「huーーー!!!!」

 

 その上昇圧に小雪はつい口を閉じ、目を伏せ強く悟に抱きつく。テンションの上がった悟は楽しそうに声を上げる。

 

「あ、コツ掴んだかも」

 

 悟がそういうと、ドトウの根城の遥か上空で制止することに成功し安定した状態になる。

 

「た……高い……早く降ろしてぇ……っ!」

 

 しかしそのあまりにもの高高度、一般人の小雪は下に見える光景に目を回し震える。

 

「確かドトウは虹の氷壁とかいう場所に向かったはず……方角はわかるか、小雪?」

 

「き……北ぁ……っ」

 

「よしきた、行くぞ!!」

 

 目的地を見据え悟は、飛行を開始する。

 

(やっぱ飛べるって便利だな……)

 

 恐怖に慄く小雪をよそに、悟はその移動手段のすばらしさと楽しさを噛みしめていた。

 

 

~~~~~~

 

 

 虹の氷壁では既にドトウの手により、<風花の秘宝>と呼ばれる装置に六角水晶がはめられていた。周囲を囲むように立つ巨大な氷壁は光を放ち雪の国ではめったに感じられないほど、周囲の気温を高めていた。

 

 地べたに座り込み、肩で息をするカカシは朦朧とした意識の中、目の前の出来事に目を向け呟く。

 

「まさか……風花の秘宝が……発熱機だったとはね。ドトウの思惑は外れたようだが……」

 

 映画監督のマキノと助監督は、カカシのスグそばで、その()()をカメラを回しながら見守る。

 

「頑張れ、気張れよォ!! 若者たちぃ!!」

 

 カカシと監督らの目線の先では、風花ドトウと木ノ葉の下忍たちの最後の戦いが繰り広げられていた。

 

「氷遁・黒龍暴風雪(こくりゅうぼうふうせつ)ぅうう!!」

 

 ドトウの両手から放たれる、黒龍の形を模った吹雪が周囲を薙ぎ払う。

 

 魔鏡水晶を辺りに展開し、高速移動でその術から逃れる白。水晶の鏡同士が時空間忍術で繋がっているため、ワープのように移動し回避に徹するがしかし、追尾するその黒龍は次々と魔鏡水晶を砕き白へと迫る。

 

「くっ……っ!」

 

 術の脅威に白が晒される直前、青い雷光が白を抱え、黒龍との距離を取る。

 

「千鳥・雷装…………クッ……長くはもたねぇか」

 

 その稲光は千鳥を纏い身体強化を為したサスケであった。

 

 何とか逃げ切りドトウの術が切れ、少しの間嵐の様な術の轟音が消える。

 

「螺旋丸!!」

 

 その隙に、影分身を引き連れたナルトが螺旋丸をドトウへと叩き込むが

 

「甘いぃ!! より強化されたこのチャクラの鎧の前ではどのような術も無意味だっ!!」

 

 ドトウが着るチャクラの鎧の効果に螺旋丸はかき消され、ドトウを中心に放たれた衝撃波がナルトの影分身ごと本体を吹き飛ばす。

 

 その戦況を遠目で観察するサクラ。

 

(何とか皆で、雪忍たちナダレ・ミゾレ・フブキは倒せたけど……カカシ先生もチャクラ切れで動けなくなっちゃったし、ドトウのチャクラの鎧は破れない……どうすればっ)

 

 劣勢に立たされている木ノ葉の下忍たち、白は悔しそうに呟く。

 

「ナダレとの戦いで、カカシさんに僕が無理を強いてしまったせいで……っ!」

 

「んなこと、後悔してる場合かっ! 次が来るぞっ!!」

 

 サスケはチャクラの鎧により、術を強化させているドトウのチャクラの色を写輪眼で見切り全員に回避の合図を送る。

 

「黒龍暴風雪っぅぅう!」

 

 周囲を薙ぎ払う単純、しかし強力なその術とチャクラの鎧の効果に手をこまねく状況が続いていた。

 

「畜生っ!! なんで俺の螺旋丸が……力が通じねぇんだ……カブトだってぶっ倒せたのにぃ……っ!!」

 

 苛立ちを表しているナルトは、防戦一方になっている状況に苦言を漏らす。

 

 そんな戦況をただ眺めるだけのカカシは悔しさを呟く。

 

「クソっ……このままじゃ……んっ?」

 

 ふとカカシは自分の耳に届く微かな音に気がつく。それはまるで女性の叫び声のような……

 

「きゃああああああああああ!!!」

 

「これは……まさか……っ!?」

 

 ふとカカシが振りむき、それに合わせ監督らもそちらの方向にカメラ向ける。

 

 そこにはかなたの空から、チャクラの鎧の羽で飛行してきた悟と簀巻きのようになっている小雪の姿があった。

 

「悟に小雪さん!? いったいどういう状況なのかわからんが……っ!」

 

 2人の生還にカカシは喜びの表情を浮かべるがその様子の可笑しさに気がつく。

 

 明らかに、飛行する2人の勢いが衰えることなくこちらに向かっているのだ。

 

「オイオイ……まさかぁ……」

 

 嫌な予感を感じたカカシがそう呟くと、そのアンサーとばかりに悟の声が響く。

 

「止まれないんで、受け止めてください、カカシさん~!!!」

 

 その次の瞬間、殆ど勢いそのままカカシへと突っ込んだ悟と小雪は3人とも、発熱機の影響で解けかけている雪だまりへと突っ込む。

 

「……雪絵無事かぁ!?」

 

 その様子を見ていたマキノの声に何とか返答の声が聞こえる。

 

「……ええ、無事……こんな体験二度とゴメンよ……」

 

 悟たちはヨロヨロと雪だまりから這い出てくる。悟と小雪を結んでいた糸はカカシがその手に持つクナイで解いたようだ。

 

「お前は……ホント……常識に当てはまらないねぇ……流石の俺も一瞬死を覚悟したよ……」

 

「いやぁ、スピード出たら止まりきれなくって……すみませんカカシさん」

 

 苦笑いを浮かべばつの悪そうにする悟に、カカシはその手を悟の頭に乗せ目を細める。

 

「ま、随分ボロボロのようだが生きてるようでなによりだ……お前に何かあったらマリエに合わせる顔がないからな」

 

「ハハハ……」

 

 そんなやり取りの後、仮面の下の顔を緩めていた悟はナルト達の戦闘の様子に気がつきその緑の眼を戦闘に赴く者へと変容させる。

 

「それじゃあ、俺行ってきます。カカシさんはその様子だと、もう動けなさそうですね」

 

「ああすまない、不甲斐なくて……」

 

 カカシの立つのもやっとだという様子に悟は「待っててください」と言わんばかりに再度、チャクラの鎧の翼を広げ背を向ける。その悟に

 

「悟……」

 

 心配だという声色の小雪が声をかける。小雪は悟がどれだけ傷ついてきたのかを殆ど見ておりその体を気遣うのも無理はなかった。

 

 振り返らない悟は目線をナルト達と戦うドトウに向けたまま、小雪の心配に答える。

 

 

「小雪さん、俺たちを信じてください……そうすれば……俺たち、<忍び>は負けない……っ!」

 

 

 その言葉を残し、悟は戦闘の渦中へと飛び立っていった。

 

 

~~~~~~

 

「黒龍暴風雪!!」

 

 ドトウの放つ術は、そのチャクラの鎧の効果も相まって強力なモノでありひとたび放つたびに戦局を大きく傾けていく。

 

 幾度も放たれるその術の牙に、サクラが餌食になりそうになった瞬間

 

「サクラ、捕まえれぇ!!」

 

 悟が大声を挙げながら飛来し、サクラは悟の足を掴むことで危機一髪、術の脅威から逃れる。先ほどまで自分がいた場所が抉れる様を眺めながらサクラは悟へと声をかける。

 

「悟……アンタ、遅いのよ……でも、絶対来るって信じてた!」

 

「悪かったよ、これでも結構急いだ方だから許してくれ!」

 

 その様子を見ていたナルトやサスケ、白は悟の無事に気を持ち直す。

 

「アイツ……!」

 

「生きててくれましたか、悟君!」

 

「悟……!」

 

 そして悟の持つチャクラの鎧にドトウが反応を示す。

 

「貴様……その黒いチャクラの鎧……まさかレンゲを……!?」

 

「その通り。あとそれだけじゃない、頼みの綱の雪羅ももうない。アンタの10年越しの野望もここまでだっ!!」

 

「……貴様……貴様キサマぁあああ!!!」

 

 悟の言葉に激高するドトウは印を構え腰を低くする。すると周囲の大気が震え始め、辺りの空気がドトウに集中するように渦巻き始める。こめかみに血管が浮かぶドトウは怒りを滲ませながらも、己の野望を口に出す。

 

「……雪羅が消えた以上、この国に蔓延している雪羅のエネルギーもやがて消える……そうなれば残った雪忍どもは氷遁を扱えなくなるだろう……だがなぁ、チャクラの鎧には雪羅のエネルギーを取り込み新たな<核>となる機能も備わっている……つまりだ」

 

 その瞬間、ドトウを中心に衝撃波が発生し木ノ葉の忍び達を吹き飛ばす。

 

 空中で何とか態勢を整えた悟は飛んだままサクラを背に乗せ、ドトウの様子を伺う。先ほどまでとは違い常に黒いチャクラの膜に覆われた状態になったドトウは苦しそうに額に汗を滲ませている。

 

「明らかに無茶をしている……だが」

 

「そう、今、ここでぇ!! 貴様らを殺しさえすれば、あとで何度でもやり直せるのだ!!」

 

 嫌な予感を察した悟の呟きにドトウは答えを示す。明らかに異常なまでに膨れ上がったチャクラを練り上げたドトウの放つ黒龍暴風雪は嵐を巻き起こし、周囲を薙ぎ払い始めた。

 

(人工尾獣・雪羅の力を集めた、人工的な人柱力……って所か……不味いなっ)

 

 自身を追いかける黒龍の形を模した嵐に何とか飛行速度を高め逃げ続ける悟。背に乗るサクラはこの状況に悲観することなくブツブツと呟きながらも勝機を伺っている。

 

 地上のサスケたちも、数の増えた黒龍から逃れるのに必死であった。反撃の糸口が見当たらないこの戦況。

 

 

 

 それでも木ノ葉の忍び達の目に宿る光が鈍ることはなかった。

 

 

 

「悟……ドトウのチャクラの鎧を壊す方法があるかも……っ!」

 

 気づきを得たサクラが、そう悟へと語りかける。

 

「だけど、かなり無茶な方法だし、それに私なんかの作戦じゃ……」

 

 しかし自信を持てないのか、躊躇するサクラに悟は明るく声をかける。

 

「大丈夫だ、俺たちなら無茶をやり通すことなんて造作もない。それに……俺はサクラの事もすごい奴だって知ってるからな、そんなサクラの作戦なら心配ない!」

 

「私が……っ」

 

 未来を知るからだけでなく、一緒に里で過ごしてきた仲間としての悟の自信の溢れる言葉にサクラもまた答えようと勇気を振り絞る。

 

「……まず、術を打ち消すチャクラの鎧のあの保護膜……アレは鎧の膜同士でぶつかると干渉を起こしてしまうみたいなの。さっきナルトとサスケ君と一緒に倒したミゾレとフブキがお互いにぶつかった時にそれを確認したわ」

 

「つまり俺が着てるコイツの保護膜をドトウの鎧にぶつければいいってことか……!」

 

「ええ、だけどその為にはこの攻撃をかいくぐらないと……それにドトウの鎧の力は何だか強くなってるみたいだから壊せるっていう確実性はないのだけど……」

 

 会話を続ける2人に迫る黒龍に、悟は急旋回し突っ込む。ぶつかる瞬間に螺旋軌道で飛び黒龍をすれすれで回避した悟は、背にしがみつくサクラへと指示を出す。

 

「影分身で作戦を地上の3人に伝える! サクラ、腕が使えない俺の代わりに影分身の印を結んでくれ!」

 

「印をってそんなこと……できるの?」

 

「俺たちなら出来る、特にチャクラコントロールが得意な俺たちならな……!」

 

 悟は、直接は見てはいないがナルトが我愛羅との戦いで行ったであろう、ガマブン太とのコンビ変化の要領を真似して影分身を発動させる。

 

 印を結んだサクラと悟の残り少ないチャクラを使い発動した影分身は、不安定ながらもその形を成し地上へと降り立ち走り始める。

 

「おお、思ってたよりすんなり術が使えたな、流石俺たち」

 

「っ攻撃が来るわ、悟!!」

 

 悟の少しの歓喜を打ち消すように再度黒龍が3つ迫ってくる。

 

「頼んだぜ、3人とも……っ!」

 

 迫る攻撃をかいくぐりながら悟は反撃の機会を待つのであった。

 

 

~~~~~~

 

 地上では瓦礫に身を潜める白の元へと悟の影分身が訪れ、作戦を伝えていた。

 

「ええ、わかりました。つまり僕たちで隙を作ればいいわけですね」

 

「ああ、出来そうか?」

 

 悟の影分身の問いかけに、お互いの面越しに視線を合わせ白は答える。

 

「愚問です、やって見せますとも」

 

「……よし、頼んだぞ白」

 

 そう言って煙を上げて消えた悟の影分身を尻目に白はドトウの様子を伺う。空中では悟たちが、地上ではナルトとサスケが黒龍の脅威にさらされている。

 

「まずはサスケ君とナルト君との合流ですね……」

 

 そう呟いた白は大きく深呼吸をする。

 

(ドトウのあの強化は大気中の<雪羅の力>を取り込んだものだろう……船でのカカシさんの推察を考慮すれば元より氷遁が扱える僕にも同じことが、いやそれ以上のことが出来るはず……)

 

 目を閉じ呼吸を整え、無音の精神へと潜る白。

 

 大気の<それ>を感じるために集中を深める白が気がつくと、先ほどまでいた虹の氷壁とは別の場所に自身がいる事に気がつく。

 

(此処は……ああ、なるほど僕の精神が反映されている空間……ですか)

 

 雪降る森の中、白は目の前にある小さな小屋に目線を送る。隙間風も多そうな簡易的でボロボロな小屋。それでも懐かしさを感じさせるその小屋の中へと白は足を向ける。

 

 戸を引けば、小屋の中の囲炉裏の中心に青い炎が小さく灯っているのが分かる。

 

「これは……」

 

 その光景に何か納得のいった様子の白は徐にその炎を両手で包み込むように囲う。するとその青い炎は手を伝わり、白の全身へと広がり炎の規模が広がる。

 

「アノの邂逅の時に、僕の中に欠片が宿っていたのですね……<アナタ>が何者であるかなどは関係ありません。ですが、どうか今は一緒に闘ってください……っ!」

 

 

~~~~~~

 

 

 黒龍の脅威がナルトとサスケに迫る。ナルトは影分身を使いトリッキーに逃げるもジリ貧になり追い込まれている。

 

 一撃一撃が鮮烈な術の脅威に焦りを感じたナルトに死角から不意に多数の黒龍が迫る。

 

「っナルトォ!!」

 

 それに気がついたサスケの叫びをかき消すように黒龍がナルトを影分身ごと飲み込み地面を揺らす。

 

「ますは……一匹……っ!」

 

 取り込んだ力の脈動に脂汗をかきながらも、ドトウはナルトを仕留めたことに笑みを浮かべる。

 

 しかし土煙が晴れた先、黒龍の抉った地面にはナルトが居た形跡がなく少し離れたサスケの元に水晶の鏡が現れる。

 

「ドトウ、アナタは僕たちに負ける……誰一人……欠けることなく……っ!」

 

 その鏡から、ナルトを抱えた白が現れる。しかしその様子は、普段の彼女と異なり彼女の髪の一部が白く変色している。

 

「サンキューだってばよ、白。危機一髪だったぜ……」

 

「白か……お前のその様子……」

 

「説明は後です、サスケ君。ナルト君も聴いてください、サクラさんからの作戦です」

 

 ドトウの気のゆるみが生じた一瞬に情報の共有を済ませた3人は一斉にその場から散らばる。

 

「さあて、反撃の時間だってばよ!! 多重影分身の術」

 

 走りながら印を組んだナルトは数百の数に増え、数体の影分身がさらに印を結ぶ。

 

「うずまきナルト・多重砲弾の巻ぃ!!」

 

 風遁・烈風掌により飛ばされるナルトの影分身たちの物理的な波がドトウを襲う。視界を塞ぐような幾重にも連なる光景にドトウは印を結び対処を試みる。

 

 そのナルトの反対側では、サスケが印を結び終え大きく息を吸い込む。

 

「火遁・豪火球!!」

 

 強化されたチャクラの鎧の効果で、豪火球もナルトの影分身も振れた傍からかき消されるがドトウの視界は確実に塞がれる。

 

「小賢しいっ! 双龍暴風雪!!」

 

 両腕をそれぞれナルトとサスケの居た位置に向け構えたドトウの手から黒龍が放たれ、豪火球と影分身を押しのけながら2人に迫る。

 

 その瞬間、辺り一帯、地上と空中問わず魔鏡水晶が広範囲に展開される。

 

「氷遁秘術・群像魔鏡……!」

 

 白の術が発動し、現れた幾数の鏡にナルトとサスケが飛び込み術から逃れる。一時的にチャクラの増している白が展開した魔鏡がナルトとサスケの移動をカバーし、彼らの攻撃をサポートする。

 

「サポートだけで終わりません、氷遁・燕吹雪の術!」

 

 印を瞬時に結び終えた白は、自信も術を放ちドトウへと攻撃を行う。

 

 その様子を見ていた、カカシは

 

「あの術は、雪忍の一人が使っていた術……! なるほど、白君が使えても疑問はないか……」

 

 コピー忍者として、白の行動に少し好感を示していた。

 

 炎と氷と影分身が入り乱れる戦場。マキノたちもカメラを回しながらその様子を見守り、小雪も両手を握りしめて彼らの勝利を願っていた。

 

 ドトウの頭上、その遥か高度から人影が落下する様子に、遠巻きで見ていた彼らは気づく。

 

 

 

「大丈夫、私ならできる……皆の役に……立つのよ……っ!」

 

 上空から1人自由落下でドトウへと迫るサクラ。彼女は持てる限り、外套や懐、ポーチに仕込んだ忍具をドトウの元へと手あたり次第にバラまく。

 

 チャクラの鎧がそれらの忍具を弾くが、その全ての忍具に結びつけられた小袋が弾け、小さな紙が舞う。

 

 その紙は桜吹雪のごとくドトウの周囲を舞い、埋め尽くし最後にサクラが投げた小型の爆弾がチャクラの鎧の膜に触れ爆発。

 

 紙吹雪の正体は全てが小型の起爆札であり、誘爆により全ての札が爆発を起こし大規模の爆炎を巻き起こす。

 

 その衝撃さえも受けきったドトウは苛立ちを募らせ、周囲を爆炎と煙に覆われた中、上空から落下してくるであろうサクラに向け黒龍を放つ。

 

 空中での回避の手段を持たないであろうサクラ目掛け放たれた術はしかし、術とサクラの間に現れた魔鏡がそれを防ぎ、サクラは魔鏡に吸い込まれ姿を消す。

 

 黒龍が魔鏡を砕いた瞬間、その黒龍により煙が晴れドトウの視界にあるものが映しだされる。

 

 保護膜が発生している、無人のチャクラの鎧が。

 

「なっ……!?」

 

 驚きの声を挙げたドトウだが、その瞬間にチャクラの鎧同士が干渉を起こし、激しいスパークを起こす。

 

 苦しみに吠えるドトウの声が響く中、虹の氷壁の壁面にサクラの外套を咥えて立つ悟は喋る。

 

「ほへへへ、ふへ、ほへほ、ふふふへへ……」

 

「何て言ってるかわかんないわよ悟、まあなんとか作戦……成功ね」

 

 勢いをつけて身体を揺らし壁面にチャクラコントロールで吸着したサクラ、それを確認して悟は外套を口から離す。サクラはスパークを起こしているドトウに目を向けながら呟く。

 

「悟が鎧を着たままだと、あの干渉に悟まで巻き込まれちゃうから……どうにかして鎧だけをドトウにぶつけたかったけど……」

 

「保護膜を発生させた鎧に気づかれて術で弾かれたら、それで一巻の終わり……出来るだけ地表組に気を反らしてもらっている間に、この氷壁の上でサクラと鎧をひもで結んで俺がサクラをドトウの頭上まで足で蹴り飛ばす……」

 

 サクラの呟きに続きに合わせ悟も一連の流れを振り返る。

 

「あとは私が忍具を使ってギリギリまで、頭上からドトウに接近……このとき私に繋いだ鎧は影手裏剣の要領で、ドトウから見えないから……」

 

「白の魔鏡で移動する寸前にクナイでつないだひもを切り、魔鏡でサクラをここまで白に飛ばしてもらい俺が受け止め、残った鎧だけがドトウにぶつける……いや~何とかなるもんだな!」

 

 壁面を降りるサクラは悟をジト目で見る。

 

「まあ、自由落下の勢いを殺す算段を用意して無くて、悟が力技で何とかした以外は良かったと思うわ」

 

「急ごしらえの作戦だったから、詰めが甘くても目的さえ果たせれば良いんだよ、自信もてサクラ」

 

 完璧に上手くいかなかったことにサクラが少しナイーブになるも悟は励ましの言葉を掛け、2人して地面まで降り地表組と合流する。

 

「上手く行きましたね、皆さん」

 

 白が嬉しそうにそう声をかけるも、不意に態勢を崩して倒れこむ。咄嗟に近くにいたナルトが白を抱える。

 

「大丈夫か白!?」

 

「ちょっと……無理し過ぎたみたいですね……それは皆さんもなんですけど……不甲斐ない」

 

 バチバチとスパークを起こしていたドトウの周辺で音が止む。悟たちがそちらに目を向けるとドトウは空を見上げ白目を向き、立っていた。

 

「……やったか?」

 

 静けさにの中、サスケのその言葉の瞬間

 

 

 

 ドトウが雄たけびを上げる。

 

「まだだっ……まだ終わってない!!!!」

 

 

 一斉に構えを取る一同。ドトウは身体から焦げた黒い煙を上げながらもゆっくりと印を結ぶ。

 

「チャクラの……鎧の核に傷がついたが……まだだ……私の夢は終わらない……虫の息の貴様らなぞ……」

 

 涎を垂らし、怒りに顔を歪めドトウが吠える。

 

「殺してやる!!」

 

 ドトウの放つ術が再度、周囲に嵐を起こす。

 

 満身創痍の一同、しかし誰一人諦めるものはいない。

 

 そこに小雪の声が響く。

 

「皆……私は信じるわ……あなたたちは、風雲姫が認めた最高のチームよ!!! お願い、ドトウをうち倒して……この雪の国に平和を……っ!!!!!」

 

 その切なる願いのこもった声援に

 

「フンっ俺たちは、俺たちの任務を遂行するそれだけだ……いくぞ」

 

 サスケが先陣を切り、前に出ると左手にチャクラを集中させ青白い(いかづち)を放つ。

 

 しかしチャクラ量の限界か、その目は既に写輪眼を維持できずにいた。

 

 それでも直線、ドトウへ向け駆けるサスケ。

 

「死にぞこないが……っ! 黒龍暴風……っ」

 

 手を正面に構え、術を放たんとするドトウの腕に手裏剣が突き刺さり動きを止める。

 

「自動ではもう、チャクラの膜は発生しない……っ!」

 

 手裏剣を放ったサクラの妨害で、ドトウはサスケに対して拳を放つ。写輪眼がない今のサスケはその攻撃を見切ることが出来ない……が

 

 ドトウの拳が捉えたのはサスケではなく氷で出来た魔鏡であった。

 

「これで……限界……ですっ」

 

 術の行使と共に白の白く染まっていた一部の髪は元に戻り、白は膝を着く。

 

 瞬間ドトウは自身の左から来る死の予感に咄嗟に手をかざす。

 

 バチンと大きな音が鳴り響いた後に、雷の轟く音が響く。

 

「野郎……まだチャクラの鎧が……っ」

 

 サスケの苦言はドトウがかざした手からチャクラの鎧の保護膜が発生していることについてだった。

 

 鎧の核に傷がつき、自動では効果は発生しなくなっているがドトウは保護膜に指向性を持たせサスケの千鳥を防ぐ。

 

「まだだ……まだ……まだぁっ!!!」

 

 必死の形相のドトウは叫ぶ……10年の歳月、それ以前からのうっ憤。自身の夢が打ち崩されんとするその現実を否定するかのように。

 

 サスケの千鳥とは別の雷鳴にドトウはサスケの反対方向にも右手を使い保護膜を発生させた。

 

「飛んでないけど、飛雷脚!!」

 

 大きく青白い火花が散る。悟の放つ雷を纏った上段蹴りがドトウの右手の保護膜とぶつかる。八門も開けていないため、青白いままの雷を纏った悟の蹴りとサスケの千鳥に挟まれ、ドトウは汗を垂らし唸る。

 

「っ……悟……そんなもんかよ、随分とひ弱な蹴りだな?」

 

「ああ!? まだまだだっ!! サスケもバテてんのか雷が小さく見えるぞ!!」

 

 ドトウを挟んで飛ぶサスケと悟の煽り合い、2人は残りのチャクラを振り絞り一段と大きなスパークを起こす。それでも破れないチャクラの鎧。

 

 サスケと悟は大きく息を吸い込み、叫ぶ。

 

「「さっさとこい、ウスラトンカチぃ!!!!」」

 

 

 

 

「誰がウスラトンカチだ、コラ……」

 

 

 

 

 ドトウの正面、大きく渦を巻くように風が1か所に集まる。

 

「……知ってるか、ドトウ。終わりってのはなぁ!! 正義が勝って、悪が負ける。ハッピーエンドに決まってんだよォ!!!」

 

 うずまきナルトが吠え、その右手に持つ螺旋丸を掲げ走る。

 

 

 

 その瞬間、朝日が昇り虹の氷壁がその光を照り返し辺りに光が散らばる。

 

 螺旋丸がその光をさらに反射し虹色の輝きを放ち、まるで虹色の竜巻がナルトの右手に集まるかのような光景を作り出す。

 

「映画の……風雨姫の……虹色のチャクラみたいっ」

 

 その光景を見てそう呟くサクラ。

 

 

「行けぇええ、小僧!」

 

 マキノ監督の声が響き、そしてその場の誰もが、後に続いて叫ぶ。

 

 

『行け、ナルト!!!』

 

 

 

――――螺旋丸!!!

 

 

 

 ドトウへと炸裂した螺旋丸は、一瞬小さく収縮し瞬間、大きく爆ぜドトウを遥か上空へと螺旋軌道で吹き飛ばす。

 

 サスケと悟もその螺旋丸の炸裂に左右に吹き飛ばされつつもドトウの行方を目に追う。

 

 ドトウは虹の氷壁の朝日を反射している氷壁と叩きつけられ、そこに大きなヒビを入れる。

 

 そのヒビが広がり、氷壁が崩れ去ることで強い光が辺りを照らし周囲の光景を大きく塗り替えていく。

 

 雪の残る、荒れた土地に、青々とした草原が一瞬で広がる。

 

 その魔法のような光景に仰向けに倒れている悟は呟く。

 

「これは……立体映像……って奴か……すごい技術だ、まるで春の光景みたいで……温かい」

 

 周囲の人間はその現象に戸惑いを見せ、マキノ監督と助監督もその映像技術に奇声を上げていた。

 

 唯一、小雪は悟の元へと走り寄り近くへと膝を着く。

 

「ねぇ、悟これって……」

 

 悟を抱き起した小雪の言葉に悟が答えようとしたときに、声が響く。

 

 

『未来を信じるんだ、そうすればきっと春は来る。小雪は春になったらどうしたい』

 

 その音声に合わせ、虹の氷壁から映しだされた立体映像が空に幼少の小雪を映しだす。

 

「この声、お父さん……それにアレは私……?」

 

 はつらつとした小さな小雪は明るい笑顔を作り語る。

 

『小雪はね、おひめさまになるの!!』

 

『ふうん? どんなお姫様かな?』

 

『う~とねぇ……やさしくてぇ……つよくてぇ……そんでもってせいぎのみかたのおひめさま!!』

 

『はっはっはっはっは、それは大変だなぁ!!』

 

 父と娘、和やかなそんな過去のやり取りの映像に

 

「私……あんな事言ってたんだ……っ」

 

 小雪が涙を目に溜めて呟く。

 

『でも、その夢をずーーっと信じていればきっとなれるさ』

 

 立体映像の小雪の背後に風花早雪が映り、六角水晶を小雪の首元へと着ける。

 

『見えるだろう? ほらここにとってもきれいなお姫様が立っている』

 

 微笑む早雪。映像の小雪は水晶の首飾りを笑顔で手の中で弄り喜ぶ。

 

「……なれるよ、小雪なら……立派なお姫様に……」

 

 優しい声色の悟が小雪の手を握り語りかける。

 

「うんっ……うんっ……!」

 

 涙をポロポロと零しながらも小雪頷き答える。

 

『でもね、小雪なやんでるの……もう一つなりたいものあがあってねぇ……』

 

 涙を指でふき取った小雪は、過去の自分の笑顔に顔を向ける。

 

『じょゆうさん!!』

 

 その言葉に、小雪は笑みを零した。

 

 父と、娘。幸せそうな笑い声が木霊する。

 

 

 

 

 

 

 

 満足そうに、地面に身体を預けた悟は呟いた。

 

「これで……ハッピーエンドだ」

 

 

 

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