目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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3:今は、一人で独りの狂人

 風の国の砂漠に日が昇る。

 

 広大な大地を進む三人の人影は歩みを続けていた。

 

「……それで一尾・守鶴はデイダラ先輩とサソリ先輩どちらが狩るんですか?」

 

 天音はフードの合間から笠を被る二人へと問いかける。

 

「オイラだっ! そういやサソリの旦那のノルマはどんな人柱力だったっけか? ……うん」

 

「……人柱力の場所がまだ割れていない以上俺のノルマの事を考えるのは時間の無駄だ。 自分のことだけ考えていろデイダラ」

 

 意気揚々と答えるデイダラと、めんどくさそうに低い声を出すサソリ。

 

「じゃあ、私は今回何をすれば良いです?」

 

 天音はサポーターとして自分の役割を二人に問う。

 

 しかし

 

「しるか……うん」「自分で考えろ」

 

 その問いは一蹴され会話が途切れる。

 

「「「……」」」

 

 砂漠に吹く砂塵の擦れる音が明瞭に聞こえる沈黙が訪れた。

 

 その後天音はため息をつきながら宙へと飛翔する。

 

「おい……勝手なことをするな」

 

 天音の突然の行動にサソリが機嫌を悪くしてすぐに警告を行う。

 

「自分で考えた結果、先に砂隠れに行って斥候してきますね♪」

 

 しかし天音は笑顔でそれに答え砂隠れに向けて飛び立っていった。

 

 その様子を見ていたデイダラは笠を手で少し挙げサソリの方を見る。

 

「オイオイ……間者はサソリの旦那の部下が既にいるんだろ? どうすんだ……うん」

 

「そのことは小娘に話してはいなかったが……まあ下手を打っても俺たちの邪魔にならなければそれでいい……邪魔になれば、その時はその時だ」

 

 少し呆れた表情を見せるデイダラとあまり気にしていないサソリは体力を温存するペースで歩き続けるのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 その後、デイダラ・サソリのペアは砂隠れの里の防壁の要となる、里周囲を覆う崖のような壁面が見える位置まで来ていた。

 

 里へと侵入するにはその壁面を越えるか、壁面の間に作られた数少ない道を通るしかない。

 

 当然壁面には守衛の忍びおり、間の道は通ろうとすれば上から一方的に攻撃を受ける構造になっているため並の忍びでは、容易には里へ入ることは叶わないだろう。

 

「……サソリの旦那の間者……洗脳術の影響で俺たちのことを忘れているせいで、色々情報を垂れ流す裏切り者になってるらしいが……うん」

 

「仕方ねえだろうが、俺たちに関する記憶を一部、一時的に忘れさせるからこそ、間者でありながら上役にまで上り詰めたんだ。 それで出来ることの多さに比べれば……必要なリスクだと思え」

 

 歩調は変わることはなく、二人からは緊張を感じられない。 彼らのその落ち着きが、それだけ経験値の高さを物語っている。

 

「デイダラ……結局その(シリーズ)だけで大丈夫か? 相手は一応人柱力だ」

 

「サソリの旦那は神経質だな……うん。 オイラの術は芸術だから問題ないっ! それにちゃんと十八番(オハコ)も持ってきてる……うん」

 

 デイダラが粘土を入れた袋に手を置き、それを軽く撫でる。 その所作から自身の術に対しての絶対的な自信が見て取れた。

 

 サソリはその様子をちらっと見て、正面を向く。

 

「なら、さっさと終わらせろよ……俺は人を待つのが嫌いなんだ」

 

「わーってるよ、旦那。 オイラの芸術、見せてやるぜっ……うん」

 

 そんな彼らが壁面に近づくにつれて、違和感を覚える。

 

 ある程度近づけば、見張りの忍びが顔を見せるかその存在を見て取れるようになるはずだがそうはならず、全く敵意や殺意を感じないからである。

 

 デイダラが眉を少しひそめる。 

 

「静かだな、旦那の間者の仕業か……準備が良いな、うん」

 

「いや……どうも様子が……っ!?」

 

 サソリがデイダラの問いかけに答えようとしたとき、壁面の道から人影が飛んでくる。

 

 サソリたちの前に落ちたその人物は勢いよく地面で跳ね、うつ伏せに倒れる。

 

 サソリが傀儡の尾でその気絶している人物の顔を挙げさせ確認する。

 

「俺の部下……だ」

 

「おいおい、どうなって……うん?!」

 

 壁面のふもとをよく見れば、人影が1つ、手を振っているのが見える。

 

 デイダラたちがその人影に近づけば自ずと、その人物は声をかけてきた。

 

「先輩方、遅いですよ~? 暇だったので、この関所制圧しておきました♪」

 

 敬礼のポーズでデイダラたちを出迎えたのは天音小鳥であった。 サソリが周囲を観察すれば、砂の忍び達が幾人も昏倒していた。様子を伺うと砂の忍び達は壁に叩きつけられたり、地面に倒れ伏しているのがわかる。

 

「おい小娘……今さっき吹き飛ばした男だが……」

 

「はい? ああ、ここの砂の忍びに隊長とか呼ばれてた人ですね♪ 少し歯ごたえがありましたけど、こうやってぶっ飛ばしておきましたよ! 私凄いでしょサソリ先輩!!」

 

 シャドウボクシングをし、アッパーカットをしてちらっとサソリを見る天音。 片眼鏡から覗かせる黒目が、ドヤ顔を演出しさながら褒めて貰おうとねだる子犬のようにも見えた。

 

 が

 

「アイツは俺の間者だ……っ!」

 

 ほんの少し怒気を孕んだサソリの言葉に、「シュッシュッ」と口ずさんでシャドウボクシングをしていた天音の動きがピタッと止まる。

 

 ……静寂がその場を染める。

 

 少しの間を置いて天音が口を開く。

 

「む、向こうから手を出してきたんですっ! 私悪くないっ!!」

 

「ああ……新人のてめぇのことは何も知らせていなかったからな……たくっ……人の年単位の仕込みを台無しにしやがって」

 

 サソリの恨み節に天音は「ひぇ~」と涙目になり、後ずさる。

 

「まあまあ……結局里に入れれば一緒だぜ旦那……うん。 んじゃ、オイラは行ってくる、サソリの旦那と小娘は間者の目でも覚まさしておけばいいぜ……うん」

 

 デイダラはそういうと、自身の持つ起爆粘土を掌に存在する口でこねて吐き出し、形を造形する。

 

 その粘土を放り、デイダラが印を結べば粘土に籠められたチャクラが反応を起こして巨大化、人を乗せるには十分な大きさの粘土製の鷹がその場に現れる。

 

 粘土製の鷹にデイダラは飛び乗り、天音に語りかける。

 

「どうだ小娘? オイラのこの芸術的造形は……うん」

 

 自身の術で出来た鷹を後輩に紹介するように手を広げるデイダラ。

 

 その様子にサソリにグチグチと詰め寄られていた天音は

 

「……えっ!? ……良いんじゃないですか、多分」

 

「クソみたいな反応をありがとよ……うん」

 

 興味なさげに、適当さ加減がにじみ出た返答をする。そのままデイダラはテンションを下げて飛び立っていった。

 

 その様子を眺めた天音は

 

「造形だけは好きですけど、あれを爆発させるのは私、勿体ないと思うんですけどねぇ……」

 

 そう呟く。

 

「……小娘、無駄口叩いてないで俺の間者の介抱をしろ。 取りあえず目を覚まさせてアジトに先に向かわせねぇとならねぇ」

 

「あいあいさー」

 

 サソリの呼びかけに天音は答え、自分が吹き飛ばした斥候の治療にあたった。

 

 その様子をじろっと眺めるサソリ。

 

(この砂の関所を陥落させるほどの実力……警戒度は俺たち暁の情報が出回り、かなりのものだったはず。 それをモノとのもせずに服にすら掠り傷1つ負わないとは……この小娘、()()()じゃなさそうだ……クックックっ……チャンスがあれば俺の人傀儡のコレクションに加えてやっても良さそうだ)

 

 ふと天音は背後から感じる視線に、熱波が吹く砂漠で寒気を感じて身震いをした。

 

 

~~~~~~

 

 

 少し時間が過ぎると、天音の掌仙術が効いたのかサソリの間者は目を覚ます。

 

「っ……俺は……?」

 

「おい、俺が分かるか?」

 

 朦朧としている間者にサソリが語りかける。

 

「……っは、はい……もちろんですサソリ様」

 

「なら、いい……お前は近くのアジトに先に向かえ……ああそれと」

 

 起き上がった間者が、不気味にニコニコしている天音から後ずさって距離を取るとサソリが耳打ちをするために彼に近づく。

 

『小娘がどうやってここを制圧したか教えろ』

 

『……サソリ様のお仲間とは気がつかず、すみません……ええ、彼女は気配もなく隊の中心に現れました。 そのまま、目にも留まらぬ動きで何やら金属性の短い棍棒のようなモノを使い高速で関所の忍びを殴打して吹き飛ばし、しかし周囲の忍びがそれに気がつく様子はなく俺だけがそれを認識できていました。 恐らく幻術の類で認知能力に妨害を駆けていたのかと……なぜ俺だけがかからなかったのはわかりませんが』

 

『それで……お前はどうした?』

 

『一瞬で制圧された後、俺も彼女に戦いを挑みましたが彼女は武器をしまい素手で俺に挑んできました。 俺の風遁の術は歯に掛けることもなく避けられ、接近を許してしまい―』

 

『剛拳で吹き飛ばされて気絶か……』

 

 小さい声で会話をし、サソリは先ほど天音のしていたジェスチャーを思い出し事の顛末を言い当てる。

 

 サソリは関所の周囲を見渡し、違和感を覚える。

 

(なぜ、俺の間者に対してだけ少し違う動きを見せた……? 忍び達は一人も殺害していないようだが……なにか意図でもあるのか)

 

 サソリが、少し離れた位置で里の中に目を向けている天音を見つめる。

 

『……まあいい、お前はもう行け……恐らくゼツの奴がアジトに居る、後の動きはゼツに聞け』

 

『ハッ! かしこまりました』

 

 サソリの間者が指示を受けその場から離れると天音がサソリの方を向き語りかける。

 

「陰口は終わりましたサソリ先輩? どうやらデイダラ先輩が片腕潰されたみたいですけど大丈夫ですかね、相手は相当出来るみたいですが」

 

「何……? この位置から様子が把握できるのか?」

 

 デイダラの術による爆発音が幾つか聞こえるが、サソリは間者の治療のため関所から離れた里の内部が全く見えない位置にいるのにも関わらず、デイダラの様子を言い当てる天音に驚く。

 

「……適当言ってるんじゃねえだろうな?」

 

「酷い言いぐさ……それなりに感知能力もあるんですよ私、ほら砂漠で先輩たちも見つけたじゃないですか……んで何かピンチっぽいんで私加勢に行った方が良いですか?」

 

 親指で里内を指さす天音。 サソリは少し考え

 

「……いいだろう、行ってこい。 俺は待つのが嫌いなんだ、デイダラに加勢してさっさと終わらせて来い」

 

「ラジャです!! ああ、なんならサソリ先輩は先に戻ってもらっててもいいですよ。 サソリ先輩動きがトロイのに里の中まで来られると撤収に影響でそうなんで」

 

「おいっ……!!」

 

 サラッと毒づいた天音は、関所の忍びが落としたクナイの1つを拾い上げサソリから逃げるように宙に浮かび里の中へと向かっていった。

 

「冗談ですよ~~~……」

 

「……下らねぇ…………ヒルコの機動力に改善でも施すか……?」

 

 天音の言葉に一人地味に傷ついたサソリは、自身の傀儡の改良の予定を心に決め仲間が戻ってくるのを待った。

 

 

~~~~~~

 

 

 砂隠れの里上空、風影・砂漠の我愛羅とデイダラは死闘を繰り広げていた。

 

 里の仲間を先頭に巻き込まないために空で戦いを続ける我愛羅。 デイダラは我愛羅の特別にチャクラが練りこまれた背の瓢箪の砂に左腕を潰され血を流していた。

 

「ちぃ……便利な術だなぁ……うん。 砂漠の砂も大量に使ってきやがるし、地の利が悪い……甘く見てたぜ。 サソリの旦那の言う通り、準備不足だったかもな……うん」

 

 自身の打てる手の打ちが僅かであることを危惧し、デイダラは作戦を練る。

 

(残りは攻撃用が1つと、十八番だけ……うん。 こうなったら里を壊すか、下から邪魔されんのも興ざめだ……それに)

 

「いい加減、てめぇのその澄ました(ツラ)を見飽きたところだからな……うん!!」

 

 デイダラの言葉に、我愛羅は不穏な意図を感じ取り、多量の砂をコントロールするため腕をかざす。

 

 印に反応しデイダラの十八番は巨大化し、里へ向け落下を始める。

 

 眼下の忍び達が急な攻撃に慌てふためくさまを眺め、デイダラが印を構えた。

 

 

 

「今更逃げても無駄だ、里ごと吹き飛びなっ!!!」

 

 

 

――喝

 

 

 

 瞬間、デイダラの十八番の起爆粘土が爆発。 その威力と熱量が爆発の周囲の景色を歪ませる。 太陽の光よりも明るく周囲を照らした巨大な爆発は里の一画を覆いつくすほど巨大であった。

 

 宙に浮く砂の球体の中、空いた穴からその様を眺めていた我愛羅は汗を垂らす。

 

 爆炎による熱風が、砂の球体を揺らし同じくデイダラの乗る粘土製の鷹もその煽りを受け態勢を崩していた。

 

砂漠の風が吹き、その爆発による煙を吹き晴らす。

 

 完全に爆発で消し飛んだと思われた箇所にはドームを逆さにしたような砂の塊が空中で留まっていた。

 

 その砂の塊の下に居た忍び達は

 

「すごい……風影様の砂だ!! 俺たちを助けてくれてんだっ!!」

 

 歓喜の声を上げていた。

 

 里が無事であることをその声を聞き把握した我愛羅は安堵の息を漏らす。

 

 

 

「――はい、射程圏」

 

 

 

 その瞬間、我愛羅を覆う砂の球体に空いた穴の前に小型の起爆粘土製の鳥が飛翔し現れる。

 

 ――ボンっ

 

 デイダラ最後の攻撃用の起爆粘土が爆発し、我愛羅の砂の球体を爆発が覆う。

 

 しかし、すぐさまその球体が完全に閉じた様子が伺え、外見からでも爆発が我愛羅に影響を及ぼしていないことを理解させる。

 

 その様子にデイダラは

 

「流石、特別製の砂はガードが速いなぁ……うんっ……だが」

 

 迷いなく印を構える。

 

(さっき腕を砕かれた時に、てめぇの砂の中に起爆粘土を紛れ込ませていたっ! ガードにその砂を使うのは思い通り……少量だが、その密閉空間なら威力も倍増だしな……うん!!)

 

「さあ、これで終わりだァ!!」

 

 

――喝

 

 

 デイダラの叫びに呼応するように、爆発が

 

 

 

 

 起きない。

 

 

 

 

「……何!?」

 

 一瞬動揺を見せたデイダラ。

 

(……印を結んだのに、何で爆発が起きやがらねぇ……いったい――)

 

 ふと、デイダラが我愛羅の砂の球体に目を向けると、僅かに雷が表面を走っているのに気がつく。

 

「ありゃなんd――」

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那、デイダラの胸からクナイが飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 瞬間血を吐いたデイダラは、自身の胸を背後から貫かれたことを直感し、力を振り絞り背後に向けて腕を振るう。

 

 その腕は軽く受け止められ、デイダラの背を貫いた張本人が笑顔を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……てめぇ……天音ぇ……っ!!!!」

 

「あ~あ、準備不足で焦ることになるから私程度の接近に近づけないんですよ先輩♪」

 

 天音はそのまま、止めを刺すように手持つクナイを抉る様に深く突き上げる。

 

 デイダラが苦痛に顔を歪ませ、力なく呟く。

 

「なん……の……つもり……だてめぇ……っ!」

 

「フフっ……言ったでしょ? 私は『世界を平和にするために暁に入った』って……心苦しいけど貴方は生かしては置けない」

 

 その笑顔からは想像もできないほど冷たい調子で言い放った言葉と共に天音はデイダラを粘土製の鷹から蹴り落とす。

 

 落下していくデイダラは、落とされる寸前に鷹から千切った僅かな起爆粘土を口に含む。

 

(……せめて最後に……盛大な爆発を……)

 

 自爆を決意し、起爆粘土を取り込んだデイダラの体表に黒い線が走りはじめる。

 

 しかし瞬間、デイダラの体を雷が貫き黒い線の走行を止める。

 

 粘土製の鷹の上、それをチャクラ糸で操る天音がデイダラに向け指を銃の形にして向けていた。

 

「雷遁・雷銃(ライガン)……貴方がそういう人 (自爆する人)だって知ってるから……悪いけどそうはさせない」

 

 天音の指先から、再度雷が発しデイダラの体を貫いた。

 

 二度の雷遁がデイダラの土遁に分類される術の効力を失わさせ自爆を止め、デイダラはそのまま地面へと叩きつけられた。

 

 その様子を眼に焼き付ける様に見続けていた天音は、用済みとばかりに自身が乗る粘土製の鷹のコントロールを放棄する。

 

 術者が死に、制御のされない鷹は力なく地面へと落下し主の亡骸の傍らに落ちた。

 

 その後独り宙に浮く天音は視線を変える。

 

「……同じ暁の仲間ではなかったのか?」

 

 その視線の先には、デイダラの十八番を防いだ大量の砂を里外に移動させ、自分を守る砂の球体から一部のぞき穴を開けた状態で天音を見る我愛羅が居た。

 

「……最初は仲間のつもりはなかったけど、ちょっと話しちゃったら情が湧いちゃって今は少し悲しいかもね……」

 

「何がしたい、貴様……こちらの味方なのか……?」

 

 我愛羅はデイダラとの戦闘で莫大なチャクラを消費、肩で息をしている。 少しでもチャクラを練る時間が欲しいのか、時間稼ぎに会話を試みると天音もその対応を見透かすように語り始める。

 

「う~ん……ショックだなぁ……()()()()()()()って言ったのに私のこと覚えていないなんて、アレかな。 風影にもなると忙しくて人の顔なんて覚えていないのかな?」

 

 天音はそう言いながらフードを取って自分の顔を見せる。その顔の表情は不満そうにも見える。

 

「……いや、その顔には見覚えがないな」

 

 我愛羅は真面目にそう答える。

 

「ん? ……前に顔見せなかったっけ? 仕方ない……じゃあ、名乗るからちゃんと聞いててね♪」

 

 そう言って天音は仰々しく手を広げて名乗る。

 

「私の名前は天音小鳥。 聞かれなくても今回は目的を教えてあげよう! ……貴方を捕まえること、それが今の私の目的だ」

 

 天音は印を構え、指を銃の形に我愛羅に向ける。

 

「天音……小鳥、あの時のくノ一か……貴様さえいなければ……」

 

 我愛羅は、疲労による汗を拭い特別性の砂を足場を残して、霧散させる。

 

「何? 私さえいなければって何かあったの?」

 

「うずまきナルトが、友を二人も失うことはなかったっ!!」

 

 我愛羅が腕を振るうと天音に向け、砂が高速でうねり接近する。 天音はその場から急上昇、直ぐに止まり旋回をして砂の追尾から逃げ続ける。

 

「心外ね!! 私がいなくてもうちはサスケは里を抜けてたし……って二人って言われても、もう一人は誰のことか心当たりがないんだけどねぇ!!」

 

 天音は砂から逃げながら、指先から勢いよく水の球を打ち出す。

 

 我愛羅は最低限の砂の盾を展開してそれを防ぐ。

 

「……いや貴様が邪魔をしなければ、俺とリーとでナルトを援護しサスケを連れ戻せた……それに貴様は俺たちを気絶させ、その後黙雷悟を襲った……そうだろう?!」

 

「あはは……何、そっちの解釈だとそういうことになってるのね……」

 

 天音は興味ぶかそうにしながら、我愛羅に聞こえないように一人呟く。

 

 我愛羅の攻撃は、苛烈さを増し天音も軽重岩の術の効果を高めスピード増して飛ぶ。

 

「さっきまで冷静そうだったのに、友達の事になると熱くなるの嫌いじゃないよ!!」

 

 天音は再び印を結び、両手を銃の形にして構える。

 

「バンッバンッ♪」

 

 軽快な声からはかけ離れた威力とスピードの水の球の雨に我愛羅は防御に徹する。

 

「……っ貴様は何がしたいっ?! 守鶴が欲しければ二年前のアノ時に俺を攫えばよかっただろうっ!」

 

「そん時は暁に入ってなかったからね♪」

 

「なら今俺を捕まえるのに、なぜ仲間をわざわざ殺したっ……」

 

「私の……()()()()ために、デイダラ先輩が生きてると都合が悪いんでね……謀殺させてもらったのよ」

 

「その真の目的とはなんだ?!」

 

「……」

 

 黙り込んだ天音の攻撃の手は止み、我愛羅は砂の盾の隙間から天音の様子を伺う。

 

 すると天音は仰々しい態度で語り始める。

 

「私は……()()()()()()()()()()()()()()()、けれどわかっていることはごく一部……それでも私はこの世界の滅亡を防ぐために動く。 ……今この世界は……暗い夜の中、混沌として不安定……だからこそ……だからこそ私がこの手でこの世界の夜明けを……より良い〈暁〉を迎えさせるっ!!」

 

「……っ迎えさせるとは御大層だな」

 

 我愛羅の皮肉に天音は笑顔を見せる。

 

「……別にそれが私の全てだとは言ってないしね、それと――」

 

 天音は上空を指さし、呟く。

 

「貴方の負け」

 

 我愛羅がその呟きに反応して上を見ると、寸前に迫る天音の拳が視界を埋める。

 

「っ!!!!」

 

 我愛羅が咄嗟に出来る限りの砂で天音の腕を捕えて止めようとするが

 

「――土遁・加重岩の術」

 

 術の効果により、その拳は一瞬で途轍もなく威力を増し、砂の制止を振り切り我愛羅の顔面を穿つ。

 

 重く鈍い音を響かせ、我愛羅ごと天音は地面へと衝突する。

 

 その様子を先ほどまで仰々しく弁舌に語っていた方の天音が見て呟く。

 

「時間稼ぎをしたかったのはこちらも同じ……影分身の特攻を成功させるためにね……()()()不意打ちが決まって良かった、良かった」

 

 天音は地面へと叩きつけられた我愛羅の元へと降り立つ。

 

 土煙が舞う中、我愛羅の様子を確認する。

 

(よし、死んではないか……砂の鎧のおかげで多少威力強めでも死にはしないだろうけど少し心配だった)

 

 我愛羅を肩に担ぎ、天音がそこから飛び立とうする……その瞬間。

 

「逃がすかぁ!!」

 

 傀儡が刃を向け砂煙の中の天音を切りつける。

 

 天音はその攻撃を腕でガードし受け止める。 当然の如く刃は腕に食い込み血が流れる。

 

「……ッ流石に痛い……」

 

 ボソッとそう呟いた天音はカラクリを蹴り飛ばしその場から急上昇する。

 

 天音の眼下には黒子のような衣装を身に纏った男が一人、天音を捕えようと傀儡を宙へと回せていた。

 

「残念、ここまでは届かない」

 

 傀儡の刃はすんでのところで届かず、天音はその攻撃範囲から逃れる。

 

 天音はその傀儡使い・カンクロウが悲痛な顔をしながら自分と我愛羅を見ている様子を尻目にそのまま宙を翔けサソリの元へと向かった。

 

「我愛羅を……弟を返しやがれっ!!」

 

 カンクロウは叫び、天音を追従した。

 

 

~~~~~~

 

 

 砂隠の里から少し離れた位置でアジトへと向かって移動していたサソリに我愛羅を担いだ天音は追いつき空中から傍へと降り立つ。

 

「サソリ先輩、何で先に移動してるんですか?!」

 

 肩で息をして必死感をアピールしながら話しかけてきた天音にサソリは問いかける。

 

「てめぇが俺はトロイというから先んじて移動してただけだ……それよりもデイダラはどうした?」

 

 その問いかけに天音は

 

「それが……鷹の高度を落とした際に、敵に投げつけられたクナイが命中したみたいで……そのまま地面に落下した後は地上の忍び達に囲まれて詳細はわかりませんでした……私もデイダラ先輩と交戦して弱ってたこの風影を連れてくるのが精一杯で……」

 

 悲痛そうな表情を見せ俯く。

 

「チィっ……そうか」

 

 サソリはその報告を聞き、そのまま歩みを進める。

 

 ただその返事はわずかだが普段よりも幾分か低い声で返された。

 

 そのサソリの傍を腕の怪我を見せつける様にしながら項垂れる天音が歩く。

 

 すると

 

「待てっ!!」

 

 聞こえた制止の声にサソリと天音が振り向く。

 

「我愛羅は返してもらうぜ……っ!」

 

 天音を追ってついてきたカンクロウの言葉を受け、サソリが一歩カンクロウへと近づく。

 

「……小娘、お前は先に行け」

 

「分かりました、先に行きますねサソリ先輩」

 

 天音が飛び立とうとした瞬間。 先ほどと同じくカンクロウの叫びと共に傀儡が天音に迫る。

 

「行かせるかっ!」

 

 しかし

 

「傀儡の術か……面白い、俺は人を待つのも待たせるのも好きじゃねーからな……すぐに終わらせる」

 

 サソリは呟きながら尻尾のような傀儡でカンクロウの人型の傀儡・カラスを巻き取り、天音をその刃から守る。

 

 傀儡使い同士の接敵の様子を確認し天音は空へと飛び立っていった。

 

「……あのくノ一を先に行かせたのは間違いじゃん……じきに奴は――」

 

「毒で動けなくなる……か? それならそれで都合がいい……」

 

 サソリの指摘にカンクロウが訝しむ。

 

「てめぇ……何で傀儡に仕込んだ毒の事を知っている……っ?!」

 

「何故だと思う? ……まあわざわざ口で言う必要はない……なぜなら直ぐにその身で思い知ることになるからな」

 

 サソリが傀儡・カラスを尾でバラバラに絞め砕くと同時にカンクロウは手持ちの残りの傀儡・クロアリ、サンショウウオを巻物から呼び出した。

 

 そしてその瞬間傀儡使い同士の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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