目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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5:暗暗・明明

  

 アジトの洞窟内で天音が寝息を響かせてから日が昇り……

 

『そろそろ仕上げだ』

 

 暁のリーダーの声が沈黙の続いた洞窟に響く。

 

 封印の様子を石像の手首のあたりにもたれ掛かって見ていた天音は、既に前日に負った骨折などの怪我はなかったかのように振舞っている。

 

 そんな天音は洞窟の扉になっている大岩へと目線だけを向ける。

 

(木ノ葉の……ガイ班が来たか……カカシ班も直ぐに着きそうだ)

 

 内心で何かの来訪に気がついた天音だが、外の方には注意を向けずに宙で守鶴を抜き取られている我愛羅に目線を向けた。

 

 そして……

 

 

 

 我愛羅の体内から尾獣のチャクラが全て抜かれ、石像の口から出ていた封印のチャクラの触手がその口腔へと消え去る。

 

 

 

 封印術が終わり、我愛羅の体は地面へと無防備に叩きつけられた。

 

 天音はそんな我愛羅に向け、ゆっくりと歩みより近くにしゃがみこむ。そしてそのまま我愛羅の胸に手を当てた。

 

「オイ、何をしている?」

 

 その様子を見ていたサソリが像の指先から天音を見下ろし問いかける。

 

 その問いかけに天音は

 

「……人柱力が尾獣を抜かれたら本当に死ぬのか気になって……どうやら本当みたいですね♪」

 

 興味を引かれる事柄を説明するかのように、目を輝かせて答える。

 

「下手なことをするなよ、そいつは俺の人傀儡のコレクションに加え――」

 

 サソリの言葉の最中、アジトに振動が走る。

 

 何者かが、洞窟の大岩を攻撃していることに暁全員が気がつく。

 

「そういや、イタチ……お前が象転の術で相手したとかいう()()()()()が来ているらしいな……なら俺が相手してやろう、クックック……」

 

 サソリのその言葉に天音が

 

「でも外の五封結界って破り方的に九尾の人柱力がここまで来るかどうかわからなくないですか?」

 

 と問いかける。

 

「確かにな、結界を解いたとして踏み込んできた奴らのその中に人柱力がいるとも限らない……イタチ九尾の人柱力はどんなヤローだ?」

 

『……』

 

 イタチはサソリの言葉を無視するかのように目を閉じ黙り込む。

 

 ノルマの関係か、既に居場所や人物を特定できている人柱力の情報を教えたくないのかとサソリが訝しむが

 

『教えてやれ』

 

 リーダの一言でイタチは目を開け

 

『一番最初に……大声で怒鳴ってくる奴がそうだ』

 

 そう言って幻影による通信を切り姿を消した。

 

「もう少し具体的な情報を教えやがれ……」

 

 サソリは舌打ちをして像の手首から降りる。

 

 それと同時にリーダーの幻影が印を結ぶことで石像は煙に包まれその姿を消し、また暁のメンバーの幻影も居なくなる。

 

「さて……どうやら外では、五封結界の札を既に剥がしにかかっているみたいですよ。 準備をしないとですね」

 

 そう言いながら天音は我愛羅を担ぐ。

 

「お前は感知能力があったな……オイ、なぜその遺体を担ぐ?」

 

 サソリは天音が外の様子を分かっているかのように振舞うことに納得はしたが、その行動には怪訝な声色になる。

 

「準備ですよ、準備♪」

 

「あん?」

 

 そう言う天音が印を結ぶと同時に、洞窟の大岩が大きな衝撃音の後に崩れ去る。

 

 それと同時に、洞窟内の中が外の光に照らされその光を背に四人の忍びが姿を現す。

 

「遅かったか……」

 

 四人のうちの一人・はたけかかしがそう呟くと、うずまきナルトが目の色を朱色に変え怒鳴る。

 

「てめぇーーーらァ!! ぶっ殺してやるっ!!!!」

 

「フッなるほど……あいつか……」

 

 サソリが納得したかのような声を挙げる。

 

 

 

 ――とその直後に天音は我愛羅を担いだまま、高速で飛び立ちナルト達の頭上を通過しアジトの外へと出る。

 

  

 

 あまりに突然の出来事に、サソリすらも反応できずにいると感情を怒りで染めているナルトが地面を踏む抜き怒涛の速さ天音を追いかけ始める。

 

「我愛羅を返せ!! このヤローがぁ!!!」

 

「おいナルトっ!? ックソ、サクラ、チヨ婆様ここは任せます、ガイ班が戻ってくるまで無茶はしないように」

 

 ナルトを追いかけるべくカカシも居なくなり、洞窟内はサソリとサクラ、そしてチヨ婆のみとなった。

 

 流れるような展開に、サソリはため息をつく。

 

「ハア、あの小娘……何考えてやがる……仕方ねえ、こっちを片付けて追いかけるとするか」

 

 言葉を発したサソリが二人を睨む。

 

 その一瞬の殺意により、サクラは自身とサソリとの差を感じ取り額から汗を垂らす。

 

(対峙しただけで……経験の差……他者を殺してきた数の違いを感じる……だけど)

 

「サクラ……恐れるな」

 

 チヨ婆がサクラの様子を気に掛ける様に言葉を掛けるが、直ぐにサクラは自身の両頬を叩き前を見据えて構える。

 

「大丈夫です、チヨ婆さま。 ……私、格上と対峙するのには慣れてますから!!」

 

「! ……ほほほ、そうか頼もしいの……だがお前は後ろに下がっておれ。 格上と戦うときは、その動きを観察することが大事だからな」

 

 一歩サクラの前に踏み込んだチヨ婆はチャクラ糸につないだクナイを十数本投擲し、サソリの体を狙う。

 

 その攻撃をものともしないサソリは全て傀儡の尻尾で弾き、自身の羽織る外套を破いてその姿をさらす。

 

「なんなの……アレ!?」

 

 サソリのその姿を見てサクラが思わず口にしたその言葉にチヨ婆が答える。

 

「あれは傀儡……ヒルコ……サソリの本体はあの中じゃ……しかしどうもワシが知る頃より、改造が進んでおる様での……背中の甲羅に左手の仕込み……どうやらワシでは荷が重いようだ」

 

「クックック……老いぼれが一人で俺相手を出来るとでも思っていたか? とんだ思い上がりだなぁ?」

 

 チヨ婆の言葉にサソリは自身の優位性を感じほくそ笑む。

 

 しかしチヨ婆はサクラに目線を向け

 

「ワシ一人で、ならな……サクラ、お前の綱手姫直伝の怪力、当てにさせて貰おうか」

 

 声をかける。 その様子にサソリは

 

「他里を拒んできたあのチヨ婆がどういう風の吹き回しだ……?」

 

 怪訝そうに問いかける。 サクラとチヨ婆が戦闘へ入る体勢になると、チヨ婆がその問いかけに答える。

 

「なあに……年寄りが頑固なのも、他人の前だけ……孫の手前、先達として良いカッコがしたいだけじゃ……さてサソリ……老いぼれの未練よ、ここで貴様を殺してそれを晴らそうか」

 

「……今更よくそんな事を言える、ガキの頃の子守唄よりも耳障りに感じるな……老害は大人しく死んでな……っ!!」

 

 そのサソリ言葉を火口に、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

~~~~~~

 

 

 アジトの外に文字通り飛び出た天音を追いナルトとカカシが駆ける。

 

「おい、ナルト!! 冷静になれっ!!!」

 

 カカシが天音を追うナルトを追うが、その身体能力は怒りにより湧き出る九尾のチャクラによって底上げされており着実に距離を離される。

 

「我愛羅をモノみてーに扱うんじゃねェ!!」

 

 感情の振り切れているナルトが右手に力を込めているようすに天音は上空から危機感を感じる。

 

(……あれは!?)

 

 天音が後方に体を向けると、朱いチャクラで出来た腕のようなモノが迫りくる。 天音はそれを高度を挙げることでギリギリ避けた。

 

「おわっと……ナニあれ、もう若干九尾のチャクラコントロールしてんじゃん……」

 

 ナルトが右手の身に朱いチャクラの衣を纏っている様子に天音は引き気味に顔を引きつらせ、逃げるスピードを増す。

 

 その様子を後ろから伺うカカシは焦りにより額に汗を浮かべる。

 

(不味い……自来也様が言っていたように、ナルトの怒りが九尾のチャクラを引き出し始めている……尾が出始めてしまえば、容易に抑えることができないぞ……っ!)

 

 カカシは、手にチャクラを押さえる封印札を用意しながら駆ける。

 

 天音の狙いは間違いなく自分たちをあの洞窟から遠ざけることだとカカシは思っており、正にそうなっている現状はカカシにとって予期していない状況だった。

 

「ナルト!! 戻れ、このままサクラ達から距離を離されると二人に危険が……っ!」

 

 カカシがナルトに声をかけるも

 

「オイ、我愛羅ぁ!! 何時までも寝てねーで、早く起きろォ!! 我愛羅ァ!!!」

 

 ナルトには届かず、ナルト本人は天音に担がれ意識のない我愛羅に叫び続ける。

 

「なんで……なんでだっ……なんで我愛羅がっ……!!!」

 

 ナルトの悲痛な呟き。 既に我愛羅の中に尾獣・守鶴が居ないこと、それにより人柱力であった我愛羅がどうなっているかもナルトは理解していた。

 

 しかし、それでも彼は自身の感情を抑えられない。 望まずに手に入れた力のせいで受けた理不尽を、周囲からの冷たい視線を、そして……

 

 自分が我愛羅よりも恵まれていると理解してしまっているからこそ、ナルトは我愛羅が受けた理不尽を許せないでいた。

 

 自分には寄り添ってくれる仲間が、恩人が居た。 暗い世界から導いてくれた友がいた。

 

 そんな自分より辛い思いをした我愛羅が、それでもなお頑張って風影となったことはとても誇らしく思えた。

 

 そして自分も頑張って対等な……火影としていつか共に――

 

 

 ナルトは目を見開く。

 

「てめーら暁全員、ぶっ殺してやるっ!!!!!!!!!」

 

 

 

 そんな明るい未来を潰した相手をナルトは許しはしない。

 

 ナルトの中に居る九喇嘛がナルトに語りかける。

 

『サスケも、悟も……貴様が弱いから、力がないからこそ居なくなった……ナルトよ、力に酔いしれるがいい』

 

「……邪魔する奴は、全部俺が……潰す……っ!!!」

 

 

 ナルトからあふれ出る朱いチャクラが、その身を包み小さな九尾の形を模る。

 

 一本あるチャクラで出来た尾が唸り伸びて天音に迫る。

 

「っ!!!」

 

 すんでのところで天音は避けるが、四肢で駆けるナルトは口にチャクラを溜めこみ、それを撃ち放つ。

 

「ガぁ!!」

 

 たまらず天音は移動を止め、回避に専念する。

 

「何か、展開早くない?!」

 

 文句を言いながらも、天音はナルトの放つ直線的なチャクラ弾を冷静に避ける。

 

 移動が止まったことでカカシが二人に追い付いた。

 

「っ……! 既に尾が一本、だが今封印札を使えばナルトの意識がなくなる。 そうなれば、ナルトを庇いながらあの暁と戦わなければならない……まったく……少しは成長したと思ったけど、まだまだ目が離せないね……これは」

 

 カカシは覚悟を決め、ナルトに向け接近する。 その様子を確認した天音は、小さく笑みを浮かべた。

 

 

 パシンッ

 

 

 ナルトの額に封印札が張られる。 その瞬間、ナルトの表面を覆う朱いチャクラの衣は鳴りを潜めナルトはそのまま意識を失い倒れこむ。

 

 その瞬間を待っていたかのように天音がナルトに向け、接近する。

 

(っやはり、このタイミングを狙ってくるか……っ!!)

 

 カカシは急いでナルトと天音の間に割って入り、写輪眼を発動させる。

 

「はたけカカシっ!! 覚悟しろ!!!」

 

 天音はそう叫び、更に加速する。

 

「……っ!」

 

 カカシは写輪眼の観察眼をもって天音の動きを観察する。

 

 まず、天音は肩に乗せていた我愛羅を両手で持つ。 そしてそのまま大きく振りかぶり……

 

「なっ……!?」

 

「どっせい!!!」

 

 叩きつける様に我愛羅の体をカカシに向け、投げる天音。

 

 勢いよく投げられた我愛羅をカカシは受け止めるが、その勢いのまま大きく後ろに吹き飛ばされる。

 

(しまった、ナルトと距離を離されて――)

 

 瞬時に状況の不味さを判断したカカシが我愛羅の体を優しく、素早く降ろし天音に目を向ける。

 

「神……威……?」

 

 ――ボフンッ

 

 万華鏡写輪眼に変化した目でカカシは煙をあげ姿を消した天音を見届ける、自身がまだ何もしていないにもかかわらず。

 

「……はぁ……はぁ……っ?」

 

 我愛羅と入れ替わりで、ナルトが攫われるかとカカシは危惧したが何もせずに消えた天音の行動にカカシは肩で息をしながら混乱した。

 

「っ……いや、少なくともサクラ達からはかなりの距離を離されたか……急いで戻らないと……っ」

 

 それでも瞬時に状況を判断しカカシはナルトと我愛羅を抱え、かなり離れた位置にある暁のアジト目指して駆けだした。

 

 

~~~~~~

 

 

 カカシが天音の姿が消えるのを確認した一方。

 

 暁のアジトが大きな地響きを伴って崩れる。

 

 その振動で天井に穴が開き、アジトの中は瓦礫で埋もれていた。

 

 そんな瓦礫の上で、サクラは傷ついた自分とチヨ婆に最低限の掌仙術を施す。

 

「このガキも医療忍者か……」

 

 既にヒルコは壊され、その中にいた本体のサソリはその様子を眺め忌々しそうに呟く。

 

 態勢を整えたくノ一二人が、共に並び立つ。

 

「行けるな……サクラ」

 

「ハイ!」

 

 自身の自信作であった三代目風影の人傀儡もばらばらにされ、サソリはため息を付きながら身に纏う外套を脱ぎ捨てる。

 

「全く……いつだったか、暁に入った時のいざこざ以来だな……」

 

 その様子を見たサクラが驚きの声を挙げる。

 

「ア……アレは……!?」

 

 チヨ婆は既に戦闘の最中にその()()()に気がついていた。

 

「あやつはワシの手元を離れた時から見た目の歳が経っておらぬ……昔のまま……その理由がアレじゃ」

 

 外套を投げ捨てたサソリが首を鳴らす。

 

「本当に久しぶりだ、()()を使うのは……」

 

 晒されたサソリの体は既に人のモノでなく、空いた腹部には腸ではなく自在に動くワイヤーが詰め込まれ、背には刃の羽が生えていた。

 

「自分を人傀儡に……っ!」

 

 サクラの驚きの声に、反応するようにサソリが構える。

 

「さてここからが――」

 

「本番ですか? サソリ先輩」

 

 明るい声だけが聞こえ、サソリが横をみればいつの間にか天音がそこに立っていた。

 

「……てめぇ……何処から」

 

「上ですよ、上。 見事に天井に穴が開いてたのでそこから入りました、元の入り口は瓦礫に埋まってますしね♪」

 

 気配もなく降り立っていた天音に顔をしかめるサソリ。

 

「アイツ……っ!」

 

 サクラは天音の姿を見て、感情を昂らせる。

 

「アヤツがあのマイト・ガイとやらの班と交戦したという天音小鳥か……先ほど我愛羅の体を運んで逃げたかと思えば……なるほど、白い牙の息子とナルト、二人を引き離すための罠だったか」

 

 チヨ婆の納得したかのような口ぶりに天音は拍手をした。

 

「ご明察!! あの2人がいると、目的が達せないんでね。 ここから随分と距離を離した場所まで誘導したから後はじっくりと……」

 

 天音は獲物を狙うかの如く鋭い眼光をサクラへと向ける。

 

「おい、小娘……好き勝手やるのは構わんが、あまり俺を怒らせるなよ?」

 

 怒りを滲ませたサソリの言葉に天音は

 

「おっと……イケメンにイメチェンしたサソリ先輩そう睨まないで下さいよ~、あのピンクのくノ一は私が相手してあげるんで、どうぞどうぞ! 傀儡使い同士で楽しんでください!!」

 

 あたふたとしながらご機嫌取りを取る口調でサソリをなだめる。

 

 二人のやり取りを見ていたチヨ婆は腰のポーチから巻物を一つ取り出す。

 

「己で禁じた術だが……サソリともう一人、手練れを相手にするには使わないわけには行かんようじゃ」

 

 チヨ婆が巻物を広げると、そこに描かれた印から幽鬼の如く幾つもの傀儡が飛び出る。

 

 その術にサソリは顔をニヤつかせる。

 

「傀儡使いの極意『一指一体』十の傀儡で城一つを落とすと言われる『白秘儀・十機近松の集』……大した傀儡集だ……だがな……っ」

 

 サソリはチヨ婆の実力を称えながらも、己の背に付けられた巻物を無造作に空に投げ、自身の胸に付けられた小窓を開け無数のチャクラ糸を放出する。

 

「俺は……これで一国を落とした」

 

 無数の傀儡に無数のチャクラ糸。 サソリの頭上に百にも及ぶ傀儡の集まりがひしめき、その傀儡の纏う赤い外套が洞窟から覗ける空を赤く染める。

 

「こやつ……ここまで……」「すごい数……アノ全部に毒が仕込まれて……っ!」

 

 驚愕するチヨ婆とサクラ。

 

「赤秘儀・百機の操演……とくと見せてやる」

 

 サソリが操る傀儡集が、チヨ婆とサクラを狙い襲い掛かる。

 

 瞬間、天音も駆け出し、素早く傀儡集を追い抜くとサクラに向け接近する。

 

「ピンク髪、アンタの相手は私がしてあげる!!」

 

「チヨ婆、サソリの方をお願いします。 直ぐに援護に行きますので!!」

 

「サクラっ!」

 

 チヨ婆が心配し叫ぶも、サクラと天音は格闘戦をしながら傀儡集の群れから離れた位置で戦闘を開始する。

 

「ワシの相手はサソリのみか……分かりやすくて逆に助かるの……これで終劇にしてみせようぞ!」

 

 チヨ婆もまた、白い外套に身を包んだ十機の傀儡を操り、サソリの繰り出す傀儡の赤い波を裂くように突撃をしていった。

 

 

 

 

「っ……アンタが天音小鳥ね……っ!」

 

「私のことを知ってくれてるようで何より……って木ノ葉だと意外に私は有名人なのかな?」

 

 互いの手が組み合った状態で語り合う天音とサクラ。

 

 サクラがチャクラコントロールにより馬鹿力を発揮し天音の手を握りつぶそうとするも、スルリと天音は手を離し距離を取る。

 

「アンタが二年前、サスケ君の里抜けを手伝ってた事は知っているわ……目的は何?! ……アンタは大蛇丸と繋がりがあるの?!?!」

 

 サクラの問いかけに、天音は肩をすくめる。 ……大蛇丸の名が出たことで、離れた位置にいるサソリが少し反応を示す。

 

「私は別に大蛇丸とは繋がりはないよ。 前に我愛羅とリーを襲ったのも色々と意図があってのこと……だけどそれを明かすほど私は甘くはないねぇ」

 

 天音は印を結び口を膨らませる。

 

「火遁・豪火球!!」

 

 吐き出された炎弾に対してサクラは

 

「桜花衝!!」

 

 体内で溜めこんだチャクラを微細なチャクラコントロールで一気に点で放出し地面を殴りつけることで、花弁の散る如く地面を隆起させ壁にすることで炎を防ぐ。

 

 豪火球の威力は凄まじく、壁にした岩が熱で溶ける程の熱量を有していた。

 

(……ここまで熱風が……っ)

 

 サクラが腕で熱風を防いでいると、小さく音が聞こえた。

 

 ――チチチチチチチッ

 

 瞬間、壁の横から目を閉じた天音が右手に雷光を纏わせ現れる。

 

「っ!?」

 

 サクラの喉元目掛け繰り出された高速の突きは、間一髪サクラが天音の手首を握ることで抑えられた。

 

()()()……それにさっきの豪火球も……サスケ君の真似でもしてるの……っ!」

 

「さあね? 単純に白眼の試運転に()()は最適ってだけ……あと貴方が動揺すると思って♪」

 

「っ!!」

 

 天音は右手から迸る雷光を引っ込め、その右手で印を結ぶ。

 

「片手で印をっ――」

 

「土遁・岩脚の術」

 

 腕からの攻撃に気を反らされてサクラの腹部に、天音の岩を纏った蹴りが炸裂する。

 

「っうぐっ……っ!」

 

 そのまま吹き飛ばされたサクラ。 彼女を心配しチヨ婆が心配の声を挙げる。

 

「サクラぁ!!」

 

「手元が狂ったなチヨ婆……終劇だ!!」

 

 思わず気が逸れてしまったチヨ婆の傀儡が、攻防をサソリの数の暴力で押し切られてしまい無数の刃がチヨ婆へと迫る。

 

「しまっ――」

 

「……チヨ婆様!!」

 

 腹部の痛みに立ち上がれないサクラの叫び声。 チヨ婆が刃に埋もれる寸前

 

 バキンッ――と音が響き、サソリの傀儡が動きを止める。

 

 一瞬静けさに染まった洞窟内。

 

 サソリがその首を後方に向ける。

 

「がっ……小娘……てめぇ……なん……でっ!!」

 

 サソリの視界には、俯きサソリの心臓部の部品を尾異夢・叉辺流の青いチャクラの刀身で貫いている天音が映っていた。

 

「ゴメンナサイ……サソリ先輩」

 

 そうボソッと呟いた天音が刀身を引き抜き煙を上げ消えると、サソリの体も崩れ落ち百機の傀儡は動きを止める。

 

「……何が……」

 

 サクラの疑問の声に、サクラの前に立っていた天音が語る。

 

「……洞窟に入る前に、私の影分身にアノ剣を持たせて潜ませていただけ」

 

「違うそんなことじゃない……っ! あのサソリはアンタの仲間じゃないの!? 何でだっ!!」

 

「そう、怒らないでよ……私だって好きでやってるわけじゃないの……っ」

 

 顔を曇らせた天音は、突然の孫の死に立ち尽くすチヨ婆に目線を向ける。

 

「そう……これで、未来は…………より良く――グっ!?!?」

 

 

 

 

 

 呟く天音の腹部から突然刀が突出する。

 

「「っ!?」」

 

 サクラとチヨ婆が驚き見ると、天音の背後には赤い外套を身に纏い百機に紛れていたサソリが毒付きの刀で天音の腹部を貫いていた。

 

「……さ、サソリ先輩……? ああ、してやらてたっ……核の身代わりも用意しているとか……グっ……」

 

「嘘と偽り……俺相手に謀略を試みるのは愚かだったな、天音……だが寸前で急所から逸らしたのは見事だと褒めてやろう」

 

 サソリは刀の刃を上に向け、天音の心臓に向けその体を切りこもうとするが天音がその腹部から出た刀身を両手で掴むことでそれを抑え込む。

 

「……ま、まさかバレてたなんて……っ」

 

 天音の信じられないという呟きにサソリが笑顔で答える。

 

「お前の行動は、ひょうきんな言動で覆われているがその芯は妙に何かの意図を感じさせていた……まあ、その違和に勘付けるのは直接のやり取りをしばらくした俺ぐらいだろうがな……まあ、何よりもお前を疑う一番の切欠になったのは…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っつう所だけどな」

 

「ハ、ハハっ……デイダラ先輩の自爆を防いだのは、っ間違いだった……か」

 

 天音は苦痛に顔を歪ませるが、勢いよく後ろ蹴りを放ちサソリを突き飛ばす。

 

「っ……その傷と俺の毒を喰らっても随分と動けるようだな」

 

「流石にキツイ……ですけどねっ」

 

 天音は腹部に残った刀を抜き取ると、腹部と口から血を流しその場に座り込む。

 

 混乱し、動きを止めていたサクラとチヨ婆だがサソリが再度傀儡集にチャクラ糸を付けるとすぐさま戦闘態勢に入る。

 

 再度洞窟内が戦場へと変わりチヨ婆は残り一体、最後の傀儡を使い、サクラもまたサソリの傀儡の毒に侵されないように必死で戦う。

 

 天音もサソリの傀儡集の攻撃の対象になっていたが、尾異夢・叉辺流の風遁の刀身が傀儡を容易に裂くためフラフラな状態でも何とか抗えていた。

 

 しかしサクラもチヨ婆もここまでの戦いで既に限界に達しており、その動きは芳しくない。

 

 次第に押され始め、チヨ婆の残りの傀儡がめった刺しにされることで活動を停めてしまう。

 

「クッしまった……っ!!」

 

「チヨ婆様、逃げて!!」

 

 サクラがチヨ婆の援護に向かうも複数の傀儡がそれを邪魔し、チヨ婆が辺りに散らばる傀儡の腕や足をチャクラ糸でぶつけるも迫りくる傀儡集を止めることは出来ない。

 

 再度凶刃がチヨ婆へと迫る。

 

 

 洞窟内に無数の刃が肉を刺す音が響く。

 

「……っ!!!」

 

 サクラの声にならない悲鳴。

 

 彼女の視線の先には、無数の刃に貫かれた

 

 

 

 ――天音小鳥が立っていた。

 

 

 

「つくづく……何がしたいのか分からねぇ奴だな」

 

「何で……っ!?」

 

「何故じゃ……っ!?」

 

 自分を守るように、庇う天音に向けチヨ婆が疑問をこぼす。

 

 天音はチヨ婆と向き合った状態で、苦しそうに血を吐きながら笑顔で答える。

 

「ゴフッ…………え、……が……の……た……っ」

 

 小さく呟いていた天音は瞬間目線を鋭くし指鉄砲の指先をサソリに向ける。

 

「……雷銃!!」

 

 不意打ちの高速の雷遁弾がサソリに当たる。

 

「しまっ――!?」

 

 サソリの驚きの声。 雷遁の影響で自身の人傀儡の体を動かすチャクラ系統がマヒし動きを鈍らせたサソリに影が落ちる。

 

「今だ、桜花衝……オリャあああああっ!」

 

 サクラがその隙を見逃さまいと最後の力、チャクラを振り絞り、跳躍し殴りかかる。

 

 瞬間、地面が砕ける音が響く。

 

「っ……避け――!?」

 

 サソリはその攻撃を寸前で避けた。 天音の雷遁が、威力不足だったのであろう。 動きの繊細さを取り戻したサソリは手にした刀で隙を晒したサクラに切りかかる。

 

 

 

――グサッ

 

 

 

 刺突音と共にカランッと金属が落ちる音が洞窟に響いた。

 

「ちっ……まさ、か……俺が、こんな型落ちの傀儡に……」

 

 サクラの眼前まで迫った刀は既に地へと落ち、サソリはその胸の核を二体の傀儡によって貫かれていた。 サクラの桜花衝を避けたことで、丁度その傀儡に挟まれる位置に移動してしまっていたサソリは自嘲気味の笑みを浮かべる。

 

「サソリよ……()()()に抱かれて眠るがいい……」

 

 チヨ婆がめった刺しになっている天音の脇から手を出し動かすことで、かつてサソリが作った傀儡・父と母はサソリに愛を注ぐが如く、強く抱擁しその動きを封じる。

 

「本当に……っ下らねぇな……女どもはこうも感情に……実直に動き無駄なことを好む……こんな出来損ないの傀儡どもを残すチヨ婆も……わざわざ抜け忍のために大蛇丸なんてゲスを探るサクラ、お前も……そして……」

 

 サソリが天音に目線を向ける。 天音は身体に刺さった凶器を何とか抜き去っている最中だがサソリの目線に気づき目を合わせる。

 

「……クククッ……てめぇら、ホントに忍びか……?」

 

 乾いた笑いをするサソリに、肩で息をしているサクラが目の前に立ち答える。

 

「……確かに、忍びは道具としての在り方を求められるわ……でも、だからってその忍びが人としての心を完全になくせる訳がない……私はそう思ってる。 だからこそ、私たち(忍び)は……必死に人としての在り方を求めるのよ」

 

 サクラの真っ直ぐな目線に、サソリが目を伏せる。

 

「そうか……なら完璧な傀儡になり切れず、人でもない俺は……傀儡としての戦いに負けた以上、最後に人の在り方とやらの……無駄なことを一つだけしてやろう……」

 

 サソリは今にも動きを止めようとしている、傀儡の体から声を絞り出す。

 

「草隠れの……天地橋……十日後の真昼に……大蛇丸の元に仕込んだ俺のスパイが来る……そ……こ、に――」

 

「……!」

 

 サソリの意図をくみ取ったサクラ。 そしてチヨ婆がサソリが本当の父と母に抱かれる様子を幻視した瞬間

 

 ……サソリは音を立てて崩れ去った。

 

「終わりましたね……チヨ婆様……」

 

 サクラの言葉にチヨ婆が頷く。

 

「ああ、しかし……最後の攻撃、サソリは見切っていたはず……じゃが……」

 

「……それって……」

 

 最後に僅かに垣間見た人としてのサソリに、サクラは改めて忍びの人としての在り方の尊さを感じ取る。

 

 ふと、サクラは動く気配に目を向けると天音が全身から血を流しながら立ち上がっていた。

 

 およそ、動けるような傷でもなくそれにサソリの毒も合わせれば生きているのも不思議なくらいな天音。

 

 尚更サクラはその毒を一度受け、僅かの間だがその苦痛を自身で体験している他3日毒に侵されたカンクロウも診ているためその異常さを理解する。

 

「……貴方……結局何がしたかったの? ……貴方はサスケ君の何?」

 

 気の毒そうにそう語りかけてくるサクラに天音は肩で息をしながら答える。

 

「私がしたかったことは……達成できた……っはぁ……後は……信じるだけ……それだけ……っ」

 

 そう小さな声でうわごとの様に言った天音は大きく手を振り、洞窟のあちこちに何かを複数投擲する。

 

「「っ!?」」

 

 その投擲物は起爆札付きのクナイであることに気がついたサクラが天音に詰め寄ろうとするも

 

「しーっ……()()はここ……まで」

 

 天音は口元に人差し指を付けるジェスチャーをした瞬間に急加速し動きだし、サクラとチヨ婆を両手で抱え洞窟の天井目掛け乱暴にぶん投げる。

 

 サソリとの戦闘で疲弊していた二人は予想外の天音の高速移動に反応が遅れ、されるがままに投げられてしまった。

 

「きゃぁ!?」「っのあ!?」

 

 二人が驚きの声を挙げ、洞窟の天井の外に投げ出された瞬間、複数の起爆札が爆発し洞窟は崩落を始める。

 

 自身に降り注ぐ岩の瓦礫を気にする様子もなく天音は誰にも聞こえない声で呟く。

 

「デイダラ先輩……サソリ先輩……すみませんでした」

 

 その後祈るような動きを見せた天音の姿が岩に埋もれると、一際大きな崩落音が辺りに響く。

 

 投げ出され地面をころがったサクラが受け身を取り、すぐさま洞窟の穴を確認するが目に入るのはただの岩だけであった。

 

「…………っ」

 

 何が起きたのか、訳の分からないまま立ち尽くすサクラ。

 

 そこに聞きなれた声がかけられる。

 

「無事でよかった、サクラ、それにチヨ婆様も」

 

 その声にサクラとチヨ婆が振り向けば、我愛羅を背負いナルトを抱えたカカシの姿があった。

 

「カカシ先生!」

 

「やったんだな……流石だサクラ、チヨ婆様もサクラをありがとうございます」

 

 カカシが頭を下げるとチヨ婆はそっぽを向き歩き始める。

 

「お前さんに頭など下げられたくない……それよりも場所を変えるぞ……我愛羅を……生き返らせる」

 

「!?っ……そんなことが……いえ分かりました。 ガイたちも罠を切り抜け何とかなったと無線が入ったので今すぐ合流するよう伝えます」

 

 カカシは抱えていたナルトを降ろすとサクラに向け

 

「サクラ……ナルトの目を覚まさしてやってくれ。 ……我愛羅君のことを一番に気にかけてる奴が気絶しっぱなしはよくないだろ?」

 

 そう語りかけ、無線でガイ班に状況の報告を行う。

 

 サクラは医療忍術による意識回復をナルトに試みながらも、チヨ婆の背を見る。

 

(我愛羅くんを生き返らせる……死んだ人間を生き返らせるなんて医療忍術には不可能だってことは私だけでなく、チヨ婆様もご存じのはず……一体何をなさるつもりなんだろうか……)

 

 チヨ婆の覚悟を決めた顔つきに少しの不安を感じたサクラはそのままナルトを起こし、少し離れた草原へと皆で移動したのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 黄昏時、草原に横たわった我愛羅の傍で目を覚ましたナルトは涙をボロボロと流していた。

 

「何で……何で我愛羅ばっかりが……っ!」

 

 悔しさに拳を握りしめるナルトにチヨ婆が声をかける。

 

「少し落ち着け……うずまきナルト」

 

 チヨ婆の冷静さは逆にナルトの感情を逆なでする。

 

「っうるせぇエ!! お前ら、砂の忍びは我愛羅の気持ちを考えたことあんのか?! 我愛羅の中に()()――っ」

 

「ナルト……?」

 

 叫ぶナルトだが、途中で言葉に詰まりサクラが不審がる。

 

「……俺たちのことを人柱力とか偉そうに言葉作って呼びやがって……俺たちだって……俺たちだって……っうっ……うう」

 

 行き場のない怒り、悲しみにナルトが人目もはばからずに嗚咽を漏らす。

 

「必死に修行したのに……我愛羅を助けられなかった……俺は、サスケも……悟も……」

 

 自分の無力さに嘆くナルト。 そんな他の里のために本気で泣くナルトの様子にチヨ婆は覚悟を決め、我愛羅の傍へと寄る。

 

「うずまきナルト……お前は優しい……お前のような忍びが、我愛羅の友としているのであれば……ワシも安心し後世に託せるというもの」

 

「チヨ婆様……何を?」

 

 チヨ婆は掌仙術に似た術を我愛羅へとかける。 しかし医療忍術に長けているサクラでさえ知らないその術は

 

()()()()……ワシが開発した死者を生き返らせる術だ」

 

 チヨ婆の説明に周囲がどよめく。

 

「……婆ちゃんっ!」

 

 その言葉を聞きナルトは涙で腫れた目をこすりながら声色を明るくする。しかし

 

(……そんな都合の良い術があるの……っ?)

 

(チャクラの流れからして……いや?)

 

 サクラは疑問視し、白眼で様子を観察するネジは違和感を覚える。

 

 そのままチヨ婆が術をかけ続けるが、しかしふとチヨ婆は息を切らし地面に手を着いてしまう。

 

「婆ちゃん大丈夫か!?」

 

「っハァ……ハァ……どうも、様子がおかしい……術の手ごたえが薄い……これではまるで……」

 

 

 

 

「風影は死んでいない」

 

「!」

 

 不意に呟かれたネジの言葉に周囲が驚きを示す。

 

「ネジ、アンタ何言ってんの?」

 

 テンテンが疑問の言葉をネジに投げかけるとネジは

 

「……正確に言えば仮死状態に近いモノとでも言えばいいか……白眼で観察して分かったが、何やら規模は小さいが強力な封印術が風影の体に施されている。 先ほどのチヨ婆様の術のチャクラがその封印術に吸われているのを見つけた……恐らくだが、先ほどの転生忍術とやらでより多くのチャクラを注げば……」

 

 自身の推察を述べる。

 

 ネジの推察を聞いたナルトは、チヨ婆の手を取り問う。

 

「婆ちゃん! 俺のチャクラを使ってくれってばよ……それって出来るか?」

 

「……」

 

 チヨ婆はナルトの瞳を見つめる。

 

 人柱力として……そうでなくともこの少年は、里という忍びの境界線を越え友のために迷わずに一歩踏み込める。 そんな少年の真剣な眼差しはチヨ婆に希望を見出す。

 

「……ワシの手の上にお前の手を重ねろ……」

 

 そういうとチヨ婆は再度転生忍術を試みる。

 

「……ああ!!」

 

 ナルトが掌を重ねるとその転生忍術の淡い色が広がりを見せる。すると

 

「チヨ婆様……残り少ないですけど、私のチャクラも使ってください!!」

 

 サクラもまたその手の上に手を重ねる。そして

 

「ま、人手は大いに越したことがないってね」

 

「チャクラは多ければ多いほど良いだろう……俺も手を貸そう」

 

「こうなったら私たちもやるわよ、リー、ガイ先生!!」

 

「もちろんです!! 我愛羅君とはまだまだこれからも高めあえる友達でいたいですからっ!!!」

 

「若葉の為に出来ることがあるのなら、当然俺も手伝わせてもらおうっ!!!」

 

 その場に居る全員が手を重ね、転生忍術の光が我愛羅の全身を包み込む。

 

「っ皆ァ!!」

 

 ナルトが歓喜に声を漏らす。

 

 その様子にチヨ婆は目を見開き、優しい笑顔を見せる。

 

「……ワシら下らぬ年寄りたちが作り上げた忍界も……お前たちのような者が居ればいずれはより良いものとなろう……砂と木ノ葉……これからの未来はワシらの時とは違ったものになる……そう確信できる……ナルトよ」

 

「ん?」

 

「これからも我愛羅を……よろしく頼む」

 

「あたりまえだってばよ!!」

 

 そして……

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

『誰だ……? ……誰かが……俺を呼んでいる?』

 

『――我』

 

『俺は……俺とは……?』

 

『――我――羅っ!』

 

『……駄目だ……眠い……俺は、もう――』

 

 

 精神の世界、その中で砂の中に埋まっていく我愛羅、しかし

 

 

「何時まで狸寝入りをするきだ、さっさと起きたらどうだァ我愛羅」

 

 聞こえるはずのない特徴的な甲高い声が我愛羅の耳に届く。

 

「まあ、あの()()との賭けに負けちまったからな……この()()()の機嫌が変わらないうちにさっさとここ(精神世界)から出ていきな!!」

 

 すると我愛羅を埋めていた砂が蠢き、突発的に我愛羅を空へと打ち上げる。

 

『……っ!』

 

 空高く舞い上がった我愛羅は、地面のない宙を落下し続ける。

 

 そして、目の前に突如誰かの手だけが現れる。まるでその手は我愛羅に向けて差し向けられているようで

 

『俺が……化け物と呼ばれた俺に誰かの手を取ることが……』

 

 その手を掴むことを迷う我愛羅。 しかしその手は諦めずに精一杯掌を広げ我愛羅へと手を突き出す。

 

 その手の迷いのない様子に、我愛羅は思わず涙を零す。

 

『なぜ……俺は泣いて……ああそうか、嬉しいんだ……』

 

 そして

 

『俺は……誰かと繋がりたかったのか……心から』

 

 我愛羅は心から繋がれる……そんな予感を胸にその手を取る。

 

 

「我愛羅っ!!」

 

 

 刹那我愛羅の耳元で大きな声が響き、手を引かれかなり強めの力で抱擁される。

 

 何が起きたのか分からない我愛羅は、目に入る夕日の眩しさにくらくらしながらも現状を把握しようと声を絞り出す。

 

「何が……起きている?」

 

「良かった……良かったってばよォ!!」

 

「……これは……それにお前はナルトか?」

 

 自分を締め付ける勢いで抱く人物がうずまきナルトであることに気がついた我愛羅。あまりの力強さに我愛羅が呻き声を挙げるとナルトが後頭部を殴られ崩れ落ちた。

 

「バカナルト!! 起きたばかりの我愛羅君に何してんのよ!!」

 

「いてぇ!! 何すんだよサクラちゃん!?」

 

 活発なその声が、春野サクラであることにも気がついた我愛羅は上手く動かせない体を起こして辺りを見回す。

 

「これは……っ!」

 

「……みんな……お前を助けるために走って来てくれてたんだ」

 

 我愛羅の驚きの声に、ナルトが答える。 草原に居る我愛羅の周囲には砂の里の忍びがほぼ全ていたのだ。

 

 恐らく里に最低限の人員を残して、砂の忍びが集まっている事実に我愛羅の胸が何故だか熱くなる。

 

 未だ状況を飲み込めずに呆けた表情をする我愛羅の頭を後ろから誰かが小突いた。

 

「全く……心配かけやがる弟じゃんよ」

 

「ああ本当に、全くだこの手のかかる弟どもめ……我愛羅、気分はどうだ?」

 

 笑顔のカンクロウとテマリが我愛羅の傍に来ていた。テマリの言葉にカンクロウが顔を引きつらせ後退するともに、我愛羅が立ち上がろうとするも体が上手く動かずによろめくとナルトが肩を貸す。

 

「無理すんなってばよ……まだ起きたばっかだからフラフラしてんだろ?」

 

「ああ、だがしかし俺は……何故……?」

 

「こまけぇことは良いんだよ!!」

 

 ナルトの心底嬉しそうな笑顔に、思わず我愛羅も微笑む。 その我愛羅の笑顔に一部の砂隠のくノ一が黄色い悲鳴を上げ、自分が我愛羅を支えると突進しナルトを突き飛ばす。

 

「だぁ!? 何すんだぁ!?!?」

 

 不満の声を挙げるナルト、そんな彼にカンクロウが声をかける。

 

「ナルト……ありがとよ」

 

「……それを言うなら婆ちゃんにだ。 我愛羅が助かったのは婆ちゃんがスゴイ医療忍術で助けてくれたから……」

 

 ナルトはチヨ婆へと目線を向ける。

 

 その先では……

 

 

 

 静かに眠る様に目を閉じて草原に横たわっているチヨ婆が居た。   

 

 

 

「今は疲れて寝ちゃったけど婆ちゃんも里に帰って休んだら――」

 

「違う……」

 

 ナルトの言葉を遮る様にカンクロウが呟く。

 

「違うって……どういうことだってばよ……?」

 

「医療忍術なんかじゃない……チヨ婆が使ったのは……自身の命を引き換えに死者を生き返らせる、転生――」

 

「な~~~んてな死んだフリ~~~ギャハ、ギャハ、ギャハ!」

 

 今度はカンクロウの言葉を遮るようにチヨ婆が跳ね起き、無邪気に笑ってみせる。

 

「そういうリアルなボケするない……姉ちゃんよ~……」

 

 チヨ婆の弟、エビゾウが呆れた様子でその笑えないボケに突っ込みを入れる。

 

 その様子に真剣な顔つきのまま硬直しているカンクロウに困惑しているナルトが声をかける。

 

「……つまりどういうことだってばよ?」

 

「……クソババぁがァ紛らわしいことしやがって……!」

 

 カンクロウの呟きにチヨ婆が反応し、カンクロウが蹴られている様子をテマリと我愛羅が見ながら会話を行う。

 

「死者をも生き返らせる転生忍術『己生転生』……死者相手でなければ、高度な医療忍術として使え、術者が命を落とすリスクも抑えられる……我愛羅、お前は仮死状態だったと聞いたが良く死なずにいてくれたな」

 

「俺にもよくわからない……俺たち人柱力は己の内の尾獣を抜かれれば死ぬ運命のはずなのだが……何故だかほんの僅かに、まだ守鶴の存在を感じられるのだ……そのおかげだろう」

 

 我愛羅が胸に手を当てる仕草をする。 その様子を見守るテマリは周囲に見られる笑顔を見て満足そうに呟く。

 

「まあ、何だっていいさ……みんな笑顔だからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは無理そうっすねぇ……」

 

 場面が代わり、暁のアジトがあった場所。

 

 その瓦礫に埋もれた天井の位置からオレンジの仮面を着けた男がそう呟く、近くにいたゼツがその呟きに答える。

 

「全く……デイダラにサソリ……二人もやられるなんてね」「面倒クサクヤラレタオカゲデ指輪ノ回収ガ出来ネェ……迷惑ナヤツラダ」

 

 ため息をつくゼツに、仮面の男が語りかける。

 

「そういえば天音小鳥っていうボクの後輩もいたらしいすっけどどこいったのかな~?」

 

「さあね……僕たちは死体処理に回ってたから詳しくは知らないって……ん?」

 

 ふとゼツが何かに気がつき、仮面の男にその場から下がる様に手で合図を送る。

 

 瞬間、瓦礫を吹き飛ばし中から何かが飛び出してきた。

 

「あれは?」

 

 仮面の男が疑問を口にすると、その何かが着地し手に抱えた傀儡を三体地面に転がす。

 

「……全く……見つけるのに苦労したなぁ」

 

 そう呟く人物は死にかけ血みどろの様子に見えるが、しかし外見よりは元気そうにしゼツを見つけると声をかけてくる。

 

「ゼツ先輩!! 救けに来るなら遅いですよっ!! 全く、私普通に死にかけちゃったんですからね!!!」

 

 天音小鳥だった。 余りの様子にゼツは引き気味に問う。

 

「……その様子で良く生きてたねぇ……ていうかそれって」

 

 ゼツが天音に三体の傀儡を指さして説明を求めると

 

「ああ、サソリ先輩の本体とそれを刺してた男女の傀儡のセットですよ……木ノ葉のピンクの忍びとチヨ婆とかいう傀儡使いに私たちが負けた後、何とか遺体だけでも回収しようとしたんですけど……アジトを爆破されてこの様ですよォ……サソリ先輩の核も見つからなかったので、瓦礫に埋まってしまって探し出すのは骨が折れそうですねぇ」

 

 つらつらと説明し大きなため息をする。 

 

「その刺し傷とかはサソリの得物によるものだと思うけど……」

 

 ゼツが疑問を口にするが

 

「戦闘中にサソリ先輩の傀儡が相手にコントロールされて私を不意打ちでめった刺しにしてきたんですよ……ホント、相手の医療忍者が解毒薬を用意してくれていたおかげで助かりましたけど」

 

 天音はそういい、小さな空の注射器を懐から取り出すと投げ捨てて壊す。

 

「隙を見て掏れて良かったですよホント……味方の毒なのに敵の治療薬に頼らないといけなくて……それで死にかけるとか、ホント笑えない」

 

 乾いた笑いを浮かべる天音。 そんな彼女を無視して仮面の男はサソリの本体から指を抜き取る。

 

「よっしゃー! これでボクも暁のメンバーだぁ!」

 

 指を手に取り喜ぶ仮面の男に天音は

 

「ちょっとォ!? 私が回収したんだから私のモノだけどォ!? てかアンタだれ!?」

 

 抗議をする。 天音をなだめるようにゼツが二人の間に割って入り説明をする。

 

「彼は『トビ』だ。 一応組織に入ったのは君よりも早いから、こんなのでも先輩だよ」

 

「……ハァ!? こんなのが……先輩ィ?」

 

 胡散臭そうなものを見る目の天音に仮面の男・トビは

 

「そうそう! ボクの方が年上なんだから年功序列てきに僕が次の暁のメンバーってこと! 分かったかなお嬢ーちゃんっ? あはははは!!」

 

 テンション高めに天音を煽る様に彼女の周囲を跳び回る。 その煽りに天音は拳を握りしめるが、何とか抑えゼツに顔を向ける。

 

「……っはぁ……まあ、しょうがないか。 ゼツ先輩、デイダラ先輩の分が回収出来たら私に下さいね!!」

 

「出来たらね……遺体が砂に回収されてると思うから、そう易々とは取り返せないと思うけどね」

 

 ゼツの良くない内容の返事に天音は頬を膨らませ不満を現すが、仕方ないとため息をつき三つの傀儡を抱え宙に浮く。

 

「そんなの持ってどこ行くんだい?」

 

「私の拠点に帰ります……お手製の外套もボロボロですし、何より疲れたので……これは戦利品ということで持って帰ります。 んで私が復活したらまた適当に暴れてるんで連絡があったらお得意の感知能力で私を見つけて教えに来てくださいね、それじゃあ」

 

 言いたいことを言い残し、天音は夕日でオレンジ色に染まる雲よりも高い高度へと飛び立っていった。

 

「いや~~~頭の可笑しそうなお嬢ちゃんでしたねゼツさん」

 

「……しれっと僕たちをパシリにしてるしね」「トビ、オ前モ大概ダ」

 

 そのままトビとゼツはその場から姿を消した。

 

 

 

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