目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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オリキャラ多数投入。


6 :辺境の集落

「じゃあな、今度何かあった時は俺たちが助けに行くじゃん」

 

「今回は本当に助かった……我愛羅を助けてくれてありがとう」

 

「……改めて礼を言わせてもらおう……ありがとう、うずまきナルト」

 

 激闘から一夜明け、忍び装束を身に纏わず、黒い普段着に身を包んだ砂の三姉弟たちが砂隠れの里の防壁の外まで木ノ葉の一行を見送りに来ていた。

 

「……って言っても今回俺は殆ど何もしてねぇからなぁ……礼を言われても困るってばよ」

 

「そうだな……ま、今回はサクラが特に頑張ってたようだからな」

 

 ナルトが我愛羅からの礼に顔を赤くし、頭を掻く。 その言葉をその通りだと肯定したカカシの言葉にナルトは肩を落とす。

 

 しかしカカシは成長した二人に対してそれなりに思うところがある様だった。 苦難はあれど、生きて大きくなってくれたナルトとサクラをカカシは見守る保護者としての目線で見る。

 

「本当に良く成長したな。 もちろん、ナルトもだが……俺は二人の先生として嬉しい……といいたいんだが、お前らの師匠は実質五代目様と自来也様だし……俺って……っ」

 

 暖かな目線は自虐的なモノと変わり、ナルトと同じくカカシもやや肩を落とす。

 

「二人とも、お別れの時にそんなにテンション下げないでよ……ほらナルトもカカシ先生もしゃんとしてください」

 

 励ますサクラの様子をガイ班が後ろから眺めていた。

 

「サクラも面倒な班員の御守で大変そうね、意外にカカシ先生ってクールに思わせてナイーブな面があるみたいだし」

 

「……テンテン、俺を面倒の内には入れてくれるなよ?」

 

 テンテンの呟きに、腕を組み少し不安そうに反応したネジ。 テンテンはそんなネジの様子にクスクス笑いながらも「心配しなくてもアンタは頼りにしてるわよ、ネジっ!」と言って肩を叩く。

 

 その2人の隣でリーとガイが会話を交えていた。

 

「いやぁしかし、こうして砂と木ノ葉、熱い友情が育まれて互いに助け合えるようになるなんて感激ですっ!!」

 

「そうだなぁリーよ。 これからも俺たちは自己研鑽を重ねぇっ!! さらに里同士高めあえると思えば、何と素晴らしい青春かっ」

 

 緑の師弟コンビが何やら感激に涙を流す様子を引き気味で見守るテンテンとネジ。

 

 そんな傍らで、我愛羅が一歩ナルトへと近づき片手を差し出す。

 

「ナルト……何を成したかと振り返るのはよせ。 お前は他里を拒むチヨ婆の心を溶かし、そして俺を友として助けてくれた……十分すぎるくらいお前は良くしてくれたさ」

 

「っ……こういうの面と言われるのは照れるってばよ……」

 

 照れるナルトは差し出された手を取るのを躊躇する。しかしナルトの手を我愛羅は少量の砂を操り手を引き、互いに手を取り合い強く握手が行われる。

 

「……それに俺たちの内に居る()()についても。 人柱力として、互い歩みを寄せる必要があるようだ」

 

「……それって……」

 

 ナルトが察した我愛羅の言葉。我愛羅は目を閉じ昨晩の事を思い出す。

 

 

~~~~~~

 

 

 里へと帰還し自室で休息を取る我愛羅に、何と守鶴から声をかけられたのである。

 

 我愛羅の精神世界で互いにむきあう二人。 守鶴のサイズはぬいぐるみサイズになり随分と愛らしい感じになってはいるが……

 

「よう、我愛羅……」

 

「お前からコンタクトをしてくるとはな……珍しいこともあるものだな守鶴よ」

 

 守鶴は小さくなった腕を組みふんぞり返る。

 

「……一時は俺様が居なくなったと思って清々したか?」

 

 試すかのような口ぶりの守鶴に我愛羅は落ち着きを孕んだ態度で接する。

 

「ふっ……馬鹿を言え。 お前が居なくなったらそれすなわち俺の死だ……居なくなられるとこちらが困る。 確かに昔はお前の存在を憎んだこともあるが……今はそんなことはない」

 

 素直な我愛羅の態度に守鶴は面を喰らったかのように驚きの表情を見せ、その後安心したかのような表情になる。

 

「……数年前の荒れたガキの頃からえらく成長したものだなぁ? まあ、俺様も今は()()()姿()でしかいられねぇし前みたいにお前に嫌がらせもできねぇ……俺の力の殆どが封印されちまったからなぁ」

 

「……ッ! そのことだが、守鶴よ。 お前は何故俺の中に残れたのだ? 朧気だが俺の感覚では、一度お前の存在を感じられなくなったはずだが……眼を覚ます直前に再度お前が現われ俺に語りかけてくれたことで俺は仮死状態から戻れた。 ……お前が言っていた()()とは誰の事だ? そして賭けとは一体?」

 

 封印されたはずの守鶴が僅かだが己の中にいることに疑問を感じていた我愛羅は本人にそれを確認する。 しかし

 

「悪いが、そのことについては何も言えねぇ……別に契約やらなんやらをしたわけでもねぇんだが、俺のプライドが許さねぇーんだよぅ」

 

 ばつの悪そうにする守鶴。 ぬいぐるみサイズで俯く守鶴は愛らしく見えるが我愛羅はそう言うのには疎く、真面目に目線を合わせる様にしてしゃがみ守鶴へと語りかける。

 

「……そうか……それは絶対に言いたくないことなのか?」

 

「ああ……まあ、時がくれば……と言う奴だ。 然るべきときにネタ晴らしはして良いとは言われている」

 

「ならその然るべき時まで待とう」

 

 素直に待つと即答した我愛羅に守鶴は目を丸くする。

 

「良いのか……?」

 

「仕方があるまい。 俺もお前に強要はしたくない……何故なら……」

 

「何故なら……?」

 

 守鶴のオウム返しに我愛羅は小さく笑みを浮かべ答える。

 

「お前には感謝している……俗に言えば恩を感じているからだ、そんな相手を無下に扱いたくない」

 

 その我愛羅の言葉に守鶴は気味悪そうに後ずさりをして距離を取る。

 

「……バッカじゃねぇのか!? 俺たち尾獣にそんな感情を持つなんて……」

 

「……これが俺の本心だ。 確かに最初こそ恨み、憎み……それらの感情を向けはしたが……しばらくしてお前にも俺達と同じく感情があることを知り、何よりもお前のおかげでかけがえのない友と出会うことが出来たからな」

 

 落ち着いた様子の我愛羅の言葉が嘘偽りがないことに守鶴は気づき、ため息をつく。

 

「……参ったぜ……こんな事ならもっと早くからお前への嫌がらせをやめときゃ、あの爆弾魔にも手こずらずに力の殆ども封印されずに済んだのかもな」

 

 観念した様子で守鶴は両手を挙げる。

 

 その様子に満足したのか我愛羅は立ち上がる。

 

「……さて俺はもう寝よう。 お前からの嫌がらせがないと、夜が随分と静かに感じられてな……疲れも相まって初めてぐっすりと眠れそうだ」

 

 冗談を交えた我愛羅の言葉に守鶴は

 

「けっ……そんじゃまぁ……これからもよろしく頼むぜ、我愛羅」

 

 そう言い背を向ける。

 

「ああ……友よ、お休み」

 

 我愛羅が精神世界から姿を消す直前の最後の言葉に守鶴は目を見開き、鼻で笑いまんざらでもないと上を見上げる。

 

「フンッ……分福……まさかアンタのような奴がいるとは……アンタの言う通り人間も捨てたもんじゃねぇってことか……」

 

 小さく呟いた守鶴は目を閉じ、眠るために小さく身を丸めた。

 

 

~~~~~~

 

 

「ナルトよ、お前ならいつか……その内なる存在と分かり合える時が来るはずだ」

 

 我愛羅の言葉にナルトが拗ねる様に目線をそらす。

 

「そんなこと……出来っかな……」

 

「お前なら出来る。 お前自身も分かっているはずだ……繋がりの大切さを……それを俺に教えてくれたお前が出来ない道理がない」

 

「でも、俺ってば九喇嘛に嫌われてるっぽいし……」

 

 歯切れの悪いナルトに、我愛羅は握手をしている手を引き、ナルトを抱擁する。

 

「安心しろ。 ……今すぐとは行かなくとも、時が経てば変わることもある。 ただお前はお前のやり方で行け……真っすぐとな」

 

 ナルトの背を強く叩いた我愛羅が抱擁を解く。

 

「……っ……ああ、わかったってばよ……俺は俺の忍道を行ってやる、それはそもそも変えるつもりなんてさらさらねぇしなっ!!」

 

 元気を取り戻したナルトの様子に満足した我愛羅は笑みを浮かべる。

 

 

 そして木ノ葉の一同は自里へ向け駆けだす。 見送る砂の三人は彼らの姿が見せなくなるまで、手を振り見送ったのであった。

 

 砂と木ノ葉、2つの隠里は確かな繋がりを今回の件で築き上げたのであった。

 

 

~~~~~~

 

 それから一日後の早朝…… 

 

 とある北の大地、赤茶色の岩肌が露出している谷が複雑に絡み合うその土地にポツンと切り開かれたかのように広い空間がある。

 

 そこには木造の建物が幾つか立ち並んでいた。 そしてその集落を城下町の様に思わせるように、岩山と石造りの建造物が入り混じった巨大な建物がそびえ立っていた。

 

 建物の外見は殆どが赤茶色の岩肌のため、遠目から見てもそれが建物だとは分からないがその建物の最上階に位置する場所にはベランダのような場所が設けられていた。

 

 そこのベランダからガラスの引き戸を介してみることが出来る部屋の中には、外見からは似合わない様なごく一般的な普通の寝室のような作りの部屋がある。

 

 その寝室のベッドから起き上がる様を見せる影が1つ。

 

「う゛……うううん…………ふぁ~あ……う~ん、良く寝たぁ……」

 

 目をこすりながら起きたその人物は、ゆったりとした寝巻に身を包んだまま自身の黒髪を少し掻き、ベッドから足を降ろして立ち上がる。

 

「…………どうぞ~」

 

 部屋の中に一人いるその黒髪の人物は不意にそう呟き、部屋に置かれたタオルに対して印を結んで掌に集めた水を含ませる。

 

 濡らしたタオルで顔を拭くその人物の背後に位置する扉の前には、いつの間にやら男が片膝を着いて姿を現していた。

 

「おはようございます()()()様……朝食の準備が出来ました」

 

 かしこまった様子の人物は特に忍びのような装束は身に纏ってはおらず、平服のままの姿であった。

 

 その人物の物言いに不満があるのか、サトリと呼ばれた人物はタオルを机に置くと現れた男に向け横目で見て注意をする。

 

()()()……様は要らないっていつも言ってるでしょ~? アンタがそんな調子だから皆も真似して――」

 

 忽然と現れたそのアガリと呼ばれた男性は暗い青色の髪で片目を隠し、白い肌の見た目をしていた。サトリの注意するような口調での文句にアガリは取り繕うように言葉を重ねる。

 

「しかし……サトリ様は我々にとっての救世主の様なお方……っいえ、まさに救世主そのものと言っても過言ではない――」

 

「ストップっ! 全くアンタは……まあ、いいや……朝食あるなら食べにいくよ。 化粧していくから先行ってて」

 

 オロオロとした様子のアガリにサトリはいつもの事だと慣れた様子で手で払うような仕草をすると、アガリはそのまま礼をし扉から素早く出ていった。

 

「……いわゆる副官としては優秀だけど、堅物すぎるのがなぁ……」

 

 ブツブツと呟いたサトリは、寝室に備えられた化粧台の椅子に座り身支度を整え始めた。

 

 

~~~~~

 

 

 数分後、建物内の石造りで出来た廊下を歩くサトリ。 冷たい印象を感じさせる造りの廊下だが、壁には観葉植物の植木鉢などが着けられたりして和やかさを出そうとした形跡が見られる。

 

 そんな廊下を歩き、とある部屋にサトリが入る。その中にはキッチンのような施設と食事をとれるような簡易的な木造の家具が備えられていた。

 

 そのキッチンで皿洗いをしていた大柄で黒い肌に金髪の男性はサトリの来訪に気がつくと、片手をあげにこやかに挨拶をする。

 

「おお、サトリ様!! おはよーごぜぇます!! うちのビニールハウスで今朝取れた野菜でこしらえた朝食でせぁ!! 食べてってくだせい!!」

 

「ああ、おはよう……()()()()は相変わらず元気だねぇ……おお、野菜も二年も作れば見栄えも安定して良い感じになって来てるね……美味しそうだ」

 

 寝起きでテンションが低い様子のサトリだが、ゼンゾウと呼ばれたごつい男性の元気のいい声に目を覚まし、朝食に出されたパンやサラダを口に含む。

 

 もしゃもしゃとその朝食の味を堪能するサトリは目を細め食の幸せを享受し、ゼンゾウもその様子を嬉しそうに見ていた。

 

「美味いなぁ……ゼンゾウホントいい仕事するねぇ……だけど様は要らないって毎回行ってるんだけどなぁ……」

 

「ありがとうごぜぇますサトリ様!! 様付けは癖みたいなもんでさぁ!! 気になさらんでくだせぇ!!」

 

 サトリの文句にゼンゾウはどこ吹く風と言った様子で元気に答える。

 

 小さくため息をついたサトリは、先に朝食を済ませて部屋の隅で待機しているアガリに冷たい目線を向けた。

 

「……誰かさんが癖になる様に様付けを広めるからなぁ~……ねぇアガリ?」

 

「サトリ様は、サトリ様です!! 俺は譲りませんよ!!

 

「はっはっはっ!! アガリがクソ真面目なのは今に始まったことじゃあねぇですからね!! サトリ様も観念してくだせぇ!!」

 

 アガリとゼンゾウの物言いに、サトリはため息をつき、朝食を終えゼンゾウに挨拶を済ませその部屋を後にした。

 

 

~~~~~~

 

 

 朝食を済ませたサトリはまた別の部屋へと移り、紙の資料が束ねて置かれた机に向き合っていた。

 

「畑やビニールハウスの管理は順調みたいだね、ゼンゾウは本当によくやってくれてるよ」

 

「ええ、ヤマジ殿の協力もあり既に幾つかの集落との取引や商売にも行かせるほどです。 誇らしい限りです」

 

 サトリが資料に書かれた作物の収穫量の報告書に目を通して呟いた言葉に、アガリは自分のことのように胸を張る。

 

 仲間思いのアガリの様子にサトリも良いことだと顔をほころばせ、また別の資料を手にしてアガリへと語りかける。

 

「……で、ヤマジさんが斡旋してくれてる任務の方は? 今誰か行ってる?」

 

「ええ、只今山賊退治と、他の集落の用心棒、農業地域への出稼ぎに数名出ています」

 

「OK~皆良くやってくれてるよ~……ん? っこの依頼書は保留の印が押されてるけど……」

 

 サトリが手に取った一枚の紙の中身に目を通す。

 

「くノ一のみで1人から数名を所望……で湯の国での護衛任務……ランク指定はAか。 ……どう思う?」

 

 サトリが資料から片目を覗かせアガリに意見を問う。

 

 アガリは真面目な目つきでサトリからの問いに答える。

 

「怪しいですね。 報酬金が相場より異常に高いうえに、場所が湯の国にある()()()……それにわざわざくノ一を指定している点が尚更……それに」

 

「依頼人が大名ねぇ……怪しさプンプンだわ……アガリ、今出れるくノ一って誰が居る?」

 

 アガリと同意見だというサトリは待機している仲間を確認する。

 

 アガリはまた別の紙を見て確認を取ると

 

「待機しているのは()()()だけ……ですね…………っ無理でしょう」

 

 苦虫を嚙み潰したように渋い表情をし適任ではないと断言する。

 

「無理だな……仕方ない、私が出るよ」

 

 アガリの様子に同意を示し資料を折りたたみ懐にしまったサトリは椅子から立ち上がり背伸びをする。

 

「良いのですか? わざわざサトリ様が出る程では……他のくノ一の帰りを待ってもよいですし、それにサトリ様には()()()()としての動きもあるのでは?」

 

 心配をするアガリの様子にサトリはどこ吹く風かといった様子で答える。

 

「そっちの件は問題なし……ある程度お金さえ積めば自由に動けるし、ここのこともバレないように気を付けてるからね」

 

「そうですか……サトリ様の結界忍術のおかげでここの集落も外部に下手に干渉されずに済んでいます。 本当にサトリ様のおかげで――」

 

「やめやめっ!……アガリは気を抜くとヨイショしてくるからこっちが気恥ずかしくてかなわないわよ……」

 

 赤くなった自身の顔を手で扇ぐサトリは改めてアガリへと視線を向ける。

 

「さて……それじゃあ()の様子を見たら出るとするよ。 忍具の用意頼める?」

 

「勿論です、では急いで支度を済ませますねっ!!」

 

 サトリの言葉にアガリは興奮気味に返事しその場から姿を消す。

 

「イヤ……別にそんなに急がなくてもいいんだけど……ま、いいか」

 

 そしてそのままサトリもその部屋から退出した。

 

 

~~~~~~

 

 

 建物1階に造られた出入り口には岩山に同化するように瓦の屋根があり、その下を通りサトリは外へと出る。

 

 階段を下り地面に足を付けたサトリの眼前には、木造の家屋やそれなりに整備された道が広がっていた。

 

「……改めてこう見ると、頑張ったなぁ」

 

 感慨深くそう呟いたサトリはその集落の様子を歩いて見て回った。

 

 通りすがる人々や家屋に住んでいる住人たちに、サトリが顔を見せると

 

「サトリ様、お帰りなさい!」

 

 とそこに人々は口をそろえて言い、サトリは

 

「様は要らないって」

 

 と訂正をして回った。

 

 集落の人々からの信頼されているのか、サトリは皆を家族の様に接し世間話をする。

 

 そしてしばらく歩き回ったサトリは、とある家屋の前で足を止める。

 

「キョウコ居るかぁー?」

 

 家屋の前で中に向け発したサトリのその言葉に反応するように、玄関の引き戸が開く。

 

 中からは白髪の年老いた男性が姿を現した。

 

「おやおや、サトリ様……お帰りなさいませ。 外套の件ですな?」

 

「ああ、()()()さん……今日はいらしてたんですね、まあそれもあるけどどうせアガリが先に受け取りに来てるだろうし、キョウコに顔だけでも見せとかないとってね……あと言っときますけど貴方は一応外の人なんですから様は本当に付けないでくださいよ……」

 

 サトリがヤマジと呼んだ老人は、サトリの言葉に「カッカッカッ!」と笑って見せる。

 

「この老いぼれにも役割をくださっているのですから、上等な取引相手として真っ当な姿勢でございますよ」

 

「だとしてもなぁ……」

 

「貴方はそれほどの人だということです」

 

 ヤマジの言葉にサトリが顔を歪ませ、納得できないと表情で訴えるが無残にもそれは無視され家の中へと案内される。

 

 先導するようにヤマジが歩き、とある部屋の襖を開ける。

 

 その中には茶髪で小柄の少女が一人手に針を持ち裁縫をしていた。

 

 その少女は来訪者の気配に気づき瞼を閉じたまま、サトリの方へと顔を向ける。

 

「……サトリさま……? お帰りなさい! 外套ならさっきアガリさんが受け取りに来て持っていきました」

 

「ただいまぁキョウコ。 悪いねいつも外套の修理頼んで……あと様はいらないよー?」

 

 サトリは笑顔でキョウコに近づき、隣に正座すると彼女の両手を自身の両手で握る。

 

 サトリの手のぬくもりに安心したのかキョウコと呼ばれた少女は口元を緩ませ、笑顔を見せる。

 

「今日はヤマジさんが色々お話してくれてたの! 他の国の話なんだけどね!」

 

 目を閉じたままのキョウコは年相応に明るく話をし始め、ヤマジはその様子に安心し席を外し、手をつないだままのサトリは優しく相槌を打ちキョウコの話を聞き続けた。

 

 

~~~~~~

 

 

「それでね、アカネさんがアガリさんに『だからお前は背が低い』……っあ、ゴメンナサイ……サトリさま、私ばかり喋っちゃって……」

 

 数十分ぐらい話し込んだ二人だが、キョウコが我に返るとサトリは微笑みながら

 

「全然いいよー? 私もキョウコと話すの大好きだしね……だけど名残惜しいけどそろそろアガリを待たせるのも悪いから行かないとね」

 

 と告げ、キョウコの手を離し頭を撫でる。

 

「……サトリさま……次はいつぐらいに帰ってきますか?」

 

 サトリと離れるのが寂しいのか少し泣きそうな声色になっているキョウコの様子に、天音は彼女の頭を撫でなだめるように優しい口調で語りかける。

 

「ごめんね……次もいつ帰って来れるか分からないかも……今度帰ってきたら直ぐにキョウコの所に顔を出すから、ここの皆と待っててくれる?」

 

「……うん……待ってる……っ」

 

 キョウコはわがままを言わないようにと我慢をする様に唇を小さく噛みしめる。 その様子にサトリは彼女をそっと抱きしめ、落ち着かせるように背中をさする。

 

「……えらい、えらい……キョウコはえらい……ほら、笑顔になって? そうしたら私も嬉しいから!」

 

 瞼を閉じたままのキョウコには見えないにもかかわらず、サトリは笑顔でそう語りかける。

 

「うん……笑顔で待ってるね!」

 

 サトリの言葉にキョウコが笑顔を作るとタイミングを計っていたかのように襖があき、ヤマジが湯飲みを持って現れる。

 

「キョウコちゃん、サトリ様と沢山話して疲れただろう? 私が火の国から持ってきたこのお茶を飲んで少し休憩すると良い」

 

 ヤマジは湯飲みをキョウコに渡すと、サトリと共に家の外へと出ていった。

 

 外に出たヤマジはサトリへと語りかける。

 

「……サトリ様本当にあなたはすごい……尊敬しますよ……」

 

「……やめてください、私は私のしたいことをしてるだけです。 それに私一人じゃ出来ることも限られる。 ヤマジさんが商人や依頼の仲介人として外とのパイプになってくれてるからこそやれていることも沢山あります」

 

「カッカッカッ! ご謙遜を……貴方のおかげで救われた人は数知れず……私めもその一人です」

 

 深々と頭を下げるヤマジにサトリは慌てて顔を挙げさせる。

 

「やめてくださいって……もうっ……それじゃあ私はそろそろ行きます、居る間だけでもいいのでキョウコや皆のことよろしく頼みますね」

 

「ええ、もちろんですとも……」

 

 サトリは照れて赤くした顔を隠すし逃げるようにヤマジに手を振りその場から駆けだした。

 

 ヤマジは再度サトリに向け頭を下げ、キョウコの待つ家へと入っていった。

 

 

~~~~~~

 

 

 岩山の建物の出入り口前までサトリが駆け足で来ると、その足元にクナイが1つ飛来し突き刺さる。

 

 サトリは分かっていたかのように足を止め、出入り口の屋根に腰かけている赤い髪のくノ一に目を向ける。

 

「アカネ、悪いけどそろそろ私出かけるんだけど?」

 

「うるせぇ!! 勝負だサトリ!!」

 

 屋根からそのアカネと呼ばれたくノ一が跳躍し、サトリに向け飛び蹴りを放つ。

 

 サトリはそれを悠々にと躱し、アカネが続いて繰り出す拳打を捌き続ける。

 

「今、上でアガリ待たせてるんだけど――」

 

「フッ! ハァっ!! あんなチビはほっといてちゃんとアタシの相手しやがれ!!」

 

 サトリの事情などお構いなしに殴りぬこうとするアカネの様子に、サトリはため息をつく。

 

「……しょうがないなぁ」

 

 刹那、サトリは体を翻して後ろ蹴りをアカネに放つ。 その蹴りをガードしたアカネは大きく後ずさりをする。

 

「――痛っ……へへ、やりやがるな」

 

 ガードした腕の痺れに、サトリの実力を感じ取りアカネは笑みを浮かべる。

 

「やっぱ、お前に任務を任命しなくて正解だと確信したね……今」

 

 サトリは血の気の多いアカネの様子を再確認しながら、蹴り上げた脚をゆっくりと降ろす。

 

 すると気がつけばサトリとアカネを取り囲むように住人たちが集まり人だかりで輪ができていた。

 

「よっしゃぁあ!! 行くぜぇおい!!!」

 

 群衆のはやし立てる声にアカネは調子を上げ、サトリへと再度殴りかかる。

 

「なんやかんや、皆血の気の多い事で……まあそれは仕方ないとして、ホントお前謀略とか一切無縁そうで何よりだよ」

 

 サトリは突き出された拳を巻き取る様に動き、素早くアカネの腕を背に回して動きを拘束する。

 

 群衆からは「行けェサトリ様ぁ!」「今回は一発ぐらい当てろよアカネぇ!!」などと声がかかる。

 

 声援に気を良くしたのかアカネはチャクラコントロールで全身に力を籠める。

 

「オウラっ!!」

 

 掛け声とともにアカネは後ろに回り込んでいるサトリに腕で肘鉄を繰り出すも余裕で受けられる。 一応衝撃で拘束を解いたがアカネは気に食わない様子でサトリに文句をぶつける。

 

「チィッ……手ぇ抜くんじゃねぇ!! ()()()みたいに本気で来やがれっ!!」

 

 煽るアカネの言葉に、サトリはめんどくさそうに再度大きくため息をつく。

 

「ここは演習場じゃないからね? ……私よりも年上の癖にあまり駄々こねないでよ」

 

 その態度にアカネがこめかみ引くつかせる。 瞬間場の空気が数段重くなった。

 

 瞬間、サトリは何かを察知したのか、その黒い目を鋭くしアカネを睨む。

 

 一瞬群衆が何かを感じ取り歓声が止んだ瞬間

 

「……それは駄目だって言ってるでしょ……」

 

 サトリは小さく呟くと、全身に雷光を纏い身体活性を行う。

 

 刹那アカネはサトリに顔面を勢いよく殴り抜けられ空中を優に数十回転しそのまま地面に叩きつけられた。

 

 シーンと場が静まり返るとサトリが一回大きな拍手をして注目を集める。

 

「はい、おしまい解散!! 皆()()()は守るようにね、破ろうとすればこうなるからぁ!!」

 

 サトリが大きな声で忠告し気絶したアカネを親指で示すと群衆はオズオズと解散していった。

 

「全く……さて連れてくか……」

 

 仕方ないと言った様子のサトリが気絶したアカネを抱えると再度散り行く群衆に向けにっこりと笑顔を作り言葉を放つ。

 

「後、皆様は付けないでよ」

 

 そうしてサトリは建物中に入っていった。

 

 

~~~~~~~

 

 

 アカネを抱えたままのサトリは建物内の1階のとある部屋へと向かう。

 

 その部屋の扉を開けると、外の大きな庭と繋がった大き目の空間が現れる。

 

 その空間では怪我を治療した様子の鳥や、山犬などと言った幾多の動物が思い思い自由に過ごしていた。

 

 サトリの訪問に動物たちは一瞬ざわつくも、サトリは慣れた様子でその空間に置かれたベッドにアカネを寝かせ、部屋主に向けての書置きを残してさっさと出ていった。

 

 サトリが部屋からいなくなると動物たちは、落ち着きを取り戻しまたそれぞれ自由に寝たり遊んだり過ごすようになる。

 

 その部屋から出たサトリは急いで最上階の自室兼寝室へと向かった。

 

 小走りで自室前まで来たサトリが扉を開けると、中ではゼンゾウとアガリが世間話をしていた。

 

 サトリの来訪に気づき、アガリが頭を下げゼンゾウが手を挙げ挨拶をする。

 

「ごめんねアガリ、結構待たしちゃったかな?」

 

 サトリの謝罪にアガリは慌てふためいて反応する。

 

「おやめください!! 私めがサトリ様に謝罪させようなど……!!

 

「がハハっ! サトリ様のことでぃ、アカネにまた絡まれていたんだろうよォ!!」

 

 ゼンゾウの予想した言葉にサトリは

 

「ゼンゾウ正解、お仕置きのために()の部屋に置いてきた」

 

 指をさし同意を示す。 ゼンゾウが褒められたことにニコッとしてアガリに目線を向けると

 

「……やはりアカネはいう事を聞きませんか」

 

 額に手を当てため息をつく。

 

「仕方ないよ、むしろ他の皆が私のことを受け入れすぎだって思うぐらいだし」

 

 悩む様子のアガリの肩をポンポンとサトリが励ますように叩く。

 

 そのままサトリはゼンゾウへと目を向ける。

 

「んで、ゼンゾウは何でここに?」

 

 話を切り替えサトリがゼンゾウへと問うとゼンゾウ懐から折りたたんだ紙を取り出す。

 

「その1階の連絡鳥の区間に例の()()()()からの文が届いていたんでぃ、報告しようと待ってたんでぃ!!」

 

「ああ、別に紙だけ置いといてくれたら良いのに……わざわざありがとうね、下がって良いよ」

 

 サトリのねぎらいの言葉を受け文を受け渡したゼンゾウは頭を下げ、部屋から退出していった。

 

 受け取った文を広げ内容を確認するサトリ。

 

「例の協力者、仮面の忍びから……ですね……どういった内容ですか?」

 

 その様子を見ていたアガリが文の中身を問うとサトリは少し嫌そうな顔をして答える。

 

「……木ノ葉の銀狼(ぎんろう)・白と日向ヒアシが雷の国から里に戻ったって報告みたい……木ノ葉って割と任務先の湯の国に近いからなぁ……まあ一応遭遇しないと思うけど」

 

「それは、私には大変さが分かりかねる内容ですね……それほど厄介なのですか? その白という者と日向は」

 

「厄介というか今、私が出来れば会いたくない人間が白だからねぇ……まあ最悪大丈夫でしょ……っうん」

 

 サトリは覚悟を決め、アガリが用意していた暗い色をベースにした忍び装束を着込み始める。

 

 腰にポーチをつけ、腕と脚にそれぞれ黒い鉄輪を付ける。

 

 そしてアガリがサトリに掲げた小さな箱を開け、中身の片眼鏡を装着する。

 

「よしっと……後外套は――」

 

「こちらです」

 

 丁寧にたたまれた外套をアガリが広げそこにサトリが腕を通す。 外套を身に纏ったサトリを見てアガリは呟く。

 

「……やはり随分とボロボロですね、毎度思いますが新調しなくて良いのですか?」

 

「いいよ、折角キョウコが仕立ててくれた一点ものだからね。 ついでに中に仕込んだ結界忍術の件もあるし、使えるうちは修理してもらって私が使いたいの……かなり気に入ってるしね」

 

 笑顔を見せたサトリは、部屋の金庫の中にしまった緑色の液体が入ったガラス瓶を取り出し腰の帯へとつける。

 

 そして身支度を済ませたサトリが姿見で容姿を確認するとそのままガラス戸を開けベランダに出る。

 

ここ(集落)の結界忍術もかけ直しておくよ、また帰りが何時になるか分からないし」

 

 サトリが印を結ぶと、サトリが居る建物の頂点を軸にドーム状の透明な膜がうっすらと広がり数秒後にその膜は見えなくなる。

 

「よしっと……それじゃあ、行ってくるよアガリ。 皆の事よろしく頼んだ!」

 

 サトリがアガリに手を挙げ挨拶をすませると、そのまま駆け出しベランダの縁を飛び越え姿を消す。

 

 

 

「行ってらっしゃいませ、サトリ様……いえ……()()()()()

 

 

 

 アガリが頭を下げそう呟いた瞬間に、歪んだ朱い雲の模様が描かれた外套を身に纏った人間が、空へと向かい雲の合間へと姿を消したのであった。

 

 

 




今回出たオリキャラのまとめ

アガリ25歳(主に副官業)真面目な性格、暗い青色の髪で片目を隠し、白い肌をした男性、身長は女性のアカネより低い

ゼンゾウ40歳(畑の管理、調理担当など)金髪 ごつく大柄で黒い肌に金髪の男性 義理堅い

アカネ22歳(くノ一)赤い髪 男勝り 集落内で唯一サトリを様付けしない

キョウコ6歳(子ども)茶髪 盲目 集落での裁縫、仕立ての仕事を手伝っている。 

ヤマジ70歳(商人) 白髪、普通に老人の風貌。 他里にも出されている任務や依頼などをサトリたちの元へ横流しし斡旋している人物
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