目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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7:ドキドキ♥ ほぼくノ一だらけの湯の国大騒乱~前編~

 ナルト達が木ノ葉の里に帰還したその日。

 

 暁のサソリから得た情報をサクラが綱手へと報告し、カカシ班は一旦解散することとなった。

 

「……俺はナルトとサクラとは別の任務ですか」

 

 一人火影室に残ったカカシは若干不服そうにそう綱手へと告げる。

 

 大きなため息をついた綱手は手持ちの資料をバシバシ叩きながらこちらも不満そうに声を荒げる。

 

「私も好きでこんな采配をしているんじゃない……上のご意見番の意見も取り入れながらなこっちも譲歩して――」

 

「その割にはそのご意見番の二人相手にナルトの事で、声を荒げていた様子でしたが……」

 

「チッ……聞いていたか。 ナルトには人柱力としてでなく、あいつ本人に不思議な力があるように私は感じている。 暁との接触にリスクが伴おうとも、あいつはそれを乗り越え成長すると私は信じている」

 

 綱手の目線は窓の外に向けられる。 綱手のナルトに誰かの面影を重ねる様子に、自身にも心当たりがあるのかカカシは仕方ないと肩をすくめる。

 

「ま、火影様の命令ですからね……だとしても俺の代わりに誰に二人の面倒を見させるおつもりで?」

 

「……先の任務で兆しを見せた九尾の暴走を抑えることができ、なおかつカカシ、お前に匹敵するほどの奴と言えば木ノ葉でも一人しかいないだろう?」

 

「ああ……なるほど……」

 

 納得した様子のカカシは、自身の任務について綱手に確認を取り部屋を後にしようとする。その時カカシの背後で待機していた暗部の忍びに対してカカシは肩を叩き呟く。

 

「任せたぞ……テンゾウ」

 

「……ええ……上手くやって見せますよ先輩」

 

 カカシが退室すると、その暗部の忍びが綱手の前へと出る。 その暗部の忍びに向け綱手は告げる。

 

「話は聞いていた通りだ、お前にはカカシの代行をやってもらう。 これは暗部としてでなく通常の任務のために、お前には新たにコードネームを与える……『ヤマト』……三代目在来時からの優秀な使い手との噂の通り、その働きに期待しているぞ」

 

「ご期待に応えて見せますよ、カカシ先輩の代わりという光栄な役回りですからね」

 

 綱手の言葉に、面を外したヤマトはにっこりと笑顔を見せて了承の意を示した。

 

「後の件についてはこの資料にまとめてある。 くれぐれもナルトのことを頼んだぞ」

 

「了解しました」

 

 綱手の申し訳なさそうな顔に、ヤマトも火影の忙しさを思い素直に部屋を出ていった。

 

 その後、綱手と資料の束とのにらみ合いが始まり……

 

 数分後、綱手はとある依頼書の内容に目を留める。

 

「……湯の国で大名の所有する宝が盗まれただと……? 遊郭街での活動……とくノ一を推奨……ふむ……例の件もある……よし」

 

 綱手は任務受付場へ回す資料からその一枚だけを抜き出す。

 

 そして紙に何かを書き込んだ綱手だが、部下のシズネが全然帰ってこないことに苛立ちを覚え

 

「シズネぇっ!! まだ戻ってこないのかぁ!?」

 

 火影屋敷に響くほどの大声を挙げる。 すると数秒後すぐにシズネが部屋の中へと慌てて入ってくる。

 

 その様子は身だしなみが崩れ、頬には墨のような跡。 口元は何かで濡れていたのかほんの僅かに光沢を帯びていた。

 

 いそいそと身だしなみを整えるシズネに対して綱手はこめかみをヒクつかせる。

 

「……火影を差し置いて資料室でお眠とはいい度胸じゃないか……なぁシズネ?」

 

「あひィー!!! いいいいいいいえっ!!!! そんなことは滅相もありmっませんっ!!!」

 

「っブー!」

 

 口調はとても優しいものだが視線だけで並みの忍びを卒倒させるような圧を発する綱手の様子に、シズネは足元の豚のトントンと共に敬礼をする。

 

「はぁ……まぁいい。 このまとめた任務資料を受付場の係の所まで運んでくれ、後この紙に書いた忍びを正午にここに集めろ」

 

 綱手がピッと弾くように投げ飛ばした紙をシズネは拍手の形で受け取り、反省の意味を込めそのまま深々と頭を下げる。

 

 シズネはそのまま、資料を両手で持ち上げトントンが扉を開け部屋から出ていった。

 

「さて……しばらくは邪魔が入らんだろう……正午まで私も目を閉じて休憩を取ろう……なに決して……ねむる……わけ……じゃ……」

 

 独りになった綱手は、椅子に深く腰掛け誰かに言い訳をするように小さく呟きながら重いまぶたの誘惑に抗わずに意識を手放したのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 ところ変わって木ノ葉の演習場の一つ。

 

 そこには組手を交わす二人のくノ一が居た。

 

「ふっ!! はっ!!」

 

 片方のくノ一が鋭く放つ掌底は、その相手には効かないのか悠々と避けられてしまっている。

 

「動きが鈍って来てますよ。 ほら、防御が疎かです」

 

 余裕があるくノ一は軽く払うような手の動作で、相手のくノ一の顔を軽くはたく。 攻めっけばかりだった方のくノ一はそれをまともにくらい仰け反ってしまう。

 

「白眼を使っててその程度ですか? 足が止まっていますよ」

 

 そのまま放たれた軽い足払いで、仰け反った側のくノ一は地面と熱い接吻を交わす。

 

 その様子を木陰で見ていたくノ一が少し引き気味に呟く。

 

「……任務帰りに、二人が修行してるからって見に来たけど……白ってハナビちゃんに対してスパルタ過ぎじゃない?」

 

 その呟きに反応するように汗一つ掻いていない白は、呟いたテンテンに目線を向けた。

 

「いえ、これでもまだまだですよ。 部下の実力不足は上司の失態、僕はハナビなら出来ると信じていますので。 ……いつまでも寝ころんでいては敵に頭を踏みつぶされてしまいますよ?」

 

 目線はテンテンに向けたまま、白はうつ伏せのハナビの頭に向け足を踏み込む。

 

 慌てて跳ね起きて踏みつけを避けたハナビは荒い呼吸で虚ろな表情のまま、柔拳の構えを取り白と相対する。 ハナビの様子はどうみてもフラフラで限界の様子である。

 

 ……上忍ベストに身を包み木ノ葉の上忍となった白は、時間がある時に第零班の部下である日向ハナビに対して修行をつけている。

 

 日向の跡目であるハナビが、上忍とはいえ日向と関係の無い白の修行を受けることに日向の年老いた上役たちは顔をしかめるが、ハナビの知らないところで日向ヒアシがそれらの不満を受け止めていた。

 

 そんなヒアシの一族としての葛藤を思い、白は生半可な鍛え方を良しとしていなかったのだ。

 

 事情を知らないテンテンからしたら肝が冷えるほどスパルタになってしまっているのだが。

 

「流石に体力の限界ですか? もうやめますか? 良いんですよ休んでも、ですが貴方が止まっても()が居たら貴方を待ってはくれないと思いますよ?」

 

 白は拍手をしてハナビの意識を自身へと向けさせ、言葉で煽る。

 

「……っ!!  ぜぇ……ぜぇ……ぉえ……ま、まだまだぁ……まだまだぁあああっ!!」

 

 その言葉で瞳に小さく光を灯したハナビは、がむしゃらに叫び白へと突進する。

 

 瞬間白は所謂猫だましをハナビの眼前へと高速で詰め寄り行いハナビの意識を削る。

 

「っ!! あぅ……っ」

 

 意識がもうろうとする中での、意識外からの衝撃にハナビが崩れ落ちると白はその体を抱え抱き上げる。

 

「うん上出来です。 ここ一番で大切なのは意志の強さ、その点ハナビは悟君の話題を出せば限界を越えられるのでいい子ですね」

 

「えげつな……っ」

 

 意識が飛んだハナビを木陰に移動させ寝かせる白へテンテンは再度引き気味に呟く。

 

「テンテンさん、任務帰りとはいえ余裕そうですね。 僕と手合わせでもしませんか?」

 

「おっと……余計なこと言っちゃったかな……まあ、いいや。 やってやろうじゃない!!」

 

 白の提案に、テンテンは袖をまくり立ち上がる。

 

 お互い向かい合うと、組手の合図として対立の印を結ぶ。

 

 そのまま、小さな風が運ぶ木の葉が落ちる音を合図に互いに距離を詰め腕をぶつけ押し合う。

 

「っアンタもこの前雷の国から帰ったばっかりなのに元気そうね!」

 

「あちらでは書類仕事ばかりで身体がなまってしまって……僕も風影奪還任務に行きたかったですね」

 

 テンテンが距離を少し開け放った回し蹴りを白は前進しながらしゃがみ込んで避け、軸足を掴んで引き倒す。

 

「おっと……なんの!」

 

 テンテンは空中で身体を回転させ、地面を弾くようにして手で押し返し跳ねて白と距離を取る。

 

「あの天音小鳥と会ったそうで、悟君について何か手掛かりは得られたんですか?」

 

「全然! っリーがあばらを砕いたのに、少ししたらピンピンしてたってサクラが言ってたし……その後死にそうな状況になってたみたいだけど、多分生きてるんじゃないかしら。 暁は化け物揃いみたいだしねっ!」

 

 テンテンと白が子気味の良い音を弾かせながら、互いの拳を撃ち落しつつ攻防を続ける。

 

「っそう言えば、天音小鳥……と戦ってみて感じたことがあるんだけど……っ」

 

「それはなんですか?」

 

 白の鋭く放った左右の拳の三段突きにテンテンが防御の姿勢を崩されると互いに両手を掴み合って押し合いの形になる。 テンテンの方が姿勢を低くしたまま会話は続く。

 

「うぐぐっ……何か変な違和感というか……始めてあった気がしない……既視感みたいなのがあって……帰りにネジも同じことを言ってた……っ」

 

「そうですか、具体的な例はありますか?」

 

 淡々とした白の様子に、テンテンも負けん気で八門遁甲第一開門を開き押し返す。

 

「アイツ、リーの体術、木ノ葉旋風を真似したりサクラの話だとあのサスケの術とかも真似してたみたいで……もしかしたら」

 

「っなるほど、相手の強みを真似するコピー忍者タイプ……カカシさんみたいなものですね。 ならばかつて悟君と交戦した彼女がその動きを取り入れているから既視感を感じたという可能性も十分ある……」

 

「そうかもねっ!!」

 

 テンテンの力押しに押され気味なった白は、押し合いから逃れテンテンから距離を取る。

 

「直接悟君と会っている可能性がありそれを考慮するとやはり、一度生け捕りにして本人の口から所在を吐かせてみるしか手がないようですね……生きていればですが」

 

「だけど強かったわ……三人がかりでも、何だかまだ隠し手を忍ばせてそうだったし」

 

 二人は再度接近し、拳打を交える。 身体能力を向上させているテンテンだが、素の技量は白の方が上手のため力押しがあまり効かず攻撃が受け流されていく。

 

 白の隙を作るための早く軽い拳がテンテンの鳩尾にあたり、テンテンが一瞬仰け反ると白はテンテンの脇と首を両腕で囲むようにして締め押し倒す。

 

「うぐっ……ちょっ……極まってる……ギブギブっ!」

 

「……もう少し頑張って抵抗してみるのも――」

 

「無理無理無理っ!!」

 

 勢いよくタップするテンテンの様子に仕方なさそうに絞め技を解いた白は、組手の終了を告げる和解の印を作りながら腰を落としているテンテンを引き上げ立たせる。

 

 ぜえぜえと息を整えるテンテンの様子に白が少し笑みを浮かべる。

 

「テンテンさんも強くなりましたね」

 

「……もしかして今の組手の感想? 嫌味にしか聞こえないんだけど」

 

「いえいえ、かつてはもう少し楽に勝てていたので成長したなぁ……という感想です」

 

 悪気もなくにっこりとそう告げる白に対してテンテンは苦笑いを浮かべた。

 

「はぁ……あの施設は天才を集る集会場なのかねぇ……」

 

 テンテンが呟いた冗談は悟と白を含めたものだが、実際再不斬とマリエも居るのであながち間違いでもない。

 

 そんなこととはつゆ知らずテンテンが気絶しているハナビの近くに腰かけると、ふと新たな人影が演習場に現れる。

 

「ここに居ましたか探しましたよ、白、テンテン」

 

「シズネさんでしたか、何か御用ですか?」

 

「えっ? ……私も?」

 

 姿を現したシズネに驚くテンテンと目線だけを向けながら水筒から水を飲む白。 シズネは簡潔に連絡を告げる。

 

「綱手様から正午に火影屋敷まで来るようにと……私は他に紅班も集める様に言われていますので。 では」

  

 シズネは連絡を済ませると素早くその場から去っていった。

 

「……休む暇もありゃしないってね」

 

 テンテンが肩をすくめる。

 

「いいじゃないですか、任務も修行の一環ですよ」

 

「ハハッ……任務のために修行して……その任務は修行でもある……って悟みたいなこと言ってるわね白」

 

 ケロッとした白の様子に、テンテンは乾いた笑いを浮かべたのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 正午、火影の屋敷前に集まったテンテンと白。

 

「ガイ班でなんで私だけが呼ばれたんだろう?」

 

「さあ……僕にも見当がつかないですね」

 

 雑談を交えながら二人が綱手の部屋の前まで来る。

 

 白が扉をノックをすると、部屋の中から物音が少しして

 

「は、入れ!」

 

 綱手のぎこちない返事が返ってくる。

 

(寝てましたね)

 

 白が小さく笑みを浮かべながら扉を開け中に入ると、片頬を赤くした綱手が机でどっしりと構えていた。

 

(綱手様、寝てたわね)

 

 テンテンも白と同じ感想を浮かべながら二人は平行に並び立つ。

 

「……後は紅班の班員も呼んでいるはずだが……」

 

 綱手がそう呟くと、開けっ放しの扉からシズネが姿を現す。

 

「紅班、連れてきました……てっあー綱手様! その顔寝てましたね!!?? 私の居眠りをあれだけ叱っておきながらぁ!」

 

「うるっさい! そんな事よりさっさと中に全員入れて扉を閉めろ!!」

 

 シズネの指摘に綱手が有無を言わさず、言葉を重ね黙らせ話を進める。その様子を見慣れたの光景だとその場の木ノ葉の忍びは皆心を一つにしていた。

 

 そして綱手の前に白、テンテン、日向ヒナタ、犬塚キバ、油女シノが並び立ちシズネは綱手の側へと移動した。

 

「おっほん……ではお前たちにはとある任務を受けて貰う、シズネ」

 

 綱手が資料をシズネに渡し、それが各員に配られる。

 

「えーとナニナニ……湯の国の遊郭街!? っ……おっほん……で大名の宝の奪還が目的ねぇふんふん」

 

 遊郭街の単語に一際強く反応を示したキバだが女性陣の冷めた目線で冷静さを取り戻しクールさを取り繕う。

 

「遊郭街での活動を円滑に進めるために、依頼書ではくノ一での活動を進めている。 俺とキバは恐らく外でのバックアップと言ったところだろう」

 

 冷静に内容を分析するシノの言葉にキバは落胆の色を見せる。

 

 シノの言葉に綱手は満足そうにする。

 

「話が早くて助かる。 キバとシノは遊郭街の外で、残り三名の補助を遂行してもらうつもりだ……言っとくが中には絶対に入るなよ?」

 

 後半の綱手の指摘に、キバは息を呑む。

 

 するとヒナタが手を挙げ発言をする。

 

「あの……とこで、どうしてくノ一は私と白さんとテンテンさんなんですか? こういう所はえっと……その……もう少し大人の方が行った方が適任なんじゃないかと……」

 

 少し照れながらのヒナタの発言に綱手は深刻な顔を見せる。

 

 一同は息を呑み、綱手が口を開くのを待つ。

 

「……白……先日お前が雲の隠れ里近くで任務にあたっていた時、失踪者についての話を聞いたはずだ」

 

「……ええ、そうですね。 詳しい内容までは分かりませんでしたが確か湯の国での任務に当たった数名が戻ってきていないとか……今回の件とそれが関りがあるということですか?」

 

 白の返事に綱手は大きく頷き肯定する。

 

「……各隠れ里でそういった話があるらしい……それで探りを入れるために一人、木ノ葉からも先日から優秀なくノ一の暗部をその遊郭街に忍び込ませたのだが……っ」

 

 悔しそうにしながら話す綱手の様子にテンテンが口を挟む。

 

「まさか……帰ってきていないんですか?」

 

「ああ……そのまさかだ……だがそいつは消息を断つ前に、1つの文をこちらに送っていた……これがそれだ」

 

 そうして綱手が広げて見せた文には……

 

 ただひたすらに『愛』という字が書き連ねられていた。

 

 血気迫る狂気的なその愛という字の群に、キバとヒナタ、テンテンが軽く悲鳴を上げる。

 

「……おや、どうやら一部読み取れる文章がありますね」

 

 白がまじまじとその文を観察すると目に付いた文章を読み上げ始める。

 

「『私は愛を知らなかった』『愛の深さ』……『今、とても幸せ』……っ忍びの文で目にすることが一生無さそうな文章ばかりですね」

 

 流石の白も少し引き気味になったその文を綱手はしまい込み、話を続ける。

 

「……そのくノ一はとても優秀であった……かなりストイックな性格で実力も上位のものだ。 そして自身の感情を抑えこむことを当たり前としていた」

 

 綱手の言葉にシズネが反応を示す。

 

「そんな暗部の彼女が……このような文を……っ?」

 

 信じられないといった様子のシズネ。 綱手は真剣な目をして口を開く。

 

「恐らく、精神を犯すタイプの幻術か何かだろう……それも暗部が対応できないほどに恐ろしく高度な……対抗手段のカギは文に書かれた……」

 

「愛の深さ……?」

 

 シノの疑問形の呟きに綱手が頷く。

 

「恐らくそうだろう、そこで私の偏見で愛の深さを基準に三名……選出した」

 

「それが私とヒナタと白ってことですか……? 偏見を理由にって……」

 

 テンテンがあまり納得いっていない様子を見せるが綱手は構わず話続ける。

 

「大きな愛は白、中ぐらいの愛はヒナタ……小さな愛をテンテン……そう言う風に位置づけ、各自の反応を元に遊郭街での調査に当たれ」

 

 真面目にとんちんかんなことを言い始めた綱手に、テンテンが抗議する。

 

「なんで愛に大中小を着けてるんですか!? ていうか基準とかは!? なんで私が小なんですか、胸ですか!?」

 

 テンテンの抗議の最中、白だけは小さく「あ~なるほど~」と納得した様子で呟いていた。

 

 ツッコミに対して綱手は

 

「言っただろ、私の偏見だと。 愛が深ければ術にかかりやすいのか、浅ければかかりにくいのか……はたまたその逆か。 それらの調査も兼ねてお前らを任命したのだ。 あと胸の大きさなら白が中になるだろうな」

 

 冷静に答える。 地味に精神的にダメージを負うテンテン。

 

「クッ……サクラ……サクラには負けていないハズ……」

 

 そう何やら虚ろに呟くテンテンを他所に綱手は話を続ける。

 

「可能であれば暗部のくノ一の回収も頼む。 何事もなければ素直に依頼書どうりに事を進めればいい。 だが必要であれば任務を破棄して帰還しても構わない、無事に情報を持ち帰ることが最優先だ……以上」

 

 綱手は「質問はあるか?」という表情を見せる。

 

 キバが手を挙げる。

 

「つまり……俺たちは何かあったときに三人を回収する係ってことっすね」

 

「そうだ……だが、愛とかの事情に関係なく男であるお前たちがその精神攻撃に耐性がある場合もある。 三人の様子見次第では、シノと共に内部に踏み込め」

 

 綱手の指示に、キバは小さくガッツポーズをする。 ……年頃の男子なので仕方がない。

 

 少しの沈黙が続き、綱手が話を終えようとすると……

 

 考える素振りをしていた白が手を挙げる。

 

「……綱手様、一人同行をお願いしたい忍びがいるのですが……よろしいでしょうか?」

 

「……そいつは誰だ?」

 

 綱手の言葉を受け、白は部屋の扉に向け声をかける。

 

「入ってきたらどうですか」

 

 すると扉が開けられ…… 

 

 

 

 

 

「ハナビ!?」

 

 

 

 

 ヒナタがその人物に驚き、声をあげる。

 

 綱手は信じられないといった様子で白へと顔を向けると、白は綱手へと近づき耳打ちをする。

 

「僕の予想が正しければ恐らくですが彼女の存在が必要となる可能性があります……どうか許可を」

 

「だが……里外に日向の跡目であるハナビを出すわけにはいかない……そもそもまだ幼すぎるだろう」

 

「……彼女については僕が責任を取ります。 大丈夫です、彼女は強い」

 

 ひそひそと会話を続ける綱手と白。 傍らでハナビと紅班の班員も話をしていた。

 

「ハナビ、盗み聞きなんて……っ!」

 

「姉様、私も任務に連れていって下さい! 外で経験を積んで少しでも強くなりたいんです!」

 

「オイオイ、ヒナタの妹ちゃんよぉ……下忍には荷が重いぜ? 何てったってAランク指定の――」

 

「うっさい変態犬っころ! 遊郭街って単語にいちいち反応してるの気持ち悪いのよっ!! 姉様の事も普段からそういう目で見てるんじゃないでしょうね!?!?」

 

「なるほど、一理あるな。 キバは自身の情緒の制御が拙い。 それを見抜くとは中々に見どころがあるくノ一のようだ」

 

「おいシノ!! 何てめぇもこのガキンチョに同調してんだっ!?」

 

「ハナビ、言葉遣いが悪いわよ!!」

 

「シノさんは冷静そうで犬っころ忍者よりは信頼できそうね」

 

 ワイワイ騒ぐ四人の様子を見た綱手の苦虫を噛み潰したような表情に白は説得するために肩に手を置いて呟く。

 

「ヒアシさんには僕から話を通して起きますので……彼女の力が必要なんです」

 

 真剣に諭してくる白の剣幕に綱手の大きなため息をつく。

 

「わかった……わかった!! 良いだろう、日向ハナビの同行を認める! だがあの悟に憧れているハナビの事だ、無茶は絶対にさせるなよ?」

 

「ええ、任せてください」

 

 綱手が折れて許可を出した事でハナビは無邪気に喜び、姉であるヒナタは白に抗議の目線を向けるが、さらりとスルーされてしまう。

 

 結局その後、湯の国に向かう前に白とハナビ、そしてヒナタは事情を説明するために日向の屋敷に向かう事となった。

 

 

~~~~~~

 

 

「――という訳で、ハナビさんを任務に同行させようと思うのですが」

 

 ヒアシの自室で白はヒアシと向き合い事情を説明する。

 

 ただその説明した内容は単純に「経験を積ませるため」と言った内容を仰々しく語っただけであり、到底父を説得できるものではないと傍から聞いていたヒナタは思う。

 

 白の話を腕を組み黙って聞いていたヒアシは、伏せた目を開けハナビを見る。

 

「……ハナビ、お前の言葉で俺を説得して見せろ」

 

 ヒアシの視線がハナビに注がれ、ハナビは息を吞みながらも自分の言葉を口にする。

 

「……私は、強くなりたい……力だけじゃなく、確かな経験を持って多くを守れる忍びになりたいのですっ! ……父様が立場上、跡目である私が無茶をするのは良しとしないのも分かります……でも……私も、我儘を言ってても日向が、皆が大好きなんです! 跡目として、この手の届く範囲、この家を守れるだけの力を得るために……だから……お願いします、父様。 任務に行く許可を下さい!!」  

 

 勢いよく土下座をして懇願するハナビ。 ヒアシは娘のその態度に小さく息を漏らし口を開こうとする。

 

 ――瞬間襖が開き、日向ナツが姿を見せる。

 

 部屋の中の4人の視線がナツに向くと、ナツが涙をボロボロと零しているのが見て取れる。

 

「……イヤですよ……ハナビ様……ハナビ様じゃなくても、私が……他の皆がハナビ様を守ります! だからっ……」

 

 ナツはハナビにすがる様にして目線を合わせる。 ナツは覚悟を決めた表情で言葉を紡ぐ。

 

「無茶は……させません、例えヒアシ様が許可を出そうとも……誰が敵に回ろうとも……私は……私はハナビ様を危険な目には会わせないためなら何でもしてみせます……っ!」

 

 ナツは言葉を述べた瞬間に、ハナビを連れ去る様に手を引き部屋の外へと出ていく。

 

 白とヒナタがそれを追おうとするも

 

「……行かせてやってはくれないか」

 

 ヒアシがそれを制止する。

 

「ですがお父様……」

 

「……ヒアシさんがそういうなら僕は待っていましょうか……」

 

 心配するヒナタを他所に白は出されていた茶を飲むために、落ち着いて座る。

 

「白さんっ!」

 

「ヒナタよ、よい……そうだな、お前にも話しておいた方が良さそうだな……ナツの事を」

 

 慌てるヒナタを落ち着かせるように、ヒザシはゆっくりとした口調で語り始める。

 

「ナツさんの事ですか……?」

 

「ああ、ナツがああも過保護なのは……私の妻との約束があるからだ、そして私のせいでもある」

 

「お母様とお父様が……?」

 

「お前も良く知る通り、お前たちの母は余り身体が丈夫ではなかった……その世話係として、若きころのナツが身の回りの手伝いをしていたのだ。 その時に――」

 

 昔を振り返る様にヒアシは言葉を続けた。

 

 

~~~~~~

 

 

 ……十数年前

 

「奥様……あまり無茶をなさらないでください……っ」

 

「これぐらい平気よ! っゴホゴホ」

 

「お母様……っ!」

 

 日向の屋敷の庭、ヒナタの母は幼きヒナタと遊ぶために蹴鞠をしようとするもせき込んでしまい態勢を崩す。

 

 心配するナツが肩を貸して縁側に座らせると、ヒナタも心配して座る母の膝に寄り縋る。

 

「ごめんなさいお母様……私がお母様と遊びたいなんて言ったから……っ」

 

「いいのよ、ヒナタ。 私は……我慢するのが嫌いなの……堅物なあの人(ヒアシ)とは違ってね!」

 

 ヒナタを安心させようと、ヒナタを大きくしたような容姿の母のウインクが炸裂するが

 

「奥様、無茶は駄目です。 ヒナタ様のことは私にお任せください」

 

 ナツは問答無用でヒナタの母を抱えて部屋の中へと連れ戻す。

 

「あら、ちょっとナツ……! 降ろしなさい、降ろしなさーい!」

 

 暴れる奥方だが、体力の無さが幸いして現役バリバリのナツには何の影響もなくそのまま部屋へと連れ戻されてしまう。

 

(お母様……やっぱり……無茶しちゃうんだ……っ)

 

 その様子を見ていたヒナタは自身が母親に迷惑をかけていると錯覚してしまう。

 

 母と遊べない……父はつらい修行を課してくる……途端にヒナタは子どもながらに息苦しさを感じて、衝動的に屋敷から飛び出してしまった。

 

 戻ってきたナツは庭にヒナタが居ないことにすぐに気がつく。

 

「ヒナタ様……? ヒナタ様っ!」

 

 慌てたナツは、小さなヒナタの痕跡を白眼で追い屋敷から駆けだす。

 

(なんてことだ……私が目を離したりしたから……っ!)

 

 ナツは自責の念に駆られながら全力で周囲の捜索に赴く。

 

 一方ヒナタは小さいながらに混乱しつつも、自身の衝動に従い小さな公園へとたどり着いていた。

 

(前にナツさんと来た公園……お母様が無茶しないように、私にお友達が出来れば……っ)

 

 自分との関わり合いが母を傷つけるなら、自分が変わればいいとヒナタは行動を起こす……

 

 その行動が必ずしも良いものになるとは限らないが。

 

 

………………

…………

……

 

 

 ナツが息を切らし、ヒナタの足跡を追い公園へとたどり着く。

 

 白眼により、公園に踏み入りながらヒナタの姿を確認したナツは顔を青くする。

 

「ヒナタ様!! ……ご無事で……!?」

 

 怪我を負い土にまみれたヒナタは、里でも忌み嫌われるうずまきナルトと狐のお面を付けた不気味な子どもに囲われていたのだ。

 

 ヒナタの目元は赤くなっており涙を流した後も確認して、ナツは怒りに支配される。

 

 ヒナタがナツの姿を確認し何かを言おうとしているが、ナツの耳は届かずその柔拳が子ども二人に炸裂。

 

 公園の植え込みに叩き込み、ナツは問答無用でヒナタを抱え公園から飛び出したのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

「申し訳ございませんでした!!!!!」

 

 床に額を押し付けナツは布団から上半身を起こしたヒナタの母親に謝罪をする。

 

「……」

 

 ヒナタの母親は自身の布団の傍らで疲れから眠ってしまっていたヒナタの頭を撫でながらナツに目線を向ける。

 

「貴方を攻めはしないわ……この子なりの考えがあってのことでしょうし……何より屋敷から出ただけで、そこまで切羽詰まったりしなくても」

 

「いいえ!! 私が目を離したことで宗家のヒナタ様が怪我を負ってしまい……九尾の妖狐とも接触してしまいました……腹を切ってでも――!!

 

「いい加減になさい!!」

 

 奥方からの 責でナツは顔を挙げる。

 

「ナツ……貴方はその額の呪印があるから……この子を仕方なく守っているの?」

 

「そんなことは滅相もありません……っ! 体が強くない奥様がやっとのことで授かったお命なのです、宗家とか分家など関係なく私が守らなければいけないと、私が……心に強く思っているんです!」

 

 涙を流して必死に話すナツに優しい声色で言葉がかけられる。

 

「……確かに私もヒナタが大事よ……? だけど、何でもかんでも大人が代わりにすれば良いという訳でもないのよ。 日向の一族のものだからこそ……いえお家など関係なしに子どもというものは強く、自立しようとするものなの……そのチャンスを奪っては行けないわ」

 

「ですが……っ!」

 

「それに……屋敷の外でも里の中……そこは敵が居るわけでもなく、同じ里の『家族』がいるのよ。 妖狐の子相手だろうとも、この子はその出会いを成長に繋げられると信じているの」

 

 言葉を失ったナツをヒナタの母親は優しく抱きしめてあげて、頭を撫でる。

 

「貴方は少し……真面目過ぎるのよ、肩の力を抜いてごらんなさい」

 

「奥様……っ」

 

 まだ若き頃のナツは、自身の感情に飲まれるままに大声で泣いてしまう。

 

 感情の渦はナツの心を埋め、この時の奥方の言葉を芯で理解することは出来なかった……

 

 そして

 

 

 

 

 

 

「お二人目……ですか、そんないつの間に……奥様の体の調子は未だ良くは……っ」

 

「この子はね……私みたいに……活発で、そして綺麗で笑顔の似合う丈夫で元気な子に育って欲しい……ふふふ、そうナツ、堅物な貴方さえも笑顔に出来るそんな子に。 ……誰かを安心させてあげられる『ヒナタ』……そしてこの子は皆の笑顔を咲かせる『   』」

 

 

 

 

 

 

 

「駄目です奥様……っ息をしてください、深呼吸を……駄目です駄目、駄目ぇ……イヤぁっ!!!」

 

「っ娘……たち、を……おね……がいね……ナツぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

「……ヒアシ様……っ!!! 貴方が無茶をさせなければ、奥様はっ!!!」

 

「……っ分家の者が口出しをするな!!!!」

 

「っうぐ……がぁっ!! 頭が……っ!」

 

 

 

 

 

「ヒナタ様を下忍に!?」

 

「……決定事項だ。 ナツ、お前もヒナタの面倒はもう見なくて良い、ハナビだけを見ろ」

 

「……っ」

 

 

 

 

 

(奥様の願い……大丈夫、ヒナタ様には優秀な上忍がついている……私は……せめてハナビ様を……お守りしないとっ)

 

 

 

 

 

 

『運命に叛逆の意を示す? 笑わせるな!! 弱者を駆逐? バカにするな!!! ネジ、お前が自分に繋がりがないと言い自分だけの力だけしか見えていないのなら、その力の内の毒だろうが術だろうが何だろうが全部受け止めてやる、そのうえではっきりとそのメンタマに見せつけてやるよ!! お前が一切の言い訳ができないようにな!!!』

 

「悟さん……頑張ってっ」

 

 ネジと悟との戦いを見ているハナビを見つめナツは思う。

 

(ヒナタ様と婚約をし、ハナビ様をもこうも引き付ける黙雷悟……なぜ彼はボロボロになってまで、まるでネジを心配するかのような……ハナビ様は彼を……)

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 そして現在

 

「ナツ、手を離して!!」

 

 ナツの手を弾くように振り払ったハナビに、ナツは涙で潤んだ目で見つめる。

 

「どうしたのよ、こんなの……ナツらしくないわよ」

 

 怪訝な目で見るハナビに、ナツは目線を縁側から見えるとある部屋へと向ける。

 

「……私は……大切なモノを傷つけたくないの」

 

「ナツ……?」

 

「あの部屋で……ハナビ様のお母様に私は託された……『娘たちを頼む』と……なのにお二人はどんどん……私の存在などお構いなしに成長して……強くなる」

 

 吹っ切れた表情のナツは涙を零しながらも自身の胸の内をさらけ出す。

 

「九尾の妖狐であり、危険な存在だと言われていたうずまきナルトにひかれるヒナタ様に……無茶という言葉を絵に描いたかのように体現する悟さんに憧れるハナビ様……私はもう……心配で心配でどうにかなってしまいそうなのよっ!!」

 

 頭を掻きむしりながらナツの独白は続く。

 

「わざわざ危険に身を置かなくてもいいじゃないっ!! 宗家の人間として、ふんぞりかえって分家の私を使って楽にしてくれてれば良いのに……なんで何でっ!?!?」

 

 感情を爆発させ頭を抱えうずくまるナツ。

 

「うううう……ううううううっ!!」

 

 泣きじゃくる様子の彼女の様子を見てハナビは……

 

「フンッ!!」

 

 思いっきりナツの後頭部を叩く。

 

「っ!?!?!?!」

 

「バカにしないでよねっ!! 私は今までの日向みたいに分家の人間をおざなりにするつもりもないし、危険に対して無力なただの子どもでもない!! ナツ、貴方は私たちの心配をしているつもりかもしれないけどねぇ!! それは貴方自身が傷つきたくないだけの、只の詭弁よ!!」

 

 叫ぶハナビの剣幕にナツはボロボロの表情をキョトンとさせ叩かれた頭を押さえて話を呆然と聞く。

 

「私も、姉様も……いつまでも守られる側に居るわけにはいかないのっ!! 貴方を犠牲にして自分たちだけがノウノウと生きていればいいなんて私も姉様も絶対、絶対思わないっ!! 私は、ナツ!! 貴方と対等になりたいのっ!!!」

 

 必死に叫ぶハナビも感情の起伏に目に涙を浮かべる。

 

「昔から……記憶にない母様の事を貴方は教えてくれた……『ハナビ様は奥様にとても似ていらっしゃる』って言われて嬉しかった!! 母様が亡くなる直前に貴方に私たちを『頼む』と言ったかもしれない……でもそれは、私たちを一方的に守れなんて言う命令なんかじゃ絶対にないってわかる!!! それは――」

 

 二人の大声に、ヒナタとヒアシもすぐ傍まで着てその様子を見守る。

 

「『見守って、そして一緒に成長して欲しい』ってことだって……母様なら絶対にそう言うわ」

 

 ハナビの言葉にナツは目を見開き、ヒアシもまたそのハナビの様子を見て懐かしむような表情を見せる。

 

「ハナビ様っ……私は……私は……っ!」

 

 言葉を失くし、うわ言を呟くナツ。

 

 そんなナツをハナビは優しく抱き寄せ言葉を掛ける。

 

 

 

 

 

「貴方は少し……真面目過ぎるのよ、肩の力を抜いてみなさい。 私も姉様も……貴方の事を一人に何かしないから」

 

「っ!! ……ううううう……っ~~~~~っ!!」

 

 

 

 

 そしてそんな二人をヒナタがさらに上から重ねて抱擁する。

 

「ごめんなさい、ナツ。 あなたの気持ちをちゃんと理解してあげれてなくて……っ」

 

「ヒ……ナタ様……っ」

 

 さらに、ナツへと声をかける人物が一人。

 

「ナツ、お前には……辛い思いをさせたな。 妻を亡くした時に、お前に酷く当たってしまい……すまなかった」

 

 日向ヒアシが、ナツへと向け頭を下げる。

 

 感情が高まりすぎたナツはハナビとヒナタに抱き着き、しばらく大泣きした後に……眠る様に気を失った。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

「貴方は良い父親ですね、ヒアシさん」

 

 ナツをヒナタとハナビが彼女の部屋へと連れていっているときに、気配を消していた白がふと現れヒアシへと語りかける。

 

「……そんなことはない、振り返れば後悔ばかりだ。 娘たちにも辛い思いをさせてきた、そしてそれは分家の者にも」

 

「後悔が出来るということは恵まれているし、次への改善へと繋がるので悪い事ばかりではありません。 ……僕は既に両親が居ない身ですからね、父とも分かり合えず、そして母も亡くした。 けれど、貴方はまだ先がある。 そして今を変えようともがく貴方はそんな僕の眼から見たら間違いなく良い父親です」

 

 ニコッと笑って見せる白に、ヒアシは苦笑を浮かべる。

 

「フッ……敵わないな。 ……ハナビとヒナタの事、よろしく頼む」

 

「ええ、もちろん。 むしろ僕がお世話になるくらいの気持ちですよ」

 

 白の言葉にヒアシは安心の表情を見せる。 

 

「どうして中々……黙雷悟の影響力と言うのは……」

 

「ん? 何か言いましたか?」

 

「いや、何でもない。 では健闘を祈る」

 

「はい!」

 

 ヒアシの言葉を受け、白は二人を迎えにナツの部屋へと向かう。

 

 ふとヒアシの傍らに並び立つヒザシ。

 

「……中々の大騒ぎでしたね兄上。 ネジと2人で周りの者を治めるのに苦労しましたよ」

 

 ヒザシの苦笑をヒアシが見ると

 

 

 

 ガシッとヒアシがヒザシを抱擁する。

 

「うおっちょっ!? 兄さん!?!?」

 

「お前にもいつも苦労を掛けるな……っ」

 

 突然のことに珍しく狼狽えるヒザシ。

 

「全くいい年してナツめ……父上、口留め終わりまし……はぁっ!? ど……どうなってっ!!??」

 

 その様子を後から来たネジが見てしまい、これまた普段の彼から考えられような素っ頓狂な声が出る。

 

 ネジの存在に気がついたヒアシはヒザシの抱擁を解く。 ヒザシは固まったまま立ち尽くしている。

 

「ネジ……お前にも、弟の事で迷惑をかけている……それなのにお前は本当に良くやってくれているな……っ!」

 

 明らかにヒザシに続いて自分を抱擁しようとする動きで近づいて来るヒアシに後ずさりするネジ。

 

「いいいいいえっ! 俺は大丈夫ですっ! 俺は大丈夫ですのでっ!! っ~~~~!!!」

 

 白眼使いが背後に壁があることも気づかないほど動揺し、狼狽える姿を夕日が窓から眺めて……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ネジの叫び声が聞こえた気が……まあ、気のせいね。 よし任務の準備も済ませたし、そろそろ大門に向かおうかな」

 

 テンテンは班員の心の叫びを察知しつつも、気にせず任務に向けて自宅を出発した。

 

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