目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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そろそろ更新ペースが落ち始める頃合いです……


8:ドキドキ♥ ほぼくノ一だらけの湯の国大騒乱~後編~

 湯の国の北西、比較的自然資源に恵まれている湯の国では珍しく荒れ地になっている地帯。

 

 そんな只々途方もなく荒れ地が続く場所には似つかわしくないようにポツンとある繁華街が暗がりに明かりを灯している。

 

 そこは街としてみれば、周囲が荒れ地でありながらも湯の国独特の硫黄の匂いをほのかに漂わせ、ちょっとした観光地としてそこそこの賑わいを見せていた。

 

 しかし外観を見れば、観光地として不相応なモノが嫌でも目に入る歪な場所でもあった。

 

「……でっけー壁だなぁ」

 

 繁華街の路地裏から高壁を眺めている、白地に赤いラインの入った外套に身を包んだキバが呆けた感じで呟く。

 

 そのキバの呟きの反応を示すものが一人。

 

「……あの先が任務予定地……遊郭街がある場所だ。 周囲の観光を目的とした繁華街とは縁系の高壁で隔絶され、来る人を堕落させるという魅惑の巣窟……中には湯の国の大名の一人が居ると言われているが、しかしここ最近その大名の目撃情報は極端に少なくなり噂では――」

 

 キバと同じ装いのシノがブツブツと情報を呟き始める。 キバとヒナタはいつもの事で慣れているので気にも留めないが、外套に身を包んだ集団の中で一人シルエットの小さいハナビはその様子に若干引いていた。

 

「……何か質問したわけじゃないのに、次々と呟いてる……シノさんてちょっと不気味かもっ」

 

「彼はそういう人なんですよ、ハナビ。 零班として、様々な忍びとチームアップをするためにも苦手は失くしましょうね」

 

「……は~い、わかりました」

 

 上司である白からの指導に、正論だと思いハナビは真面目に受け取り、取りあえずシノの呟きに耳を傾けることにした。

 

 そんなやり取りの傍では、テンテンとヒナタが任務の段取りの確認をしている。

 

「……白とヒナタと私、三人が木ノ葉からの忍びとして高壁の門番に依頼書を見せて中に入って……。 これねぇ……依頼書によれば、高壁内中央の大名の居る建物で事情を説明してくれる人がいるらしいけど……」

 

「うん……その道中で何かが起きる可能性が高いってことだよね……暗部の人がおかしくなっちゃうような幻術の類……気を付けないと」

 

「そうよねぇ言っちゃえば、ここの人間は皆敵かもしれないってことだしね……ちょっと久しぶりに緊迫感のある任務……ガイ班だと、正面突破がほとんどだし……ホントネジが居なかったらやってけてない自信があるわ……」

 

「あはは……私もネジ兄さんからよく聴いています。 いつもテンテンさんが居てくれてとても助かっていると言ってました」

 

「っそ、そう? ……まあ、私もネジには班の清涼剤として助けて貰ってるからお互い様ってやつよねぇ」

 

 ヒナタから聞いた自分へのネジからの印象に、少し顔を赤らめ顔をニヤつかせるテンテン。 ……その様子を意味深に眺めていた白は不意に視線を切り、手で合図を出して班全員の注目を集める。

 

「……では一応今回隊長の僕から最終確認をしますね。 僕たちの歓楽街突入から半日経っても無線や何らかのアプローチが何もなければ外の歓楽街で待機するキバ君とシノ君、ハナビは高壁を昇り遊郭街に侵入してください。 そこで様子を見て撤退か、更なる情報を得るために中に踏み入るかの判断をお願いします。 踏み入る時は恐らく行動不能になっている僕たちの救出もお願いしますね。 撤退を選択した場合は――」

 

「安心してくれよ白隊長、俺たち木ノ葉流忍者は仲間を見捨てたりなんかしねぇぜ!!」

 

「……だと良いですが、選択肢としては一応頭に入れておいてください。 撤退を選択した場合は綱手様へ情報を報告、後日別部隊を編成した後、強硬手段での救出をお願いします。 ……その時に僕たちが正気で居るのかは定かではありませんが」

 

 キバは大人しく撤退するつもりはないと豪語するも白は忍びとして、段取りはしっかりと行う。 

 

 白としても木ノ葉が他の隠里よりも仲間意識が強いのを実感しているが、だからと言ってそれを頼りにしすぎるのは良くないと分かっているからだ。

 

 白の言葉に少し緊張を見せるテンテンとヒナタ。 遊郭街に女性だけで行くのだから、精神的に怯んでしまうのも無理はないのだろう。

 

 白はその様子に気がつくと、二人の手を取り言葉を掛ける。

 

「……安心してください。 例の精神攻撃とやらが依頼を装って、任務に来たくノ一を陥れるためのものであると分かれば即座に撤退しても良いのですから。 そうなれば後は外部からの実力行使で済みます。 幸い他里も行方不明者を出している以上、内情が分かれば協力してくれるでしょう。 ですので僕たちは全滅さえせずに情報を持ち帰ることを第一に安全策で行きましょう……大丈夫です、いざとなれば僕が――」

 

 白の励ましの言葉に、テンテンが言葉を重ねる。

 

「白にだけ無茶はさせないわよ……っ! 綱手様曰く『小』らしい私でも、やれるって所みせてやるからっ!」

 

「そうです、私もテンテンさんも居ます。 一緒に頑張りましょう、白さん!」

 

「……っフ、その通りですね。 僕たちで事の真相を暴きましょう」

 

 女性陣が結束を固める中

 

「……でよぉ、結局綱手様が言ってた大中小ってどういう基準何だろうな?」

 

「それは未だに俺にも見当がつかない。 ここまでの道中考えていたが、恐らく火影として知ることが出来る情報にその判断の理由があるのだろう。 外見での判断ではないと加味すれば、やはり精神的な部分。 経験や体験を軸に――」

 

「赤丸ぅ……今回私もアンタも外組で待機だし暇になりそうね……里の外での任務に来れて良い経験なんだけどさぁ……」

 

「くぅ~ん……」

 

 キバとシノは綱手の言っていた『偏見』について語り、少し退屈そうにしているハナビは赤丸に語りかけながら顔周りの毛並み撫でまわしていた。

 

 そして女性陣が中に入る前の無線や忍具の確認をしているタイミングで、いつの間にか赤丸に跨っていたハナビに対して白はこそっと耳打ちをする。

 

「どうしたんですか、白さん?」

 

「いえ、一応念の為に……もし赤い煙での合図を確認したら、ハナビ。 貴方だけが強行突破で繫華街に来て白眼で僕たちを探してください……赤丸さんも出来ればでいいのでその時はキバくんには内緒でハナビのサポートをお願いします」

 

 白の言葉にハナビは顔を強張らせ、赤丸も少し困惑の表情をしている。

 

「良いんですかそんな事勝手に決めて……」

 

「確信があるわけではないのですが……もしも僕の予想通りに、最悪の場合になったときにそうするのが最善だ……というだけの話です。 赤丸さん、どうかキバ君には内密にお願いします」

 

 赤丸に頭を下げる白。 困惑していた赤丸だが、そうなる可能性は限りなく低いと説明を受けそれ理解したため

 

「ボフッ……!」

 

 小さく了承を示す声を出す。 赤丸の表情からしても納得してもらえたことを確認した白はハナビにウインクをしてヒナタとテンテンと共に高壁の中へと続く門へと歩んで行った。

 

 三人を見送った待機組、キバは赤丸に跨る白に近づき声をかける。

 

「でだ、ちびっ子。 俺たちは門の見える場所で待機するが、どこで時間を潰すかはお前に決めさせてやる」

 

「ムカッ! 偉そうにちびっ子言うな!」

 

「キバ、幾ら五歳年下だとは言え女性に対してその口の利き方は感心しない。 なぜなら――」

 

 小さく揉めた三人だが結局近くの売店を見て回って時間を潰すこととなった。 ……キバの奢りで。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 女性陣は白を先頭に堂々とした歩みで門へと近づく。 門の脇に居る一人の門番も三人の姿を確認しても手に持った槍はそのまま天を刺したまま微動だにしない。

 

(……僕らの木ノ葉の額当てを確認しての警戒はナシ。 一応歓迎されているということですね)

 

 白は悟られることなく門番の様子を観察するが、万が一の場合力押しが可能であることが分かっただけであった。

 

 大した手練れでもない門番は飾りのようなモノだと推察をした白は懐から依頼書を取り出し、その門番へと見せる。

 

「木ノ葉から、大名からの依頼を受けに来たくノ一です。 通ってもいいですか?」

 

「……ふむふむ。 話は聞いております、どうぞどうぞ、中へ」

 

 依頼書を確認した門番はフレンドリーな様子で門を開け三人を中へと通す。

 

 中へと入った三人は目の前の光景にそれぞれ口に出さずとも同じ感想を抱く。

 

(((ピンク一色……)))

 

 高壁の中はピンクのネオンの看板が立ち並び、大人が夜を楽しむための店が通りの脇を大量に占めていた。

 

 飲食や売店、宿と行った一般的な類の店は一切見当たらず、只々性を感じさせるピンク一色の視界に

 

「……ゴクッ」

 

 ヒナタは唾を飲み、無意識に白の外套の袖を摘まむ。

 

 彼女らが歩みを進め中央、大名が居るとされる高い建物へと続く通りを行けば、左右の店からは男性や女性の溺れるような淫声が微かに聞こえ

 

「……っひえ」

 

 青ざめた表情でテンテンが小さく悲鳴を上げ、ヒナタと同じく白の外套の袖を摘まむ。

 

 左右の袖をそれぞれ摘ままれ、若干の身動きのしづらさに白は苦笑いを浮かべた。

 

 そんな中、白は首元に隠した無線で高壁内に侵入したことを待機組に知らせようとするが、無線からはノイズが聞こえるのみであり

 

(……なるほど、距離的には問題なさそうですが外と連絡を取るのは無理……と。 まあ、これだけで黒とは言えないのは遊郭街というモノのデリケートさを感じますね)

 

 待機組との細かい連絡を諦め、ピンクの道を行く白たち。 

 

 ふと、白が周囲に気を配ると幾つかの怪しい気配を感じ取る。

 

(さて……ヒナタさんに白眼を使わせては相手に『警戒してます』と教えるようなものなので、拙いながら僕がチャクラ感知をしていますが……それなりの手練れがいますね)

 

 自身らが監視されていることに気がついた白が、二人に合図を送ろうとすると……

 

 テンテンが何かを呟いていることに白とヒナタが気づく。

 

「何だろう……ふわふわする……でも、気持ちいい感じがして……えへへ……うふふ……うふふふふふふふッ――」

 

 明らかに正気ではなく、目が虚ろになっているテンテンの様子に気がつき白が小さく名を呼び肩を揺するも。

 

「えへへ……この気持ちは何だろう……うへへッ……ああ、これが愛……ああ、愛……愛愛……」

 

 テンテンは正気を失くしたようなうわ言を呟く。

 

「……これって……っ」

 

 ヒナタもことの重大さに気がついて声を漏らした瞬間

 

「お連れ様は大丈夫ですか? お疲れならうちの店でご休憩をしていかれたらどうです? 安くしておきますよ!!」

 

 見計らったかのようなタイミングで道の脇の淫声の聞こえる店から、店員とみられる男性が出てきて三人に声をかけてくる。

 

 呼び込みの店員だと思われる男性の言葉に白は

 

「結構です、僕たちはこれから中央の建物に用があるので」

 

(この男……?)

 

 違和感を覚えながらも仮面の下を営業スマイルにしてキッパリと断る。

 

 しかしテンテンが完全に足を止めている現状、置いていくわけにもいかないためその場から動けない。

 

「白さん……どうしましょう……幻術の解術を試みてはいるのですが効果はないようで……」

 

 小声で白へと指示を仰ぐヒナタはテンテンの肩に触れながらもその場の雰囲気もあり心細そうにしている。

 

 白は一旦落ち着きこの状況を冷静に分析する。

 

(いきなりテンテンさんの様子がおかしくなった……というより恐らく高壁内部に入ってからずっと『何か』をされていたと想定するべきか……僕たちへの監視と言い、店員の呼び込みのタイミングと言い……それにテンテンさんと店員の眼の様子が似ているようにも感じられる……はぁ……こうなれば仕方ないですが、もしもで考えていた『対処』を試みてみましょう。 僕の予想が正しければ嬉しいのが半分……テンテンさんへの申し訳なさが半分ですが)

 

 白は自身の想定の内から幾つか用意していた対処の方法の一つを試すことにする。

 

「ヒナタさん、どうなるか分からないので少しテンテンさんから離れていて貰ってもいいですか?」

 

「えっと……はい、わかりました」

 

「愛……愛……愛……うへへへ」

 

 白は恍惚とした表情でうわごとを呟くテンテンを座らせその耳元に口元を近づけ

 

(ごめんなさい、テンテンさん……でも現状のテンテンさんはかなり絵面がヤバいので対処するだけ許してください……っ!)

 

 心の中で謝罪をしながら囁く。

 

「……テンテンさん、貴方は

 

 

 

 日向ネジさんのことが好きですね?

 

 

 

 

「愛……愛…………あ……ッ?」

 

 白のささやきを聞いたテンテンは頭をぴくっと動かして反応を見せる。 その白のささやきが聞こえない位置にいるヒナタは何をしているのか分からずに疑問符を浮かべている。

 

「テンテンさんはネジさんが好き、テンテンさん、貴方はネジさんに好意を抱いている。 普段からネジさんを自然と目で追い、知らず知らずのうちに会話の内容にネジさんを捻じ込むほどあなたはネジさんのことを好いている――」

 

 呪文を詠唱するかのように、催眠術にかけるかのように、白は言葉巧みにテンテンがネジに好意を抱いているという内容の言葉を間髪入れずに呟き続ける。

 

「あが……っううううっ……あがが」

 

 白目を向きだしたテンテンの様子にヒナタは小さく悲鳴を上げる。

 

「だ、大丈夫なんですか、テンテンさん!?」

 

「よし、流石に僕もこっぱずかしいですがこれで最後です」

 

 もう一押しだと白は顔を赤らめながらも、キリっとした表情をして最後の一言を囁く。

 

 

 

 

 

テンテン、俺と一緒に日向を繫栄させよう(迫真のイケボ)」

 

 

 

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp――ッオンドリャーっ!?!?!?!」

 

 瞬間テンテンが叫び声を挙げながら鉄拳を繰り出す。 白はそれをガシっと受け止めるとニコやかな声で

 

「おかえり、テンテンさん。 あとごめんね」

 

 謝罪をしたのであった。

 

 テンテンの叫び声が響くと周囲の淫声が一瞬止む。 その狂気じみた絵面にヒナタもさらに後ずさりしてしまう。

 

「どあッだ、ダレ、誰がネjねねネじ……ネジの、ネジのッ!!!!!!!!」

 

 言葉を詰まらせ顔面を紅潮させ目をグルグルと回しているテンテンは腰を地面に下ろしたまま、白へとポカポカ殴りかかる。

 

「ね、ネジ兄さんがどうしたんですか!? っ白さんこれはどうなって……!?」

 

 混乱するテンテンとヒナタ。 ヒナタの質問に白はテンテンからのか弱い暴力を受けながら

 

「あははっ……取りあえず、深くは追及しないでそっとしておいてあげましょうか」

 

 小さく微笑み返したのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 正気を取りもどしたテンテンを連れ、一同は再度中央の建物へと向かう。

 

「……ッ……ッ……!」

 

「……」

 

「ふふ、気まずくなっちゃいましたね」

 

 顔を赤らめたヒナタとテンテンがそわそわしているのをよそに白は小さく笑いをこぼす。

 

 先ほどの事象の解説を白は、自分なりの予想という形でヒナタとテンテンそれぞれ説明していた。

 

 

『つまり、ブリーフィングでの読み通り暗部のくノ一が残した文の内容「私は愛を知らなかった」「愛の深さ」「今、とても幸せ」の三つの文章は精神攻撃への対処のヒントを示していたんです。 綱手様が偏見で設けたという基準も当たっていて、テンテンは愛、恋心を自覚せずにいた……つまり小。 愛の深さで言えば浅いところにいたってことですね』

 

『そしてヒナタさんはナルト君への気持ちを自覚していた……つまりは中ぐらい。 恐らく暗部のくノ一はストイックな方で恋愛なんて興味が一切なかったでしょうから愛の深さ的に最も浅い所に居たところにいたと。 そんな精神攻撃への耐性が弱い暗部のくノ一が恐らくテンテンさんが感じた()()()()ほどの幸福感を植え付けられたんだと思うと……あの手紙の用に発狂してても可笑しくはないですね』

 

 

 つまりは()()()()()()で敵は恋愛に対して免疫のない忍びを、その恋愛で生じるであろう幸福感を植え付けることで狂わせていたと白は語った。

 

「クソッ……クソぉッ……っ///」

 

「……ナルト君……ッ///」

 

 結界忍術か、幻術か。 原理は分からないが仕組みは理解できたため、白は二人に想い人を思い続けることが精神攻撃への対処になるはずだと伝えた。

 

 顔を紅く染める二人。 テンテンは自身すら自覚して無かった恋心を突きつけられやけっぱちになり、ヒナタも想い人としてナルトを思うことに言い表せない背徳感を覚え悶々としていた。

 

(テンテンさんがネジさんを好いているのは……日常的な会話をしていた僕は何となく気づけていた……気の毒な事をしました……恐らく綱手様も普段のガイ班の様子からそれを予想したんでしょう。 小と中……そして大か……さて、ここまで人の恋心を弄ぶような輩は――)

 

 

(私がネジを好き!? ……確かにそうかもしれなッいやそうなんだけど……ああクッソォ!! 確かに気がついたら目で追ってたりしてたけど全然自覚して無かったぁ……ッでも自分でもすんなり納得できるほど……あ゛あ゛あ゛っ! っこんな辱めを受けるだなんて連中――)

 

 

(そう言えば、テンテンさん。 よく話をするときにはネジ兄さんがどうしたとか、どう話してたとか良く言ってたような……私関係ないのに帰ったらネジ兄さんと接するのに緊張しちゃいそう……ああもう、でも人を好きだと思う気持ちを利用するなんて――)

 

(絶対に許しません)(絶対に許さないんだからッ)(絶対に許せないッ)

 

 三人の気持ちが一致し、黒幕に対しての怒りに滾る。

 

 しかしふと顔は紅潮しつつも一旦冷静になったテンテンは

 

「……白、冷静になればこれだけ情報がそろえば一旦木ノ葉に戻ってから隊を編成して行くのも手じゃない?」

 

 と白へと提案する。 白はテンテンの提案を聞き肯定を示しながらも渋い顔をする。

 

「事前に伝えたようにそれでも良いんですが、先ほどのテンテンさんの様子から精神攻撃の影響力は恐ろしく高いことがうかがい知れます。 それに途中、呼び込みをしてきた男性はテンテンさんと同じような状態だったのではと思うのですが会話はハッキリと出来ていたんです」

 

「白さん、それってつまり……ッ」

 

 白の言葉にヒナタがあることに気がつき、その様子に白も頷く。

 

「ええ、つまり先ほどのテンテンさんの状態からさらに洗脳を施されている可能性がありますね。 ……となれば各里の行方不明者は全員、あの男のように()()の手先になっていることでしょう。 当然木ノ葉から失踪した例の暗部のくノ一も含めて……」

 

 白はちらっと周囲を見て先ほどまで自分たちを監視していた気配が居ないことを確認する。

 

「……相手も対処されるとは思ってもいなかったようですね、慌てて本拠地へと報告に戻ったようです……こうなればもう遠慮はいらないでしょう」

 

 白の言葉にテンテンとヒナタが頷く。

 

「これ以上ここの惨状を放置したら、とんでもない戦力を持った集団になるってことよねっ!」

 

「そうですね……私たち以外にそのぉ……こ、恋心を自覚している忍びを集めるのも簡単ではなさそうだし、皆のプライベートにも関わります。 チャンスは敵がこれ以上増大してしまう前の今しかない……っ!」

 

 三人は顔を見合わせ、外套を脱ぎ捨て駆けだす。

 

「中央の建物の最上階を目標に進行っ!」

 

 白の掛け声で、加速した三人。

 

 それと同時に遊郭の施設から、ぞろぞろと人が飛び出し彼女らの行く手を阻む。

 

「動きからして彼らは一般人です、なるべく危害を加えないように屋根を伝って行きましょう」

 

「ちょっ!? 皆ほとんど裸なんだけどっ……っ目に毒ぅ、やめてよねぇ!!」

 

 テンテンが敵に苦情を入れるもの、人々は虚ろな目で三人を追いかけるのみで羞恥など感じている様子もなく聞く耳など持たない状態であった。

 

 屋根を伝って移動するも、道の途中で様々な額当てをしたくノ一が姿を現し立ちはだかる。

 

 ヒナタは咄嗟に前に出て白眼を用いて彼女らの分析を行う。

 

「……やっぱりチャクラの乱れからして、彼女たちは皆幻術にかかっているようです。 だけど……」

 

「あんな恍惚な状態でかかった幻術なんてちょっとやそっとじゃ解除できない、てことですね。 流石に忍び相手には、手荒に行きましょうか」

 

 白は印を結び、手の先から生じた白霧を撫でる様にくノ一たちに仕向ける。

 

「氷遁・氷鎖縛(ひょうさばく)!」

 

 帯となった白霧がくノ一たちを取り囲むと、腕や足に氷を生じさせその身動きを封じ始める。

 

「八卦空掌!」

 

 動きの鈍った相手の頭や点穴をヒナタが的確に空掌で打ち抜き昏倒させ

 

「おりゃおりゃおりゃぁ! どきなさいよっ!」

 

 テンテンは棒術で妨害しようとするくノ一達を払いのける。そして足を止めることなく彼女たちは敵の本拠地と思われる中央にそびえたつ建物へと向かっていった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 遊郭街中央の数十階はあるほどの巨大な建物の最上階。

 

 ホールの様に広く煌びやかな部屋の奥にある、玉座ともいえるような椅子に座る豪華な身なりの男が一人。

 

 紫色のスーツに豪華な宝石の指輪を始めとしたこれでもかというほどの量のアクセサリーが目に付くその男は椅子の両脇にいる二人の女性の頭を撫でながら満足そうにくつろいでいた。

 

「……俺の計画もあと少し……か。 ここ数年は我慢の年だったがようやく苦労が身を結ぶ……くふふ」

 

 男は片手で女性の乳房を弄びながら、下品な笑みと息を漏らし手に持つワイングラスを揺すりその中身をテイスティングしようとした……瞬間。

 

 その眼の前に木ノ葉の暗部のくノ一が跪いて姿を現す。 暗部でありながらもその仮面をつけていない彼女の表情は虚ろであることが筒抜けであった。

 

「主……様。 報告です、木ノ葉のくノ一が三名侵入……愛染(あいぞめ)様の術の効果をものともせずに真っ直ぐにこちらに向かっています……」

 

 くノ一の報告に男は、怪訝な表情を浮かべ背後に目線を向ける。

 

 その目線の見上げる先は、配線が繋がれた場違いな機械の台座の上に向けられていた。 そこには人ひとり分ぐらいを収容できる機械式の箱が設置されていた。

 

 箱に備え付けられた小窓からは、白髪の女性の顔が辛うじて見え中身を液体で満たしている様子が確認できる。

 

「ちっ……愛染の術が効かないだと……? まさかこの忍の連中でそんな奴らが大名からの依頼で来るとは……」

 

 男がいらだちを露わにして椅子から立ち上がると両脇の女性を叩くことで気分をスッキリさせる。 叩かれた女性らもまた虚ろな目をしていた。

 

「仕方ねぇ……男はむさ苦しくて使いたくはなかったが……」

 

 呟きの後に男が印を結ぶと、その部屋の両脇の扉から十数名の男の忍びがぞろぞろと姿を見せる。

 

 彼らの額当ては種類がバラバラで元々所属していた隠里が違うことを物語っていた。

 

「俺の手ごまである()()()()の中でも貴重な戦力のお前らを使ってやるッ! 侵入者を生きたまま捕えろ、もし捕まえたら俺の後でいくらでも好きに使()()()()()()っ!」

 

「愛……」「愛……」「愛……」

 

 ブツブツと呟く虚ろな目の忍び達の眼の前で、男が再度印を結ぶことで忍び達が動き始めた……瞬間。

 

 男の正面、その部屋の天井から床までがガラス張りになって、下の街を一望できる巨大なはきだし窓の外に異物が現れる。

 

「ん、あれは……?」

 

 男が夜空に浮かぶ()()を注視すると、それは……

 

 ()()()()であることが分かる。

 

 男がそう認識した瞬間、鏡から三つの影が飛び出し

 

 

 ガラスを砕き、転がりながらその部屋の中に侵入する。

 

 

 着地を決めた三人はガラスを払いながら、その侵入者らに警戒する愛ゾンビたちを一瞥する。

 

「白の時空間忍術、結構便利ねぇ……私の奴は制御が難しくてねぇ……」

 

「いえ、それほどでも……距離があると魔鏡の生成に手こずるのが難ですが、お二人が時間を稼いでくれたので問題がなかっただけですよ」

 

「目が虚ろな忍びの人たち……っ! 木ノ葉の暗部の方もいます、ここで間違いないようです」

 

 白とヒナタ、テンテンは戦闘態勢を取る。 そして白は集団の中玉座のようなモノの前で狼狽える人物を見据え声をかける。

 

「一人だけハッキリとした表情のそこの貴方、今回の失踪事件の犯人は貴方ですね……後ろの大掛かりなカラクリが例の精神攻撃に関りがあるのは間違いないでしょう……一応観念して投降するなら手荒な真似はしませんよ?」

 

 白が千本を指の間に構えて見せると、男は忍びの一人の体を盾にして隠れながら声を荒げる。

 

「てめぇらなんで正気で居られる……それでも忍びか!?」

 

 唐突なその言葉に

 

「いきなり失礼ねっ!? こちとら立派な木ノ葉の忍びよ!!」

 

 テンテンが言い返す。 男はその言葉を受け

 

「ありえねぇ……てめぇらみたいな不純な忍びは……俺が抱くまでもねぇ! お前ら、こいつらを好きしろ!」

 

 号令を出す。 その男の言葉を受け洗脳された愛ゾンビたちが一斉に三人に襲い掛かり始める。

 

「流石に数が多いですね、先ずは数を減らしましょう」

 

「了ー解っと! 第二休門……開!」

 

「白眼っ……!」

 

 広い部屋を十分に使った戦闘が始まる。

 

 大勢が一度に術や技を繰り出し、火遁や雷遁などが飛び交い部屋の中は混沌とかした。

 

 余りの混線具合と敵の数に白は仮面の下で口を歪ませる。

 

(いやぁこれは……思ったより厄介みたいですね……相手に怪我無く事を済ませることは出来なさそうでしょうか)

 

「氷遁・燕吹雪の術」

 

 白が高速で印を結ぶと、掲げた手のひらから幾多の燕状の氷弾が舞う。 着弾したそれは多数の敵を一度に凍らせるも敵の数が多いため、互いに凍った部分を砕いたり火遁で溶かされたりとフォローされてしまう。

 

「あわわわ、ちょっとォこの暗部の人強すぎないッ!?」

 

 テンテンが相手取る木の葉の暗部のくノ一は暗器使いで、多彩な殺傷武器をテンテン相手に差し向ける。

 

 クナイ、手鎌、鎖分銅etc.

 

 そんな相手でも殺すわけには行かないと棒術で応戦するテンテンは相手がかなりの手練れであることも幸いし苦戦を強いられていた。

 

 一方でヒナタは愛ゾンビとなった忍び達を的確に点穴を突くことでダウンさせていく。

 

(傀儡の術みたいに体を無理やり動かしているわけじゃないから柔拳が有効……なん……だけど、何だか私に対する視線が多い気がする……~~ッ!)

 

 ヒナタの豊満な体は、ほとんど意識のない彼らでも惹かれるものがあるのか3人のうちで一番数多くの敵を相手取ることとなってしまっていた。

 

 こうして苦戦はしつつも、木ノ葉の忍びらが健闘する中黒幕である男はこっそり機械式の箱の裏へと隠れていた。

 

(……なんて奴らだ……忍びなんて連中は色恋なんて無駄だと吐き捨ててるような奴ばかりだと思っていたのに……生ぬるいと噂の木ノ葉なんかにも依頼書を送ったのは間違いだったか……ッ)

 

 男が自分の行動を後悔する中、戦況は着実に白らに傾いていく。

 

(何故だ、クソクソッ!! ……もうこうなったら……リスクがでかいが最終手段を取るしかない……ッ)

 

 脂汗を掻きながらも男は目立たないように箱の正面へ這いずるようにと移動する。 混戦の中、玉座の脇に居た女性二人を壁にして男は箱の置かれた機械式の台座のパネルを操作し始める。

 

 その一方で白は戦闘の最中、愛ゾンビらの対処に手こずり、意識を元凶だと思われる機械式の箱の排除に向ける。

 

 瞬間一人の忍びに組み付かれながらも白が混線の中、箱を視界に捉える。

 

(……あの男……この状況で何を……? まさか……っ!?)

 

 その男の不穏な動きと、その動きから予想される事態を重く見た白は

 

「やめろぉ!!」

 

 男に向け叫ぶ。 瞬間、男は白の声に反応し、幾多の忍びの体の隙間からニヤつき下卑た顔を覗かせ……

 

「俺様の勝ちだ!!」

 

 勝利宣言をして、パネルのボタンを押す。

 

 瞬間箱の中に電流が走り、中の液体に浸っている女性がもがき苦しみ始め……

 

 

 

 

 

 

 

 感情の波が辺りを埋め尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、本当にお前は便利な道具だぁ……愛染」

 

 男が小窓越しに中にいる女性の名を呼び、振り向けば。

 

 

 

 

 部屋の中にいる人間はその男と白を覗き全員が床に倒れ伏していた。

 

「……ッ……ッ……///」

 

「ハッ……ウッ……ッ///」

 

 愛ゾンビらとなっていた忍び達と同じように床に倒れ、苦しそうにもがくテンテンとヒナタ。

 

 顔は紅潮し苦しそうだが、どこか恍惚としたその二人の表情を見て、白は仮面を落としてしまいながらも、何とか足を震わせつつ二本足で立ち男を睨む。

 

「……っう……ぐ……貴様……っ!」

 

「あ……あはははっ……仮面の下がこんな美人だったとは……それにまだ正気を保って居られるとは驚きだが……大人しく投降しろなんて余裕ぶってた美人の顔が苦しそうに歪むのは見ているだけで心地が良いなぁ!! まさにこれぞ、愛の勝利だァ!!!」

 

 男の言葉に白は自身を襲うどうしようもない幸福感に抗いながら口を開く。

 

「あ、愛の勝利だと……こんな有様のどこがだ……っ!!」

 

 白は床に転がる忍び達を示して声を荒げる。 しかし男は勝利を確信したのか

 

「その様子だと立つのもやっとだろう……良いだろう、貴様を俺の一番の奴隷として心と体を支配して、俺の全てを教えてやろう」

 

 余裕の表情を浮かべ白へと近づく。 

 

「っ! 近寄るな!!」

 

 白はそう叫び、腰のポーチから筒状の忍具を取り出すが、途端にガクッと体を揺らして床に転がる忍び達の海に手を着く。

 

「おっと……まだそこまで抵抗できるとはな……ならば近づくのは止しておこうか。 屈服するまでじっくりと俺の話を聞かせてやろう……」

 

 白の様子に男は地べたの忍びの体に腰かけ、口を開く。

 

「自己紹介がまだだったな? 俺様の名はダンビ……この湯の国の湯隠れの下忍だった者だ。 そう、昔の俺は力も術も弱く……虐げられてきた」

 

 ダンビと名乗った男は腰かけている忍びの顔を力任せに殴りつける。

 

「こう言った強い忍びの連中は……総じて俺のことをバカにしやがった……だがなぁ? 運は俺に味方したのさッ!」

 

 ダンビは掌で箱の中身の女性を示す。 白も釣られてその愛染と呼ばれていた女性に目を抜ければ、未だに電流により顔を苦痛に歪ませていた。

 

「……っ! これ以上悪戯に人を傷つけるな……ッ」

 

「お節介はよしてくれよ、これは俺の“愛”なのさ……ほら愛染も喜んでくれている」

 

 ダンビは立ち上がり、愛染の顔が見える小窓の前まで移動する。

 

「愛染は特別な血継限界を遺伝した……子供だった。 心に抱いた自身の感情を増幅させ周囲へばらまく……ゆえに彼女の周りには人が寄り付かなかった……一方的に感情を押し付け人格を粉々にしてくるこいつに好き好んで近づく奴なんていなかったのさ……俺以外はな」

 

 悠々と語る様子のダンビ。 白は何とか体を動かそうとするも、すでに身体には力が入らず、動悸や感情のコントロールがぶれてしまいチャクラをうまく練ることすら怪しい。

 

(……()()()()……を取るには、まだ早計か……ッだがこんな状態では最悪ヒナタさんやテンテンさんを巻き込んでしまう……今僕に出来ることは――)

 

 白は狂うほどの幸福感に正気を蝕まれながらも、耐えて黙ってダンビの話を聞く。

 

 勝ち誇っているダンビは、心底嬉しそうに語り続けた。

 

「俺は愛染を利用する算段を付けた……幸い血継限界を持って迫害される奴らは皆等しく人肌が恋しい存在……最初は愛染の自己嫌悪の感情を向けられ気が狂いそうだったが……まあ、色々甘い言葉をささやいて色々ヤッてやることでこいつの心を開いてやったのさ」

 

 ダンビが指を動かすジェスチャーをすることで、白は歯ぎしりをして彼を睨みつける。

 

「……ゲスがッ……!」

 

「何とでもいえ……そして愛染は俺に対しての“愛”という感情を周囲に振りまくようになった……愛染の力は感情を向けている本人には効果がなく、類似した感情を有する者には効能は薄くなる……だが問題はなかった……まさにこの現状がそれを証明している」

 

 ダンビが手を広げ、忍び達を見下ろす。

 

「こいつら強い忍びは、やれ任務だ、やれ修行だ……力を押し付けることばかりで、他者への愛情なんてものに見向きもしてこなった連中だ。 ……弱者の俺がこいつらに反旗を翻すには、見向きもされなかった愛情の力でこいつらを蹂躙するのが一番だと思った」

 

「ッそれで……彼女の、力に目を付けて……」

 

「その通りだ、そう言えばお前さんも血継限界を使ってたな? 類まれなる力を周囲に疎まれ迫害されて寂しかっただろう? これからは俺がそんなことを忘れさせてやるぐらいに愛してやるよ!」

 

「……お生憎さま……僕には……大切な人たちが居る……自分のことしか考えないお前と違って!! 他者を思いやることができる……そんな人たちが……ッ」

 

「だろうな、だからお前さんだけが愛染の力に対抗出来ている……何か特別な感情を持って抗って……だがそれももう直ぐ終わる」

 

 下卑た表情で白やテンテン、ヒナタを嘗め回すように見つめる。

 

「彼女は……何故お前なんかに協力し続けている!? ……こんな仕打ちを受けてまで……ッ」

 

 白の疑問にダンビは指をさして答える。

 

「いい質問だ! 答えは簡単……俺が彼女にとって……()()だからだ……薬を使い彼女の視覚、嗅覚、味覚、聴覚をじわじわと奪った……手足も奪い、それでもだが愛に盲目な愛染は俺を疑いもせずに愛し続けてくれたよwww ……そして聴覚が完全になくなる前に……こう甘く囁いたのさ」

 

 

 

 

「痛みを感じたらそれは俺からの最高の愛情表現だと思え……ってな」

 

 

 

 

「……そんな……ことを……っ!?」

 

 

 白は電流を受け続けている愛染を見て、顔を曇らせる。

 

「何もない暗闇の中で、痛みを感じた瞬間()()このメスガキは外と……俺との繋がりを確認できる……後は簡単だ。 生命維持装置に漬け込み、痛みを与える仕組みさえ用意すればこいつは……俺にとっての、最高の()()となる!!!!!!」

 

 恍惚とした表情を浮かべたダンビは仰々しく腕を広げポーズを決める。

 

(……僕は再不斬さんと出会い……っそして悟君に救われた……ッ。 今でも夢に見る……あの橋の上での戦いの後、僕が目を覚ました時に見た……傷だらけの再不斬さんに食事をスプーンで運んでくれていた悟君やナルト君達のとの和気あいあいとした雰囲気……あの時再不斬さんが完全に警戒を解いていた姿を見て……その瞬間、僕は救われたんだ……っ! なのに彼女は……ッ)

 

「ふざ……けるな、彼女は……()()なんかじゃない……絶対に……許さない……っ! 貴様の企みは……必ず……忍びとして……僕たちが……ッ」

 

 白は涙を流して、ダンビを睨みつける。

 

「無駄だ……幻術の基礎その一つ、相手が精神的に構えていない状態であること、又は抵抗力が低い状態でないといけないこと……愛染のおかげでいとも簡単にお前も、俺の拙い幻術で奴隷堕ちだ!」

 

 舌なめずりしながら近づいて来るダンビ。 白は目を閉じ集中する。

 

(ごめんなさい、テンテンさん、ヒナタさん……でもここでコイツを止めないとッ!!!!)

 

 周囲を巻き込んででもダンビを始末することを決心した白。 

 

 瞬間

 

「ガッハッ!?!?!?!?」

 

 ダンビが叫び声を挙げ吹き飛び、愛染を収めている箱へと叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさかっ!?」

  

 その状況に驚き困惑した白。 彼女が後ろを振り向けば

 

 

 

 

 

 

「――どんな状況か分からないけど、アイツが悪い奴ってことは簡単にわかるわ。 ね、赤丸」

 

「ワッフ!!」

 

 赤丸に跨る日向ハナビが掌底を構えそこにいた。

 

「ハナビ……っ!」

 

「白さん、何が起きてるんですか? 待機してたら歓楽街の一部の人たちが急に悶え始めて……キバさんとシノさんも同じく倒れ伏しちゃって……そしたらこの建物の屋根から赤い煙が出てるの見つけてから赤丸にここまで連れてきてもらったんだけど……」

 

 白は霞む意識に鞭打ち、ハナビに最低限の情報を伝える。

 

「あの……機械の箱を壊して……っ」

 

「っ! ……わかりました、行くよ赤丸!!」

 

「ワンっ!!!」

 

 ハナビの了承と共に赤丸が吠え、跳躍。 一飛びで箱の眼の前まで来た赤丸に跨るハナビが手に回転する円盤状のチャクラの鋸『八卦・鉄鋸輪虞(てっきょりんぐ)』を携え着地と共に切りかかろうとしたとき。

 

「させたまるかぁあああああっ!!」

 

 ダンビが決死の思いで宙に居るハナビと赤丸に体当たりをし体勢を崩させる。

 

「っキャッ!」

 

 赤丸から落ちたハナビだが、体勢を立て直し再度切りかかろうとしたときに異変が起きる。

 

 

 

 ダンビが呻き声を挙げ、悶え始めたのだ。

 

 

 

「はっ……? 一体どうなって……」

 

 ハナビが困惑した瞬間、辺りに倒れ伏していた忍び達が一斉に勢いよく立ち上がる。

 

「えっ……えっ……ホントどうなってるの!?」

 

 

 

 

 

 困惑するハナビが目前の箱の小窓を見ると

 

 

 

 

 

 中の液体は赤く変色し始め、少女は口元に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

『私は……化け物……知りたくもない人の感情に気づいてしまい……自分の負の感情をばら撒く不運の一族最後の末裔……』

 

『私の力は自身の感情をばら撒くだけじゃない、周囲の人間の感情を読み取ることも出来る』

 

『だからあの人が私を……本当は愛していなかったことも知っていた……でも体に与えられた快楽が些細なことを忘れさせてくれた』

 

『だからただの道具でもいい……ただ自分を必要としてくれる人がいる……どんなに他人から見て醜くてもその繋がりが私の唯一だから』

 

『なのに……』

 

 

 

 

 

『外を感じられない私に流れるこの感じたこともない暖かい感情は……何?』

 

『私に境遇を重ね同情している人がいる? ……あり得ない』

 

『でも……彼女の心の芯は……とても晴れやかで……明るくて笑顔に満ちている……雲が晴れた後の快晴の様に……』

 

『私のために怒り……悲しんでくれている……』

 

『私は……』

 

 

 

 

『誰かが近づいて来る』

 

『遠くからでも分かるほど……純粋で……濁りのない……これは?』

 

『これほどまでに透き通った……感情は感じたことがない……』

 

『周囲を辛さや悲しみに覆われていても……その芯は一切の曇りも見せない暖かな……』

  

 

 

『ああ、ああああ……これが……これが…………本当の……純粋で……純心な』

 

 

 

 “愛情”

 

 

 

『こんなにも誰かを思う素敵な心を感じたことは……一度もなかった……もっと……もっと早くに触れられていたら……』

 

『ううん……私は人を傷つけると分かっていたのに……自らその道具となった……救われてはいけない……』

 

『でも、もう力を制御できない……こんな素晴らしい感情を持つ彼女に迷惑をかけてしまう……それは嫌だ……』

 

『……ああでも……大丈夫そうね……だって』

 

 

 

『彼女には――――から……』

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 ハナビの目線の先の少女が最後に小さく口を動かすと、赤に染まった液体に覆われその姿は見えなくなる。 直後機械が稼働を止めたことに気がついたハナビは読唇術で知った少女の先ほどの言葉を思う。

 

(あ……り……がとう? 何が……というか)

 

 ふと冷静に周囲の状況を見てハナビは愕然とする。

 

 周囲の忍び達はまるでゾンビの様に立ち上がり、ハナビに目掛けゆっくりと歩みを進めていたからだ。

 

「姉様もテンテンさんも変になって……白さんこれってどうなって……って白さんも!?」

 

 ハナビの視線の先では、先ほどまで正気を保っていた白でさえ周囲の忍び達と同じように虚ろで恍惚とした表情を浮かべて歩んでいた。

 

 赤丸も気を失ってしまい倒れている中、一人……訳も分からず愛ゾンビたちの収束地点となったハナビ。

 

 

「~~~~っ! ……っ訳わかんないけど……やってやる……やってやるわよ……っ!」

 

 

 ハナビは白眼を発動し柔拳を構える。

 

「がぁあああああああああッ!!!!」

 

 瞬間、愛ゾンビたちが猛烈に駆け出しハナビを取って喰らおうとせんがごとく詰め寄り始める。

 

(ひいいいいいいいぃっ!?!?!?!?!)

 

 あまりにも衝撃的な光景に怯えるハナビが、真っ先に近づいてきたダンビに掌底を繰り出そうとしたその瞬間。

 

 その頭上の天井が抜け落ち、落下物がダンビを踏みつけ叩き潰す。

 

「ゴホッゴホッ……次から次へとなんなの……キャッ!?」

 

 腰辺りを何かが触れた感触にハナビが驚くと舞う埃による煙の中、目の前に人影が立つ。

 

「……っ誰……っ?」

 

 その人影が何者か確認できないハナビは困惑した。 しかし唸る愛ゾンビたちの声が響いたその時。

 

 煙が舞い、近づいて来ていた愛ゾンビたちが吹き飛ぶ。

 

 煙の中心にいた者の体術がそれを成し、煙を晴らしたことでその姿を晒す。

 

「貴方は……っ!?」

 

 その人物の姿にハナビは驚愕し腰に付けていたはずの蒼鳥マリエの……そして黙雷悟の仮面が無いことを確認する。

 

 歪んだ朱い雲の描かれた外套を纏い黒い髪をなびかせるその人物は

 

 

 

 

 

 何故かハナビの腰に付けていた仮面を被り、ハナビへ向け仮面の奥からその朱い両目の写輪眼を覗かせていたのであった……

 

 

 

 

 

 

 

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