「サスケ……」
地面が大きく陥没し、現れた大穴。
特徴的な紋様の床が崩れた天井の瓦礫で覆われそこには三人の人影が立っていた。 その三人を見下ろす人影。
見下ろす人影に向け思わず漏れ出た名を呼ぶ声に、名を呼ばれた男は極めて冷静に反応を示す。
「ナルトか……お前までいたのか」
数年ぶりの再会。 そのことに微塵も心を揺れ動かさないサスケ。 一方ナルトとサクラはかつての班員の姿を見て動悸が激しくなる。
二人と共にいる根の暗部の忍び、サイには目もくれずサスケは軽く周囲を見回す。
「お前らが居るということはカカシも……いや」
「カカシさんじゃなくて残念だったね、僕が代理だ。 これからカカシ班は君を木ノ葉に連れ帰る」
サスケの言葉に一歩遅れて姿を見せたヤマトが返事をする。
「カカシ班……か……フッ」
サスケは、自分の代わりのようなサイの存在、カカシの代わりのヤマトを一瞥して鼻で笑う。
「そいつが俺の穴埋めか? ……そいつは俺とナルトとの繋がりを守りたいだのと言っていたが、また随分とぬるい奴をいれたもんだな」
サスケのその言葉に、サイ以外の新生カカシ班の面々は驚きを露わにする。
「サイ……アンタ……っ!」
サイは『根』の命により、木ノ葉の障害となり得るであろううちはサスケの暗殺を企てていたと思っていたサクラ達。
サイは驚きの視線を受けながらも真っすぐとサスケを見つめ自分の考えを述べる。
「確かに僕はサスケ君の暗殺を命じられた……けど命令はもういい、今は自分の考えで動きたい。 自分の中の大切なモノを思い出すためにっ!」
サイの決意を固めた目を見て、サスケは目を伏せる。
「フンッ……自分の中の大切なモノ、か……それはそれは……思い出せるといいな」
サスケの思いがけないその言葉に、サイの眼が一瞬見開き──
「だが俺がそれに協力する理由は微塵もないがな」
刹那サイの真隣に現れたサスケの鋭い拳が、サイの腹部を抉り昏倒させる。
あまりにも一瞬の出来事に、ナルトとサクラ、ヤマトは小さく呻いたサイの声を聞くまでサスケの移動に気が付けないでいた。 倒れるサイの音を合図にするように三人はサスケを取り囲むように咄嗟に距離を取る。
「サイ……!」
ヤマトの心配する言葉にサスケは、顔を伏せ細目でサイを見つめたまま反応を示す。
「こいつは暗部の根の者だろう? さっきの言葉から、お前たちとは別の目的を持って動いていた……今更心配する必要もない」
サスケは腰に下げていた刀を素早く抜き空へと掲げる。
「……」
「サスケェやめろォ!」
無言でその刀を振り下ろそうとするサスケに、ナルトが叫びそれを合図に三人は一斉に駆けだす。
チャクラコントロールの怪力による瞬発力がサクラを一番にサスケの元へと届ける。
一切の迷いのないサクラの拳によるストレートがサスケの残像をかすめる。
「っ!?」
その瞬間僅かに電気の走る特徴的な音が鳴る。
「サクラ、後ろだ!!」
ヤマトはそう叫びながら印を結び木遁を掌から伸ばしてサスケへと仕向ける。 しかしサスケはその黒い眼による眼差しをヤマトへと向けると、サクラの背を蹴り態勢を崩させながら木遁の攻撃目掛けて駆けだす。
手に持った刀を逆手に持ち直し、その斬撃で木遁の柱を一直線に裂きながらヤマトに接近するサスケ。 ヤマトは豆腐の様に斬られる木の柱を確認すると、咄嗟に空いた手でクナイを構える。
「ッ!」
ヤマトのクナイとサスケの刀が接触した瞬間、鋭い金属音が鳴り響く。 斬撃を受け止めたかのように見えるヤマトのクナイだがよく見れば、その金属でできた刃に僅かに切れ込みが走る。 ギチギチと鳴る刃での押し合い、余裕そうに見えるサスケと打って変わってヤマトは額に汗を流す。
「……俺の刃が雷遁で強化されていることに気が付けたのは褒めてやろう……だが、ただチャクラを纏わせただけのクナイなど──」
サスケがさらに力を込めようとした瞬間、その体に影がかかる。
「……」
「螺旋丸!!」
ナルトの頭上からの奇襲、しかしサスケは冷静にチャクラをコントロールし刀の雷遁チャクラを身体へと還元、そのまま新たな術を行使する。
「千鳥流し!」
サスケの体を中心に空間を稲妻が走る。 特徴的な鳥の鳴くような音を響かせ、ヤマトとナルトはその術の範囲に居たことでそれをくらい痺れて態勢を崩してしまう。
「ぐっ!」
「ぐあっ!」
接近を試みていたサクラもその術に驚き咄嗟に後方へと距離を取る。
「全身から千鳥を……っ!」
サクラはそう呟きながらも、サスケの身体から迸る千鳥が収まりを見せると身を屈めて素早く再度接近する。
(サスケ君を……止めるっ!!)
そのサクラの加速を確認したサスケは瞳を朱く染める。
「まさか、お前を一番厄介に思う日が来るとはな……サクラ」
サクラはサスケの顔面目掛け、鋭い拳を放つもサスケはその動きを完全に見切り拳に触れる寸前で躱す。
反撃とばかりに振りかぶられた刀、しかしサクラはさらに一歩踏み込みサスケが刀を持つ左腕を右手で鷲掴みにして止める。
「もう、逃がさないっ!」
ギリギリとサスケの腕をへし折らんばかりの力で握るサクラ、サスケは右手で新たにクナイを構えサクラへと突きを繰り出すも
サクラの身体が霧のように霧散しその攻撃は空を切る。
「……ッフン……」
面白いモノでも見たかのように鼻で笑ったサスケは写輪眼を解き、おもむろに体を前に倒し地面に手を着くことで後ろ上方に向け蹴りを放つ。
何もない空間目掛けて繰り出された蹴りは、しかし何かを捕えたかのように大きな衝撃音を出す。
態勢を戻したサスケは、そのまま後方の地面を見下ろす。
「うちは一族の俺相手に幻術を狙うとはな……舐められたものだ」
するとその地面には鼻から血を流して地面に手を着いているサクラが揺らめくように姿を見せる。
「っ……」
「大方、俺が攻撃をかすめるように避けることを想定して手袋に幻術用の匂いでも付けていたのか……俺相手でなければ十分有効だろうが相手が悪かったな……サクラ」
サスケの言葉にサクラは蹴られたことで揺れた脳の影響にふらつきながらも立ち上がり拳を構える。
「っ私に出来ることなら……小細工でも何でもするわ……サスケ君」
視線をぶつけ合う二人、その刹那
サクラが崩れ落ちる。
「ガハッ!?」
腹部への唐突な衝撃に前のめりで倒れこむサクラ。 気がつけばいつの間にかサスケがその傍らに立っていた。
「逆に自分が幻術に掛けられていることも用心すると良い……その機会があればだがな」
呻くサクラは自分がどのタイミングで幻術に掛けられたかも分からず、どうにか起き上がろうと手に力を籠める。
(ッ写輪眼を見ないようにしていたのに……まさか何かしらの動作の機微だけで……っ?! ……早く起きないと!!)
もがくサクラにサスケはその背を踏みつけ動きを制限する。
小さく呻くサクラの様子にナルトが雷遁の痺れが残ったままだが駆け出し、サスケへと拳を突き出す。
しかしそのキレのない拳は悠々とサスケに手首を掴まれることで止められる。
「何で……何でだサスケェ!? 何でお前は里を……ッ」
「今更、その問答をしたことで意味がない……フッお前は成長していないようだなナルト」
見下すようなサスケの言葉と視線。
「何だと……っ!?」
「お前には火影になるとか言う……夢があるんじゃないのか? 俺を追い回す暇があったら修行の一つでもしてりゃ良かったのになぁ……」
「っ仲間一人救えねぇ奴が火影になんてなれるかよ、サスケェ!」
ナルトが開いた左手で拳を放つもそれもサスケに掌で受け止められる。
瞬間、ナルト後方の瓦礫が煙を上げナルトへ数人姿を現す。
(影分身を変化させて仕込んでいたか……だが)
サスケはそのナルトの一連の動きを読んでいたかのように淀みなく次の一手を打つ。
「っ!?」
まず、右手で受け止めたナルトの左手をチャクラを流し込み強制的に動かすことで術の印を組む。
大きく息を吸い、サスケは口から火球を複数繰り出した。
「鳳仙花!」
ナルトの後方から迫っていた影分身はその本体が影となっていたため、サスケから繰り出された曲がる軌道を見せる火球に全て打ち抜かれ姿を消す。
自身に放たれると空いた左手で顔を防いでいた本体のナルトは雷遁を纏ったサスケの突然の蹴りに対応できずに蹴り飛ばされてしまう。
瓦礫の山に背を埋めるようにぶつかったナルト。 そのナルトに対してサスケは言葉を向ける。
「仲間一人……か……フン。 差し詰め俺はお前が火影になるための功績の一つにでも数えられているのか……それとも、ただ抜け忍の俺を里に引き戻す身勝手を通すために火影の名を利用しているだけか……」
「ッ!? ……っ」
サスケの言葉にナルトは図星を付かれたかのように顔をそむける。
「……どちらにせよ、俺は誰かに救われる覚えはない。 俺は俺の成したいことを成すために、里を抜けた……ナルト、俺からすれば今のお前は見るに堪えないな。 かつて我愛羅の暴走を止めたお前の面影などまるでない……迷い、躊躇し、そのうえ力も弱い……そんな無様な姿では俺など関係なく火影なんてなれはしないだろうな」
サスケは冷たい表情をナルトからそらし、足元で呻くサクラに目線を向ける。
「……力とは目的を成す手段だ……その力自体に、善も悪もない。 その己の内なる妖狐の力も御せないのではまるで話にならない。 ……お前も繋がりを亡くせば、決意でも固まるか?」
そう言うとサスケは手に持つ刀を振り上げる。
「っやめろォ……サスケェ!!!」
未だ蹴りの雷遁の影響で痺れるナルトの叫びを無視するかのようにその刀は振り下ろされた──
そして一際大きな雷鳴がバチッと鳴り響く。
「ッ……何が……?」
頭上できらめく光に疑問を覚えたサクラが顔を挙げるとそこには……
「随分と荒っぽいじゃない♪ ……うちはサスケちゃん!」
雷遁のチャクラで出来た刀身を生やした尾異夢・叉辺流でサスケの刀を受け止めている天音小鳥の姿があった。
雷遁の刃の交わりは接触部位から青白いスパークをバチバチと発生させている。
「……天音、小鳥……!」
その名を呟き驚きを露わにするサクラ。 サスケは突然の乱入者に驚く様子もなく、そのまま斬撃を繰り返す。
二三度切り合い刀身をぶつけ合って火花を散らしたが、最後に天音の横ぶりを避けるようにサスケがサクラの上から飛び退く。
「……どこからか見ている奴がいるとは思ってはいたが……その外套の模様………………暁か?」
いささかハッキリと暁かどうか断定できない様子のサスケの問いに天音は胸を張りドヤ顔で答える。
「YES!! いかにもタコにも、私は暁の構成員見習い……天音小鳥!! 以下よろしくってね!!!!」
バカでかい声での名乗りに、起き上がったサクラは顔をゲンナリとさせ
「アンタ……生きてたのね……」
天音へと声をかける。 サクラ自身、天音と一度会っておりその時の行動から完全な敵だとは思えず、取りあえず自身の驚きを口にした。
……のだがその言葉に顔に『心外』といった表情を浮かべた天音は
「何!? 一度会ったことがあるからって、その馴れ馴れしい態度!! ナニ、彼女面!? 彼女面なの!!??」
ヒステリックに喚き散らし始めた。
「「「……」」」
あまりにも場違いなテンションの天音に周囲に微妙な雰囲気が漂う。
「あ~あ、た・ま・た・ま利害の一致で一度助けたことがあるからってすぐその気になられても私困っちゃうわ~~!!! でぇも私安い女じゃないからぁ、残念だけどお断り。 後方支援の医療忍者だからって後方彼女面しないでよねぇ~~!!!!」
「誰が彼女面だぁ!!?? 私はくノ一よっ!!」
切れたサクラが放った拳を天音は悠々と受け止め、喚き散らし続ける。
「くノ一だからってくノ一と恋愛しないとは限らないでしょ!?!?! 何、差別なの!?!?! 今どきの風潮知らないの、LGBT!!」
「さべっ……えるじー……??? ッアンタなに訳わかんないことを──」
「しかもこうやって直ぐに手を出すぅ……DVよDV!!」
「っ~~~~~~!!!!!!!」
阿保みたいに喚き散らす天音に、自身がサスケの凶刃から救われたことが抜け落ちたサクラは空いた手を大きく振りかぶる。
瞬間、天音は受け止めていたサクラの拳を引きその態勢を崩し転ばせながら尾異夢・叉辺流を自身の後方へと振るう。
いつの間にかサスケが切りつけてきていた刃と交わった刀身から、互いの顔を覗き合う天音とサスケ。
「……女子同士の会話にチャチャ入れるんじゃないわよ、男ならねぇ?」
「馬鹿みたいな茶番に付き合うほど俺も暇じゃない」
「
天音に下らない言葉を言わせないようにか、サスケが怒涛の連撃で天音を押し込んでいく。
「ちょ……まっ……何? 怒ってんの?」
軽口を叩きながらもサスケの草薙の剣の斬撃を全て尾異夢・叉辺流の刀身で受け流す天音。 そんな二人の動きは通常の忍びのそれを優に置き去りにするスピードであった。
一秒にも満たない瞬間に幾度のスパークが二人の間で煌めき、互いの大振りの一閃の衝撃で僅かに距離が離れる。
天音は楽しそうに笑みを浮かべるとその場に残影を残すほどのスピードで駆けだす。
いつの間にか写輪眼を発動していたサスケは、眼をぎょろぎょろと動かし周囲を翻弄する天音の動きを正確に追う。
「……」
天音の動きを観察するサスケは、印を結び術を行使する。
「火遁──」
「火遁・豪火球!」
瞬間、天音も同じ印を結び宙に舞いながらサスケ目掛け豪火球を放つ。
同時に同じ術を使い、空中で衝突した豪火球は爆炎を散らしながら弾けた。
術の反動で翻りながら、地面へと悠々と着地をして見せた天音にサスケはその写輪眼を向ける。
瞬間サスケが複数のチャクラ糸で身体を拘束される。
「豪火球に紛れ込ませていたか……」
天音の動きを読み解いたサスケの言葉を肯定するかの如く、左手の五指から伸ばしたチャクラ糸を締め上げ天音は印を結ぶ。
「火遁・龍火の術!」
天音のチャクラ糸をたどり、炎がサスケへと進行するがその瞬間サスケの身体を拘束しているチャクラ糸からも天音に向かい炎が走る。
互いの炎がぶつかった瞬間に小さくはない爆発が起き、チャクラ糸が弾け飛ぶ。
「拘束される前に龍火の印を結んでいたか……やるねぇ♪」
「……フン」
互いに余裕があるかのようなやり取り、睨み合いに移行し場が拮抗した今、サスケはこれまでの戦闘と観察の結果から天音を分析する。
(なるほどな……奴の体内のチャクラの動きを写輪眼で見切ることができないのは、どこかに結界忍術を仕込んでいるからか。 左眼に着けた片眼鏡、両手首両足首に付けている鉄輪はチャクラ刀などにも使われるチャクラを良く吸収する金属に類するモノ……体外へのチャクラの漏れを防ぐ目的だろうが同時にそれは放出系の術の威力を弱めることにもなるはずだ。 それでも先ほどの術の威力を見るに……ワザと手を抜くための拘束具と考えるのが妥当か。 身体強化、忍術……どれも俺と同等……に合わせに来ているとなると……)
「なるほどな、これが暁の実力か……面白い」
サスケがそう呟きニッと口角を上げる。
僅かな戦闘でも二人の実力の高さが窺い知れるために、気を失っているサイを除いたカカシ班は動きあぐねていた。
ヤマトも既にサスケの拘束は諦め、まずはこの場から如何にして全員で撤退するかを考え始めていた。 そんな時
「サスケ君!」
起き上がっていたサクラが天音と睨み合い隙を伺いあうサスケに声をかける。
「……」
返事をする気のないサスケに、サクラはお構いなく言葉を続ける。
「その暁は、悟の所在を知っているかもしれないの! それに──」
「悟の所在……だと? あいつは今木ノ葉にいないのか?」
悟の名が出ることでサスケの視線が僅かにサクラに逸れた瞬間、天音が駆けだす。 と同時に
「サスケに手ェだすんじゃねぇ!!」
ナルトが螺旋丸を天音に向け繰り出す。 不意打ちにも関わらず天音は視線をサスケに向けたまま、ナルトの螺旋丸を構えている手首を掴み強引に後方へと投げ飛ばす。
しかし
「行けナルト!」
ヤマトが咄嗟に木遁で作った足場を使いナルトは天音の後方で再度跳躍。
「喰らいやがれ!」
「チッしつこいなぁ!」
螺旋丸を押し付けようとするナルトに対し、今度は天音もナルトへと向き合いその掌をナルトの螺旋丸へと押し付けるように繰り出す。 瞬間チャクラがぶつかり合い拮抗する音が周囲を占めた。
天音もまた瞬時に片手で螺旋丸を形成し、ナルトのそれとぶつけていたのだ。
「何でてめぇが螺旋丸を……!?」
「チャクラコントロールさえできれば、印も無しに発動できる強力なこの術を覚えないのは効率的じゃないからねぇ!」
ナルトの驚愕する言葉に返す天音の返答。 ぶつかり合う螺旋丸が放つ衝撃波が近くにいたヤマトを吹き飛ばし、サスケとサクラもまたその場から離れその様子を伺いながら話を続ける。
「悟は……サスケ君が里を抜けたあの日に、消息不明になってるの。 サスケ君奪還任務に途中から参加していたって痕跡と証言はあるけど……額当てやあの仮面を残して、姿を消した……その悟の手がかりをあの暁のくノ一、天音小鳥が持っているかもしれない!」
「なるほどな……それを俺が知れば、あいつを倒すのに俺と協力できるかもしれないとサクラ……お前は思っているわけだ」
サスケの指摘にサクラは額に汗を浮かべながら黙って首を頷く。 上手い事暁を排除し、あわよくばサスケとも協力関係を築ければあの頃に戻れる手掛かりに……そんなサクラの思惑払拭するようにサスケは鼻で笑った。
「フッ……悟の奴が今どうしてようと俺の知ったことじゃない。 俺の邪魔立てをしなければそれはどうでもいいことだ……だがイタチに近づくためにあの暁は邪魔かもしれないな。 ──いいだろう」
サスケの思わぬ返事に、サクラが希望を見出した瞬間。 サスケは瞬神の術でナルト達を見下ろせる元居た位置へと移動する。
その場から写輪眼でカカシ班と天音小鳥を見下ろすサスケ。 その様子に気がついた天音はわずかだが視線を向けていた。
小さく息を吸い、サスケは言葉を放つ。
「全員、ここで潰れろ」
サスケが印を構え、左手を天へと掲げる──
「その術は止めておきなさい……サスケ君」
その瞬間気配もなく、まるでその場に初めからいたかのように自然な動きでサスケの左手を抑える大蛇丸が居た。
大蛇丸に目線を向けたサスケは
「放せ」
簡潔にそう言い放つ。
「あらあら口が悪いわねェ……」
大蛇丸が仕方ないといった口調で返すもその掲げたサスケの左手を抑える手の力は少しも緩まることはなかった。
サスケや大蛇丸の眼下で螺旋丸をぶつけ合っていたナルトと天音だが、ナルトが大蛇丸の出現に気を取られた隙に天音が体を側面に滑り込ませナルトの肘を空いた腕による肘打ちで叩き怯ませ、ヤマトに向け投げ飛ばした。
そのまま天音は黙ってサスケと大蛇丸を見上げ、ナルトもヤマトに受け止められつつもその二人を見上げる。
「っサスケェ! こっちに来い!! 大蛇丸はお前の体をとっちまおうとしてんだぞ!!」
ナルトの叫びに、サスケは舌打ちをしながら左手を降ろしナルトへと目線を向け言葉を返す。
「……それがどうした?」
「なっ!? そうれがどうしたって……そうなっちまったらお前は──」
「子どものままだな……ナルト」
憐れむかのようなサスケの目線に、ナルトは汗を垂らし黙り込む。
「俺の目的のためには……力が必要だ。 イタチを相手に今の俺も、大蛇丸も勝つことは難しいだろう……大蛇丸が俺の身体を狙っていることは知っている、だが逆に俺が大蛇丸から戦いの経験、術、知識を得ようとしていることもこいつは知っている。 俺たちは互いに目的のために利用し合う関係だ、自分の目的への意思もあやふやで弱いままのお前と仲良しごっこをしている暇は俺にはない」
吐き捨てるようなサスケの言葉に、言葉を詰まらせるナルト。 天音は、目線をナルトへと向ける。
(反論なし……か、そんな気はしてたけど……
そんな天音の視線にナルトは気がつくこともなく、歯を食いしばるだけであった。
しかし
「サスケ君の目的がうちはイタチなら私たちも協力できる! 里の皆だって、事情を知れば──」
ならばとサクラがサスケの説得に掛かる。 が
「笑わせるな、今の木ノ葉の里の奴らに何ができる? 精々イタチの写輪眼の前に幻術に堕ちて邪魔になるだけだ」
サスケの指摘にサクラは目線を逸らす。 実際、我愛羅奪還任務中、本気ではないであろうイタチの分身体に指の動きだけで幻術に掛けられたナルトを見ていたサクラはその可能性を否定できない。 それほどまでにうちはイタチとは強大な存在である。
言葉を詰まらせるナルトとサクラの様子に呆れ、サスケが目線を天音に向ける。
「おいそこの暁、天音とか言ったか、一応聞くがうちはイタチについて知っていることがあれば吐け」
突然睨まれ質問を投げつけられた天音は口笛を吹く素振りで顔を逸らす。
「お~怖い怖い、悪いけど私はイタチ先輩と直接会ったことはないので何も教えれませーん♪」
とぼける天音に、サスケの脇に立つ大蛇丸が興味深いモノでも見る目を向ける。
「あら……っ! そこの粗末な外套を羽織る子、暁なの……随分とユニークな柄をしてまぁ……芸術好きのあの2人が嫌いそうな出来栄えねェ……思えば組織に属してた頃が随分と懐かしいわァ……」
「……ひっど~い、初対面の人の外套を粗末というのは奇人変人関係なく失礼じゃない?」
「フフフ、例え初対面でなくとも人を奇人変人呼ばわりするのは失礼よ」
大蛇丸と軽口でやり取りする天音。 大蛇丸の隣にいるサスケは(奇人変人は比喩でも何でもなく紛うことなき事実だと思うがな)と敵である天音に内心同意を示していた。
「アンタ、ゲロゲロと色々口から吐くじゃない……紛うことなき奇人変人よ」
「!……フッ……」
「……サスケ君、今貴方……」
「……黙れ何でもないッ」
突然天音がサスケの同意をくみ取るかのような返しをしたため、思わず口元を緩ませたサスケに対して大蛇丸はジト目を向ける。
するとそこに
「こらこら……大蛇丸様に向かってまたそんな口の利き方を──」
「カブトか……相変わらず口うるさい奴だ」
「っ……僕の方が兄弟子だというのに……まあいいや、大蛇丸様そろそろ……」
カブトが現われ、撤退を大蛇丸に進言する。
「ええそうねぇ……ここのアジトももう用済みだし、そろそろお暇するとしましょうか……」
この場に留まることがめんどくさそうだという雰囲気を醸し出し始めた大蛇丸。 天音は
「あ~あ裏切者の首でも持って帰れば、リーダーが喜んでくれると思ってここまで来てみたけど無駄足だったかぁ……」
ワザとらしくそう告げると撤退する大蛇丸たちに見切りをつけ、一足先にその場から飛び去っていった。
それと同時に、大蛇丸、サスケ、カブトは自身を炎で焼くような忍術で姿を消し始める。
揺らめき姿を消すサスケ。 ナルトが揺らぐ瞳でサスケを見つめると、サスケは最後に鼻で笑い
「精々足掻くんだな、ウスラトンカチ」
そう言葉を残し、その場から姿を消したのであった。
残された新生カカシ班には、己らの力の足りなさが心へと刻まれていた……。
~~~~~~
雲の上へと移動し、空を飛ぶ天音。 独り彼女は今後の展開を予想する。
(……サスケの様子も確認できたしここでの目的も達成……となるとそろそろ雲隠れの二位ユギトの二尾・猫又、三尾の磯撫が暁に捕まる時期か……一応ユギトには
「……やれやれ忙しくなりそうだ」
自身の予想で、多忙になることを予期した天音はため息を付きながら空を高速で翔けた。
~~~~~~
「天音小鳥……ねぇ……随分と面白いことになっているじゃない……サスケ君が居なければあの子を手に入れておいても良かったかもしれないわ」
「大蛇丸様、どうかしましたか?」
ナルト達の前から姿を消し、次のアジトへと向かう大蛇丸一行。 ふと天音小鳥の存在を思い漏らした独り言にカブトが反応を示す。
「フフフ、カブト……あの天音とかいう子とはお前は戦わない方が良いかもしれないわねぇ……色々な意味で、貴方の嫌いなタイプよあの子」
「はぁ……? そうですか……(なんで大蛇丸様はそんなことわざわざ言うんだ……?)」
大蛇丸の唐突な指示に疑問符を浮かべるカブト。 その様子を見ていたサスケは
「オイ、カブト無駄口叩いてないでサッサと次のアジトまで案内しろ」
只の移動時間にイライラを募り始めていた。
「無駄ッ……てサスケ君、君ィ……ホント気に食わないなぁ、ハァ……僕としては断然サスケ君の方が嫌いですよ大蛇丸様」
「ホントにそうかしら……?」
「……んん?」
含みのある大蛇丸の物言いに、疑問を感じつつもカブトは弟弟子に急かされ次なるアジトへと急ぐのであった。