目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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13:NEWボス

 ひどい頭痛に眩暈。 目を覚ました猿飛アスマは、あまりの自分の体調の悪さに一瞬で心が折れそうになるも覚醒した意識を失わないように精神的に何とか踏みとどまり意識を保つよう努める。

 

(ッここは……俺は一体どうなって……確か)

 

 身体にむち打ち、何とか周囲を見渡すと自身がベッドに寝かされ、急ごしらえで場違いのような点滴が腕に着けられているのがわかる。 点滴が似合わない部屋の内装はごく一般的な「普通の家」といった感じで逆に今の何も分からないアスマにとっては不気味な場所にも映る。 現状に心当たりのないアスマは自身の割れそうな痛みを主張する頭を使い、自身の記憶を何とか掘り起こす。 

 

 ──思い出されるのは教え子の悲痛な表情であった。

 

「ッシカマル……!」

 

 居ても立っても居られずベッドから起き上ろうとするアスマだが、途端に体の違和感に気がつく。

 

 頭から腰付近までの腕やら背中やらが、激痛に苛まれている中……両脚には一切の痛みが無いことに。

 

(……っ! まさか……ッ)

 

 朧気ながらに誰かが自身を治療しているような、逆に体をバラすなどと不穏な言葉をのたまうような狂気的な会話を僅かに思い出したアスマ。

 

 彼は嫌な予感に脂汗を浮かべ、恐る恐る自身に掛けられた薄い白い掛け布団をめくり下半身の存在を確認する。

 

「っ……在る……か」

 

 アスマの視界には確かに自身の脚が映っていた。 まさか切断して体の一部が売りさばかれるなどと狂気的な──

 

 しかしふと違和感がアスマの意識に語りかけてくる……自身の身体の異常を。

 

 確かにそこの在るはずの両脚、しかしその脚はアスマの意思を微塵も反映することなく、逆に何か反応を返すこともないこと……。

 

「……~~~~ッッッ」

 

 忍びとして、あってはならない重症……顔に脂汗が浮かび、表情も冷静さを保てず、その事実はアスマの精神を折りに掛かる。 ふとその時──

 

 

 

「目覚めたか」

 

 

 

 視線を下げていたアスマに不意に声がかかる。

 

 驚き、声のした方に顔を向ければそこには黒い仮面を着けた忍びが部屋の扉にもたれ掛かり立っていた。

 

「……お前は……誰だ……っ?」

 

 酷い痛みと、逆に痛みが一切ないという事実に打ちのめされそうなアスマにその忍びは語りかける。

 

「俺は……いや俺のことは後回しだ。 猿飛アスマ、お前にはこれからの身の振り方を教えよう」

 

「身の振り方だと……? 俺は……俺は木ノ葉の忍びだっ!! 例え、どんなことが在ろうと木ノ葉を裏切るつもりなど──」

 

「早とちりするな、これはお前にとっても悪くない話だ。 ……本来であればお前は既に死んでいる身なのだからな」

 

 その忍びの言葉に、アスマは自身が飛段の呪術により重傷を負っていたことをフラッシュバックのように思い出す。

 

 腹部に刺さった巨大な鎌は背まで貫通していた。 それだけでも十分致命傷だが、その上追い打ちの如く心臓への刺突が待っていたはずのアスマの身体。

 

「……自身がどれだけの窮地から生還したのかを自覚したか? であればまずは大人しく俺の話を聞いてもらおう」

 

 どんな形であれ、自分は治療されここにいる。 その事実にアスマは、男の話を聞いてからでも遅くないと深呼吸をして何とか気を落ち着かせる。

 

「……わかった……わかったよ、お前が俺を殺す気ならそれがとうになされていることもな……話を……聞かせてくれ」

 

 アスマの言葉に、仮面の男はその瞳を一度伏せ再度開きながら語り始める。

 

「最初に言うが、お前を実質助けたのはお前も知っているであろう、現在暁に潜入している俺の仲間の天音小鳥だ。 お前達……というより忍界にとってテロリストであり敵でもある暁に、天音は目的を持って潜入している……しかしだ、アスマ、お前を無理に助けたことで天音は間違いなく組織から疑惑の目を向けられた。 今奴はお前を換金するという嘘を通すために、仲間と共に必死にお前の裏の懸賞金の倍の額、7千万両をかき集めている……」

 

「天音小鳥が……そんなことを……?」

 

「敵だと思っていた奴の話をすんなりと信じろとは言わない、だがお前を助けるためにそれなりの苦労を背負ったことも知って欲しい……そしてその代償という訳ではないがお前には()()()()を遂行してもらおうと思っている」

 

「……どんな役割だ?」

 

 突然男はアスマに近寄り、その体を抱きかかえる。 流石にアスマもその行動を拒否したくなるが、身体が自由に動かせない以上なされるがまま、男に部屋のベランダまで移動させられる。

 

 そうとう高い位置の部屋のベランダから階下をアスマが望めば、木製の家屋が幾つか立ち並びそこに暮らす人々の様子が見て取れた。

 

「ここはどこなんだ……? 俺に一体何をさせようと──」

 

「ここはまだ、ただの集落だ。 アスマ、お前はここに属する忍び……未満の者たちの教育係となって欲しい」

 

 男の提案にアスマは目を見開く。

 

「教育係だと……? 俺がわざわざ訳も分からねぇとこの組織だかの戦力をわざわざ向上させる真似をするとでも思うのか?」

 

 アスマの必死に強がる口調の言葉に、男は仕方ないといった様子で小さく息を吐き、アスマの身体をベッドへと戻す。

 

「……ならこの集落についてお前に知ってもらおう」

 

 男は説明口調で話を続けた。

 

「ここは大蛇丸のアジトの一つだった場所だ。 人体実験を主に行い、呪印……と呼ばれるモノの研究が行われていた。 ……2年以上前、俺と天音はうちはサスケが大蛇丸の元に行ったことで殆ど放置同然となっていたこのアジトに目をつけ……ここを力づくで奪い取り、今の集落の形にした」

 

「……随分と情報量の多いことで」

 

「ふふ、そうだろうな。 ……まあ、つまりここにいる者たちは元大蛇丸たちの実験台、または周囲の集落や村に居られなくなった爪弾き者たちばかりだということだ。 そして天音は、ここの者たちで特に戦える能力を持つ者に他里の任務や担い手の居ない任務を与え、力をつけさせている。 その理由は……」

 

「……」

 

 

 

 

「今後起こる、()()()()()()()……そこでの忍び連合軍側に少しでも助力するためだ」

 

 

 

 

「……オイオイ、寝ぼけたことを言うな。 第四次忍界大戦だと? 忍び連合軍? そんな──」

 

「今は信じられなくてもいい、何故ならこれは未来の話だ。 そこでは五影が協力し、多くの忍びがとある戦力と戦うことになる。 その時、出来る限り被害を抑えるために天音はここを作った」

 

「へっ……未来が分かるとでもいうのか? 到底信じられるものでもないッ馬鹿にするなら──」

 

「少なくとも俺はアイツが未来を知っているということを信じられる事象を目の当たりにしてきた……先にも言ったがお前もすぐに信じる必要はない、だが少なくとも天音が金を暁に渡すまであと3日はある。 それまでにはお前にもあらかたの覚悟を決めて貰おうとは思っている」

 

 ここまで男はアスマに有無を言わさずに情報を与え続けた。 そんな彼の真剣な様子にアスマも口を閉じる。

 

 男は小さくため息をして話題を変える。

 

「……木ノ葉の里で天音は、お前を連れ去り実質殺したことになっている。 既にビンゴブックでも一等級の扱いだそうだ。 ……まあ、逆にお前の生存が世間にバレれば問答無用で暁と敵対することになるだろう……つまり天音の目的が達成できなくなり……ひいては夕日紅の身の保証もできなくなる」

 

 男の口から出た名前にアスマは血相を変える。 しかし男はそうなることも分かっているように問答無用で言葉を続ける。

 

「別に人質とかそういう話じゃない。 天音は今木ノ葉に降りかかる、()()()()()をも退受けようと奮闘しているがその時に守れなくなる可能性が出るという話だ……しかし起きることを分かっていても奴曰く『正確な時期』までは分からないそうだが……だからこそ──」

 

「奴は暁に潜入しその時期とやらを特定しようとしている……てことか?」

 

「……そのとおりだ察しが良くて助かる。 その事件が木ノ葉で起きる都合上、ここで動けるのは少なくとも俺と天音だけとなる……お前には歯がゆい思いをさせるがここで待っていて欲しい」

 

 妙に親身になって話をする男の様子にアスマは疑問を抱く。

 

「てめぇは何故それだけの情報を持っている……? 天音って奴は何故未来とやらを知り行動できる? お前たちは一体何なんだっ……?」

 

 情報量に混乱するアスマの口から率直な疑問が漏れ出る。 男は組んでいてた手を解きその疑問に答える。

 

「天音については何も言えない。 アイツが何者であるかは、ここの集落でも俺ともう一人しか知らないが……と言っても俺たちも全てを知っているわけでもないのだろう……だが俺については教えてやろう、猿飛アスマ。 俺がお前の説得役に選ばれている意味も理解できるだろうからな」

 

 男はアスマの正面へと立ちその身に着けている黒い仮面に手を掛ける。

 

「……本来であればお前を助けること、その行動はあまりにも俺たちにとってリスクが高いことだ。 それでも天音が必死になってお前を助けたのは……アイツの性分もあるだろうがもう一つ、大きな理由がある……」

 

 男は自身の被る黒い仮面を外し、その顔を晒す。

 

 

 

 

 

「なによりも……俺が……()()()()だからだ」

 

 

 

 

 

 男のその言葉に、その顔に、アスマは顔を驚愕の表情染める。 口が半開きになったアスマは

 

「キョウ……マ……っ?」

 

 思わずその男の名を口から漏らす。 名を呼ばれた男は懐からもう一つの仮面……木ノ葉の暗部の仮面を取り出し、アスマに見せる。

 

「そうだ、俺は()()()()()()……三代目火影猿飛ヒルゼン……親父の『二本の右腕』と称された忍びの一人……お前も良く知っていることだろうがな」

 

「なっ……なんでッ……どうしてだっ……!?」

 

 キョウマと名乗った男の顔はアスマに似ており、傍から見ても親族であることは一目瞭然の顔立ちをしていた。

 

 キョウマは暗部の仮面に視線を落とし自身の思いを語り始める。

 

「木ノ葉崩しのあの日……親父を看取ったあの瞬間から、俺は木ノ葉の暗部としてではなく一人の人間として動くことを心に誓ったんだ……そして()()1()()()()()……俺の妻は情報提供者として暗部に留まってくれている」

 

 口をパクパクさせ、驚きで言葉が出ない様子のアスマにキョウマはそのそっくりな顔で苦笑いを浮かべる。

 

「妻の部下のクソ真面目なくノ一が以前、湯の国で消息を断った時は俺も個人的に動いたりして互いに助け合っている。 win-winな関係という奴だが……まあ唯一心残りがあるとすれば、木ノ葉丸のことだ……俺と妻はお前も知っての通り書類上は死んでいる扱いだ……だからこそ、直接会えずさらに見守れない以上親として俺は外から里を守ることを選んだ」

 

 キョウマの言葉にアスマはしみじみと言葉を口から漏らし始める。

 

「兄貴……アンタとは……俺が担当上忍になることを決めたあの日に目を合わせた以来……だったか。 俺はアンタの事が嫌いだったよ……アンタは親父の言うことを何でも素直に聞いてまるで自分の意思がないように見えた……だからこそ、まさかこんなことになっているとは……な」

 

「ふふ、それはお互い様と言う奴だろう……俺としては逆に親父に反抗的だったお前が嫌いだったが……だがまあ……お前が『火の意志』を教え子たちにしっかりと伝えらている様はお前を助けた時にこの眼で見て、教え子たちから確かに感じ取った……まあ、彼らに不意打ちで()()()()()を掛けたのは少し申し訳なく思うが……」

 

 頬をぽりぽりかくキョウマ。 アスマは乾いた笑いを部屋に響かせる。

 

「なんつーことだ……本当に。 まさか自分の兄貴が里を抜けて……あまつさえこんなことをしているなんて……」

 

「だがそのおかげでお前を死の運命から助けることが出来た……それだけで十分おつりがくるさ」

 

 そこで会話が途切れ、互いになんとも言えない雰囲気が広がり始めた瞬間。

 

 

 部屋の扉が大きな音を立てて開いた。

 

 

「つっかれた~~~~~!!!!」

 

 扉から飛び出てきた天音は部屋の床へとうつ伏せに飛び込んで倒れこむ。

 

 バタンと音がし、扉が開かれた反動で音を軋ませつつ自動で閉じる音が部屋に響く。

 

「……お帰り、天音」

 

 何とも言えない様子のキョウマの言葉に、天音がハッと顔を挙げる。

 

「おう、ただい……って仮面取ってる!? ってアスマさんも何でここに、っていつの間にか起きてるじゃん!? ってそっか私の部屋で寝かせるってアガリが言ってたっけか……」

 

 びっくり、さらにびっくり、そして落ち着く。 三段の感情の変化を見せた天音にアスマは思わず笑いをこらえられずに漏らす。

 

 その様子に天音は

 

「……あ~……なるほど、キョウマさんちゃんと話したんですね」

 

 ある程度宇野状況を察して立ち上がり膝についた埃を払いながらキョウマと向き合う。

 

「ああ、お陰様でな」

 

 キョウマの言葉に天音は笑顔を見せる。 その様子を見ていたアスマは

 

「お前が天音小鳥か……直接会うのは初めてか、どうやら……色々と世話になったらしいな」

 

 素直に感謝の言葉を述べる。 天音はその様子に驚き

 

「ええ、思ったよりも友好的……え~と……キョウマさん、どこまで事情話しました?」

 

 キョウマに恐る恐る確認を取る。

 

「一応一通り俺のことは話した。 教育係の件もな」

 

 キョウマの言葉に、天音は「そうですか」と嬉しそうな、優しい表情を浮かべる。

 

 その様子を見ていたアスマはキョウマに声をかける。

 

「キョウマ、その件だが……引き受けよう。 どうやら里に戻れない俺が今、出来ることはそれぐらいしかなさそうだからな」

 

 アスマのその言葉に、天音は二人の間に体を入れアスマの顔を見つめる。

 

「……少なくとも暫くは木ノ葉の里にも帰れないし、貴方の生存を紅さんに報告することも出来ませんが……良いですか?」

 

 心配するような天音の言葉に

 

「ああ……あの兄貴がお前を信用しているんだ……悪い話でもなさそうだしな……それに脚の動かなくなった俺にはそれぐらいしかできない」

 

 アスマは自身の脚をさすりながら答える。 そのアスマの動作に天音は

 

「すみません、もう少し早く助けに入れていればそこまでの重傷を負わずに済んだのに……」

 

 落ち込んだ様子を見せる。

 

「……生きているだけでも儲けもんさ……少なくともまた生きて紅に会える可能性が僅かにでもあるんだ、それこそお前は見ず知らずの俺を助けたことで色々と立場が危うくなっているんだろう? それは大丈夫なのか?」

 

 若い天音が奮闘しているという事実にアスマは、先日まで敵だと思っていた彼女に心配の眼を向ける。

 

 天音はアスマが自分を心配する様子のアスマに、笑顔を見せ答える。

 

「……流石に木ノ葉からは指名手配されましたが、まあ何とかなりそうです。 キョウマさんの奥さんから一部の忍びのみが今回の件を共有していることは聞いたので、事実が判明しないうちは私は生け捕りか情報を吐かせる扱いでしょうし……暁の方も後3日ぐらいは猶予があるんでそれもなんとか」

 

 それなりに苦労をしているのだろう、天音は隠しきれない疲れを隠そうとしている。 それに気がついてしまうアスマがなんとも言えない表情を浮かべると天音は

 

「っと……折角兄弟そろってるんです。 積もる話もあるでしょうし、私はもう行きますね。 詳しい話は後でアガリ……私の仲間がしてくれますから、今は体調を回復させることに専念してくださいね……では」

 

 丁寧に頭を下げ、部屋から退出していった。

 

 天音の様子にアスマは

 

「……里で聞いていたよりも、随分と大人しい印象を受けるな……もっとうるさい奴だと情報が出回っていたが……」

 

 天音に対しての印象の齟齬に微妙な表情を作る。 キョウマは仕方ないといった様子で

 

「アイツは、本人曰く元来心配性らしい……16歳ばかりの子どもが良くやっていると俺は思うよ」

 

 大人として天音を気遣う素振りを見せる。

 

「……シカマルたちと同い年って奴か……本当に忍界には色々な奴がいると痛感させられるぜ……」

 

 アスマは奇妙なことになった自身の待遇も踏まえて、現状の異質さになれるように努めようと思う。

 

 ……その後数年ぶりに顔を見合わせ再開した兄弟は、夜が更けるまで互いの胸の内を話し合うのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 天音はアスマたちの居る部屋から退室するとそのまま、アガリが居るであろう資料室まで移動する。

 

「アガリ、居る?」

 

 扉を開けながらそう呼びかけた天音は部屋の中で机に突っ伏し資料に顔を埋めるアガリを見つけた。

 

「……大変そうだね……」

 

 天音の心配するような声に、アガリは飛びあがりながら答える。

 

「さ、サトリ様!? すみません、つい……」

 

「いいよいいよ……ここ数日皆動きっぱなしだしね……それでアガリ、アンタだけに伝えておきたいことがあるんだけど……今良い?」

 

 天音の真剣な様子に、口元の涎を拭いたアガリは姿勢を正す。

 

「大丈夫です、なんなりと!」

 

「ははは……そう、じゃあ今後の事についてだけど……」

 

 相変わらずのアガリの様子に、仕方ないと天音は苦笑いを浮かべつつも話をし始めた。

 

「恐らくだけど、あと3日後ぐらいかな……暁の動き次第だけど私はここには(集落には)簡単に戻って来れなくなると思う。 見習い扱いでほっとかれることももうないだろうからね……そうなった時は、()()()……頼んだよ」

 

「っ……そ、そのことですか……俺にはやはり……荷が……ッ」

 

「心配しないで、アガリの事はちゃんと皆が認めている。 それにどうやらアスマさんも協力的みたいだし、何とかなるよ……大丈夫、上手く行くから」

 

 何かにプレッシャーを感じているのか青ざめた表情をするアガリの肩に手を置きサトリは会話を続ける。

 

「しばらくしたら、私は……天音小鳥は世界の敵になる……そうなった時……迷惑をかけないようにここでは初めから『サトリ』と名乗ってきたんだ。 ……まあ、今回の件が何とかなったら私も一度は顔は出すつもりだし、その時に改めて皆には挨拶するつもり……皆の事頼んだよ」

 

「っ……ハイ……サトリ様……グスッ……任せてくださいっ! 俺は必ずやサトリ様の……ごきたいにぃ……グス」

 

「もう……泣かないでよ、年上の男を励ます趣味は私にはないぞ?」

 

「はいぃ……」

 

 書類室から聞こえる泣き声と、困った様子の笑い声。 扉の外にいたゼンゾウは小さく微笑み、静かに扉のドアノブに調理した間食をぶら下げその場から去っていった。

 

 ……その日、天音は集落に必要な金を残して一人で出発した。 その後天音のために集落の外に出稼ぎに出ていた者も、帰還するよう連絡が周り皆が集落へと集う。

 

 それから3日ほど、集落では皆が慌ただしかった数日の疲れを癒すかのように過ごしたのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

(二年半か……アガリ達とも、長い付き合いになったもんだ)

 

 天音は麻袋を抱え、空を翔ける。

 

 その中には約7日でかき集めた金と自身が貯蓄していた金、集落から持ち出せる限りの貯蓄を合わせた約7千万両にもなる金額が収められていた。

 

 集落の仲間たちが何も言わず自分のために金を集めてくれたことに天音は、僅かにその瞳に涙を浮かべた。

 

(……そろそろ又旅と磯撫の封印が終わってしまうころか……そうなれば角都と飛段も動き始める、先に私の方から見つけた方が何かと都合が良いな……)

 

 天音は木ノ葉の国境沿いにある、枯れた大木が立ち並ぶ地域の上空へと来る。

 

 天音が瞳を閉じ、ヒザシの白眼を使い周囲を感知するととある2人組を見つける。

 

「ビンゴ……」

 

 そう呟いた天音は空からその2人目掛けて近づいていく。

 

 少し気がつけば、その2人、飛段と角都は天音に気がつき顔を向け振り向く。

 

「おう、鬱陶しい嬢ちゃんそっちから来るたぁ殊勝な心掛けだな」

 

 ニヤニヤした様子の飛段は軽く手を振りながら天音に言葉をかける。

 

「いやぁ~~飛段先輩、見てくださいよこのお金!! 随分と高く換金できましたぁ♪」

 

 テンション高めに、地面へと降りたった天音は自身が持つ麻袋を飛段へと渡そうとする。

 

 すると横から角都が乱暴にその袋を奪い去り、中身を覗く。

 

「ちょっ……酷い! 丁寧に扱ってくださいよ! 大金ですよ、大金!!」

 

「黙れ……ふむ、どうやら本当に約7千万両を持ってきたようだな、褒めてやる」

 

 角都は袋の中身が、少なくとも天音が豪語した金額に近い量があることを確認しその袋を地面へと置く。

 

「どうです? 私の働きに感謝してくださいよぉ?」

 

 どや顔をする天音に、角都は小さく笑いながら口を開く。

 

「クックック……小娘、どうやらお前は噓を付かなかったようだが……俺のプライドを傷つけてしまったな」

 

「は? プライド?」

 

 天音が「何言ってんだこいつ」って様子の顔をして飛段に説明を求めようとすると既に飛段は少し離れた木の根元に移動し腰を下ろし始めていた。

 

「せいぜい頑張れよォ嬢ちゃんよォ……俺は興味がねぇから寝てるわ、済んだら起こせよ角都」

 

 テンション低めの飛段が木の陰から手だけ振り、木の根元に体を預け寝息を立てはじめる。

 

「……一体どう──グッ!?」

 

 疑問を口にした天音は瞬間、途轍もない力で首を絞められた。

 

 気がつけば、地面から足が離れ宙に浮いている。 天音は角都の触手のように伸びた右腕に首を掴まれて持ち上げられていたのだ。

 

 足をパタパタと振る天音に角都は

 

「……お前は俺の機嫌を損ねた。 だから殺す。 既にリーダーからもお前を殺して良いと許可は出ている……まあ、正確には私闘の許可だが変わりない……金が無ければ裏切り者として殺し、そうでなければ俺をイラつかせた罪で殺す。 お前の運命はどうあがいてもここで俺に殺されることだと決まっていたのだ」

 

 覆面の下の口を歪ませそう言葉を投げかける。

 

「……っ!」

 

 天音は自身の首を絞める腕を振りほどこうと両手で掴む。 しかしその首を絞める腕の強さは凄まじく、次第に天音の首へと指がめり込み始める。

 

「ガっ……!」

 

「喜べ、お前はそれになりに強いことは一応知っているからな……だからこそお前の体は俺が有効活用してやろう」

 

 角都がそう言うと、手により一層強い力を籠め──

 

 

 

 

 何かが砕ける音が辺りに響いた。

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

「ガー……スピーッ……うが?」

 

「おい起きろ飛段」

 

 寝息を立てていた飛段は低い声にどやされ目を覚ます。

 

「うお……? 角都かぁ……終わったか、ふあぁぁあ……クッ~」

 

 大きな欠伸をして飛段が目を見開き辺りの光景を見渡す。

 

 辺りには地面が濡れた様子、燃える木々、焦げ付いた岩肌、散乱する瓦礫、辺りに広がる切り傷のような跡が散見していた。

 

「随分とハデにやったなぁ角都よ……んで阿保馬鹿嬢ちゃんはどんな死に様だったんだ?」

 

 目じりに浮かべた涙を外套の袖で拭く飛段が背を向けていた角都に体を向けると

 

 

 角都は煙を上げ姿を消す。

 

 

「ハ?」

 

 思わず素っ頓狂な声を挙げた飛段。 その彼の肩にポンポンと軽い衝撃が走り、飛段が驚きそちらに振り向くと──

 

 その頬に人差し指が突き刺さる。

 

「誰が阿保馬鹿嬢ちゃんですか? 私に対して少し口が悪いですよ♪」

 

 天音が飛び切りの笑顔で飛段に抗議を申し立てていた。

 

 一瞬、飛段が思考を巡らせ沈黙が走り彼の口が開く。

 

「オイオイ……まさかァ……」

 

 彼にとって予想外の出来事であろうその光景に、天音は何かの印を結び飛段に周囲を見るように手を広げるジェスチャーをして見せる。

 

 飛段が天音から視線を外せば、さっきまでの荒れていた周囲の地形に、モズクの様な見た目の触手がバラバラになっている光景が目に入ってしまった。

 

 さっきまでなかった触手の残骸は、天音が幻術で飛段に見せないようにしていたのだろう。 そのことに気がついた飛段は顔を引きつらせる。

 

 飛段のリアクションが面白いのか、天音はニヤニヤしながら手に持っていた切り取られた角都の手から『北』の漢字一文字が刻まれた指輪を抜き取って見せる。

 

「こんな結果に成るとは私も予想外でしたけど、これで……私も念願の暁の正式なメンバーですね♪ 許可の出ていた私闘で勝ち取ったんですから……これからもよろしくお願いしますね、飛段先輩……♪」

 

(まあ……後一時間も一緒にはいられないだろうけど)

 

 指をピンッと親指で上へ弾き、落ちてきたそれをキャッチ。 その指輪を飛段へと見せつけた天音はクスクスと笑っていた。

 

 呆ける飛段に対して、天音が目の前で指輪を左手の中指に付けて見せるとその瞬間──

 

 

 

 

 

 天音の意識は飛び、どこかの洞窟の内部と思われる光景が視界に広がる。

 

「……へ~こういう感じかぁ……」

 

 幻影となった天音の感心する様子に、声がかかる。

 

「お前が勝ったか……」

 

 暁のリーダーは幻影でありながらもその特徴的な目で天音の幻影を見つめる。

 

「どうも、リーダー! あっちから仕掛けてきた戦いに勝ってこれ(指輪)を得たんですから、私がメンバーに加わってもいいですよね?」

 

「……構わない……だが、こんな些細な事で角都を失うことになるとはな」

 

「短気は損気って奴ですねぇ……ま、私は被害者ですからね? 長生きの癖に、時代の変化に疎いからこうなるんですよ♪」

 

 ケラケラと笑って見せる天音にリーダーは鋭い視線を向ける。

 

「……あまり死者を冒涜するな」

 

「おっと……そうですね、ちょっと調子に乗りすぎました……って誰か私たちに近づいて来てるみたいですね。 多分木ノ葉の部隊だろうと思うんで、逃げ切ったらちゃんとお金持っていきますね、リーダー♪」

 

 軽く反省して見せた天音は、プツンッと洞窟から姿を消した。

 

「……」

 

 暁のリーダーは黙とうをささげるかのように、少しの間だけその洞窟に留まっていたのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 目を開けた天音は辺りを見回す。

 

(想定外のことが起きたけどまあ……飛段先輩を幻術で眠らせ続けたおかげで時間調整はバッチリ……後は居なくなってしまった角都先輩に変わり──)

 

 チャクラを感知し、足元から這い寄る術の気配に気がついた天音は小さく呟く。

 

「ボスの役割、果たしてやろうじゃない……っ!」

 

 




・追加?設定

 暁の指輪は封印術『幻龍九封尽』に使われるものですが、テレワーク機能も指輪に備わっていることにしました。

・猿飛キョウマについて

 原作でも木ノ葉丸の親の存在は一応在るみたいだったので、設定を追加して登場させました。

 原作では名前も生死も不明な(ハズの)キャラなので(ファンブックに何か情報があるかも? 私は持ってないので分かんないです……)オリ設定満載です。

 名前は由来の分からない『アスマ』という名前が、漢字にすれば「明日間」となってヒルゼンの柱間、扉間リスペクトかな~と勝手に想像したのでそこから兄として「明日の前は今日!」ってことで「今日間」……「キョウマ」という名前にしました。

 一応腕利きの暗部ですが、設定では直接的な戦闘より幻術、封印術などによるサポートメインの忍びとして位置付けています。

 奥さんの設定はまだ何も考えてないですが、多分ゴリゴリの戦闘はでしょう……多分……その内生えてくると思います、設定。
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