目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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14:過去の片鱗

(奴らこれだけ見晴らしのいい場所にいやがるとは……警戒心が薄いのか……イヤ、それだけ自信があると見ていいな)

 

 奈良シカマルはアスマが連れ去られた時の天音たちの会話を元に、火の国の国境周辺に暁の対しての捜索網を展開していた。

 

 いのが心転身の術で、野生の鷹の眼を借りることで何かしらの戦闘跡の残る目立つ場所に、天音小鳥と飛段が居ることを突き詰めた。

 

 瞑想しているのか目を閉じたままの天音と何かしら狼狽えている様子の飛段に、シカマルたち猪鹿蝶とはたけカカシの隊は迅速なハンドサインによる連携で周囲を取り囲む。

 

(角都とか言う奴が見当たらないが、いのの感知に引っかかってねぇところを見るに別行動か……先にこいつらをやるのが得策だな。 ……)

 

 シカマルは木の陰や岩陰に隠れている班員にハンドサインで自分が先に仕掛ける意思を示し、印を結ぶ。

 

(影真似の術……っ!)

 

 シカマルの影から地面を伝い影が生き物のようにうねり這ずって天音と飛段へと伸びる。 牽制の意味も込められた術だが、飛段・天音の順にシカマルから見て並んでいるため先ずは飛段の影に向けて術を伸ばす。

 

 ……

 

 不意に目を開けた天音は飛段に対して蹴りを放ち、シカマルが伸ばす影に向け吹き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

 驚く飛段の声と共に、天音はその場から飛び退き枯れた大樹の側面に着地する。

 

 シカマルも想定外の展開に驚くも、()()()()()を遂行するべくそのまま影真似の術を飛段へとかける。

 

「こいつはぁ……あの切れ目のガキの術か!? 嬢ちゃん、てめぇ何しやがる!!!」

 

 蹴られ態勢を崩し、さらに敵の術にかけられたことで飛段の怒りのゲージは直ぐにMaxになる。

 

 その様子をクスクスと笑っている天音は、樹木の側面で身体を地面に平行に向けた態勢で肩をすくめる。

 

「どんくさい先輩が悪いんですよ? まあ、()()()私が相手しますから、そこの奈良家の忍者はサッサと飛段先輩連れてってもいいよ~♪」

 

 隠れているはずのシカマルに向け、声をかける天音は周囲に睨みを効かせる。

 

 カカシ、いの、チョウジが隠れている場所にピンポイントで圧を放った天音に、シカマルは声を挙げる。

 

「っこの不死身野郎は俺が引き受ける!! カカシ先生たちは、その糞女の相手を!!」

 

 シカマルの言葉を受け、三人は天音の眼下の地面へと姿を現す。 その様子を見ていた天音は、シカマルの方へと目線を向け口を開く。

 

「糞女とかひっど~……じゃあこいつらが次の換金対象かなぁ~? 奈良家のキミぃ!! 早く飛段先輩片付けないと、こいつらもヤッちゃうよ~?」

 

 煽る天音の言葉に、シカマルは歯ぎしりをしながらも影真似の術によって飛段と共にその場から離れるかのように駆けだしていった。

 

「あんたぁ……舐めたこと言ってんじゃないわよォ!!!」

 

 シカマルへの煽りに怒り、いのは声を荒げる。 そんないのに対して天音は冷ややかな目線を向け呆れるようなジェスチャーをして言葉を口にする。

 

「へ~? ここに来てるあんた達三人じゃいささか力不足じゃないかって教えてあげてるんだけど……あと倍の人数は欲しいかなぁ? フフフ……貴女達のせ・ん・せ・いみたいにぃ……雑魚の相手は数だけいても面倒なだけなんだけどねぇ~~~~!!! あははははははwwwwww」

 

 ゲラゲラと笑い声をあげる天音に、いのこめかみに青筋を浮かべ大きく一歩を踏み込む。 しかしその瞬間駆けだそうとするいのに対して、チョウジが腕で制止をかける。

 

「チョウジ!! アンタアスマ先生のことああ言われて悔しくないの!?」

 

 完全にキレているいのに対して、チョウジは静かに地面に顔を伏せたままいのの身体を制止し続ける。

 

「……へぇ……そこの雑魚で……只のデブで隊の足を引っ張りそうな君は随分と冷静だねぇ~~? それともビビッてるだけかなぁ? wwwww」

 

 アハハハハ!! と天音の笑い声が閑散とする周囲に広がる。

 

「…………」

 

 沈黙を貫くチョウジはゆっくりと顔を挙げ、その視線を天音に向ける。

 

「いの、僕たちは……アスマ先生の復讐のために来ているんじゃない……っ! あの暁が……これ以上人を傷つけるのを止めるために来たんだっ!!!」

 

 阿修羅像を思わせるかのような形相のチョウジの気迫の表情と雰囲気が辺りに蔓延る。

 

 その様子を見ていた天音は面白そうな表情を浮かべる。

 

(……随分と予想以上の成長っぷりってやつだなぁ……まあでも)

 

「復讐のつもりでもいいんだよ? 私は復讐に対して肯定的だから、される分にも文句は言わない……だから」

 

 天音は印を結びながら、言葉を続けた。

 

「全力で来な!!」

 

 瞬間天音の上方から雷光が走る。 天音は半歩横にズレるとカカシの雷切が天音の頬をかすめて地面へと突き刺さる。

 

(クソ、不意打ちは効かないか……っ)

 

 影分身を木に登らせていたカカシは地面に激突した分身が消えた様子に、天音が見て目と言動とは裏腹に隙のない人物だと再認識する。

 

(川の国での行動と言い……このくノ一は油断ならないな……っ)

 

 印を結び終えた天音は大きく息を吸い込み炎を吐き出す。

 

「龍炎放歌の術!!」

 

 龍の形を模した炎が幾数にも現れて頭上からチョウジたちを襲う。

 

 着弾した炎により火の海になった眼下の地面を天音が見ろしていると瞬間、()()()が風を巻き上げ炎をかき消す。

 

「へぇ……っ!」

 

 感心する天音の声と共に、突然天音の居た場所から樹木が真っ二つにへし折れた。

 

 いつのまにか素早やく軽岩の術で宙へとその場から避難していた天音は、樹木がへし折れた地点で拳を固めている、背からチャクラの羽を生やしたチョウジを嬉しそうに見つめる。

 

「前言撤回するよ……今のアンタなら戦いを楽しめそうだ!!」

 

「っ僕たちが……お前を倒す!!」

 

 空を飛ぶ二人は空中で互いの腕をぶつけ合うように正面衝突し、周囲に激しい衝撃波を響かせた──

 

 

~~~~~~

 

チョウジ達と天音が空中での戦いを繰り広げている中、シカマルは影真似の術によって飛段を少し離れた火の国のとある森の中まで引きずり込んでいっていた。

 

「オイ! 影野郎、てめー俺様を孤立させて勝った気で居やがるのかもしれねぇが一対一はこっちにも好都合ってことわかってるかぁ!?」

 

「……」

 

 木々に囲まれた場所で、動きを封じている飛段を中心に起爆札を吊るしたワイヤーを辺りに張り巡らせるシカマル。

 

 飛段が喚く内容に一切耳を貸す素振りを見せずに、シカマルは黙々とプロレスのリングのように飛段を囲う包囲網を完成させた。

 

「っチ……こっちは相棒がヤラれて驚いてるっつーのに、こんなガキの相手してる暇はねーぞ……」

 

 僅かに焦ってる様子で、天音たちが戦っている戦場の方角へと目を向けそう呟いた飛段の言葉に、ここにきて沈黙を通していたシカマルが興味ありげに口を開く。

 

「相棒がやられただと……? 角都とか言う触手のヤローは死んでんのか?」

 

「ケッ! いちいちてめーに説明してやる義理もねーよ、この影の術の効力は五分程度が精々……それが切れたらてめーを殺してメスガキに口を割らしてやるだけだ」

 

 暁側で何か揉め事があったのだと察したシカマルは、あえて効果時間ギリギリの影真似の術での拘束を解く。 

 

「……面倒くせー術も解けたか、二人きりでなら勝てると思って俺をバカにしたのが運のつきだと思い知らせてやるよ!!」

 

 体の自由が戻ったと、首を鳴らして息巻く飛段は懐から儀式に用いる杭を取り出し構える。 その様子を冷静に見ていたシカマルは深呼吸をしてクナイを構える。

 

「オイオイ、インテリ気取りの後衛が俺とサシでやり合おうってのか? クナイ一つで俺と渡り合おうなんざ舐められたもんだぜ!!」

 

「……別にそんなこと、最初っから考えちゃいねーよ。 まっ……()()()()()()()()()()への対応策は……前から考えてあるんでな」

 

「そうかい……俺に殺され、ジャシン様の元で無駄に講釈たれてバチでも当たってやがれっ!」

 

 一気に近距離まで詰め寄り杭を振りかぶった飛段。 シカマルはその杭に対してクナイを構え、その一撃を受け止める。

 

「ハッ!! 力が弱えーなてめーっ! 終わりだぁ!!」

 

 シカマルに対して力比べで圧勝している飛段はガードの上から無理やり押し込もうと杭を両手で持ち力を籠める。

 

 シカマルはその圧に押し込まれ、膝を突き杭の先端が眼前へと迫ったその瞬間。

 

 飛段の頭上から木の枝が落ちてくる。

 

「っ!?」

 

 葉っぱが多くついた木の枝が飛段の顔を覆い、怯んだ隙にシカマルが杭を逸らして飛段へ向け踏み込みその胸へとクナイを突き立てる。

 

「っグ……!? 痛ってぇーなぁ……てめーっ!!」

 

 飛段が頭上を見れば、木の枝が木の幹を通って伸ばされたシカマルの影によって切り落とされているのが確認できた。 胸に突き立てられたクナイの痛みにキレながらも飛段は密着しているシカマルを片腕で抱きかかえるように拘束し、杭を逆手に持ち直す。

 

「小細工で心臓狙えば殺せるとでも思ったか、阿保が!! 取り敢えず一発喰らえ!」

 

 飛段は拘束しているシカマルを自身の身体も貫通させる勢いで杭で貫く。

 

「ギャハハハハっ!! 儀式で殺してやるから、死なねー程度に俺と同じ痛みを味わいやがれっ!!」

 

 夢中で急所を外した位置を何度も自身ごと貫く飛段。 その狂った笑い声に対して、シカマルの声が

 

 

 飛段の後方から答える。

 

 

「阿保はお前だ。 笑いながら自傷するM野郎……」

 

 その声にハッとして飛段が振り向くと、手を構えているシカマルがそこにいた。

 

「てめ──」

 

「影寄せの術っ!!」

 

 飛段の言葉を遮るように、飛段が抱えていた方のシカマルの身体は影へと変化し周囲にその影の針を爆発するように無数に伸ばす。

 

 近距離で突き刺した飛段を中心に、伸びた影は周囲のワイヤーを絡めとり一瞬で飛段の身体へと収縮、飛段を空中で雁字搦めにして浮かせるほどの強度で繭のようになる。

 

「っ動けねぇ……てめーいつの間にッ」

 

 もがく飛段だが、拘束の強度が高すぎてびくともせず首だけを後方に向けシカマルへの疑問を口にする。

 

「いつの間にと言われてもな……言っただろ、対応策を考えてあるってな。 ……端からてめぇに近づく気なんてこっちにはなかったってことだ。 ご丁寧に俺から何度も視線を逸らしてくれたおかげで、俺の影で出来た分身……文字通りの()()()と入れ替わるの簡単だった……後はてきとーでもどうにかなる……昔の()()()相手の方が今でもまだめんどくせーと思うぜ」

 

「ああ!?!?」

 

「こっちの話だ……相手はお前だけじゃない……サッサとお前を片付けて、仲間達の所へ戻らせてもらう」

 

 シカマルは取り出したクナイを、印の付いた地面へと投げつけると地面へひびが入り崩れ、拘束された飛段の真下に大きな落とし穴が出現する。

 

「これは……いつの間に……ッ」

 

「てめーが簡単に死なないことは……アスマが教えてくれた。 死なないのなら、動きを……永遠に封じれば同義だ……っ!」

 

 屈んで印を結んだシカマルは両手を突き出す。 シカマルはから伸びた影が、底の深い落とし穴へと進んでいき……

 

「何するつもりだァ……っ!!」

 

「……安心しろ、そのワイヤーに着いた起爆札はブラフだ。 身体を爆散させる手も考えたが、身体の一部でも取り逃したらどう復活してくるかわかったもんじゃねーからな……確実に……沈めるっ!」

 

 シカマルが両こぶしを握ると、落とし穴から巨大な影の手が伸びて来て飛段の身体を鷲掴みにする。

 

「っ!? なんだっこりゃぁッ」

 

「俺が持つ、唯一多量の影を使って行使する力技ってやつだ…………昔全く俺の影真似が効かなかった仮面野郎相手の拘束手段のつもりで開発した術だが……へッ……アイツにはこれでも足りないかもな」

 

 巨大な影の腕が飛段を落とし穴へとワイヤーごと引きずり込み、暫くしてシカマルが腕を絞るように動かすと、何かが砕けるようなバキゴキッといった音が落とし穴から響く。

 

 何かを喚いている飛段の声にシカマルは興味なさげな表情をして立ち上がる。

 

「ジャシン様だとか……神を信じるのは個人の自由だがそれを他人に押し付けんのは御法度だぜ……まあ、今まさに地獄の閻魔の手に引きずり込まれようなもんだ。 もうお前を救う神なんて、どこにもありはしねーだろうがな……」

 

 シカマルは仕上げとばかりに落とし穴の壁に複数の起爆札付きクナイを投げつけ、落とし穴の壁を爆破。 落とし穴を完全に埋め立ててしまった。

 

「……骨も砕け、筋肉も裂け……おまけにこの瓦礫の重み……死にはしなくても一生……出てくることはねーだろ。 そう不死身だろうと、一生な」

 

 シカマルは一仕事を終えた様子でため息をつくと、直ぐにその場から走り出す。

 

 別の所で戦う仲間の元へと──

 

 

~~~~~~

 

 

「火遁・豪火球!」

 

「超・拍手(かしわで)!」

 

 空中で放たれた天音の火球を、チョウジは拍手で生じた風圧で消し飛ばす。

 

 術を放った天音に対して、地上からいのが無数の花を放つ。

 

 茎を天音に向け向かう花はコントロールされているかの如く、それぞれがうねる様な軌道で飛び天音を取り囲むように飛び

 

「喰らえっ!!」

 

 いのが印を結ぶことで、毒が混じった紫色の爆炎を生じさせる。

 

 天音の身体を見えなくするほどの爆炎。 その炎から、突っ切るように飛び出た天音に対してその動きを見切って両手に雷切を構えたカカシが突っ込む。

 

「クっ!?」

 

 雷切を当てたカカシはそのまま周囲の木々の間を青白い雷の軌跡を残して直線で跳び回り、その都度木々の幹へと天音の身体を叩きつけ続ける。

 

(天音小鳥は軽岩の術で、自身を軽くすることで攻撃から受ける衝撃を推進力に変え直撃を避けている……だが土遁の軽岩の術なら俺の雷切でその効果を打ち消すことでダメージを軽減させられないハズだっ!)

 

 腹部にカカシの両手での雷切を受けた天音は、チャクラを集中させることでその貫通を防ぐ。 しかしカカシはそのまま何度もその体を叩きつけ──

 

「チョウジっ!!」

 

 空中で待機してチャクラを練っているチョウジ目掛け、天音の身体を投げつける。

 

 飛んできた天音に向かってチョウジは右手にチャクラを込め大きく腕を振りかぶる。

 

「……蝶弾爆撃っ!!!!」

 

 天音にその拳が触れた瞬間、多大なチョウジの圧縮されたチャクラが解放され爆発音と共に天音を地面へと叩きつける。

 

 天音の身体が巨大なクレーターを作ったの同時に

 

「カカシ先生っ!!」

 

 チョウジの掛け声とともに、カカシがチョウジに向かって跳び、空中のチョウジは両手でのアームハンマーを構える。

 

「っ……!」

 

「オリャぁあああ!!!」

 

 頭を地面に向けたカカシの足にチョウジが打撃を加えて、その体を加速させた。

 

「止めだっ雷切双雷震っ!!!」

 

 カカシの両手に構えた雷切が天音ごと地を穿ち大きく震わせ、クレーターをもう一段階大きく形成する……

 

 衝撃音が止むと共に、静けさの中で地面が軋む音が辺りに響く。

 

「やったの……?」

 

 いのが思わずそう言葉を漏らして、クレーターを覗くと……

 

 ──チチチチチチッ

 

 カカシの雷切を、同じく両手に千鳥を纏った天音が受け止めている様子が目に入った。

 

 手を組合い、押し合うカカシと天音。 雷遁の光が迸る中──

 

「チョウジっ!」「いのっ!」

 

 二人は互いの名を呼び合い、カカシの援護へと向かい急ぐ。

 

 瞬間

 

「フンッ!」

 

 天音が頭を振るい、カカシの鼻っ面に頭突きをかまして怯ませその体を宙へと蹴り飛ばす。

 

「っグ……!」

 

 空から向かっていたチョウジは飛んできたカカシの身体を受け止めるが、その次の瞬間

 

 天音が地面を踏み切る轟音が聞こえたのと同時に、天音の繰り出した蹴りでカカシごとさらに空高く蹴り飛ばされる。

 

 天音はチョウジらを蹴とばした反動で、地面へとぶつかるように着地。 地面にヒビを入れながらいのにその鋭い視線を向ける。

 

「っ!」

 

 いのが天音の接近を予想して構えた瞬間。

 

 既にいのの身体を追い越すように天音は移動を終え、いのの視界に天音の拳が映る。

 

(死ッ──!?)

 

 速すぎる天音の動きにいのは反応することができず、眼前の拳が持つ威力を身体が直感で感じ取り自身の頭が弾け飛ぶイメージがいのの頭を一瞬で埋める。

 

 しかしその拳は形を変え……

 

 

 ──パンッ

 

 

 破裂音と共に、いのは吹き飛び地面を転がる。

 

「っいのォ!!!」

 

 空中で態勢を立て直したチョウジは頭を殴られて吹き飛んだように見えたいのの様子に叫ぶ。

 

 カカシはチョウジの身体を踏み台にして地面へ向け跳躍。

 

(……チャクラ量を気にして出し惜しみをしている場合じゃないっ!)

 

 カカシは左眼の写輪眼にチャクラを込め、その紋様を変化させる。

 

「……神威っ!」

 

 天音の身体の中心をその万華鏡写輪眼で睨みつけ、空間を歪ませる。 その時空間忍術の歪は天音を捕え

 

 

 

 

 しかし天音はスルリと神威の範囲から抜ける。

 

 

 

 

「馬鹿なっ!?」

 

 驚愕するカカシ。

 

 普通なら時空間へと体を引きずり込まれ引っ張られることで脱出が困難なはずの神威によるその攻撃を天音は、何もされていないかのごとく容易に一歩横にズレて躱す。

 

 一気にチャクラを消費したカカシに、天音は

 

「止めておけカカシ そんな術私には効かない……なんてね♪」

 

 そう笑顔で呟いて、飛びかかる。 神威の使用でチャクラが乱れたカカシを、空中で回し蹴りを当て天音はいのの居る方へと蹴り飛ばした。

 

「……さて最後だ」

 

 天音が空中に留まり上を見上げれば、拳を構えて飛び込んでくるチョウジの姿が目に映る。

 

「おおおおおおっ!!」

 

「いやぁ……随分と楽しめたよ…………まあ、私を倒すにはまだ足りないけどね」

 

 チョウジの拳を柔拳のようにしていなすように天音は受け流す。 受け流されたチョウジが地面を殴りつけるとともに地面が砕け、チョウジの背に生えていたチャクラの羽が消失する。

 

「っ……はぁ……はぁ……ッ」

 

 顔から滝のように汗を掻き、息の荒いチョウジの正面に天音が降り立つ。

 

「その蝶のようになるモードは随分と消耗が激しいようだね? 体つきも随分とスリムになっちゃってまあ……へ~こう見ると結構イケメンだね、アンタ」

 

 ふむふむと顎に手を当て、チョウジの身体をまじまじと見つめる天音。 まだ余裕を感じさせるその態度に、チョウジは歯ぎしりをする。

 

「いやでも、私相手によく頑張った方だよ……うん。 アンタの事は気に入ったし、そっちで倒れてる仲間を置いてってくれるならアンタは見逃してあげようかなぁ……?」

 

 ニタニタとした笑顔でチョウジに提案を持ちかける天音。 

 

 しかしチョウジは右手を構え、拳を握る。

 

「……例え死ぬことになろうと……僕は逃げない……ッ!!!」

 

「……フフッ」

 

 チョウジの言葉を受け、天音は笑みを浮かべながら印を結ぶ。

 

 そして、互いに同時にその場を踏み切る。

 

 叫ぶチョウジ、笑みを浮かべた天音の距離が縮まる。

 

「ウオオオオオオオっ!! 部分倍化の術っ!!」

 

「土遁……拳岩の術」

 

 チョウジは片腕を巨大化させ、天音は土遁で巨大な拳形成する。

 

 巨大な拳同士がぶつかり、力での押し合いになるが……

 

 瞬間不意に天音は術を解除して、チョウジの腕をすり抜けつつ再度印を結ぶ。

 

「雷遁・地走りっ!」

 

 接近した天音の身体から放たれた雷遁がチョウジへと直撃。

 

「ぐああああああっ!?!?! っあ──」

 

 雷撃が止むのと同時に、天音の口から炎弾が放たれ爆発。 チョウジの体をカカシといのが倒れている場所まで吹き飛ばす。

 

 ドンッ……と身体が地面にぶつかる音を聞き天音はゆっくりとその場から上昇する。

 

「……っ……いのォ……」

 

 意識の落ちかけているチョウジが倒れているいのの様子を見る。 傍から見て異常な力で殴られたはずの額からは血が僅かに流れているのみで気を失っている様子のいのは息をしていた。

 

 ふらつく様子で何とか立ち上がるカカシだが、宙に飛びあがった天音は影分身で二人に増え同時に別の印を結ぶ。

 

「うん……そろそろ頃合いだ。 それじゃあ、一発大きいのをかますかね」

 

「りょっ!!」

 

 自身の影分身と言葉を交わして、それぞれが術を放つ。

 

 

「火遁・豪火球の術!」「風遁・大突破っ!」

 

 

 別々に放たれた炎と風が混じり、超高温の広範囲の炎がカカシたちに目掛けて降り注ぐ。

 

滅風焔(めっぷうほむら)の術……この術を止められるのは──」

 

 そう呟いた天音。 カカシは、ふらつきながらも再度神威を使おうと試みるも

 

(……ッあまりにも術の範囲が広すぎる……神威ではこの術の全てを飛ばしきれないっ……)

 

 時空間へと飛ばすのに、不定形の炎は適していない。 それでも僅かに術の威力が下がり、生還する可能性を賭けてカカシは左眼にチャクラを集中させた……

 

 その瞬間、カカシの前に人影が二つ現れる。

 

 

「水遁・破本流」「風遁・螺旋丸っ!」

 

 

 二つの人影は、それぞれが水遁と風遁を放ち水遁を巻き上げ風遁が巨大な竜巻を作る。

 

「「颶風水渦の術(ぐふうすいか)!」」

 

 その竜巻は天音の滅風焔の炎を巻き上げ、螺旋回転で発生した多量の水蒸気が全ての炎を消し去る。

 

 多量の水が熱されたことで発生した霧を晴らすように、天音は風遁を使う。 そして現れた人影の片方に対して、視線を向ける。

 

「来たね、九尾の人柱力……うずまきナルト」

 

 晴れた霧から、その瞳を覗かせたナルトは天音を見上げる。

 

「てめぇ……カカシ先生たちを傷つけやがって……っ!」

 

 怒りをあらわにして天音を睨みつけるナルト、そんなナルトに対して隣に立つヤマトは

 

「ナルト、冷静に……相手はあの時と同じ天音小鳥だ……そう簡単にはいかないよ」

 

 落ち着かせるように落ち着いたトーンで声をかける。

 

 駆けつけてきた二人の様子に、カカシは安堵し息をつく。

 

「フ―――……いいタイミングで来てくれた、ヤマト、それにナルト……例の件は……」

 

「まあ……期待してください。 以前のナルトとはまた一段違いますよ」

 

 カカシの問いかけにヤマトが自信ありげに答える。 そんな三人の後方

 

 振り返ればサクラがいのに対して医療忍術を施していた。

 

「いのっ! 大丈夫っ!?」

 

「……うっ……ぅぅ……ッ」

 

 サクラの呼びかけに呻くいのの様子に、サクラは命に別状はないと判断し安心する。

 

「やあ……デ……おっと今はそうじゃないようだね、まあ無事で何よりだよチョウジ、君とは何かと会う回数が多いからね少しは気にかけていたんだ……それに美人さんも無事なようで良かった」

 

 一方で肩を貸して起き上がらせながら笑顔でそう言うサイに、チョウジは疲労で僅かに絞り出した笑顔を向ける。

 

「だけど……シカマルが一人で……ッ」

 

 そんなチョウジから漏れ出るように呟かれた言葉に、サクラは反応する。

 

「……サイ、命に別状はないけどこの様子じゃ二人とも直ぐに治療しないと危険よ……ヤマト隊長」

 

 そのサクラの呼びかけにヤマトは指示を出した。

 

「ああ、サクラとサイは二人を安全な場所に連れて行き、その後別の場所で戦っているらしいシカマルの援護に向かってくれ。」

 

 その時

 

 

 

「俺への援護ならもういらねーすよ、もう終わってるんで……サクラ、今は安全な場所でのチョウジといのの治療を優先してくれ」

 

 

 

 シカマルが姿を現した。 その姿を見て、チョウジは安心からか気を失い、サクラとサイはチョウジといのを連れて戦線を離れた。

 

 カカシは戻ってきたシカマルにねぎらいの言葉を掛ける。

 

「シカマル……良くやった」

 

「大したことじゃねーす……飛段の相手は種が割れりゃあやり様は幾らでもあっただけ……だが」

 

 シカマルは宙で未だに木ノ葉側を見定めるように見ている天音に視線を向ける。

 

「天音小鳥、アイツには小細工が効かないぜ……」

 

 シカマルの視線に、天音はジト目でその眼を見返しシカマルに声をかける。

 

「へ~……飛段先輩は負けたか~っあ~あ、惜しい人を亡くしたっ!!」

 

「ケッ……てめぇ……俺が勝つこと分かってて、飛段と一対一にしただろ……どういうつもりだ?」

 

「さぁ? それよりも、こうも連戦が続くと私も流石に疲れるなぁ……だから──」

 

 シカマルとの会話を無理やり切り、天音は印を結ぶ。

 

「そろそろ終いにしよう」

 

 そんな天音の言葉に、ナルトが隊から一歩前に出て影分身を二体出す。

 

「……俺がやるってばよ……皆は──」

 

 そんなナルトの言葉を遮るように、カカシ、ヤマト、シカマルはナルトの直ぐ後ろの位置に着く。

 

「ナルト、相手はあの我愛羅すら倒した相手だ……1人では無茶だ」

 

「カカシ先輩、ですがナルトの新術は周囲への影響も大きいので傍で戦えば僕たちにも被害が出かねない代物──」

 

「なら俺たちは後ろからバックアップするだけっすよ……ナルトを信じて。 ……頼んだぞっナルト!」

 

 三人からの後押しを受け、ナルトは頷き前を向く。

 

 中央のナルトの掌に、左右の影分身がチャクラをそれぞれ送り込み、本体がチャクラに螺旋回転を加えチャクラが圧縮されることで、安定の形を見せる。

 

 ──周囲に響く聴覚を貫くような高音、ナルトは完成させた新たな術を掲げた。

 

「風遁・螺旋手裏剣……この術でお前を倒すっ!」

 

 大玉螺旋丸を中心に円盤状に見える薄い風の刃が生じたそれは、掲げられただけで舞う塵や砂を霧散させろ程の()()を誇っていた。

 

 そのナルトの新術が披露されと同時に、天音も影分身で五人に増えさらに印を結んでいた。

 

「生で見ると強そーー……流石にその術には当たってあげる気は起きないかなっ!」

 

 天音がそういうと印を結び終わり、影分身を含めた五人が大きく息を吸い込む。 その動作と同時に、カカシは写輪眼で天音の使う術を先読みしヤマトに声をかける。

 

「っヤマト、とんでもないのが来るぞ! 全力で防御しろっ!」

 

「っ了解しましたっ!」

 

 カカシの指示からヤマトが印を結び始めた瞬間、五人の天音が同時に術を放つ。

 

 

 

 

「「「「「五遁・大龍連弾の術っ!」」」」」

 

 

 

 

 火遁、風遁、雷遁、土遁、水遁……五大性質変化によって放たれた五つの巨大な龍がそれぞれ交わるように螺旋軌道を描いてナルト達に迫る。

  

「出鱈目なっ……!」

 

 天音の放つあまりの術の規模に、ヤマトが苦言を漏らすも言葉とは裏腹にしっかりと印を結び終わり既に地面に手を着いて術を行使していた。

 

「木遁・木陣城壁の術っ」

 

 天音の術がナルト達を飲み込もうとする瞬間、地面が大きく横に裂けそこから二メートルほどの厚みのある木の壁が五体の龍をギリギリのところで遮りその半円状の形が威力を分散させる。

 

 しかし、幾ら分散させようとも術の威力の桁が文字通り違うため数秒持ちこたえた直後、天音の術の引き起こした爆発によりその強大な城壁は跡形もなく吹き飛んだ。

 

「…………ふう、爽快♪」

 

 地形が変わるほどの一撃にそう天音が呟いた瞬間、宙に浮く天音の内二人が獣を模した雷に穿たれ姿を消す。

 

「雷獣追牙の術か……っ!」

 

 天音らが後ろを振り向けば、土遁で地中を移動して回り込んでいたカカシが術を放った状態でいるのが目に入る。

 

 残り三人になった天音が再度印を結ぼうとした瞬間

 

「っ!」

 

 中央の天音を除いて残り二人の天音の影分身が消える。

 

 その様子に残った天音が警戒してより高く飛びあがると、影分身は真下の地面にいつの間にか空いていた穴から伸びた影に貫かれて消えたことが分かった。

 

 天音からは生えている木で死角になる位置にいるシカマルが呟く。

 

「残るは一人……本体か」

 

 シカマルを土遁で地中を運んだヤマトは、シカマルの様子を見届け再度地中に潜伏。

 

 一方相対するカカシと天音。 カカシは雷切を構えていた。

 

「……随分と術を放ったんじゃないですか、はたけカカシさん? あなたのチャクラ量じゃあ、その雷切が最後だ」

 

「へぇ……俺のことを理解してくれてるとはお目が高い。 だが、余裕で居られるのも今の内だっ!」

 

 カカシが写輪眼の洞察力を持ってしないと見切れないほどのスピードで駆けだす。 天音に対し直線で跳躍したカカシに対して天音が迎撃用に豪火球を放つも

 

「木遁……先輩足場です!」

 

 地中から幾数の木柱が天音の周囲を取り囲むように生え、カカシはその木柱を蹴ることで空中で軌道を変え上空に居る天音へと差し迫る。

 

「おお、速……」

 

 天音はそう呟きつつも別の術を使おうとしたとき

 

「木遁・黙殺縛りの術」

 

 いきなり細い木々が体を締め上げるように拘束する。 天音が振り向けば、木柱と下半身を一体化させたヤマトが上半身だけ生やしている様子が見えた。

 

「油断したね」

 

 ヤマトのその言葉を聞き、天音が首を正面へ向けると既に眼前にはカカシが迫っていた。

 

「終わりだっ!」

 

「終わりませんよォ!」

 

 カカシの叫びを遮った天音の言葉の直後、カカシは吹き飛び木柱へと叩きつけられる。

 

「ウグッ!?」

 

 カカシを吹き飛ばしたモノは粘土状の土のような物体であり、それは寸前に天音が吐きだしたモノであった。 その土はカカシを木柱に叩きつけて貼り付けにすることで動きを止める。

 

 カカシの手に光る雷切に目線を向けた天音は勝ちを確信したように体に力を籠める。

 

 体を拘束する木遁を破ろうとした瞬間にカカシが叫ぶ。

 

「テンゾウっ!!」

 

「っお手柔らかにお願いしますよ、先輩!」

 

 カカシの合図に、天音を拘束していた木がカカシの手へと向け伸び……雷切を纏う手と繋がる。

 

「──まさk」

 

 その意図に気がついた天音が口にしようとした言葉を断ち切るように、その木を通して雷切の雷が流れ天音とヤマトを痺れさせる。

 

「ッヅ……っ!?」

 

 天音が感電した瞬間に、ヤマトが拘束を解くことで天音は土遁の軽岩の術の効果が切れたことで地面へと向け落ちていく。

 

 身体が痺れつつも、何とか土遁以外の印を結ぼうとする天音。 ……しかし

 

「ッ痛”ッ!?!?」

 

 突然四肢に痛みが走る。 気がつけば四肢それぞれに忍犬が噛みついて、動きを拘束していることが天音にわかる。

 

(気配を隠して、木の柱の陰にそれぞれ忍んでいたのか……ッ)

 

 天音が地面へと視線を向ければ、ガタイの大きな忍犬が掘った穴から出てきたナルトが螺旋手裏剣を構えているのが目に入る。

 

「サンキューだってばよ……!」

 

「オウ!」

 

 ナルトの言葉を受け、そばの忍犬が消えるとナルトは天音に目線を向ける。

 

 このままでは確実に螺旋手裏剣を喰らうことを察知した天音は咄嗟に体を捻り、高速回転を始める。

 

「っ……!?」

 

 四肢に噛みついている忍犬たちはその回転で天音の四肢の肉を裂きながらも周囲に吹き飛ばされ、地面から生えている木の柱へとそれぞれ叩きつけられる。

 

 そしてそのまま天音はナルトへと体を向ける。

 

「ふふ、さあ……勝負だっ!」

 

 窮地にも関わらず、笑みを浮かべた天音は素早くその手に螺旋丸を構える。

 

「ッ……行くってばよ、喰らえ!!!」

 

 

 

 

 螺旋手裏剣と螺旋丸がぶつかり、細かい金属片が激しくぶつかり合うような轟音が辺りに響く。

 

 

 

「オオオオオオォおおッ!!!」

 

 力の限りに押し込もうとするナルト。 螺旋手裏剣が天音の螺旋丸を徐々に飲み込み圧倒し始める。

 

 その様子にシカマルや上空で、撤退しようとしているカカシとヤマトがナルトの勝利を確信した。

 

 

 ──その刹那

 

 

 天音は肉が削がれているもう片方の腕の掌を螺旋丸へと徐に添える。

 

「風遁・螺旋手裏剣……良い術だと思うよ……形態変化を極めた螺旋丸にさらに風遁の性質変化を加えるって……でもねぇ──」

 

 

 

「それが出来るのを、自分だけだと勘違いしてない?」

 

 

 

 天音を飲み込もうとしていたナルトの螺旋手裏剣が、逆に押し込まれるようにナルトを地面へ押し付け始める。

 

 急激な力の増大。 辺りに響いていた螺旋の衝突音はさらに高音を響かせ始めた。

 

「──まさかっ!?」

 

 カカシもヤマトも、その天音の手の内にある螺旋丸の変化に驚愕を示す。

 

「……ックソォ……!!」

 

 急激に押し込まれ膝を着いたナルトは悔しさを口に出す。

 

 数日間ぶっ通しで何とか形にした新術を、ほぼ見ず知らずの忍びがいとも簡単に摸倣しぶつけてくる……その事実にナルトの心がめげそうになった時

 

 

 ナルトの精神世界で声が響く。

 

 

『ナルト……ワシの力を使え……』

 

 檻の向こうに見える巨大な獣の囁き、それにナルトは

 

「ふざけんじゃねぇ……この前の大蛇丸との戦いで……お前の力はサクラちゃんを傷つけた……っ! 俺はもう……そんな危険な力なんか借りねぇぞっ!」

 

 自身の思いを九喇嘛へと口にする。

 

 その拒否を示すナルトに対して九喇嘛は冷ややかな目線を向ける。

 

『……危険な力か……なるほどなァ……なら聞くがナルトよォ……危険ではない力とはなんだ?』

 

「……っ?」

 

()()な力とはそもそも、別の力を無理やり押さえつけることが出来るものや自身へのリスクがあるモノを言うが……この世に何かに傷をつけない力なぞ存在しえないことを忘れていないか……?」

 

「ッ何が言いてぇ……!?」

 

 九喇嘛の話の意図がわからないナルトは疑問を口にする。 しかしその反応に九喇嘛は失望した目を向け、顔を背ける。

 

『フンッ……ここまで言ってその反応では話にならんな……あのうちはの小僧の方がよほど話が分かると見える』

 

「何でここでサスケの話が出てくるんだってばよ!?」

 

『理解できないのであれば、これからも勝手に自分の尺度で世界に力を押し付けるがいい……危険ではないと思っているその力でな……』

 

 九喇嘛が話終えた瞬間、ナルトの視界は眼前に迫る螺旋手裏剣に埋まる。

 

(急に話しかけて来て、どういうつもりだってばよォ!?)

 

 何とか両手で術を支えるナルトだが、天音から押し付けてくる力は勢いを増していた。

 

 しかしどんどんと自身が優勢になっているのにも関わらず天音は小さくため息をついた。

 

 そして──

 

 

 僅かに均衡を保っていた螺旋手裏剣のぶつかり合いは唐突に弾ける。

 

 その生じた力は周囲に生えていたヤマトの木の柱を豆腐の様に細切れにして爆発を起こした。 地形を抉り取るような衝撃が周囲を吹き飛ばしたのであった。

 

 

 辺りのものが吹き飛んだ爆心地で、ナルトはうつ伏せに倒れていた。

 

「クッソぉ……」

 

 小さくそう呻くナルトに天音がゆっくりと歩み寄る。

 

「……互いに頑丈で良かったね……まあ、私が相殺してなかったら今頃、アンタの螺旋手裏剣がアンタ自身をを細切れにしてただろうけどね……」

 

 ふらふらの様子の天音がそう囁くと、ナルトに対して伸ばそうとしたその手の動きがぎこちなく止まる。

 

「……なるほどねぇ……影真似の術か」

 

 辺りを覆っていた土埃が風で払われると、天音の背後にシカマルが姿を現す。

 

「っカカシ先生もあのヤマトとかいう人も柱ごと吹き飛ばされちまって復帰に時間がかかる……ナルト、早く起きろっ!」

 

 シカマルが印を結び、天音の動きを影で止めているが……僅かずつ、天音はナルトへと前進する。

 

「おいナルトっ!」

 

 シカマルの必死の呼びかけにしかし、ナルトは立ち上がれないでいた。

 

 するとふと、天音は後方のシカマルへと僅かに視線を向け声をかける。

 

「……今なら私を殺せるかもしれないのに……わざわざ影真似の術を使うなんてね……影首縛りでもすれば師の仇を討てるチャンスなのに」

 

 囁く天音にシカマルは歯を食いしばりつつも答える。

 

「ああ、てめぇに復讐してやりてぇ気持ちは幾らでもあるがなァ! でもそんな個人的なことに目を眩ませて、仲間を危険に晒してまで俺がやるべきことを見失うわけにはいかねぇ……っ!」

 

 額に汗を滲ませたシカマルの返答に天音は小さく笑みを零すと、途端に全身の力を抜く。

 

「……ッ流石に時間ギリギリか……九尾を手に入れられるチャンスだったけどそろそろ撤退しようかな」

 

「ハッ……それをさせない為の影真似の──」

 

 途端、シカマルが言葉を紡ぐ最中に横に吹っ飛ぶ。 ダメージで動けないナルトはシカマルが、()()()()()()()()()()()()()()()の天音に蹴り飛ばされている光景を視界に納めていた。

 

 影真似に縛られていた天音は拘束が解けると、ナルトの頭上まで来ていたがそのまま歩みの方向を変えもう一人の自分に向ける。

 

 すると、ボロボロになりながらもカカシとヤマトが姿を現し、さらにいのとチョウジを避難させたサクラとサイまでもがその場に駆けつける。

 

「印も結べないその状態のお前をここから逃がすと思うか?」

 

 ヤマトの虚勢を張ったその言葉に天音は自分の影分身に肩をかける。

 

「……そのために影分身を一体最後まで忍ばせていたんだ、いやぁ……流石の私もここまでダメージを負うとしんどいねぇ……」

 

 影分身の天音が印を結ぶ、軽岩の術で本体ごと宙へ浮く。

 

「逃がすか!」

 

 サクラがそう言いかけ出すと同時に、影分身の天音が本体の持つ尾異夢・叉辺流を取り出して構える。

 

 すると尾異夢・叉辺流が目が眩むほどの閃光を放ち周囲を光に染めた。 突然の目くらましに怯む木ノ葉の一行を尻目に天音はその場から飛び立っていった……

 

 閃光が止んだ後に、木ノ葉の忍びらはその場から撤退する。 そのなかでうずまきナルトは自身の無力感と、正体不明の焦燥感に苛まれるのであった。

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 暁の幻影が集う洞窟に、天音の幻影が姿を現す。 するとほぼ同時に暁のリーダーの幻影も現れる。

 

「っ……すみません、リーダー……木ノ葉の小隊にこっぴどくやられて空から撤退中です……」

 

 天音の苦しそうな声での報告にリーダーは

 

「……飛段はどうした?」

 

 もう一人連絡が在るはずの人物の名を口にする。

 

「……飛段先輩は奈良家の忍びと一対一で負けてしまいました……そのせいで私がどれだけの忍び相手に闘うことになったか……何とか金は回収したのでこのまま撤退させて頂きます、金はゼツ先輩にでも取りに来させてください……はぁ……」

 

 疲れて声に元気のない様子の天音の言葉に、リーダーは目を伏せ返事をする。

 

「そうか、ご苦労だったな……今は安全な場所で傷を癒すことに集中しろ」

 

「了解です……では」

 

 天音の幻影が姿を消すと、リーダーは一人その場に幻影を残して思案する様子を見せていた。

 

 

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