目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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16:三つの写輪眼の思惑

 暗隠れの里の発足から2週間ほどたったころ。

 

 忍界ではとある噂が広まっていた。

 

──大蛇丸が殺された──

 

 そんな噂が各五大隠れ里に広まり始めた頃、三人の人影が暗隠れの里へ向け足を運んでいた。

 

「ねぇ……ちょっと休憩しない……」

 

 白い髪をなびかせた細いの男は、汗を垂らしながら前を行く2人に声をかける。

 

「……てめぇ水月っ! さっきから休憩休憩うるせーぞっ! 北アジトまであとちょっとだから我慢しろっ!」

 

 2人の内、赤髪で眼鏡を付けた女は水月と呼んだ男に向けキツくものを言う。 しかし水月は怯むことなく

 

「てか香燐、君さぁ……目的地別とか言ってなかったっけ? ねぇサスケ?」

 

 前を行くうちはサスケに声をかける。 声をかけられたサスケは

 

「……お前たちの力はこの先、俺の目的の為に必要になる。 最終的に個人の目的が違おうが問題ない」

 

 そういって足を止めた。

 

 水月は

 

「……まあ、僕も僕の目的があるしねぇ……ねぇ香燐!! 君は何の目的があってサスケに着いて来てるんだい? www」

 

 ニヤニヤしながら香燐にそう問いかけた。 あからさまな水月の態度に香燐は

 

「わざわざウチの目的をお前に言う必要はないだろ! つーかサスケ、ホントに北アジトに行くのか?」

 

 切れながらも今後の行動についてサスケに心配そうに問いかける。 その問いにサスケは

 

「そのつもりだ。 天秤の重吾……()()呪印のオリジナル、相当な力の持ち主だろう。 俺とイタチとの戦いを妨げる者の排除に役立つ」

 

 一切ぶれる様子の無い態度で答えた。 そのまま行く先を見つめるサスケ、その横顔を顔を紅くして見つめる香燐、その横顔をニヤニヤしながら見つめる水月。 三人は少しの休憩の後に再度歩みを進めるのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 しばらく三人が先に進むと、ふと違和感に気づく。 北アジトがあるとされる場所に続く道があからさまに舗装されているのだ。

 

「……数年前に連れられてきたときはこんなんじゃなかったと思ったけどなぁ?」

 

 水月が疑問符を浮かべる。 同じく疑問を感じていた香燐だが

 

「サスケ、正面に結界忍術が貼られてる。 ……だけどどうも様子が変だ」

 

 自身の感知能力で結界忍術の存在を感知しサスケへと告げる。

 

「……大蛇丸のアジトには一定の結界忍術が張られているはずだ、何か異変でもあるのか?」

 

 サスケは瞳を一瞬写輪眼へと変え、その結界忍術とやらを視る。 すると

 

「なるほどな……術式が違う」

 

 その香燐が感じていた違和感の正体をサスケが口にした。

 

「術式……? 僕は感知できないんだけど、分かりやすく説明してくれる?」

 

「なんで少し偉そうなんだよ、たく……つまり大蛇丸のアジトに使われてる結界式と違うってことは別の誰かが用意したものが使われてるってことだ、わかったかバカ」

 

 香燐の言葉を受け、少し不機嫌になった水月だが

 

「ああ、なるほどね……数年前にサスケが来てから、こっちのアジトは用済みになってたからねぇ……つまり放置されてその間に別の誰かに乗っ取られてるかもってわけか」

 

 話の要領を得て、背に携えた首切り包丁を構える。

 

「ちょっと首切り包丁がさび付いてるし、丁度誰かの血を吸わせたかったんだよねぇ……僕も暴れたかったし」

 

 首を鳴らしながら、正面を突っ切ろうとする水月だが。

 

「止まれ」

 

 サスケのその一言で足を止める。

 

「え、なんで?」

 

 単純に生じた疑問を口にした水月だが、サスケは

 

「殺気はしまっておけ」

 

 簡潔にそれだけ言い、水月よりも先にその結界を越えていってしまった。

 

「ちょ……おいてくなし!」

 

「結構甘ちゃんな所があるよねぇ……サスケって」

 

 サスケの後を追い、香燐と水月もまたその結界を跨いで道の先を進むのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 少し先を行けば3人は直ぐに自分たちが監視されていることに気がつく。

 

 1名、気配を消したつもりの存在が彼らの後を追っているがサスケは気にせずにガンガンと前に進む。

 

「ちょっ……サスケ、気づいてんだろ? 監視をどうにかしないのか?」

 

 香燐が必要以上にサスケに近づき耳打ちをする。 サスケは

 

「無視しろ」

 

 簡潔にそう言い、歩みを進める。 ため息をつく香燐だがサスケの言うことに反論することはなくサスケの後方で妙に荒く鼻で息を吸い込みながら共に歩みを進めた。

 

 その様子に若干水月が気持ち悪そうに引いていると、ふと目の前の景色に違和感を覚える。

 

「ねぇ……あれって……門……かな?」

 

 水月が指をさした先、サスケたちが歩く渓谷の先には木造の簡易的な門が設置されていた。 簡易的だがそれなりの大きさのその門の存在に香燐と水月が顔を見合わせる。

 

「香燐、あんなのってあったっけ?」

 

「ウチは知らねぇ……」

 

 わざわざ門が増設されているだけでは感じえない違和感。 2人は門に書かれたひらがなを口にする。

 

「あ……」

 

「ん……?」

 

 そんな2人にお構いなく、サスケはその開かれている門に若干の懐かしさを感じながらも先に進む。

 

 切り立った崖に挟まれた道の門の先。 何やら木造の家屋が見え始めた時点で、香燐と水月は互いに北アジトの認識が崩れ去っていくのを感じて混乱する。

 

 門の下まで来た三人は、門の先の道にある小さな木造の監視所から声をかけられる。

 

「そこの三人、止まりなさい」

 

 サスケはそのまま慣れた様子でその監視所へと足を運び、呆けている2人は何とかサスケの後について行く。 今の地点からでも、まるで北アジトの前が集落の様になりそこで人々の生活が営まれているのがわかるからだ。

 

 監視所のなかに居る男性は、3人の顔を見て問いかけてくる。

 

「ここにはどういったご用件で?」

 

「……ここは大蛇丸の北アジトがあった場所か?」

 

 サスケがそう問いに問いで返すと、中の男の顔が険しくなる。

 

「大蛇丸が死んだとは噂で聞いたが……残党狩りにでもしに来たか? 悪いがここは数年前から大蛇丸とは無関係の場所だ、争うってなら抵抗はするぜ?」

 

 男がそうサスケを睨むと、その男の皮膚の表面が浅黒く変化を始める。

 

「呪印……!?」

 

 香燐がそう驚きの声を挙げると、水月が先手必勝とばかりに首切り包丁に手を掛ける。 しかしその瞬間、水月の喉元にサスケの持つ草薙の剣の切っ先が向き動きを制止させる。

 

「やめろ水月。 ……俺たちはここにいるはずの天秤の重吾に会いに来ただけだ、無駄に争う気はない」

 

 連れにだけ刀を向け、冷静にそう言い放つサスケの様子に監視の男は呪印を引っ込める。

 

「……脅かして悪かったな、ここがまともに活動を始めて日が浅いもんで悪意のある奴を入れたくないと思ってピリピリしてたんだ……重吾のお客さんってことは……あんたがうちはサスケか、大蛇丸を殺った英雄に無礼な態度を取っちまってすまなかった。 話は聞いてる、案内役をつけるからついて行ってくれ」

 

 男が謝罪しながら手で合図を送ると、簡素な黒い忍び装束めいた衣類を纏った忍びが姿を現す。 額に巻かれた『暗』の文字にサスケが注目していると

 

「事情がわかんねぇと思うんで、詳しくはそいつに話を聞いてくれ」

 

 監視の男のその言葉を聞き、素直にサスケはその忍びの後をついて行くのであった。

 

「サスケ……ッキミ良くこの状況で冷静で居られるね」

 

「戦う必要がなければ無駄に争うな水月。 ……今後あまりにもお前が厄介事を持ち込んでくるなら、お前を邪魔者と見なして斬る」

 

 水月に声を掛けられたサスケは、素月に冷たい目線を向ける。

 

「わ、わかったよ……(向こうから凄んできた癖に、なんで僕がサスケに注意されないと行けないんだ……イライラするなぁ)」

 

(プークスクス……いい気味だぜ水月!)

 

 後ろについて来ている2人の心中に興味がないサスケは案内役の忍びに声をかける。

 

「さっきの奴が言っていた事情とはなんだ?」

 

「ええ、ここ大蛇丸の元北アジトは今は隠れ里……まあまだ規模は小さいのですが『暗隠れの里』として運営を始めましてね」

 

「隠れ里……だと?」

 

「はい、見てくださいこの額当て! これはサトリ様と、仮面さんが各地の紛争地域で集めてくださった他里の額当てを加工したもので……良く出来ているでしょう?」

 

 ニコニコと嬉しそうに額当てを見せる忍びの様子に、またしても香燐と水月は奇妙なモノを見る目をする。 サスケは構わず

 

「そのサトリと仮面とか言う奴は何者だ?」

 

 忍びに話を振る。 忍びはニコニコしながら

 

「サトリ様は……サトリ様ですっ! 黒い仮面をつけた忍び、仮面さんと共に数年前に大蛇丸のアジトだったこの場所を解放し、集落として立て直してくださったお方で……ただ最近はお姿を見てないですねぇ……」

 

 そう答える。 サスケはこれ以上詳しい内容は出てこないとわかり、その後は黙って忍びの案内に従うことにした。

 

 

~~~~~~

 

 

 忍びに案内された建物は、石造りの内装にところどころ花やらこじゃれたランプやら、掛け軸が彩られた空間でありそのままその廊下を進んでいく。

 

(余計なこと言うと情報量増えてウチの頭がパンクしそうだ……)

 

 自身の知るアジトとのイメージの乖離に香燐が考えるのを止めようとすると、案内役の忍びが1つの扉の前で足を止める。

 

「ここが重吾の部屋ですね」

 

 そんな忍びの言葉に、思考を放棄しようとしていた香燐の頭が無理やり動き疑問を口にする。

 

「ここが……!? 普通の扉に部屋って……アイツの殺人衝動が暴走したらひとたまりもないぞ……っ!?」

 

 香燐の以前の重吾を知る人物なら当然の考えに忍びが答えようとするが

 

 ガチャ

 

 サスケは何のためらいもなく、その扉を開けた。

 

(────っ!?!?)

 

 香燐がそのサスケの行為に声にならない悲鳴を心中であげるが、その扉の先の光景に目を奪われる。

 

 

 

 外の空間と繋がる吹き抜けの大部屋の中では、動物たちと戯れている優しい笑顔の重吾がいたのだ。 ……およそ香燐と水月が知る彼ではないほど落ち着き払っている。

 

 

 

 そんな部屋に踏み込んだサスケは

 

「お前が重吾か?」

 

 単刀直入にそう問いかける。 するとサスケに気がついた重吾は動物たち上げていた餌袋を机にしまうとサスケの方を向き

 

「そうだ」

 

 と簡潔に答えた。 水月と香燐があっけに取られているうちに

 

「お前の力が必要だ、着いてこい」

 

「わかった」

 

 2人はそんなやり取りをして、すでに部屋の外に出ようとしていた。

 

 

 

 

 

「待って待って待って!?」「待て待て待て!?」

 

 スムーズに終わった会話に異議を唱える水月と香燐。

 

 そんな2人の様子にお構いなく

 

「ついて行く前に準備が必要だ。 それにここの長にも話をして行く必要がある」

 

 重吾はサスケにそう語りかける。

 

「そうか、ここの長とやらには興味がある、俺もついて行こう」

 

 サスケは重吾の言葉に了承の意を示し、重吾の後について行く。 異議を唱えたハズの2人は完全に無視され、その場に置いてけぼりをくらうのであった。

 

「ぼ、僕たちの反応が間違ってるのかなぁ香燐……?」

 

「ウ、ウチにも訳が分からない……」

 

 そんな2人に

 

「時間があるんでしたら食堂にでも案内しましょうか?」

 

 案内役の忍びは呑気な提案をして、さらに2人の常識を塗りつぶしていくのであった。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 重吾の案内の元、サスケは建物内の1室の前まで来る。

 

(……あからさまに壊れた扉を修理した形跡がある)

 

 サスケはその部屋の扉の様子に注目していると、重吾が扉を開けながら声をかける。

 

「アガリ、うちはサスケが来たぞ」

 

 すると部屋の中でガタガタと音がしたと思うと、笠を慌てて被りながら背の低い男性が出てきた。

 

「おわっ!? すみません!!」

 

 こけるように出てきた男はサスケにぶつかりそうになるが、サスケが難なくその体を支え事なきを得る。

 

(影の文字が刻まれた黒い笠…………あまりに似合っていないな)

 

 サスケがその男の様子に感想を思うが、男はよろよろとして立ち上がりながらサスケに名前を名乗る。

 

「俺は一応ここの影をさせて貰っている、アガリという者です。 貴方が大蛇丸を打倒したうちはサスケさんですね、話は聞いています」

 

 丁寧な様子のアガリに、サスケは

 

「……ここは何故隠れ里を名乗っている……そしてお前がその長だとして……あまり戦闘が得意なようには見えないな」

 

 自身の持つ疑問をアガリに問う。 その問いにアガリは

 

「ええまあ、俺もあまり他里の影と同じようには自分の役職を考えてはいないので……ただここは、様々な人々を受け入れられる里として成長するべく託された場所であり、俺はここを皆と守っていく心積もりです」

 

 そう真摯に答える。

 

「……人々を受け入れる里?」

 

「はい、行ってしまえば規模の大きい孤児院だとでも思っていただければ……一応隠れ里として任務を請け負いますが内容はかなり選んでいく予定ですし、サスケさんが思う里とはかなり違いがあると思います」

 

 アガリの言葉を受け、サスケは少し険しい顔つきで問いかける。

 

「……随分甘い考えのようだが、隠れ里である以上他里から責められる可能性も考えているのか? ここまで見た感じでは容易に攻めを許してしまう」

 

 サスケの持つ疑問はもっとのものであった。しかしアガリは揺るがずに答える。

 

「大丈夫です、こちらから攻め立てるつもりはなく不必要な戦いはしない方針です。 それでもここに手を出してくる者がいるのであれば……」

 

「……」

 

「皆がそれを許さない。 例え俺が弱くても、皆はあなたが思っている以上に強い……まあ、まだ忍びとしては未熟なところが満載なのは否めないですがね……ハハハ」

 

 小さくお道化て笑って見せるアガリだが、サスケはその語る言葉に揺るがない絶対的な自信を感じ取った。

 

「そうか……俺は重吾を連れて行くつもりだがそれは問題はないのか?」

 

「ええ、前からそうなるだろうと話は聞いていたので……それに本人の意思も尊重したいので」

 

「話だと……? 俺が重吾を訪ねてくると、何故……いや門のところの奴もやけに事情を把握したかのようにすんなり俺たちを通したが」

 

「まあ、詳しくは言えないのですがサトリ様という方が事前に話を聞かせてくださっていたので……貴方が重吾の力を必要としてくるかもしれないと」

 

 アガリのその言葉に、サスケはサトリと言う名の人物に言い表せぬ不快感を感じた。

 

(……まるで俺の事情を知り、先回りをしているかのような用意周到さ……ここの人間はサトリとかいう人物を相当信用している様だが、何者だ?)

 

 サスケが黙り込んでしまい、アガリが沈黙にいたたまれなくなっていると重吾がサスケに声をかける。

 

「サスケ、サトリについて気になるだろうがほっといても構わない。 奴は()()()()()()()()()、と言っていた」

 

「……見ず知らずの人間がそこまで自分のことを把握しているというのは気にならないわけないのだが……仕方ない。 あまりここに長居するつもりもないしな……お前アガリとか言ったか?」

 

「はい?」

 

「……精々頑張るといい、この忍界でお前らみたいなのが多数派なら多少居心地もいいかもしれないからな」

 

 サスケはそう言うと踵を返して、その場から立ち去っていく。 

 

「……ありがとうございます! サスケさんも、俺は事情を知りませんがどうかご自身の目的の為に頑張ってくださいっ!」

 

 アガリのその言葉にサスケは振り返らず、手を挙げるだけで返事をした。 そして

 

「では、アガリ行ってくる。 動物たちのせわを任せた」

 

「わかってる、重吾も気をつけて」

 

 重吾はアガリに別れの挨拶をしてサスケの後を追う。

 

 1人残ったアガリは資料室に戻り、届いている依頼書の選別をし始めるのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

「ホント気味が悪いねぇ……前来た時にも君を見た気がするけど……滅茶苦茶性格変わってない? ゼンゾウ」

 

 水月は食堂で出された水を飲みながら、奇妙なモノを見る目でゼンゾウを見る。

 

「ウチも、アンタは重吾に次ぐ暴れ馬だと聞いていたんだが……この水炊き鍋美味いな」

 

 香燐もまた、ゼンゾウを警戒しながら見ているが彼の出した料理が思いのほか美味しいのか、眼鏡を曇らせながらいささか顔がほころんでいた。 

 

「いやぁ……俺も色々あったんでさぁ……今はこうしてやりたいことをやらせてもらってんです」

 

 穏やかな口調で返事をするゼンゾウに、水月と香燐が改めて調子の狂う感覚に困っているとサスケが食堂に現れる。

 

「ここに居たか……行くぞ」

 

 簡潔にそういうサスケに、水月が了承して立ち上がる。 しかし香燐は食べている水炊きが熱く、中身を残していくことに抵抗があるのかあたふたしていると

 

「……落ち着いて食え……少しなら待ってやる」

 

 サスケは仕方ないといった様子で食堂の中まで入り、椅子に腰を下ろした。

 

 そんなサスケの様子に水月は

 

「……んだよ、君。 思ってたよりも優しいじゃないか、それとも香燐が女だからかな?」

 

 立ち上がった姿勢から再度椅子に腰かけながらサスケに問いかけた。 サスケは興味なさげに

 

「女だろうが何だろうが、出された食事を残すのは……良くない……それだけだ」

 

 そう返事をした。 (……うちはって名家だからかな、意外にもそういうこと気にするんだ)と水月は意外そうな表情を浮かべて頬杖をつく。

 

 席にはつかないが、食堂まできた重吾はゼンゾウに向け

 

「ゼンゾウ、これから旅に出る。 4人分の弁当を用意してくれないか?」

 

 と頼み、ゼンゾウは良い笑顔とサムズアップで答え作業に取り掛かり始めた。

 

「あふあふ……うま……むぐっ」

 

 待たせるのは良くないと、焦って鍋の具を食べる香燐。 サスケは懐かしむかのように目を細めの様子を見ていた。

 

 そんなサスケに重吾が話しかける。

 

「サスケ、俺について知っておいて欲しいことがある」

 

「……ん、なんだ?」

 

「聞いているだろうが、俺には自分ではどうすることも出来ない殺人衝動が沸いてしまうことがある」

 

 2人のその会話の内容に、水月と香燐は思わず聞き耳を立てる。 場合によっては自分の命にかかわることだからだろう。

 

「ああ……知っている」

 

「その殺人衝動だが、幻術で抑えてくれる者が居れば何とか落ち着かせることが出来る。 その時はお前の写輪眼で俺を止めてくれ」

 

「……それもサトリとか言う奴の助言か? ……わかった、その時は俺が止めよう」

 

「すまないな、頻度は抑えられても完全に消すことは出来ないらしい……」

 

 申し訳なさそうにする重吾に、水月が気づいたことを問いかける。

 

「そう言えば君が呪印のオリジナルなんだろ? 呪印の効果で乱暴になるのは知ってたけど、そこでテキパキ働いてるゼンゾウも確か呪印の影響で乱暴だったはず……ここの人間は妙に普通っぽいのには理由があるのかな?」

 

 水月のその問いに重吾は

 

「それはかつて呪印を刻まれた者の内、適性の無い者の呪印を俺が吸収したからだ」

 

 そういって簡潔に答えた。 その会話を聞いていたゼンゾウが

 

「そうでさぁ! 俺も闘うの好きじゃなかったんでさぁ、でも呪印を無くしてもらったら頭がスッキリして料理がしてぇってなったのをサトリ様が協力してくれて……」

 

 しみじみとそう語り始めた。 語りながらもその巨体でテキパキと弁当を用意する様は妙に非現実的で水月がまたしても微妙な表情をしつつ

 

「そう……なら例えばだけど、サスケの呪印も消すことが出来るのかな?」

 

 水月は会話の内容をサスケの呪印へと移す。 しかし重吾はその問いにも簡潔に答えた。

 

「出来ないな。 サスケと……君麻呂。 2人の呪印は特別製だ、俺にも取り除くことは出来ないだろう」

 

「へぇ……だってサスケ」

 

「興味はない……わざわざ力を手放す理由もないだろう」

 

 そんな会話をしていると、ゼンゾウが4つ分の弁当と竹の水筒をサスケたちが座る前の机に乗せた。

 

「出来やしたでぇ! 重吾のには肉は入れてねぇんで、安心しなぁ!!」

 

「助かる」

 

 結構手の込んだ弁当なのだろう、ズッシリとしたその重量にサスケが若干顔をほころばせると

 

「……いくらだ?」

 

 とゼンゾウに問いかけ懐に手を入れる。

 

「別に金はいらねぇですよ!」

 

「対価は払う、それが礼儀だ……受け取るつもりがないなら、こちらが勝手に置いていく」

 

 料金を受け取るつもりのないゼンゾウの言葉に、サスケは有無にかかわらずそれなりの金額を取り出し机に置く。 その置かれたお金は随分と多く、水月が目を光らせた。

 

「ゼンゾウが要らないって言ってるしそのお金僕に…………ちょっしゃ、写輪眼で睨むことないじゃないかサスケェ……」

 

「フフ、馬鹿だな水月……さてごちそうさま、ゼンゾウ美味かったぞ」

 

「香燐の姉さん、食ってくれてありがとうなぁ! また来たらもっとうまいもん振舞ってやるぞ!!」

 

 そうして一行は、食堂を後にしたのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 建物を後にし外に出てきたサスケたちは、そのまま里の門に向かって歩く。

 

「物資は要らないのか? 言えば幾らかは貰えると思うが」

 

 ふと生じた疑問を口にした重吾だが

 

「こんな出来立ての里からわざわざ貰うつもりはない……空区という場所で物資は調達する」

 

 サスケはそう言って、さらに言葉を続ける。

 

「……こうして俺の思い描く小隊のメンバーはそろった……小隊の目的は俺がうちはイタチに至ることの補助だ、それが終われば各々好きにするといい」

 

「へぇ……以外、僕たちはイタチと戦わなくて良いんだ……まあ、僕はイタチと組んでる鬼鮫先輩の鮫肌さえ手に入ればいいしね、それまでは付き合ってあげるよ」

 

「ウ、ウチもサスケの目的の手伝いぐらい訳ナイカラナァ……仕方ないからついていってやるよ///」

 

「俺も構わない、元より君麻呂が認めた男であるサスケ、お前を見極めるつもりでいた。 ことが終われば、俺はここに帰ってくるだけだ」

 

 3人はサスケについて行くことを同意する。 その返事を受けサスケは誰にも見えないよう先頭で小さく笑みをこぼす。

 

「……では我ら小隊は“蛇”と名乗り行動する……目的は先ほども言ったとおりだ」

 

 そう言ってサスケは先を急ぐように歩き始めると、ふと前の方にある家屋から杖を突きながら歩く少女が出てくる。 ふとその少女が気になるのか、サスケが少し視線を向けるとその少女はサスケに向かって手を振り始めた。

 

「……? なんだろう、あの女の子」

 

 香燐が不思議に思っているとその少女はサスケの方に向かって声をかける。

 

「サトリ様、お帰りなさい!」と

 

 周りにいた里の人々がギョッとしてその少女の言葉に反応して、ざわつき始めるが

 

「……びっくりした、居ねぇじゃねぇか」

 

「キョウコちゃんが間違えるなんて初めてじゃない?」

 

 と口々に言って騒ぎは大きくなることなく、落ち着きが戻る。 しかし不自然に感じたサスケがその少女に向かって歩き目の前までくると

 

「……あれ……サトリ様じゃない……?」

 

 と言って悲しそうな表情を見せた。 サスケはその少女が目が見えないことに気がつきながらも目線を合わせるようにしてしゃがみ込み

 

「悪いが俺はそのサトリ様とやらじゃない……だが目が見えないようだがどうして勘違いしたんだ?」

 

 優しい声色でそう話しかける。 キョウコは目の前に来た人物が知らない人だと気がつき、モジモジし始めるが

 

「……私目が見えないけど、チャクラっていうものをね、少しだけわかるみたいなの……お兄さんのねそのチャクラの感じが……サトリ様に似ていて……」

 

 そうサスケの質問に何とか答える。 

 

「俺のチャクラが……?」

 

「うん、でもよく感じて見たらサトリ様みたいにぐちゃぐちゃしてないから違うってわかって……ごめんなさい……」

 

「…………。 気にしなくていい、俺も気にしていない」

 

 そう言ってサスケはキョウコの頭を撫で手、サスケを待つ3人の元に向かう。

 

 ふとサスケが視線を感じると、キョウコの背後の玄関の奥に黒い仮面をつけた忍びが居たことに気がついた。

 

(ここの連中とは気配の消し方が段違いだな……あれが()()()()とやらか。 下手に関わらない方が良いだろう)

 

 サスケはその忍びの放つプレッシャーがキョウコから離れることで解消されたことから、下手なことは出来ないことを悟り大人しくその場を後にする。

 

 その様子を見ていた忍び・猿飛キョウマは玄関から家の中に戻ってきたキョウコを抱きかかえる。

 

「びっくりしたぞ、急に飛び出して」

 

「ごめんなさい、サトリ様が帰ってきたかと思っちゃって……」

 

「……そうだな、アイツはいつもバラバラのタイミングで帰ってくるからな、困った奴だ……さて裁縫の続きだ、アガリの羽織を仕上げないとな」

 

 そう言ってキョウマはキョウコを抱えて家の中へと入っていく。 ふと去り行くサスケに目線を向けたキョウマ。

 

(うちはサスケ……里に居た頃に、親父から気にする様に言われていたが随分と成長したな…………()()()と同じ写輪眼を持つ者……か、もう俺では歯が立たないんだろうな)

  

「キョウマさん、何か可笑しいんですか……? やっぱりサトリ様と間違えたの──」

 

「いやいや違う違うっ! 俺も若くないなって思ってただけだ」

 

 キョウマの誤魔化す笑い声と、羞恥を感じたキョウコの言い合いを背に小隊・蛇は暗隠れの里を後にするのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

「いやぁ……四尾の封印がやっと終わりましたねぇ……飛段と角都も消えて、天音のお嬢さんも不参加とあって随分と長引きましたが……」

 

「……そうだな」

 

 土の国の辺境、暁が外道魔像を呼び出す洞窟の内の一つから干柿鬼鮫とうちはイタチは移動し別の小さな洞穴へと移動する。

 

 外は連日続く土砂降りの雨で、尾獣封印のために数日動かずに体力を消耗している2人は小さな拠点と言えるほどもない、ただ物資の置き場であるその場所にて身体を休める。

 

 手頃の岩に腰を下ろした鬼鮫は鮫肌を脇におき、携帯食料に手をつける。 ふと、イタチが何かを考えている素振りを見せたため鬼鮫はたき火に薪をくべながら話を振る。

 

「何か気になることでも?」

 

「……四尾の人柱力に幻術をかけたとき、気になる記憶をみた」

 

「ほお……どんなです?」

 

「何者かがその人柱力に対して……逃げるように促しているような記憶だった……恐らく俺たちにやられかけて本人がそのことを思い出していたから読み取れたのだろうが……」

 

「その何者かが気になるのですか? まあ確かに嫌われ者の人柱力相手に逃げるよう促す相手は、相当なモノ好きだけでしょうですしね……」

 

 クククと小さく笑う鬼鮫。 イタチはその記憶の内容に集中しているのか、手に持った食料に手を付けないでいた。 そんな中ふと鬼鮫は洞穴の外に気配を感じ取る。

 

「おや……この感じ、お客さんのようですねぇ……」

 

 そう言って鬼鮫が洞穴の入り口に目を向けると、土砂降りの雨の中からボロボロになった羽織を羽織った人物が姿を現す。

 

 その人物の羽織の模様は、歪んだ朱い雲であった。

 

「……見つけましたよ、先輩方」

 

「おやおや、天音さんじゃないですか……随分と酷い怪我をしたそうじゃないですか、それとは別に封印に参加もせずにわざわざここに来るとは何か私たちにようでもあるんですか?」

 

 その黒い髪を濡らして洞穴に入ってきた天音に鬼鮫は問いかける。 その問いかけに天音は、いつもの笑顔で答えた。

 

「いやいや、ちょっ~~~とイタチ先輩と話したいことがあるんですよねぇ私。 できれば鬼鮫先輩は、話の聞こえない外の離れた位置で待っててくれません?」

 

「……アナタ、相変わらず……いきなり来て随分と無礼なこと言いますねぇ……」

 

「鬼鮫先輩、顔とか魚みたいですし雨好きじゃないですか? 焚き火なんて当たってると、干し魚になっちゃいますよ?」

 

「何を“配慮してあげてます”みたいな顔をしてのたまうのか……あまり私を舐めない方が良いですよ?」

 

 そんな不毛な会話をする天音と鬼鮫の間にイタチが割って入る。

 

「鬼鮫……悪いが席を外してくれないか?」

 

「まさかイタチさんも私が魚っぽいからと外に出るように言うのですか? この顔を生まれつきで──」

 

「鬼鮫先輩の眼の横の皺とか鮫のエラっぽいですもんねぇ……イタチ先輩もやっぱりそう思いますよねぇ♪」

 

「そうじゃない……お前も天音のペースに乗せられるな……」

 

 若干呆れたようなイタチの声に、しょうがないといった様子で鬼鮫は立ち上がり背伸びをする。

 

「はいはい、わかりましたよ……では私は軽く体を動かしてくるのでどうぞお二人で何でもお好きに話をしてください……お邪魔で魚っぽい私はどこか近くの川でも泳いできますかねぇ……」

 

「鬼鮫先輩って淡水でも大丈夫なんですか!?!?」

 

「…………いつか一発殴りますねアナタ」

 

 最後にジト目で天音を睨んだ鬼鮫は、めんどくさそうに洞穴の外に出て天音の手を振る様子を背にして姿を消した。

 

 外の鬼鮫に向けて手を振っていた天音はゆっくりとイタチへと振り返る。

 

 

 

 

 

 

 その眼を朱い写輪眼へと変えて

 

 

 

 

 

「……やはりお前か、四尾の人柱力に警告を出していたのは」

 

 納得の行った様子で、そう呟くイタチ。 天音はその朱い瞳を細める。

 

「……まさかとは思いましたが、イタチさんなら記憶を読み取るかもとは思いましたよ……」

 

「ただ尾獣の封印を阻止したいなら、やり様が他にもあったはずだが──」

 

「私が会えた人柱力には皆、逃げるように言っておいたんですけどねぇ……誰もいう事を聞いてくれない……まあ、私もやりたいことがあったりで手が離せないこともあるので忠告だけで済ませたのは悪かったと思いますが……特に今回は体力の回復に手間取っちゃってね」

 

 軽くお道化けて見せる天音だが、その軽口のトーンはいつもよりも低い。

 

「しかし、私が写輪眼を見せても驚かないんですね?」

 

「……もしかしたらとは思っていた」

 

「ええっ……そんなそぶり見せましたっけ私? 直接会うのも初めてですよね……?」

 

()は……いつも前振りが長いからな……」

 

 イタチはそう言うと、まるでかつて里に居た頃のような気の抜けた笑顔を浮かべる。 その表情を見た天音は引いた顔を見せる。

 

「まさかとは思うんですけど──」

 

「ああ、()()()()()()……いや正確には今分かったというべきか、まさにその写輪眼を見てね」

 

「こっわ……たくっ貴方を目の前にするとホント自分が小さく思えてくるなぁ……」

 

 落ち込んだ素振りを見せる天音だが、一息ため息をつくと表情を真剣なモノへと変える。

 

「さて、話があるので来たと言いましたけどズバリサスケについてです」

 

「……人柱力や尾獣についてではないのか」

 

「そっちは別件です、そっちは今後どうにかするので今は目の前のことを……まあ単純に貴方を説得しに来ただけですよ」

 

 そういって天音は鬼鮫の鮫肌近くに置かれたバックパックを漁り携帯食料を取り出し話を続ける。

 

「貴方がサスケにしようとしていることは大体把握しているつもりです。 ただ、だからこそ──」

 

「俺の行動は失敗すると言いたいわけだな」

 

 天音の言葉を遮るようにイタチがそう指摘すると天音は、面をくらったかのように体をビクッと揺らす。

 

「っ……あのどちらかと言えば今は私が未来の話をして驚かせようとしている場面なので、鋭すぎる指摘はやめてくださいよ……」

 

「君が未来を見通すことは、確か暁の集会でもいっていたからな……それにそうではないかと俺自身が昔から予測していたのもある」

 

「……っで私が失敗すると言って貴方ははいそうですかと考えを変えるつもりはないんでしょう?」

 

「そのつもりだが……君の説得次第では別だろう、少なくとも君の言葉なら信用するつもりだ」

 

「…………信用してもらえて何よりです、じゃあ単純に一言」

 

 そういって天音は携帯食料をかじり

 

「サスケを信用してあげてください」

 

 そう言って咀嚼する。

 

「…………ッ」

 

 悩むように眉間に皺を寄せるイタチ、天音はもぐもぐと携帯食料を味わうと一気に手に持った分を口に入れる。

 

 それを飲み込んだ天音は、さらに鬼鮫のバックパックを漁りながら会話を続ける。

 

「貴方からしたら、手のかかる弟で心配なのも分かりますけど……アイツは強い、貴方の予想を上回るほどに……ね」

 

「……」

 

「……子ども扱いはアイツの為にならない」

 

 そういって天音は鬼鮫のバックパックから取り出した干し肉にかじりつきながら、立ち上がる。

 

「それとゼツの監視に注意して欲しいのと、トビは貴方が仕込むつもりの天照じゃ殺せないので死ぬときは別の何かを残してあげてくださいね」

 

 天音はそのまま洞穴の外に出ようとする。 

 

「君は……なぜ、なぜそこまでして、俺たちに干渉する……?」

 

 解せないといった様子のイタチのその言葉。

 

「単純なおせっかいですよ、そして……

 

 

 

 

 

お互い先が長くない者同士のよしみです。 残せるものはお互い有用なモノの方が良いと思いませんか?」

 

 その言葉に寂しそうな笑顔を見せて返事をした天音はそのままドシャ降りの外の風景に溶けて消えていった。

 

 残されたイタチの横顔を、たき火がゆらゆらと照らす。

 

 どれぐらいの時間、イタチは立ち尽くしたのか。 濡れた様子の鬼鮫が戻って来てイタチに声をかける。

 

「……どうしました? 冷徹な貴方にしては随分と動揺したような顔をして、そんなにあの娘との話が面白かったですか?」

 

 そんな鬼鮫に声をかけられてイタチはハッとして、自身の荷物をそばに置いた岩へと腰を下ろし鬼鮫もその向かい側に座る。

 

「やはり、この雨では身体が冷えてしまいますねぇ……天音さんも私を呼びに来て直ぐ行ってしまいましたし……話の内容は私が聞けるものですか?」

 

 鬼鮫がイタチに話を振ると、イタチは小さく笑みを浮かべこう述べた。

 

「……お前の食料を掻っ攫っていったぞ」

 

 その言葉を受け、ハッとして鬼鮫が慌てて自分のバックパックの中身を確認する。

 

「~~~~~~~っ!!!! なんで止めくれないんですかァ!?」

 

「ふふ……どれ、俺のを分けてやろう」

 

 

 

 

 

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