ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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時系列:ポンコツどもが転生して二年目の頭くらい
セイバーとアヴェンジャー以外は原作キャラを10代前半くらいまで若返らせた姿をイメージしていただければ。

今後便利に使い倒す予定のキャスターもどきさんが人気出たら良いなと思って書きました。


番外編②『キャスターの休日』

 

「それでは行ってきます。夕方には戻りますので、食事当番は私のままで構いません」

 

 優男の顔に柔和な笑みを浮かべ、キャスターが手を振って出かけて行きました。

 それを笑顔で見送った後、真顔になる私とニヤケだすアヴェンジャー。

 

「どう思います、アヴェンジャー」

「どうもこうも、怪しすぎるだろ。普通に」

 

 転生してから早一年といくらか。

 無事全員がレベル2に到達し、資金にもある程度の余裕が出来たことから使われなくなった建物を購入してホームを得た我々アンリマユ・ファミリアは、現在、一つの懸念事項を抱えていました。

 

「発展アビリティで出た『調合』に、あそこまであいつがどハマりするとはな」

「パラケルススの知識の恩恵か、新薬のアイディアがポンポン浮かぶみたいですね……」

 

 

 道具作成スキルも作用しているのか、キャスターの霊薬は同ランクの調薬士の物に比べはるかに高性能であり、以前に比べ、我々の探索は格段に楽になりました。

 しかしその一方で、問題も発生していました。

 

「たしか、バーサーカーはまだ便所なんだろ?」

「えぇ、もう二日ほど」

「……ヤバすぎません? あいつの薬の副作用」

 

 そう。キャスターオリジナルの薬にはまれに強力な副作用が存在し、今回はバーサーカーが探索から帰還して以来トイレの住人となってしまいました。

 詳細は本人の名誉のために伏せますが、ランクアップした冒険者じゃなければ脱水症状とかで死んでません? 

 本当にピンチの時に使う霊薬ではそんな事態が発生したことはありませんので致命的な事態には至っていませんが、逆にわざとやってませんアレ。

 

 そして何よりヤバいのが、いつの頃からかキャスターは休みが取れるといつもフラッと出かけ、いくらかの金銭を持って帰ってくるようになったことです。

 本人から申告があったわけではないんですが、帳簿管理をしているアーチャーからの報告でキャスターがこっそり金庫に資金を増やしていることが判明しました。

 

「ヤベー薬売り捌いてたりしてな」

「流石にそこまでは、やら、ない、のでは……?」

 

 アヴェンジャー、貴方ゲラゲラ笑いながら言ってますけど冗談になってませんからね? 

 

 この一年ちょいでお互いのことをある程度理解し合えているつもりの我々ですが、どうもキャスターだけは信用出来ません。

 いえ、我々を裏切るとかそんなことは一切思ってないんですけど、転生前からか転生後からかは分からないんですけど倫理的にちょっとイっちゃってるところあるというか、ブレーキ壊れてる感あるというか、ポンコツ感あるというか……。

 

 金の出所を本人に聞いても、はぐらかされそうですし……。

 

 

「気になるなら、暴けば良いんだよ!」

 

 バーーン! と効果音でもつきそうな勢いでポーズを取るライダー。

 どこから湧いてきました。

 

「アーチャーがさ、勝手に金庫のお金増えてたら帳簿つけるのめんどくさいから、もうお金の出所明らかにしてこいだって」

「アーチャーが……貴方に?」

「うん!」

 

 え、嘘でしょ。尾行とか調査とかこの理性蒸発に一番向いてない仕事じゃないですか。あの緑茶もどき、ついに過労で壊れました? 

 

「ダウンしてるバーサーカーの仕事のフォローが忙しくて手が離せないんだって。そういうわけで、行こうセイバー!」

「私もですか?」

「当たり前じゃないかー。尾行なんて一人でやっても面白くないゲフンゲフン。何かあった時にフォローし合える仲間っていいよね!」

 

 本音出しましたねこのオトコの娘。

 

 まぁ確かに今日は私も手が空いてますし、ライダー一人を送り出すのは正直不安しか無いですし。仕方ない。行くとしましょう。

 

「そうこなきゃ! アーチャーから『顔のない王』借りてるから、これに隠れていこう!」

「ちょ、ライダー、引っ張らないでください! あ、アヴェンジャー、後でバーサーカーの様子見といてくださいー!」

 

 

 

 そんなわけで、私とライダーによる尾行大作戦が始まったのでした。

 

 

 

 尾行開始後しばらく、現在キャスターは工房から持ち出した荷車をひいています。

 幌が掛けられていて中身はわかりませんが、かなりの量が積載されていますね。

 もうその時点で私としては御用改めしたかったんですけど、まだなんにも判明してないじゃん! というライダーの駄々こねにより尾行はまだ続いています。

 はぁ、早く帰りたい。

 

「あ、聖剣刑事(デカ)! マルタイがジャガ丸くんの屋台の前で止まったよ!」

「本当ですね。かといって何か買うわけでもなさそうですよ短パン刑事(デカ)──この呼び方やめません? すごくバカっぽいんですけど」

「セイバーはわかってないなー、こういうのはフインキが大事なの!」

「フンイキです、フンイキ」

 

 馬鹿話をしている我々の前でマルタイ(キャスター)は屋台のおばちゃんに何かを手渡し、そのまま立ち去りました。

 

 よし、黒ですね。確保です。

 

「流石に横暴じゃない!?」

 

 チッ、うるさいですね。仕方ない。ここは捜査の基本に則り聞き込みをしますか。

 

「すみませーん、我々、こういうものなんですけどー」

 

 先程キャスターが何かを手渡していた屋台のおばちゃんに、警察手帳よろしくファミリアのエンブレムを見せるライダー。どうでもいいですけどノリノリですね、貴方。

 

「あら、アンリマユ・ファミリアの子じゃないの。先生ならさっき行っちゃったわよ?」

 

 うんうん、エンブレム見せただけでどこのファミリアか認知してもらえるなんて我々の名前も売れてきましたねっていうか、今聞き捨てならない発言があったような。

 

 先生? あのロン毛、先生って呼ばれてるんですか? 

 

「あの、先生とはウチのファミリアのキャスター……パラケルススのことでしょうか?」

「そうそう、パラくんのことよ」

 

 パラくん!? あのロン毛、パラくんって呼ばれてるんですか!? 

 

 いやいやいや、落ち着きなさい私。今はそんな情報どうでもいいんです。

 

「あの、先程彼に何を渡されたのですか?」

「あら、聞いてないの? これよこれ」

 

 そういって我々に突き出されたのは、◯の中に『キ』と字が入ったマークが特徴的な円筒型の容器。うわ、胡散臭さが凄まじいです。

 

「この仕事してると、どうしてもヤケドしちゃうでしょ? それをあの子が、格安で治療用のクリーム作ってくれてるの。この辺で屋台やってる人間は、だいたいあの子に世話んなってるのよ」

「……失礼、少しお借りしても?」

「えぇ、いいわよ」

 

 フタを開けて、中のクリームを小指の先ほど掬い取る。

 異臭、無し。痛痒感、無し。

 うーん、ぱっと見、怪しいところは無いですね。頭悪そうなマーク以外。

 薬の検分を続ける私の前に伸びてくるピンクの頭。

 

「あむ」

「ちょっ」

 

 このアホトルフォ、いきなり舐めるやつがいますか! 

 ペッしなさいペッ! 肌が紫色になっても知りませんよ!? 

 

 しかし私の心配をよそに、ライダーはケロッとした顔です。

 

「特にお腹痛くなったりはしないなぁ。大丈夫そう」

「卿はお腹より頭を心配するべきだ」

「ひどい!?」

 

 ひどくないです。

 

 むぅ、しかし真っ当な商売をしてるじゃないですか。これなら隠す必要もないでしょうに。

 

「あ、セイバー! キャスターがまた動き出すよ!」

「む、追いましょう。あ、店主殿、協力に感謝します。それとジャガ丸くんコンソメ味とめんたい味を一つずつ」

「まいどあり。何かわかんないけど、先生には感謝してるのよ、わたしらは」

 

 

 むむぅ。

 

 

 

 次にキャスターが立ち寄ったのは、立派な門構えの治療院でした。

 入口脇に荷車を止めて、輝く液体が入った瓶を何本か抱えて建物の中に入ってしまいました。

 というかここは……。

 

 

(ディアンケヒト・ファミリアの施設だよね?)

(えぇ、一体何の用なんでしょう)

 

 顔のない王に身を隠して我々がこっそり侵入すると、中から凄まじい呵々大笑の声が響いてきました。

 

 

「ふはははは! 相変わらず天才的な発想ではないかパラケルススウウウウウウウウウ!!!!」

「この私には過分な評価ですが、この知識への賞賛は喜んで受け入れましょう、神ディアンケヒト……」

「ふっははははは! 相変わらずわけのわからん謙遜だなぁ!?」

 

 豪快に笑う老神と、穏やかに微笑みながら言葉を交わすキャスター。

 

 しかしそんなことはどうでもいいです。

 彼らの傍らでは、キャスターが持ち込んだ霊薬片手に虚ろな目をしたディアンケヒト・ファミリアの眷属らしき姿が!! 

 明らかにラ◯ってますよねあれ!! 

 

(よし、今度こそ黒ですね! おのれキャスター! オラリオ屈指の治療系ファミリアを汚染しようとするとは!!)

(なんかセイバー、黒にしたがってない!?)

 

 気のせいです。

 

 しかしいざ突入しようとしたところで、再びディアンケヒトの声が響きます。

 

「確かにこの効力ならば、希釈しても十分以上に痛み止めとして有効だろう! 長期治療患者どもが大枚はたいて欲しがるさまが目に浮かぶわぁ!! この新作ポーションも安い素材でいい効き目だあああ!!」

「相変わらずお目が高い……」

「いよし、買ったぞパラケルスス!! 金額はこれでどうだぁ!!」

 

 おっと早とちりでしたか。

 んん? 話の流れから察するに、新薬のレシピの売り込みですか? 

 ディアンケヒトが契約書に書いた金額は、かなりの額ですね。原作でも大活躍のファミリアに、そんなに評価されてたんですかキャスター……。

 

 しかしキャスターは首を振ると、ディアンケヒトが提示した額の十分の一以下に書き直します。

 ああ! 何やってるんですか勿体ない!! 

 

「神ディアンケヒトよ。私への報酬はこれで十分です。ですが、契約内容は、前回までと同様でお願いします……」

「ぬぅ、貴様への報酬は今回限り。今後一切の特許料を取らないかわりに、小売価格は貴様が決めるというやつか。今回はいくらだ。……ぬぅ!? 安すぎる! もっとボレるぞパラケルススよおおお!! 考え直せ、この倍の価格でも売れる!!」

「ではこの取引は無かったことに……」

「ぬううう!? ……せめて、この四割増しだ! それより安くなっては、儂のファミリアがよその治療系ファミリアにいらん恨みを買う!!!!」

「……良いでしょう。良い取引でした」

 

(何やってるんですかキャスター! 特許料を取れるならガッツリ取りなさい!)

(セイバー、ステイ! ステーーイ!! キャスターがこっちの出口に向かってる! いったん離れよう!)

 

 キャスター達はまだ中で話しているようでしたが、ライダーに引きずられている私にはほとんど聞き取れませんでした。

 

 

「しかし貴様、何故これほどの知識を安売りする! 自ら売り捌けば、いくらでも稼げるだろう!!」

「……我がファミリアには、薬師がいません。ならば、私一人が製法を抱え込むより、多数の治癒術師や薬師が所属する御身のファミリアに任せる方が、多くの冒険者の手に渡ります」

「むううう?」

「安く、高性能なポーションは冒険者たちの生存率を高める一助になるでしょう」

 

 

 

「遍く人々に安寧を。それこそが()()()の願いであり、私の責務なのです」

 

 

 

 その後キャスターは、馴染みらしき治療系ファミリアに顔を出して霊薬開発の助言をしたり、自分が持ち込んだ霊薬を販売しながら街中をうろついた後、最終的にダイダロス通りの中でも貧困層が集まるエリアで病人やけが人を集めてタダ同然の金額で診察を始めました。

 キャスターの手慣れた振る舞いや住民達の信頼しきった顔を見るに、何度も彼は訪ねているのでしょう。

 

 正直、ついに尻尾を出して非合法な人体実験に乗り出したか、とか思ってた自分たちが恥ずかしいです。

 

 これ以上ここに居ても彼が悪事を為すことは無いだろうと判断し、私とライダーは一足先にホームに戻ったのでした。

 

 

 

「──というのが、事の顛末です」

「マジかー。ってことは、こっそり金庫に金入れてたのは、照れくさかったとかそんな理由か?」

「俺には理解が及ばん。よほど恥を知らぬと見える」

「えーっと、『立派なことしてるから恥ずかしがる必要なんて無いのに』? 当たり? やったー!」

「私が奴の薬で腹を壊したのも、意図しない出来事だったということでしょうか……ぐうぅっ」

「ま、オレは知ってたんですけどね。薬の売り歩きとか、ギルドに許可取らないと出来ないことはオレがササッと書類出してきたからな。オタクらが予想外にビビってたから面白くて黙ってたけど────冗談デス」

 

 アヴェンジャーは後でぶん殴るとして、キャスターには悪いことをしました……。

 倫理観0男とか違法実験マッドドクターとか薬物汚染領域キャスター工房とか内心思ってた自分たちが恥ずかしいです……。

 

 

「あっ、みんな、キャスターが帰ってきたよ!」

「む。では全員、配置につきましょう」

 

 

 せめてもの謝罪に、我々が出来ることと言えば────

 

 

「遅くなり申し訳ありません……。着替えた後、すぐに夕食の支度にとりかかり──なんでしょう、これは?」

 

 リビングに入ってきたキャスターが訝しげな顔をしています。

 それもそうでしょう。

 

 食卓の上には彼の好物、ジャガ丸くんハニーシュガー味をはじめ様々な料理が。

 そして我々の手元には、『キャスターくん、ごかいしててごめんね』と書かれた横断幕があるのですから。

 

「ついに皆さん気が狂い──いえ、元々でしたね」

「何か言いましたかキャスター? まぁ構いません。我々は、卿に謝罪しなくてはいけません」

 

 私は、今日一日キャスターを尾行していたこと。

 絶対非合法な手段で稼いでると疑っていたこと。

 マッド系の狂人枠だと思っていたこと。

 

 これら含めて様々なことを謝罪しました。

 

 流石に気を悪くするかと思いましたが、キャスターは首を振りました。

 

 

「そのようなこと、気にする必要はありません。────我々は、仲間なのですから」

「キャスター……!」

 

 グッと熱いものが込み上げてくる我々の前で、キャスターは続けます。

 

 

 

「ええ、全くもって気にする必要はありません。なので皆さんも気にしないで下さい。

 ──セイバーが寝ている間に採血して、竜の血の代用品にしていること。

 ──ランサーが寝ている間に鎧を削って、希少鉱物の代用品にしていること。

 ──ライダーのヒポグリフをドロップアイテムの塊扱いしていること。

 ──アーチャーとバーサーカーのポーションに試作品を混ぜて被験体扱いしていること。

 正直、薬の素材や被験体の件がバレたら怒られそうなので黙っていたのですが……許しあえる仲間というのは、本当に素晴らしいものですね。おや、セイバー。聖剣を構えてどうかしたのですか? 風王結界を解除して? 上段から? 下段に────」

 

 

 やっぱりこいつヤバい奴じゃないですかカリバアアアアアアアアア!!!! 

 

 

 

 

 




人気出たら良いなと思って外道成分頑張って抑えたんですけど、我慢できませんでした。
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