ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!? 作:夕鶴
すまない、散々待たせてまた番外編なんだ。しかも説明回なんだ。
第一話で書きたかったけどテンポ悪くなるから温めてたら腐りかけてたネタを慌てて大放出しました。
城壁に囲まれた巨大な都市を見下ろせる丘の上で、私は
最悪です……。本当に最悪です……。
この世の終わりのような顔をしている私を、褐色の肌の少年が出迎える。
「おかえり、えーと……どうだった?」
「……ありませんでした」
「あー……ドンマイ」
ドンマイじゃないんですよカムバック・マイサァァァァァン!!!!
嘘でしょ!? 一度も使ってない内から生き別れなんて酷いこと許していいんですか!?
この世には神も仏もいないんですか!?
あ、神様はアホみたいにいる世界でしたねどうでもいいですよそんなことはああああ!!!!
「未使用だったのか……ご愁傷様です」
「哀れな。泣き叫びたければ存分にそうしろ。無意味な行為ではあるが」(特別意訳:意味無くても泣きたい時あるよね。スッキリしちゃお)
「ボクもヒヤッとしたよー。だって今のボク、見た目完全に美少女だもん!」
「私も髪が伸びていた時は聖女マルタにでもなってしまったのかと……」
「◾️◾️◾️……なんだこの胸のザワつきは……彼女(?)を見ていると、何かがおかしくなっていく……!」
「というかアルトリア(仮)ちゃん。気持ちはわかんねーですけど、嘆いてる暇ないですよー。そりゃ股間のエクスカリバーがアヴァロンになってたらショックかもだけぐぷぇあ!?」
ハッ、いけません、無意識に拳が……!
しかし一発ぶん殴ったことで若干気分が落ち着きました。
私はスンスンと鼻を鳴らしながら涙を拭い、目の前の彼らに目を向ける。
発言順に、茶髪に緑衣の少年、黄金の鎧に白髪の少年、ピンク髪の少……年……?、黒髪ロン毛に白衣の少年、紫っぽい髪に黒鎧の少年、黒髪褐色肌に赤い布切れをまとったセクハラクソ野郎と、どこかで見たことのある顔触れ。まぁ最後の一人を除けばかなり幼くなっていますが。具体的に言うと、原作での姿マイナス10歳くらい。
そして私自身、性別すら違うキャラクターに成り果ててしまっていますし……。
認めたくはありませんが、これは……。
「あの、念のため聞いておきたいんですけど、皆さん、さっきまでバスに乗ってましたよね?」
コクリ。
「トラックにぶつけられましたよね?」
コクコク。
「……死にましたよね?」
……コクリ。
「なんか、こう、神様的な存在に馬鹿にされた後に気づいたらここにいましたよね?」
コクリ。
よし、現状確認終了。集団幻覚ですね。早く目を覚まさなければ。
「おーいアルトリア (仮)ちゃん。現実逃避すんなー」
「現実逃避でもしなければやってられないんですよアンリマユゥ(仮)!!」
「あ、ちょ、やめ、首しめんな! 悪かった、謝るから、やめろ、…………こふっ」
「おい、アルトリア (仮)さん!? アンリマユ(仮)気絶してるから! 窒息してるから離せって!」
「いかんな、完全に正気を失っている。ロビンフッド(仮)、引き剥がすぞ」
「くそっ、しゃあねえかカルナ(仮)さん。そっちおさえてくださいよっと」
離せぇ! 私の行き場のない憤りをこの黒いのにぶつけさせろぉ!!
っていうか(仮)(仮)うるさいんですよ!!
「確かにメンドくさいなぁ。じゃあボクは正義のセーラー服ナイトで!」
「あ、そういうの許される感じですか……? では私はPでお願いします。パラPでも構いませんよ」
そこの二人はもっとうるさいんですよぉ!!
この非常事態にもうちょっと慌てるべきなのでは!?
「いや、オレらも慌ててたんですよ? でも目の前で自分以上にテンパってるオタク見てたらなんか冷静になってきたっていうか……。とりあえずなっちまったもんは仕方ねーし、落ち着いて話しましょうや」
「くっ…………確かに正論です。良いでしょう」
そんなこんなで現状確認パート2。
我々を転生させた神()曰く我々は各々の姿の元となったサーヴァントの能力や技術を宿しているとのこと。神の眷属となることで使用可能となるらしいので、黒いセクハラゴミにサクッと契約させます。
その結果わかったこと。
割とチート転生の類でした。
まず身体能力ですが、メチャクチャ高いです。
レベル1なりたての平均的冒険者の身体能力は知りませんが、短距離なら壁走りとか屋根伝いにピョンピョン飛んでくとか漫画やゲームじみたアクションは普通に出来そうです。流石にサーヴァントと比較すれば完全再現には程遠そうですが。
将来的に確実に英雄に至れる才能を持った人間の初期ステイタスって感じでしょうか。
まぁこれは割と大人しめです。次からチートです。
技量について。
ヤバイです。剣道すらロクにやったことない私がビュンビュン刃筋立てた素振り出来ます。軽くカルナ(仮)さんと打ち合ってみたら、どう体動かせば良いかとか分かります。超高レベルチャンバラ出来てます。すごい楽しいですコレ。
他にもロビンフッド(仮)が森の植生や狩猟の知識が湧いてきたり、パラケルスス(仮)も薬物の取り扱いや魔術に関しての知識を備えているようです。
正直助かりました。ダンまち世界という平和そうに見えて裏では結構ヒャッハーな悪党どもものさばっている世界で、いくらサーヴァントの力があっても素人が生きていけると思いませんし。
次にスキル。
サーヴァントの保有スキルがそのままスキルになってるみたいです。
私の場合、魔力放出、直感、カリスマに加え、セイバークラスのスキルである対魔力や騎乗もスキルに入っています。
原作でのスキル最多がフィン・ディムナの五つだか六つくらいだったことを考えると、かなりのアドバンテージのはず。
え? っていうか、レベル1の頃からこんなにスキルっていっぱい持ってて良いんですか? とか思わずツッコミが出ました。
そして最後。これが一番重要です。
宝具、使えます。
魔法扱いで、宝具が使えてしまうんです!
威力は魔力依存になりそうですが、威力倍率が頭おかしい気がします。レベル1なりたての私がストライク・エアっても軽く小屋くらいならぶっ壊せそうです。
しかもなんと、原作主人公であるベル・クラネルと同じく速攻魔法扱いで真名解放だけで撃てます!
凄くないですか!? かめは◯波、邪王炎殺◯龍波、アバ◯ストラッシュ、牙◯突(二文字ですからね、隠しちゃうとわからなくなりますからね)に並ぶ声を出しながら撃ってみたい必殺技ベスト10常連(私調べ)であるエクスカリバーを撃てるんですよ!?
理不尽な転生に凹みまくってますが、これだけはテンションめちゃくちゃ上がりますヒャッフー!
「アルトリア(仮)、嬉しそうだねー」
「あぁ、先程まで慌てふためいていたのに、現金なものだ。だが、何故だ……あの少女の姿で無邪気に喜ばれると、かすかな戸惑いと大きな喜び、そして死にたくなる罪悪感が湧いてくる……! この身体の記憶だとでもいうのか……!? ◾️◾️◾️……!!」
「ちょ、ランスロット(仮)、大丈夫!? っていうか髪型でわかってたけどやっぱバーサーカーの方なの!?」
ランスロット(仮)とアストルフォ(仮)が何やら騒いでいますが、耳に入りません。
あぁ、早くぶっ放してみたいです……。
「あと話し合うべきは、今後の身の振り方か」
ひとしきりはしゃいだ後、カルナ(仮)さんからの問題提起。
それぞれ考えを話し合います。
「この身体の薬学の知識があれば、医療系ファミリアとして安全に稼ぐこともできそうですが……」
「いや、他所から流れてきたどこの馬の骨かもわかんねえオレらが、一から商売するのは難しいでしょ。まずは信用得ないと」
「それに我々は無一文の身だ。先立つ物が無ければ店を構えることも出来ない。やはり探索系ファミリアとして活動する必要はあるだろう」
「ランスロット(仮)の意見にさんせ〜い。ダンまち世界に来た以上、一回はダンジョンに潜っとかないと!」
「気楽な物言いだ。よほど軽く捉えていると見える」(特別意訳:ポジティブに考えててすごいなぁ!)
「んー、オレは神様だからダンジョンに潜れないし、アンタらが大丈夫ってんなら、オレからは止めませんよ」
「ならば当面はダンジョン探索系ファミリアとして貯蓄。ある程度の予算が出来た段階でパラケルスス(仮)を中心とした医療系ファミリアにシフト。当面の目標は、これでいきましょう」
『異議なし』
よし、ひとまず話はまとまりました。
……ならば、一番重要な話をしなくては。
「ところで皆さん、これからはお互いのことをクラスで呼び合いませんか?」
「ん? なんで?」
私の提案に、アンリマユ(仮)が首を傾げる。
ここが正念場です、私……!
「私は、自分がアルトリアを名乗れるほど、高潔とも立派とも思っていません。ただの小市民です。
ですが、この世界で生きていくには、力と覚悟が必要です。
だからこそ、クラス名を名乗るのです。
英雄そのものを気取るほど、おこがましくはなれない。
ですが、その力と姿を借り受けた
英雄の姿に恥じないよう、恐怖や傲慢を抱かずに戦っていく。
その決意の表明と、それを忘れないために、クラス名で呼び合うのです。
……だめ、でしょうか?」
恐る恐る意見を述べてみると、六人(五人と一柱?)の反応は悪くはなさそうでした。
「おー、そりゃ良い考えですねっと。いい加減、(仮)(仮)言うのも飽きてたし」
「俺は構わない。……確かに、カルナを名乗るのは傲慢が過ぎる」
「ボクは別にセーラー服ナイトでも良いんだけどなぁ。まぁでも良いよ! クラス呼びもカッコイイし!!」
「……皆さんが宜しいようでしたら、私はどちらでも」
「◾️◾️◾️◾️──!! なんと、ご立派な……! いや待て私、そこまで感動するような内容ではなかったはずだ……!!」
「んー……。まぁ、良いぜー」
おっしゃあ言質とれました!
杞憂も無くなったことですし、さっさとオラリオに入りましょう!
ゴーゴーゴーです!
意気揚々と歩き出した私の後ろで六人が何やら話し合ってますが、全く何をモタモタしているのでしょう。
ちなみに、その場に残った野郎どもの会話。
「……あれ、アルトリアっていう女の子の名前で呼ばれるのが嫌だっただけだよな。たぶん」
「一人だけ性別まで変わってしまったのだ。その葛藤は、俺たちには計り知れないものだろう」
「ボクみたいに男の娘なら全然平気なんだけど、そんな風に割り切れる話じゃなさそうだもんねー」
「……しかし、即興でよくあれほどそれっぽい理屈を並べられたものです。案外、アドリブ力は高いのかもしれませんね」
「うぅっ……◾️◾️◾️◾️……何も聞かずにセイバーと呼び安心してほしい気持ちと、もっと他に理由があるのではないかと根掘り葉掘り聞いてアタフタする様を生暖かく見守りたい感情が……! これもランスロット卿の肉体の影響か……!?」
「こえーよランスロ……もといバーサーカー。ま、クラス呼びするだけでお仲間のストレスが減るなら、良いことなんじゃないんですかねー。とはいえ……」
「皆さーん、何を話しているんですかー? 置いていきますよー!」
自分の狙いを見透かされてるとは毛ほども考えず、無邪気に手を振るセイバーの姿に、彼らの胸に一つの感情が浮き上がる。
──なんか、すげーポンコツ感溢れる姿だなぁ……。今後苦労かけられそう。
その予感は間違いなく正しかった。
平穏無事にオラリオ生活をするという彼らの願いは、都市入り十分後に闇ギルドによる暴行現場にセイバーが鉢合わせてしまったことであっさり破られる。
そこからなんやかんやあって、十年後には都市有数の武闘派ファミリアにのし上がることになるのだが、その裏ではいくつもの彼らの悲鳴と、どうしてこうなったの叫びが響いていた。
ただ、一つだけ補足するなら…………セイバーだけではなく、彼ら全員もれなくポンコツだとは、この時点では誰も気づいていないのであった…………。
この後、原作開始10年くらい前だと気付きます。
同時にだから神のアヴェンジャーと老けないセイバーだけ原作通りの姿だったんかい、と判明します。