ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!? 作:夕鶴
※閲覧注意
本編や番外編がポンコツ:シリアスが5:5だとしたら、外伝の過去話は3:7くらいにシリアス多めかもしれないような気がします。
しかもポンコツどもが生意気にもちょっと真面目ぶってます。
本編のイメージを損なう恐れがあるので、『俺はこの話にそういうの求めてねーんだよぉ!』って方は後書きまで飛ぶこと推奨です。
三行でまとめてます。
それでも気にしねえ!って猛者の方はどうぞ。まぁまぁ長いです。
煌めくは紅蓮の炎。振るわれるは神域の絶槍。
傷つき、倒れた冒険者たちが目にしたのは、神話の如き戦いだった。
怪物の攻撃は黄金の鎧の前に砕け、逆に英雄の一撃は怪物の巨躯を焼き払う。
自分たちが力及ばず敗れた階層主を、業火を纏った英雄が単身圧倒しているのだ。
幾度かの攻防の末、魔石を砕かれ消滅したモンスターを尻目に英雄は何でもないことのように自分たちを振り返る。
「終わったぞ」
「お前は、アンリマユ・ファミリアのカルナ……。すまない、助かった」
冒険者たちを代表して、団長であるシャクティ・ヴァルマは心からの感謝を告げた。
しかし英雄は顔色一つ変えず、無感情に呟く。
「この程度のモンスターに苦戦するなど、あり得ない話だ。冒険者としての適性を疑った方が良いだろう」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
理解できた後も、聞き間違いかと思った。
しかし────
「その実力でよく戦えてきたものだ。驚嘆に値する」
カァ、と頭に血が上った。
隣で彼女を姉者と慕う娘が激昂しかけているのが見えた。
それを片手で制し、彼女自身もなんとか心を落ち着かせる。
たとえ侮辱されようと、間違いなく自分たちはこの男に命を救われたのだから。
しかしそれでも、次の言葉は頷けないものだった。
「何もかもが足りず、無様に屍を晒す必要もないだろう。俺をつれてい──」
「結構だ!!」
冷静でないことは分かっている。
傲慢極まる言い方ではあるが、ダンジョンにおいてこの男の申し出は天の助けに等しいものだ。
だがそれでも、彼女たちはそれを受け入れるわけにはいかなかった。
何もかも見透かすようなこの男の言葉に頷けば、まるで自分たちだけでは立つことも出来ない雛鳥であることを認めるようで。
次に同じような危機が訪れた時、この男の助けを待つような弱さを得てしまいそうで。
都市の守護者を自負してきた彼女たちには、受け入れられないものだった。
上の階層で待つ本隊と合流すべく踵を返しながら、シャクティは最後に一度だけ振り返った。
日輪の光輝を宿せし英雄は、ただただ静かに自分たちを見つめていた。
彼女たちが立ち去った後、日輪の英雄は静かに呟く。
「どうしてこうなった」
外伝①『ランサーの昔話』
「ランサー、ご飯の時間ですよー。部屋にこもってないで、みんなで食べましょうよー」
扉の外からセイバーの声が聞こえる。が、俺は応えずにより深く布団に包まった。
脳裏に浮かぶのは深層での一件。
冒険者たちの憤怒の(と少し傷ついたような)表情が忘れられない。
また言葉が足りなかったようだ。
事の経緯は単純だ。
深層で一人修行をしていたら、冒険者パーティが階層主に負けそうになっていた。
無粋な横槍にならないよう、勝機がないことを確かめてから死人が出る前に手助けした。
ここまでは良かった。
冒険者の代表らしき女性が感謝してきたので、自分もそれに応えた。
彼女たちからすれば強敵だったようだが、レベル6に至った俺にとっては格下であり、そもそも彼女たちとの交戦で階層主はダメージを受けていた。まして俺には『
「この程度のモンスターに苦戦するなど、あり得ない話だ。冒険者としての適性を疑った方が良いだろう」
と言った。
正直、この時点では違和感に気づいていなかった。
むしろステイタス的には劣りながら、見事な連携と勇猛さで後一歩というところまで階層主を追い詰めた彼女たちに感動し、素直にそれを賞賛した。
「その実力でよく戦えてきたものだ。驚嘆に値する」と。
この辺りから、流石に彼女たちの雰囲気が剣呑なものに変わったことに気付き始めた。理由は分からなかったが。
しかしペース配分を間違え物資が不足しかけていたこともあり、俺も助けが必要だったので恥知らずとは思いながら、彼女たちに頭を下げて、
「何もかも(の物資)が足りず、無様に(俺の)屍を晒す必要もないだろう。俺をつれていってくれ」
というつもりだったのだが、まさかの言い切る前の拒否。
思わず泣きそうになった。
傷心したまま、残り少ない食料をチビチビ消費し、時にモンスターを炙って食いながら(不味かった)、なんとか地上に帰還して事の経緯をアヴェンジャーに報告すると、気の毒そうな目で見られた後、俺の発言がどういう意図で受け止められたのか説明された。
俺は凹んで引きこもった。今三日目だ。
いつもこうだ。伝えたいことを全て言っているつもりなのに、他人からは一言多いと敬遠され、仲間たちからは一言足りないと怒られる。
昔は良かった。
闇派閥が幅を利かせている間は、彼らを倒せば感謝されたし、多少の言動の不備は気にされなかった。
しかし数年前に闇派閥がほぼ壊滅し、オラリオに平和が訪れると俺は人々に疎まれるようになった。
仲間たちは平和な世でもますます人々に受け入れられているのに、俺だけが取り残されている。
それだけならまだ良い。俺一人が苦しむならそれは構わない。
俺が余計な不和を撒き散らすことで、何度仲間たちが誤解を解くために走り回ったことか。
共にこの世界に落とされ、何度も助け合った彼らの足を引っ張ることだけは耐え難かった。
だからこうして引きこもる。
俺など、自室の布団乾燥機(日光消毒機能付き)にでもなれば良いのだ。
「良いわけないでしょうがストライク・エア!!」
しかしそんな俺の部屋に乱入する騎士が。
「ランサー、貴方に来客です。丁重にもてなすよう」
「………………。ことわ「丁重に、もてなすよう」…………承知した」
セイバーは何かあるとすぐに聖剣を向ける癖はやめてほしい。
仕方なしに身なりを整え、応接間に向かう。セイバー付き添いで。
公的な用向きで使う円卓の間ではなく、プライベートな来客用の部屋。いったい誰が、俺を訪ねてきたというのか────。
「俺が、ガネーシャだッ!!!!」
ガネーシャ神だった。
「先日は、俺の
ビシィ! といちいちポーズを取りながら語る象神。
そう言えば、あの一団は象のエンブレムをつけていたような……。
「貴方が助けたシャクティから話を聞いて、ガネーシャ神はわざわざお礼を言いに来てくれたのです。とりあえず座って座って、ホラ」
小声で耳打ちしてくるセイバー。
「不要だ。不快になるだけの話をされてもこちらも困る。早々に帰る方が、お前の為でもある」
「ヌゥ!? やはり助けてもらっておいてそそくさと帰ったことは印象悪かったか! しかしこうも堂々と脅迫されると、ガネーシャ、困惑!!」
違う、そうではなく────。
思った通り誤解され、動揺してしまう俺。
言葉が出ず、焦りだけが募る中、凛とした声が響いた。
「あぁ、ガネーシャ。どうか誤解なさらぬよう。ランサーは、自分の言動で貴方が不快な思いをしてしまうことを恐れているのです」
「なに、どういうことだ!?」
「実はランサーは、極度の口下手でして────」
助け舟を出した上で会話を引き継いでくれるセイバー。
いつもだ。いつもこうだ。
俺が何か言うと、セイバーや、仲間たちが助けてくれる。俺は、彼らにいつも救われている。
俺はやはり迷惑だ。
一方的に救われるばかりの関係を、どうして仲間と呼べる────
俯いた俺の肩を、しかし力強い腕が掴んだ。
思わず顔を上げると、滂沱の涙と色んなものを垂れ流す象神。
ちょ、服に垂れてきてるんだが。
「カルナァ!! 苦労していたんだな、お前も!! ガネーシャ、超号泣!!」
困惑してセイバーに目を向けると、冷や汗をダラダラかきながら目を逸らされた。
おいポンコツ、何を言った。
「安心しろカルナ!! お前が人とのコミュニケーションに踏み出せるよう、この俺が全力でサポートしてやる!!」
「は? 待て、どういうことだ」
困惑する俺をよそに、象神は高らかに宣言する。
「感謝は要らん! 眷属を救ってくれた礼だ!! 遠慮も要らん! 何故なら俺は【群衆の主】────そう!!」
「俺が、ガネーシャだ!!!!」
その日から、俺とガネーシャによるマンツーマンのレッスンが始まった。
俺が迷宮に潜っておらず、ガネーシャが暇な時にキャメロットを訪れて様々な状況を再現して会話のトレーニングをしている。
ケース①自己紹介
「俺が、ガネーシャだ!!」
「カルナだ。仲間からはランサーと呼ばれている。もっとも、お前に名乗る価値を見出せないが」
「カルナァ! 初手から喧嘩を売る奴があるかぁ!!」
「ム。違う、今のは、俺の名などわざわざ覚える必要も無いと言いたくて……」
「第一級冒険者のくせに謙遜が過ぎるぞカルナァ!!」
ケース②買い物
「これが、ジャガ丸くんだ!!」
「代金だ。だがお前は、自分が価値に見合う額を請求しているつもりか?」
「カルナァ! ジャガ丸くんのどこに不満がある!?」
「ム。違う、今のは、もっと高くても皆喜んで食べるだろうと言いたくて……」
「世の主婦から怒られるぞカルナァ!!」
ケース③道案内
「どれが、バベルだ!?」
「この街の中心、巨大な塔だ。一度崩されたものを建て直してまで人がすがりつく象徴だ」
「カルナァ! オラリオの存在意義を否定するようなことを言うな!!」
「ム。違う、今のは、神々に遊び半分で崩されながら、それでも下界の人々の安寧のために苦難を乗り越え建て直した希望の象徴と言いたくて……」
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした当時の人々ォ!!」
このように、順調に俺のコミュニケーション能力は向上している。
ガネーシャやよく経過観察にくるライダー曰く、そろそろ一人で買い物が出来るかもしれないと考えることを許される時期に入りかけているかどうか複数人で協議を始めてもいいかもしれないという多数決が可決されたらしい。
セイバーやアーチャーは滅多に顔を出さない。
見ていると疲れるらしい。
恐らく、俺のあまりの上達ぶりに困惑しているのだろう。
しかしレッスンが始まって数ヶ月、ガネーシャを見送った俺に声をかけてくるものがいた。
「おい、【
「ム、お前はいつぞやの……」
俺とガネーシャがレッスンを始めるきっかけになった出来事。その時に助けた女冒険者だった。
「シャクティ・ヴァルマだ。ガネーシャ・ファミリアの団長を務めている」
初耳だった。
他所のファミリアと交流の多い仲間たちと違って、俺は基本的に仲間以外と話さない。
ガネーシャ神も気を遣ってか、護衛の眷属をキャメロットまで連れてくることはなかった。
しかし、これは好機だ。
今の会話能力が向上した俺なら、以前の失言を謝罪することが出来るかもしれない。
頭の片隅で、ガネーシャ神による『カルナ、土下ン座ムはするなよ!』という激励の声が聞こえてくる。了解、土下ン座ム!
勢いよく頭を下げようとした俺だが、機先を制するようにシャクティの声がかかる。
「以前の無礼は詫びよう。……私や仲間の命を救ってくれたことは、感謝している」
「ム。気にするな。大した労でもなかった」
元々彼女たちが削っていたからな。
そんな想いが伝わったのか、シャクティが笑みを浮かべる。頬がひきつっているように見えるが、疲れているのだろうか。
「だが、今は【怪物祭】が近づいている重要な時期だ。これ以上、我等の主神を連れ回すのはやめてもらいたい」
「なんだと?」
「いつもいつも仕事の合間にホームを抜け出してどこに行ってるのかと思えば、お前たちアンリマユ・ファミリアに入り浸っているようだな。何をしているかは聞いていないが、ガネーシャ自身、怪物祭の根回しで忙しい身なんだ。頼む。もう勘弁してくれないか」
怪物祭。
ここ数年始まった、ガネーシャ・ファミリアとギルド主催のイベント。
原作でもガネーシャ・ファミリアは、怪物の調達や当日の見世物や警備と人員を割き、ガネーシャ神もまた、神々への根回しに宴を開くなど、精力的に動いていた。
時期的にそろそろだとは知っていたが、その仕事を抜け出してまで、俺についていてくれたのか……。
「心得た。ガネーシャ神には、俺から伝えておこう」
「……感謝する。それでは」
「待ってくれ」
踵を返そうとする彼女に、思わず声をかけていた。
胡乱な目でこちらに振り向くシャクティ。
「……なんだ?」
「何か俺に、手伝えることはないか? ……ガネーシャ神には恩義がある。彼の、力になりたい」
「! ……意外だ」
俺の言葉にシャクティはわずかに目を見開き、厳しかったその顔をわずかに緩めた。
しかし一瞬後には即座に引き締め、硬い声で返す。
「気持ちはありがたいが、これは我等の責務だ。お前に頼むことは何も無い。……もし気が済まないというなら、祭を楽しんでくれ。きっと、ガネーシャも喜ぶ」
最後の言葉だけは優しく、しかし決然とした足取りで彼女は去っていった。
「フラれちまったなぁランサー」
「……見ていたのか、アヴェンジャー」
「おう、割と序盤からな!」
呆然と立ち尽くす俺を、ジャガ丸くんが入った袋片手にアヴェンジャーがゲラゲラと笑う。
「まぁ実際、ガネーシャの奴最近忙しいんだよ。
「……俺が、邪魔をしていたのか」
「あ、ヤベッ。…………いやいやいや、邪魔じゃねえよランサー。アイツはアイツで、アンタとのレッスン楽しんでたって! ……ただまぁ、時期が悪かったってだけさ」
ポン、と背中を叩き、ホームに帰ろうと促すアヴェンジャーだが、俺はまだ動けない。
「何か、俺にできることはないだろうか?」
「【象神の杖】も言ってたろー? ありゃガネーシャ・ファミリアの問題だ。んー、まぁ強いて言えば、あと二年後くらい、原作始まった時の怪物祭でモンスターが逃げ出さなきゃ、ガネーシャの心労も減るだろうけど」
「なるほど、それがあったか。感謝する、アヴェンジャー」
「おう、どういたしましてー」
脚に全力を込めて跳躍。まだ何か話しているアヴェンジャーを置き去りに、一路目的地を目指す。
すなわち、【
「ま、あの事件止めるとしたらフレイヤ様に喧嘩売るしかないけどな。流石にそんな無茶はできねーよなーってあれ? ランサー? ランサーどこだー? ………………。お前らあああああああ!!!! 全員集合おおおおおお!!!!」
あの後俺は、無事フレイヤ・ファミリアのホームにたどり着いた。
その上であえて言おう。
「単身乗り込んでくるとは恐れ入った。黙ってないでなんとか言ったらどうだ【不滅の刃】ァ!!」
「アンリマユ・ファミリアの金ピカ鎧だ」「レベル6になったからって調子に乗ってるな」「言うに事欠いて、フレイヤ様に頼みがあるだと」「調子に乗りすぎてるな」「「「「殺すか」」」」
「即刻立ち去るなら我等も追いはしない。おい、ヘグニ、お前も何か喋れ」
「………………」
「おい、何故親近感を覚えてるみたいな顔をしている!?」
どうしてこうなった。
門番役の冒険者に、フレイヤ神がいるか、いるなら取り次いでもらえないか聞いたまでは良かった。
問題は、その冒険者が俺の顔を見た瞬間、泡を吹きながら問答無用で槍で突いてきたことだ。
流石はフレイヤ・ファミリアの冒険者。動揺しながらとは思えないあまりにも鋭い一撃に、思わず炎で迎撃したところ、つい火力を出しすぎて、門番もろとも門を吹き飛ばしてしまった。
あ、マズイと思った次の瞬間には、オッタルを除くフレイヤ・ファミリアの第一級冒険者に囲まれていた。←今ここだ。
とにかく、誤解を解かなくては。
「落ち着け。争いに来たわけではない」
「雑兵とはいえ、うちの団員をブチのめしておいてよく言う」
「そこが誤解だ。実力を見誤っていたのだ」
思ったより強かった。手加減を忘れるほどに。
出来るだけ褒める方向で言ったのだが、俺の喉元に突きつけられた銀槍に力がこもる。
「あーそうか、そいつは悪かったな……。出来の悪いもんを見せた詫びだ。フレイヤ・ファミリアの本当の実力ってヤツを、拝ませてやる!!」
何故そうなる。マズイ。流石にこの数の第一級冒険者は骨が折れる。
「待て。お前達は今から俺と戦う気か? ならばはっきり言っておこう」
両手を挙げた俺に、訝しげな目を向けるフレイヤ・ファミリア。
「一方的な蹂躙にしかならんぞ?」
もちろん、蹂躙されるのは俺だ。
俺の穏やかな停戦の申し込みは、しかしブチィッ、という確かに聞こえた音で拒否された。
咄嗟に槍を振り回し、白と黒のエルフによる連撃を真っ向から叩き落す。
そのまま円弧を描きながら、全力の魔力放出を全周囲に放つ!!
「ォォオ!!」
爆炎が巻き起こり、一瞬視界が塞がれるが、これは!!
「やる気か」「やる気だ」「愚かな」「愚かだ」
「「「「死んで償え」」」」
俺の炎を掻い潜り回避した四つ子が一斉に襲いかかってくる。
四種の武器を、槍で二種、拳で一種、蹴りで一種防ぐと、驚愕の気配。
その隙を逃すつもりはない。足元の小石を手に取り唱える。
『
四つ子それぞれに放った石が必滅の光を帯び、命を刈り取らんと迫るが────
「遅い」
神速の猫人が通り過ぎざま、四人を蹴飛ばして宝具から逃れさせた。
速いな。速度だけなら俺を上回るか。
「痛い」「汚い猫の脚で」「許せんな」「殺すか」
「ノロマなテメェらが悪い」
俺を差し置き一触即発な空気になる四人と一人。
ウチのファミリアだと、セイバーとアーチャーがよくあんな感じになる。
ということはつまり、
「仲が良さそうで安心した。どうか俺に構わず戯れてほしい」
『殺す!!!!』
何故だ。
四つ子から離れ、全力の疾走を始める猫人。
交差しながら何度も槍と槍で打ち合うが、一合ごとに速さが増していく。
もはや銀の轍だ。
鎧により有効打は一撃も貰っていないが、このままは良くない。
猫人一人ならともかく、後の六人を相手取りながらこのスピードは放置できん。
仕方ない。
鎧で一撃受け止め、カウンターを叩き込もう──!
「とことん舐めてくれる!!」
守りの構えを解いた俺に縦横無尽の軌跡を描きながら迫る猫人。
さぁ、勝負だ!!
「双方、武器をおさめよ」
しかし必殺の衝突は、割り込んだ蒼銀の騎士により阻まれた。
不可視の聖剣が俺の槍を押さえ、猫人の槍を掴み取りながら、セイバーは凛と顔を上げる。
「この場はアルトリア・ペンドラゴンが預かる! これ以上続けたくば、まずは私が相手になろう!!」
突然のセイバーの乱入に刹那、俺と対峙する猫人に動揺が見えた。
だが即座に振り払い、掴まれた槍を手繰り寄せ神速の突きを放つ。
だが、
「な!?」
「無駄です、【
「チィィッ!」
大きく後方に跳躍する猫人。
同時に、今まで背後に控えていたフレイヤ・ファミリアの団員が前に出る。
「あくまで続けるつもりですか、アレン・フローメル」
「先に吹っかけてきたのは、その男だろうがぁ!」
「………………(確かに)。ライダー、やってしまいなさい!!」
「はいはーい!!」
何事か言いかけたセイバーが飲み込み、号令を掛けると、天を駆ける騎兵が現れた。
その手には巨大な笛。あれは確か……
『
響き渡る大音声。竜の咆哮に匹敵するその音に、第一級冒険者以外のフレイヤ・ファミリアの団員大半がうずくまる。
さもありなん。あれは弱い怪物程度なら一掃する、ライダー秘蔵の音響兵器だ。
無事な幹部達も平衡器官を僅かに乱され、隙を見せた瞬間、
「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!!!」
疾走する黒騎士。白のエルフを一撃で吹き飛ばし、黒のエルフと真っ向から斬り合い、凄まじい膂力で圧倒する。
しかしその無防備な背に迫る四つの影────
「【湖の騎士】まで現れた」「女神の庭を荒らす不届きものども」「許してはおけぬ」「全員殺せ」
「いいえ、誰一人として、私が死なせません」
────の前に立ちはだかる、白衣の錬金術師。
五大のエレメンタルを従え、四つ子の小人と交戦開始する。
「アンリマユ・ファミリアァァ……! 本気で戦争を始めたいらしいな!!」
「それは違う。アレンよ。私達は貴方がたとランサーの誤解を解きにきただけだ」
「いけしゃあしゃあと!!」
激昂してセイバーに襲いかかる猫人。
しかしその神速の一撃は、迫る矢を叩き落とすために振るわれた。
「動くんじゃあねえぞ、アレン。うちの王様のご命令だ」
「【
矢を放ったのはアーチャー。
樹上で笑みを浮かべながら、猫人に弓を向けている。
何が起こっているのか、理解が追いつかない。
しかしそんな俺の困惑を吹き飛ばす、最後の一撃が放たれた。
「貴方達、武器を下ろしなさい」
耳朶から脳髄を犯すような甘い声。
フレイヤ・ファミリア主神を務める美の女神が、オッタルを従え門の外から現れたのだ。
「ヒー、なんとか間に合ったぜー」
その後ろを脇腹を押さえながら息絶え絶えに追いかけるアヴェンジャー。
一体何が。
「アレン、一体何があったのかしら?」
「フレイヤ様……! アンリマユ・ファミリアの【不滅の刃】が宣戦布告してきたのです」
「ふぅん? カルナが?」
蕩けるような目で俺を眺めるフレイヤ。
これはチャンスだ。
「それは違う、フレイヤ神よ。俺は貴方に頼みがあって訪ねてきたのだ」
「私に頼み?」
「あぁ。実は────」
「待ちなさい。ダメよ、聞かないわ」
しかし、俺の頼みは口から出る前に拒絶された。
「私の眷属達の早とちりもあったようだけど、私の庭をここまで荒らしておいて、頼みを聞いてくれだなんて。虫が良すぎると思わないかしら?」
言われて、グルリと見渡す。
俺が焼いたり、バーサーカーが踏み荒らしたり、ライダーの音波攻撃で吹っ飛んだり、キャスターが焼いて踏み荒らして吹っ飛ばして凍らせたりした惨状が広がっていた。
これは酷い。
「ここまでやっておいて、誤解だは通らないわ。いいえ、私の矜持にかけて通さない。言いたいことはわかるかしら」
女神に気圧され、押し黙るしかない俺。
しかし、俺と女神の間に、小さな背が割り込んだ。
「心得ています。女神フレイヤ。ここまで来たからには双方、然るべき決着をつけなければ遺恨を残す────
「あら、うふふ、流石はアルトリア。話が早いわ」
「こちらが勝てば、貴方にはランサーの願いを聞き入れてもらう」
「えぇ、いいわ。でも、私が勝った時は貴方は何をくれるの? 女神の矜持を踏みにじる対価に、何を差し出せるというの?」
蛇のように妖しく微笑むフレイヤ。
セイバーはその目をしかと見据えて応えた。
「そちらの勝利の暁には、我が身を差し出そう。煮るなり焼くなり、好きにするが良い」
フレイヤ・ファミリアとアンリマユ・ファミリア。
都市を代表する派閥同士の戦争遊戯の情報は、瞬く間に都市中を駆け巡った。
誰も彼もがその話題で持ちきりだ。
神会では神々が────
「なんでなんでなんで!? どういう経緯でそうなったの!?」
「表向きは残存する闇派閥への示威行動らしい。だが実際は、【不滅の刃】がフレイヤ・ファミリアに殴り込みかけたんだとよ!!」
「カルナが? へー、あの陰気な槍使いがね。まぁいいや、それで、戦闘方式は!?」
「場所は都市郊外、時間は無制限、方式は一対一の決闘だ!」
「そりゃまたわかりやすい! で、アンリマユ・ファミリアは誰が出る? 騎士王か、湖の騎士か、不滅の刃の誰かだろ!?」
「不滅の刃、カルナだ。そしてフレイヤ・ファミリアの方は────」
「あぁ、そっちは言わなくても分かるよ。こんな大一番、出てくるのはアイツだけだろ────オッタルだ!!!!」
酒場では冒険者が────
「さぁ張った張った! どっちに賭ける!? 今のオッズは7対3でオッタル優勢だ!!」
「猛者に三万!」
「オッタルに六万!」
「フレイヤ・ファミリアに五万!」
「カルナに五十万だああああ!!」
「うおおおおお!!!!」
彼らを良く知る者達も────
「アルトリア、大丈夫かな……?」
「戦うのがカルナなら心配はいらない、と言いたいが、相手がオッタルだからね。難しいかもしれない」
「おい、フィン。不安がらせるようなことを言うな」
「ふん、まさかあのカルナが、こんな大胆なことを仕出かすとは思わんかったわい」
「ガネーシャ、これは……」
「…………。俺が、ガネーシャだ!!」
そして当事者たちもまた────
「オッタル。遠慮は要らないわ。殺す気でかかりなさい」
「……よろしいのですか? 万が一があれば、騎士王を我が陣営に迎え入れたとしても、恨みを買う恐れがありますが」
「その時は仕方ないわ……。私ね、カルナ、あの子のことが、あまり好きじゃないの」
「……」
「アルトリアに匹敵、いいえ、凌駕しかねない太陽の輝きを宿しておきながら、何かが彼の魂を曇らせている。あのもどかしい光が、たまらなく嫌なの」
「…………承知しました」
「ふふっ、お願いね、オッタル」
「良かったのか、セイバー。あんなこと言っちまって」
「仕方ないでしょう、ああでも言わなきゃ、本気で最後の最後まで潰し合う戦争になってましたよ」
「ねーねー、ところでランサーは?」
「……彼は、今日もダンジョンです。きちんと食事をしていれば良いのですが。もしくは私の霊薬で栄養補給をしていれば良いのですが」
「万が一体調不良で負けでもしたら、その時は私が奴を◾️◾️◾️◾️──!!」
「いやこえーよバーサーカー!!」
多くの思惑が入り乱れる中、俺は、何も出来ずにいた。
あの後ファミリアに帰還した俺を、彼らは責めなかった。
いや、責めようとしたのかもしれないが、その前に俺はダンジョンに逃げ出した。
何も考えず、無心にモンスターを狩って、逃避した。
結局、戦争遊戯当日になるまで、俺は誰とも言葉を交わすことは無かった。
そして迎える決戦当日。
巌の如き体躯を誇る猪人と俺は、10Mほどの距離を開けて対峙している。
上級冒険者であれば、無にも等しい距離。
何かのキッカケがあれば即座に開戦する緊張感の中、オッタルは静かに口を開いた。
「個人的には、お前に恨みはない」
「?」
「だが、お前の存在が我が女神を煩わせるというのなら、俺に躊躇いは無い!!」
「……御託は要らん。かかってこい」
はるか遠方、オラリオ全土で遠見の鏡が開いた瞬間、俺とオッタルは激突した────!!
「うわぁ、どっちも化け物じみてるねーセイバー」
「……」
「あれ? どっか行くの?」
「えぇ、見ていられませんので」
「カハッ」
戦闘開始からどれほどの時が経ったことか。
クレーターどころか、地形すら変える激突を幾度も繰り返した末、地に伏しているのは俺の方だった。
戦力は五分とは言わないまでも、そこまで差は無かった。
レベル7の奴とレベル6の俺では、確かにステイタスに開きはあったが、俺の魔力放出はその差を埋めた。
加えて、俺の鎧は全てのダメージを十分の一に削減する上、高い再生能力すら所有者に与える。
今までどんな窮地も強敵も、この鎧を越えて俺に致命傷を与えることは出来なかった、はずだった。
だが奴の攻撃は、削減されてなお、俺を圧倒するに十分すぎた。
頭の中に湧き上がるのは大量の疑問符。
何故だ、ステイタスにそこまでの差は無い。
何故だ、奴の攻撃のほとんどは俺にダメージを与えられない。
何故だ、技量は、圧倒的に俺が上回っている。
なのに何故、俺は奴に負けている────!?
「何故、という顔だな」
地に伏す俺を追い詰めるように、オッタルが一歩ずつ近づいてくる。
その姿は凄惨の一語に尽きる。
焼け爛れた肌、幾つもの裂傷、打撲痕、骨折────ダメージは、俺よりはるかに多いはずなのに。
何故、勝てるイメージが全く湧かない!!
「実際に打ち合って、フレイヤ様が仰ることが理解出来た」
ゴボリ、と血を吐き出しながら、オッタルは言う。
「お前と俺の間に差はほとんどなく、お前の技量は俺を遥かに超える。なのに何故お前は地に這いつくばっているか────お前が、偽物だからだ」
不意打ちの刺突────避けられた。
「お前の攻撃には、重みがない。その技を、その力を頼りにしながら、その実自らを少しも受け入れていない」
密着状態からの拳打────防がれた。
「格下相手ならそれでも何の問題も無かっただろう」
突き放しながらの蹴撃────掴まれた。
「だが、今のお前の敵は──」
『梵天よ、地を覆え!!』
ゼロ距離からの宝具解放────首を傾けただけで、避けられた。
「──この俺だ」
至近で隕石が降ってきたような衝撃、一拍遅れで殴られたのだと理解する。
ただの拳がこの重み。
もはや笑えてきた。
あぁ、理解できた。
この男の言うことが正しいのだろう。
俺は、カルナの力を頼りにしながらも、人と満足に言葉一つ交わさないこの身が嫌で嫌で仕方なかった。
なるほど、偽物だ。折り合いをつけて受け入れている仲間たちとはまるで違う、紛い物の贋作だ。
そしてオッタル。この男は俺とは違う。
それこそ、本物のカルナと同じように、大英雄と呼ばれるような超越者。
影法師にすらなりきれないこの俺が敵うはずがない────
絶望に閉ざされていく意識の中で、しかし声が響いた。
「顔を上げなさい」
視界の先には、決然とした足取りで近づいてくる小さな少女の姿。
その姿を見た瞬間、クッ、と思わず笑いが出そうになった。
ある意味、俺よりも変わってしまった存在。
少女になってしまった頃は、毎日のように悲鳴を上げていたのが、いつの間にかふてぶてしい態度を身につけた、親愛なる仲間。
「そんなところで這い蹲る姿は、
いつもいつも抜けているくせに、こうと決めた時は恐ろしい勢いで突き進む頼れる団長。
あぁ、お前たちの存在があるから、紛い物でも俺は戦ってこれた。
「王として命じます。────勝ちなさい、
『
残された僅かな力を振り絞って宝具を放ち、オッタルを吹き飛ばす。
「無駄な足掻きを……!!」
大剣の一振りで宝具を相殺するその姿に笑いがこみ上げてくるが、あぁ、十分な距離は稼いだ。
この距離なら、アレを撃てる。
「オッタル、確かに俺は紛い物だ。ひどく歪で、不出来なのだろう────だが、友が俺をカルナと呼ぶのだ。その名にかけて、俺は負けん」
「何を──!」
ブラフマーストラをかき消したオッタルが駆けるが、そこからでは間に合わん。
俺は、最後の宝具を開帳する。
『神々の王の慈悲を知れ』
ミシリ、と自分の中の致命的な何かが軋んだ。
『インドラよ、刮目しろ』
神槍が光を帯び、大気すら歪める熱を放つ。
『絶滅とは是、この一刺』
間に合わぬと悟ったオッタルが大剣を投擲するが、俺に辿り着く前に蒸発して消えた。
『焼き尽くせ────』
『
「オイオイオイオイ!!」
「やべーぞアレはああああ!!!!」
戦場のはるか遠方、オラリオで神々が悲鳴を上げる。
それは、極大の光だった。
地上であり得てはいけないエネルギーの奔流。
幾柱もの神々が城壁を上る。
たとえ強制送還されても、あれを近づけてはいけない。
あれは『神の力』に匹敵──否、あれはまさしく『神を殺す力』だ。
あんなものが到達しては、オラリオなぞ一瞬で滅ぶ。
決死の覚悟で力の行使に取り掛かろうとした神々は、
しかしもう一つの奇跡を見た。
迫り来る光の奔流に、毅然と立ち向かう少女騎士。
風の鞘を解き放ち、星の聖剣の姿を晒した彼女は、高らかに唱える。
彼女が保有する、最後の奇跡の名を────!
『
それは、騎士王がいずれ至る理想郷。
異なる世界において最強の護りと称えられ、五つの魔法すら干渉させぬ究極の結界。
たとえカルナの宝具が神をも焼き殺す光であっても────世界そのものを焼き尽くすことは、出来はしない!
セイバーの眼前に展開した数百もの光塵は神殺しの光を見事に受け切り、散らしてみせた。
オラリオを飲み込まんと走った一撃は、僅かに外壁を抉るに留められた。
それを確かめた俺は、大の字に空を仰いだ。
もう指一本動かす気力も無い。
そんな俺の首元に突きつけられる短剣。まだそんな武器も持っていたのか。
見上げる俺の前で、苦々しい顔をしながら、しかし五体満足な姿でオッタルは立っていた。
「……何故、俺を外した」
「語るまでも無い。と言っても、納得してくれないだろう。アレは、証明だ」
「……?」
「お前と俺の力比べは、確かにお前が上だった。だが、カルナはお前に負けてはいない。そのためだけの一撃で、勝者を殺すわけにはいくまい」
「……今のお前を見ればわかる。あの一撃は、お前の全霊だったはずだ。もう二度と撃てないほどの。それを、勝利を譲ってでも外してみせたというのか」
「俺の王は、勝て、カルナと言った。俺はそれを果たしてみせた。それ以上何を望む」
「……ふん」
鼻を鳴らしてこちらを見下すオッタル。
「槍だけではないな。お前の鎧からも力を感じない。代償はとてつもなく大きかったようだ」
「あぁ、またセイバー達に怒られる。困った。お前も一緒に言い訳を考えてくれないだろうか?」
「断る」
そのまま背を向けて、足を引きずりながらオラリオに向かい始める。
なんて冷たい奴だ。
しかし、その足が不意に止まった。
「鎧に守られていた時のお前は、厄介ではあったが恐ろしくはなかった。百戦えば、俺が百勝つだろう」
「……?」
「……だが、今のお前となら、勝負はわからん。また戦おう、
肩越しに振り返るその目は、確かに笑っていた。
「この勝負、お前の勝ちだ」
…………。
忘れていた。戦争遊戯だった、これは。
まぁ、なんかわからんが勝てたから良しとしよう。
うんうんと一人納得する俺に突進してくる小さな騎士。
「なーにいい感じにしめようとしてるんですかランサアアアア!! よくもノータイムでヴァサヴィシャクってくれましたね貴方はああああ!!」
「グフゥッ、セイバー、今の俺、鎧が剥げて血みどろなんだが」
「自業自得でしょうがあ!」
「それを言うならお前だって、あんな風に煽れば俺が宝具を使うとわかっていたはずだ……」
「それは別にいいんですけど心の準備とかあるでしょう! 躊躇なくオラリオに撃つから避けることも出来ませんし死を覚悟しましたよ!! 怪我が治ったらエクスカリケツバット100本いきますからね!!」
ふん! と気合と共に俺を担ぐセイバー。
待て、待て、まだ聞きたいことがあるんだ。
「セイバー、怒っていないのか?」
「めちゃくちゃ怒ってますけど!?」
「そちらではなくて……勝手に、フレイヤ・ファミリアと戦端を開いたことだ」
意図してではなかったが。
しかしセイバーは、はぁ? と嫌そうな顔を浮かべる。
「それも怒ってますし、アヴェンジャーから話聞いた時はひっくり返りかけましたよ! ……ただまぁ、もうその手のポンコツ騒動は慣れました。あぁ、はいはいいつもの感じですねーって気分でした」
「お前の身柄まで賭けさせた。相手はあのオッタルだった」
「勝ったじゃないですか、なら良いですよもう」
「……それ以外にも、いつも迷惑をかけている」
「他のポンコツどもに教えてあげてください、その言葉」
よいしょ。と俺を抱え直しながら、セイバーは語る。
「あのですね、ランサー。いくら私でも、たとえばライダーやアーチャーが戦うなら、あんな軽く決断できませんよ」
「……?」
「貴方はいつも戦闘で私達を助けてくれてました。戦いで一番頼りになるのは貴方です。だから今回も、信じられたんですよ。貴方が負けるわけないので」
ジワ、と胸が熱くなる。
何気なく語る一言一言が、ひび割れた心を埋めてくれる。
「まったく、そんな下らないこと気にする暇があったら、貴方もツッコミ側に回ってくださいよ。最近またキャスターが怪しい薬開発して困ってるんです」
「……善処しよう。それはそうとセイバー、少し降ろしてくれ」
「? はい」
いつもバーサーカーがやっている姿を思い出しながら、セイバーの前に跪く。
「改めて誓おう。サーヴァント、ランサー。これより俺の槍は、お前達に捧げる。お前達の眼前に立ちはだかる如何なる困難も、俺が貫いてみせよう」
セイバーは一瞬、キョトンとした顔を浮かべるもすぐに満面の笑みを浮かべ────
「はい! 契約成立ですね!!」
その後の話
「それで、カルナ。貴方は私に何を望むの?」
「一つだけ。怪物祭を使って、人を鍛えたりしようとしないでくれ。これから、毎年だ」
「ええ、それで?」
「…………。それだけだが」
「…………貴方、その為だけにオッタルと戦ったの?」
「予定外だった」
「ふ! ふふふふふふ! ええ、ええ、良いわ、カルナ。悩みが消えたのかしら、今の貴方、とっても素敵よ。わかったわ、これから先、何があろうと、私は怪物祭を妨げない。私の誇りにかけて誓うわ」
「感謝する」
「……ところでカルナ。どうして急に、私にそんなお願いをしにきたの? 誰かに何か言われたのかしら?」
「? ……いや、別に。まぁ直前までアヴェンジャーとは話していたが……」
「あっ。…………ふぅん?」
「ぶぇえええっくしっっっ!」
「ちょ、汚いですよアヴェンジャー!」
「わりーわりー、誰かが俺の噂でもしてんのかねぇ?」
「申し訳ありません、フレイヤ様。みすみす勝利を逃しました」
「良いのよ、オッタル。素晴らしい戦いだったわ。……アンリマユがどういうスタンスなのか、少しだけ理解できたし、ね」
「はっ」
「そうねぇ、でもやられっ放しは性に合わないわ。今度カルナがランクアップしたら、私が二つ名を決めちゃおうかしら」
「……はっ」
「何が良いかしら? 貴方ほどの勇士と戦って得た権利を、軽く他者のために捧げてしまう姿……そうね、【施しの英雄】なんてどう?」
「よろしいかと」
「ふふっ、ありがとう、オッタル!」
「俺が! 見舞いに来た、ガネーシャだ!!」
「ム、すまない、ガネーシャ神。今年の怪物祭に参加出来なかった」
「構わない! それよりも聞いたぞカルナ。お前、我がファミリアのために戦ってくれたそうだな!」
「……ム?」
「そんなお前に謝罪がしたくて、シャクティも見舞いに来てくれたぞう」
「…………ム??」
「その、カルナ、すまない。ガネーシャから聞いたのだが、どうも私達は、お前のことを誤解していたというか……」
「気にすることはない。俺が招いた舌禍だ。むしろ俺こそ詫びるべきだろう。……あの時俺は、お前達を賞賛したかったのだ。ステイタスで劣ろうと、知恵と連携と勇気で一歩も退かず戦う姿、素晴らしかった。特にお前の勇姿は、輝いて見えていた。俺程度で助力になれていたのなら、これに勝る喜びはない。……どうだろう、俺の想いは正しく伝わっているだろうか?」
「〜〜〜〜ッ!!」
「ム? どうした、顔が赤いぞ……行ってしまった」
「あー、カルナ? 一言足りるようになったのは良いが、お前に足りてないのはそこだけじゃなかったみたいだ。ガネーシャ、超反省」
「?????」
「いやー、しかし今回は割と綺麗な感じに終わりましたねアーチャー」
「本当にな。結果的にガネーシャ・ファミリアとの結びつきもますます強くなったし、ランサーは上位経験値が溜まってランクアップ見えてきたし、結果オーライだな」
「ねーねー、セイバー、なんかギルドとフレイヤ・ファミリアから手紙届いてるよ?」
「ええと何々、【戦いの野】修繕費用請求書及びオラリオ外壁修繕費用……!? き、金額は!? いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、えっと、えっと、えっと……」
「おいおいおい、こんな蓄えウチにねーぞ!?」
「……ラ」
「ら?」
「ランサアアアア!! 暴れ過ぎです、ランサアアアアアアアアアアアア!!!!
三行でまとめ
・コミュ障のランサーさん、ガネーシャ様によるリハビリで社会復帰を目指す。
・ガネーシャ様への恩返しに、フレイヤ・ファミリアに殴り込みをかけるランサーさん。
・無事、アンリマユ・ファミリアが借金を背負いました。めでたし。
この話だけで投稿する度胸がなかったので、番外編③と抱き合わせ投稿しました。
次から本編に戻ります。気長にお待ちください。
そして以下、更なる閲覧注意としてランサーもどきさんのステイタスまとめです。
妄想爆発なので、精神汚染が嫌な方は見ない方が良いです。
こういうステイタスとか作るの、めっちゃ楽しいですよね。
【ネーム:カルナ】
【レベル:7】
【力:I0、耐久:I0、器用:I0、敏捷:I0、魔力:I0】
【奇運:H、耐異常:D、魔防:E、堅守:E、精癒:F、拳打:I】
魔法:梵天よ、地を覆え
ご存知ランチャーの代名詞、目からビーム。正確には投擲攻撃に力及び魔力ボーナスを加算したダメージを与える。格上の相手に対して使用不可の呪いはオミットされている。
バリエーションとして魔力放出(炎)との合わせ技、梵天よ、我を呪えが存在する。
魔法:日輪よ、具足となれ
常時発動型魔法……だった。
効果は凄まじく、全ダメージ十分の一にカット。呪詛や毒に対しても高い耐性を誇り、装備者に強力な再生能力を付与……していた。
現在は大きく制限がかかり、真名解放時のみ、莫大な精神力消費と引き換えに全盛期の力を一瞬だけ蘇らせる。
それ以外は、微弱な再生能力がかすかに残滓として残っているのみだが、深層に一人旅をよくするランサーにとってはあるだけありがたいので、特に気にしていない。
魔法:日輪よ、死に随え
対神魔法。
完全開放したエクスカリバーを除けば、地上で最強のエネルギーを誇る。その力は仮に直撃させれば、神を天界に送還させるのではなく、完全に消滅させられるまさにチート中のチート。
あえてオッタルに当てなかったことと、アヴァロンに防ぎ切られたので一切活躍していない上に、もう二度と撃てない+鎧も没シュートという良いとこ/zeroだった可哀想な子。
しかしその脅威はオラリオ中に刻まれており、恐らく二度と使用不可能だと考えている神々すらカルナ最強説を支持するほどの衝撃を与えた。
【スキル】
・魔力放出(炎)
原作通り
・無冠武芸
原作通り……だが、オラリオ内に限って言えばカルナの名を知らぬ者はいないので、ぶっちゃけ無いのと一緒。
・貧者見識
原作通り。偶然にも、下界の子供達の本質を見抜く神々の能力に酷似していたため、後述の神性スキルと合わせてカルナ最強説に一役買ってる。
・対魔力
原作通り
・神性
半神というものが(恐らく)存在しないダンまち世界において、ぶっちぎりでヤベースキル。
神の力を扱うことこそ出来ないものの、全ステータスに微量補正、成長補正、自身のレベル未満の太陽神系ファミリアの冒険者からの攻撃に対する耐久上昇に加え、神々と同格の精神耐性を与える。下界の魔術的な力でランサーの精神に悪影響を与えることはほぼ不可能。
更に、神が神の嘘を見抜けないように、ランサーの本質を見抜くことは神にさえ出来ない。
これのせいでランサーへの誤解が加速したといっても過言ではない。
神々の間でまことしやかに囁かれるカルナ最強説の一因。
【備考】
アンリマユ・ファミリア最強戦力。特に対多数戦、殲滅戦において最強の火力を誇る。
倒したい時は、悪口で責めよう。精神的には結構脆いぞ。