ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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|ω・`)<アケマシテオメデトウゴザイマス



第11話の①

「うーん、犯人、どこ探してもいないなー」

「そ、そうですね。アイズさんも見つかりませんし……」

 

 レフィーヤとティオナの二人は十八階層で犯人捜索の傍ら、飛び出したアイズの捜索も行なっていた。

 正体不明の高レベル冒険者(?)が潜伏している状況で、いかな剣姫とは言え単独行動は危険すぎる。本来なら、ロキ・ファミリア総出で見つけて速やかに合流を果たしたいところだが──。

 

 レフィーヤは苦い表情を浮かべる小人族の勇者を思い出した。

 

 

 

 

 

『相手はアルトリアとカルナ、二人を同時に相手取る怪人だ。たとえダメージが残っていても、恐らく僕とリヴェリアの二人がかりでなければ厳しい相手だろう』

 

 故に、フィン達はリヴィラで待機だ。

 捜索班が怪人を見つけ、魔剣でも魔法でも火矢でも何でも良い、合図を上げ次第現場に急行する手筈となっているのだ。

 ……当然、最初に出会った捜索班は、フィン達が間に合うまで怪人の脅威に晒されるだろう。

 

『君達には危険を押し付けることになる。だが、どうか理解してほしい』

 

 申し訳なさそうな勇者に、リヴィラの冒険者代表として会議に参加していたボールスはフン、と鼻を鳴らした。

 

『合図さえ上げれば逃げ出しちまえば良い俺らより、あのアマとやり合わなきゃならねぇテメェらの方がよほど危ねぇだろうが。余計な気をまわす暇があったら準備でもしときやがれ』

 

 なんとも頼もしい憎まれ口に、フィンは深々と頭を下げた。

 ガクガクと足を震わせながらそれでも強がる漢に、それ以上の言葉は不粋だろう。

 背後に控えるロキ・ファミリアの面々に向き直り、それぞれに指示を飛ばす。

 

『聞いての通りだ。リヴェリアは僕と待機。ティオネ、君はリヴィラの冒険者と共に怪人の捜索を頼む。ティオナとレフィーヤは二人で動いてくれ。……三人とも、もしアイズを見つけたら合流して行動を共にするように』

 

 

 

 恐ろしいほど真剣な光を湛えた団長の眼を思い出し、レフィーヤの背はブルリと震えた。

 迷宮探索の際のフィンも真剣ではある。だが、そこにあるのは冷静さと頼もしさであり、今回のような剣呑な雰囲気は初めて見るものだった。

 

「それだけ、今回の相手を警戒しているということでしょうか……?」

 

 ポロリと零れた言葉に、先を行くティオナが『んー?』と呑気な声を上げながら振り返る。

 

「まぁ、アンリマユ・ファミリアが二人も居てコレだからねー。フィンもいつも以上にホンキになっちゃうよ」

 

 その言葉にあるのは、絶対の信頼。

 それはフィンだけではなく、悪神の眷属(アンリマユ・ファミリア)に対しても向けられたものだ。

 その言葉に、レフィーヤも深く頷く。

 彼女が最も強く憧れる冒険者はアイズ・ヴァレンシュタインだが、そのアイズが尊敬するアルトリア・ペンドラゴンもレフィーヤの尊敬対象であった。

 そしてアルトリアの左右を守護する最強の戦士(カルナ)最高の騎士(ランスロット)もまた、敬意を抱くべき相手だろう。

 

 しかしそんなレフィーヤも、次にティオナが放った言葉には思わず首を傾げてしまう。

 

 

「あーあ。こんな時にロビンが居たら、すーぐ解決しちゃうのにな〜」

「ロビンフッドさん、ですか……」

 

 その名を持つ青年のことは、当然レフィーヤも知っている。

 古い伝承に登場する妖精にあやかり、【皐月の王(メイキング)】の二つ名を持つ緑衣の弓兵。森の守り手。(なばり)の賢人。

 ……正直、故郷の同胞(エルフ)達が聞けば露骨に見下すか、怒り出しそうな異名の数々だ。

 

 もちろん彼はレベル5、都市有数の強者だ。尊敬すべき相手だということはわかっている。わかっているのだが……。

 

「なになにー、レフィーヤってロビン嫌いなのー?」

「い、いえ! 嫌いというわけではないんですけどそのなんというか!?」

 

(ただ本当を言うと、正直、あの人は苦手というか……)

 

 同盟を組んでの遠征でも最前線を突き進むアルトリア達と違い、ふらりと居なくなったと思えばシレッと隊列に戻ってきて干し肉をかじっていたり。

 戦闘の際も皆が激しく戦っている中、一人姿が見えないことなどしょっちゅう。

 自派閥の幹部であるベート・ローガとの仲の悪さはオラリオでも有名で、ロビンと出会した後のベートは普段の三割増しで話しかけづらい。

 いつもよく言えば飄々とした、悪く言えば軽薄な笑みを浮かべて何を考えているのか分からない態度。

 

 更にこれが最も重要なことだが────あの男はナンパ師として有名なのだ!

 

 ロキ・ファミリアの一部──オブラートに包んだ言い方をすると男女関係において清らかな身体の──男性冒険者の怨嗟に満ちた目撃談によると、見るたびに違う街娘を口説いては侍らせる手癖の悪さ、その上当の娘達からは弄ばれた被害報告も出させない手際の良さ、さらなる噂によれば歓楽街にロビンフッドが現れればイシュタル・ファミリアの戦闘娼婦(バーベラ)が眼の色を変えて引き込もうとするらしい。

 

 平均的な同胞に比べれば、下心の無い接触等にはとても寛容なレフィーヤとはいえ、そこは清らかなエルフの乙女。この時点であまり良い気はしない。

 しかもそれだけではない────あろうことかあの男はしょっちゅうアイズに粉を掛けているのだ!

 二人きりで話している──しかもアイズがはにかむように可憐な笑顔を浮かべている──光景を見つけ、何度ハンカチを噛むような想いをしたことか。

 

 レフィーヤが入団した当初からアイズ相手に気安かったが、最近は特にそれが顕著だ。

 アイズに憧憬を抱くレフィーヤとしてはとても認められないのだが……。

 

(でも、私なんかが、偉そうに何か言えないですよね……)

 

 先の遠征以来、自信喪失が続いているレフィーヤはそこで止まってしまう。

 自分がどう思おうと、ロビンは偉業を重ねてアイズと同じ高み(レベル)に至った強者。どうこう言うなど恥知らずにも程がある。

 

 だからこその、『苦手』だ。

 

 押し黙ったレフィーヤを見て、何かを察したようにティオナが口を開く。

 

「あー、あのねレフィーヤ。ロビンはさ────」

 

 

 ポツポツと、レフィーヤの誤解を解くために言葉を並べるティオナ。

 しかし、彼女のロビン評は今ひとつレフィーヤにはピンと来ないものだった。

 曖昧な表情でその話を聞いていたレフィーヤは、しかし不意に声を上げる。

 

「あ、あれを見てくださいティオナさん!」

 

 その視線の先には、女性らしき冒険者がコソコソと挙動不審な動きをしていた。

 話に聞いていた怪人とは似ても似つかないが、妙に怪しすぎる。

 

 うん、と頷きあった二人の少女は、とりあえず話を聞くことにした。

 

 

 

 時間経過(かくかくしかじか)

 

 

 

 多少のイザコザはあったものの女性を確保した二人。

 聞いた話によると、彼女は昨夜襲われたハシャーナからその原因と思われる荷物を預かった冒険者だった。

 ルルネ・ルーイと名乗った犬人の少女曰く、第一級冒険者が出張り戦争じみた戦いを繰り広げるほどヤバい案件とは思っておらず荷物を手放すことも考えたが、中身を知ってしまった自分を例の怪人が見逃してくれるかもわからず、恐怖に震えながら今まで隠れていたらしい。

 

 

「んー、話はわかったけどさー、やっぱり一人でいるのは危ないよ。今ならあたしも付き添ってあげるからさ、フィン達のところが一番安全だと思うよ?」

「う、やっぱりそうだよね……。わかった、ついていくよ」

 

 先程まで怯えていた少女も、レベル5のティオナが言うならば、と素直に頷いてくれた。

 この強さへの信頼、これこそが第一級と呼ばれる冒険者だ。

 

 仮にレフィーヤが同じことを言ってもこうスムーズに話が進んだだろうか。

 密かにため息をつく少女────

 

 

 

 

 

 

 

 その背後で、地面が弾けた。

 

 

 

 

 

 

「レフィーヤ!」

「え? ────きゃあ!?」

 

 刹那の攻防だった。

 

 地面を割りながら現れた食人花。

 本来の歴史と違い初見ながら、その異形に怯むことなく駆けたティオナがレフィーヤを突き飛ばすと同時に大双刃で真っ二つに引き裂いた。

 まさに一瞬と言うべき早業。

 

 

 

 

 

 ──その一瞬こそ、襲撃者が欲していたものだった。

 

 

「ハァッ!!」

「グッ!?」

 

 レフィーヤを庇い、僅かな──しかし同格以上の強者にすれば、致命的な隙を突いて現れた怪人が袈裟に振るった刃が、一刀の下ティオナを切り捨てる。

 

 

 

「────ティオナ、さん?」

 

 

 鮮血を撒き散らし、崩れ落ちるアマゾネスの少女を、レフィーヤは呆然と見ていた。

 ほんの数秒前まで無邪気な笑みを浮かべていた仲間が、虚ろな眼で倒れている。

 あまりに唐突──あまりに現実感の無い光景に、レフィーヤの頭が真っ白になる。

 叶うなら、意味のない絶叫を上げてしまいたい──否、彼女は叫ぶべきだった。

 

 ドシャリ、と。

 胸を貫かれたルルネが、レフィーヤの隣で倒れた。

 

 彼女が持つ荷物を奪った怪人────レヴィスが、無感情な眼でレフィーヤに手を伸ばす。

 何の気負いもなく、しかし蛇のごとく絡みついた指が、レフィーヤの喉を締め付けた。

 

「カッ、は、──!?」

「仲間がやられても呆然とするだけか。まぁ、その無能さのお陰で、厄介な第一級冒険者の隙をつけたがな」

 

 治りきらず、焼け爛れた肌を晒しながら、レヴィスは独りごちた。

 

「せめてもの慈悲だ。一思いに殺してやろう」

 

 

 徐々に強まる圧迫に、レフィーヤの意識が急激に遠ざかる。

 

 その中で、彼女の頬を涙が伝った。

 

 それは迫りくる死への恐怖────などでは無い。

 

 

(また、わたしは、なにもできずに──)

 

 

 ティオナがやられた後、即座に魔法を使えば何か出来たかもしれない。

 

 ティオナが襲われた時、自分が盾になればティオナが撃退してくれたかもしれない。

 

 そもそも、自分を庇わなければ、ティオナが隙を晒すことも無かっただろう。

 

 

(わたし、なんか、いな、ければ……)

 

 

 無駄だった。

 

 憧憬に近づかんとレフィーヤ・ウィリディスが積み重ねてきた全ては無意味だった。

 

 彼女は大事な時に何も出来ず、立ちすくみ、何もかも奪われていくだけ。

 

 あぁ、なんて滑稽。なんて無様。なんて惨め。

 

 結局彼女の努力など、ただの徒労だった。

 

 

 愚かな娘の物語はこれにて閉幕。徐々にその身から力が抜けていき────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴォ、と。

 

 風が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 レヴィスの短い悲鳴と共に、不意に首にかかる力が消えた。

 直後、何か大きく、温かなものがレフィーヤの身体を抱きとめ、レヴィスから奪い去る。

 

「アイズ、さん……?」

 

 何が起きたのかも分からず、しかし虚ろな意識の中、最も頼りとする少女の名を呟くレフィーヤ。

 しかし、酸素を取り戻し、急速に回復する視界で、彼女は己の救い手を見た。

 

 いつもの軽薄な笑みは消え、引き結んだ表情。

 故郷の若草を想い起こす、緑衣に身を包んだその人物は、ポツリと小さく呟いた。

 

 

 

 

 

「人の努力を、嗤うなよ」

 

 

 

 

 

 そっとレフィーヤを横たえた青年は、短剣を手に怪人へと駆け出す。

 

 

「……まって、ください……!」

 

 掠れた制止など意に介さず始まった青年と怪人の戦い。

 それを見るレフィーヤの脳裏に、先のティオナとの会話が浮かぶ。

 

 天真爛漫な少女が評して曰く。

 

 彼は皮肉屋であり。

 彼は毒舌家であり。

 彼は小心者であり。

 

 彼は世話好きであり。

 彼は人間好きであり。

 そんな素直でない彼の名は────

 

 

 

「ろびん、さん……!」

 

 ロビンフッド。

 

 人の努力、人の徒労を嘲笑うことだけはしない男。

 

 

 

 

 ────猛者ひしめくオラリオで、【最高の弓兵】と讃えられる英雄。

 




視点がコロコロ変わって読みづらくなりそうなので、ここで一旦区切り。
後半とポンコツパートは早めに投稿します。

……早めに、投稿します(´・ω...:.;::.. サラサラ...
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