ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

24 / 27
良い感じに区切れなかったので、分割しました。
残りも早いうちに仕上げて投稿します…!


第13話①(原作二巻開始)

「トロ臭いんだよ、役立たず(サポーター)が!」

 

 物思いに囚われていた心が、頭の鈍い痛みで引き戻される。

 目の前には怒りで顔を歪めた猪人と犬人、そしてヒューマンの冒険者が。

 

「とっとと歩けや、グズが」

「テメェのせいでモンスターどもに囲まれてみろ、わかってんだろうな…?」

 

 浴びせられる罵倒に、彼女は小さく頭を下げて詫びる。もっとも、確かに考え事はしていたが、この三人組はそれに気づいていた訳ではないだろう。

 彼らは単に、思うように増えない今日の収穫への苛立ちを、彼女に向けただけだ。

 フン、と鼻を鳴らして顔を背けた彼ら。自分から絡んでおいて、役立たず(サポーター)を罵倒する時間さえ惜しいと言わんばかりだ。

 

 なんて傲慢。

 なんて理不尽。

 そしてなんて────()()に比べて人間らしいことだろう!

 

 弱者を弱者というだけで唾棄する、ヒトらしい腐った言動! ヒトらしい身勝手な思想!

 

 腸が煮えくりかえるほど腹立たしいが────ヒトの心も分からない、どこぞの王よりはよほどマシだ。

 

 

 ニンマリと笑みを浮かべる彼女の視界で、霧が不自然に揺らめいた。

 大きな影が、そこかしこから集まりつつある。

 

 目の前の冒険者は気づいていない。

 無理もない。彼らはこの階層をナメている。

 

 何度も探索した階層だと。

 何度も生還した脅威だと。

 

 ──だから、苛立ちに任せて多少警戒を疎かにしても、気にならない。

 

 愚かなことだ。

 愉快なことだ。

 ここはダンジョン。気を抜いた間抜けな獲物をいつだって待ちわびている。

 

 笑みを浮かべたまま、少しずつ、少しずつ距離を取る彼女の前で、霧の揺らめきが激しくなる。

 異変に気付いた冒険者達が身構えるがもう遅い。

 霧の中から現れた巨躯は、真っ直ぐ獲物に襲いかかる。

 

 

 

 

 ────ダンジョンに、哀れな叫びが木霊した。

 

 

 

 

 その日、ベル・クラネルは随分と浮かれていた。

 

 ギルドでも人気の受付嬢、エイナ・チュールと私的なお買い物。まぁ目的はベルの貧弱な装備のアップグレードのためと、色気とは程遠いが買い物には違いない。

 時間と場所を決めて待ち合わせて、私服のエイナを褒めて、手を引かれながらショッピング。

 田舎育ちのベルでもわかる。これは、紛れもなくデート────

 

(違う違う違う! エイナさんは優しいから、僕をみかねただけだから! そもそも僕にはアルトリアさんが……!)

 

 バシィッ! と自分の頬を叩いて浮かれた気を追い払う。

 思い浮かべるのは金糸の髪の麗しい少女。冷たい目で、失望したようにベルを見下ろしている。

 もちろん妄想だが、邪念は打ち払えた。隣でエイナがドン引きしているが、たぶん気のせいだろう。

 そんな一幕も挟みつつ、無事に買い物を終えたベルは結局ウキウキと弾む心を抑えられなかった。

 もちろんそれは、新しい装備に浮き足立つ気持ちもあるが──

 

「アルトリアさんと、お揃い……!」

 

 ──憧れの少女と、同じファミリアの装備を使えることが嬉しかったのだ。

 都市最強の一角と言われる超一流ファミリア。当然、使っている装備もそれに相応しい逸品だろう。

 となれば、ヘファイストス・ファミリアの装備の可能性が高いはずだ。

 もちろん【神様のナイフ】もヘファイストス製ではあるのだが、あちらは敬愛する女神からの贈り物という側面が強い。

 自分の手で掴んだモノということに、意味があるのだ。

 

 しかし、そんなベルの気持ちに水を差すような言葉がかかる。

 

「え? いや、ベル君、アンリマユ・ファミリアの装備はヘファイストス製じゃないよ?」

「え…………ええええ!!? そうなんですかエイナさん!?」

 

 何の気もなしに投げかけられた言葉に、大袈裟なほど驚愕するベル。

 そのリアクションに戸惑いつつ、エイナは応える。

 

「う、うん。確かアンリマユ・ファミリアって、ちょっとした雑貨以外は、装備からポーションなんかの消耗品までほとんど全部自給自足で(まかな)ってるんだって」

「全部……!?」

 

 本当だとすれば、とんでもない話だ。

 

 今日聞いた発展アビリティの話が確かなら、第一級冒険者の使用に耐え得る高ランクの装備や消耗品には、それだけ高いランクのアビリティが必要なはず。だからこそ、オラリオには数多くの鍛治系ファミリアや医療系ファミリアなど、専門化が成されているのだろう。

 それを全て単独のファミリアが補えれば、なるほど確かに余計な出費は抑えられるだろうし、有事の際には自分のファミリアなのだから、最優先でアイテムを回すことも出来るだろう。

 理想的な運営と言えるかもしれない。

 

 補えれば、の話だが。

 

「そんなこと、出来るんですか!?」

「うん、確かに難しいよね。例えば、ヘファイストス・ファミリアの職人達は自分達でダンジョンに潜って素材を手に入れたり、武器の使い心地を確かめたり、武闘派の人が多いよ? でもそれもあくまで鍛治の範囲。ポーションや他の魔道具に手は回ってないし、回すつもりもないだろうね。他にも派閥内に鍛治師や職人を抱えてる探索系ファミリアもあるけど、あくまで応急要員って場合がほとんどかな。やっぱり、ファミリアの総力で生産系をやっている所とは、質が違いすぎるんだって」

 

 それはそうだろう。

 数は力だ。

 多くの職人や学者が知恵と技術を出し合い、競い合い、高め合い、そしてそれらを後進が受け継いで更に磨き上げてこそ技術は向上していく。

 もちろん、偉大な天才がただ一人で革新的な進歩を導くことはあるだろう。

 だが、それはあくまで一分野での話。

 どんな天才だろうと、全ての分野で人々の研鑽の歴史を上回るはずがない。

 

 もしも仮に、上回れたとしたらそれは────

 

「【五大元素使い(アベレージ・ワン)】。彼くらいじゃないかな、そんなこと出来るのは」

 

 あるいは、偉大なる騎士王や半神の英雄が迷宮で命運尽き、時の流れに忘れ去られることもあるだろう。

 だが、彼は違う。

 彼がもたらした様々な魔道具や霊薬は、たとえ彼が死した後でも多くの冒険者達のみならず、遍く人々を助け、繁栄の礎として残り続ける。

 

 ただ一人でオラリオの歴史を進めた、偉大なる錬金術師。

 

 それこそが、アンリマユ・ファミリアに所属する魔道具製作者(アイテム・メーカー)なのだ。

 

 

「……凄い人達なんですね、本当に」

 

 戦いだけではなく、創造においてもヒトの歴史に名を残すファミリア。改めて、かの派閥の偉大さを実感するベル。

 そして当然、それらを率いる騎士王の威光も。

 

 しかし、目指す道のりの長さに、思わず遠い目を浮かべた彼の頬をエイナがギュッと挟んだ。

「ひゃい!?」とすっとんきょうな声を上げるベルの目を覗き込むように、彼女は顔を近づけた。

 

「こ〜ら。目標を高く持つのは良いことだけど、君の場合はまず目の前の一歩から。その為に今日もお買い物に来たんでしょ?」

「ははははははいぃ!!?」

「うん、わかればよろしい!」

 

 思わぬ急接近にドキドキと高鳴る胸を押さえながらうずくまるベルを微笑ましく眺めながら、エイナは少しだけ意地悪な笑顔を浮かべた。

 

「あー、でも残念だなー」

「?」

「せっかくおめかししてきたのに、ベルくん、他の女の子のこと考えちゃうんだー。お姉さん悲しいなー」

「!?」

「私、そんなに魅力ないのかなー、泣いちゃいそうだなー」

「そそそそ、そんなことないです!?」

 

 ベルは慌てて立ち上がると、顔を真っ赤にして言い募る。

 

「エイナさんはとっても綺麗です! 今日だって、会った時から今までずっとドキドキしてました! いつもと雰囲気違うのもすごく新鮮だったし! なんだか良い匂いがして、緊張していっぱいいっぱいだったっていうか!!」

「ちょ、ベルくんストップストーップ!」

「むご!? ふぐぐぐぅ!?」

 

 凄まじい勢いで話し始めた少年の口を慌てて塞ぐ十九歳。

 想像以上のリアクションに、むしろ彼女の方こそ照れてしまいハーフエルフの特徴たる耳まで真っ赤だ。

 ベルも自分が何を口走ったのか気付き、赤面する。

 

 お互い顔を真っ赤にしながら、チラチラと相手の顔をうかがうこと少し、なんとか平静を装ったエイナが咳払いをする。

 

「そ、それじゃあ、目的も果たせたし、そろそろ帰ろっか!?」

「ひょ、ひょうですね、エイナさん!!」

 

 訂正。二人とも全く落ち着きを取り戻せないまま、真っ赤な顔でギクシャクと帰路についたのだった。

 

 ちなみに、それを見ていた周りの冒険者達が、

 

「見せつけてんじゃねえよ、ペッ」

「イチャイチャしやがって、ペッ」

「羨ましいんだよクソガキ、ペッ」

「あの坊や俺色に染めてぇ、ウッ」

 

 など、暗い情念が渦巻いていたのは関係のない話である。

 

 

 

 

 そしてエイナと別れた、バベルからの帰り道。

 

 ベルはエイナから聞いた話を思い返していた。

 

 冒険者が扱うポーション作製から、ダイダロス通りの住民達への無償に近い奉仕まで行う錬金術師の話。

 人に尽くすことこそが喜びとでも言うようなその活躍は、ベルに一人の少女を思い出させるのに十分だった。

 

(その人のこと理解できれば、アルトリアさんのことももっとわかるのかな……?)

 

 緑衣の弓兵に託された、彼女を救ってくれという願い。

 

 ベルはそれを、一日たりとも忘れたことはない。

 

 もしパラケルススという男が、アルトリアと同じく正しさの体現者ならば────彼を通じて、彼女を救う方法を思いつくかもしれない。

 

(……と言っても、実際に話したこともない人だし、ちょっと先走って考えすぎだよ僕──うわっ!?)

 

 考え事をしていたベルの目の前で、小さな影が豪快にコケた。

 どうもベルの足につまずいたようだ。

 

「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

 

 兎にも角にも、目の前で倒れた相手を無視するのはベル・クラネルのやり方ではない。

 少年は、目の前で倒れている小さな人物にそっと手を差し伸ばし────

 

 

「見つけたぞ、そこか!!」

 

 響き渡る、大音量の怒声。

 思わずベルが身を竦めると、肩を怒らせた犬人の冒険者が近づいてきた。

 

「おいこらガキ! そこの小人族(パルゥム)を渡しやがれ!!」

「はい!?」

「お助けください冒険者様! 私はその悪漢に追われているのです!」

「へぇ!?」

 

 ベルの身体越しに小人族を捕まえようとする冒険者と、ベルの背中をグイグイ押して壁にしようとする小人族。

 混乱に叩き込まれてる間にも両者の距離は縮まり、冒険者の手が乱暴に小人族に掴みかかる。

 

 ──パシン、と乾いた音が鳴った。

 

 祖父の教えと自らの信条に基づき、ベルはその手を叩き落としてしまったのだ。

 

「……この、クソガキども!」

「うわっ」

 

 逆上した冒険者が拳を固める。

 ベルも、戸惑いながらも臨戦態勢を取り──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──子供二人と大人一人。状況はわかりませんが……こうするのが、早そうですね」

 

 

 

 

 ──突風が、吹き荒れた。

 

「のぉおおおおおおおおお!!?」

「えぇ!?」

 

 悲鳴を上げながら竜巻に運ばれていく冒険者。

 ベルは、呆気に取られながら見送るしか出来なかった。

 

「……あぁ、良く飛ぶ。この分なら明日も晴れですね」

 

 そんな呑気な声に振り向くと、長い黒髪を靡かせた女性────と見紛う端正な容姿の青年がいた。

 ベルは知っている。あの日────弓兵の血を吐くような懺悔を聞いたあの夜に、彼らと共に【豊穣の女主人】を訪れていた、彼女の仲間の一人。

 今日まさにエイナから話を聞いた、薬学という世界の開拓者とでも言うべき一人。

 偉大なる錬金術師。

 

 

 

 

 ────名を、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。

 

 

 

「はじめまして、勇敢な少年────どうか、私と友達になってくれませんか?」




みんな大好き?キャスターもどき
この裏でセイバーやランサー達はゲロゲロしてます

本編更新以外で許せるのはどれですか?(※あくまで参考です! 優先順位は変わるかも)

  • 狂外伝:ストーカー爆誕(どシリアス?)
  • 騎外伝:原作改変だー!(ヒロイック…?)
  • 番外編:宝石剣発動!(IQ0)
  • 書きたいもの全部書いて良いよ!
  • 原作二巻終わらせろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。