ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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今回はシーン2つ。ややこしかったらすみません。
ポンコツパートはいつもより短めかも。


第4話

 アンリマユ・ファミリアのホーム『キャメロット』。

 

 かつてとある闇派閥の本拠を奪い取り、騎士王の采配により築き直した麗しき白亜の王城に、一人の小人族の姿があった。

 

「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ。アルトリアには、あらためて申し訳なかったと伝えてほしい。それと、どうかお大事にと」

「どうかお気になさらぬよう。我が王も、宴の席で無粋な行いだったと悔いておりました」

 

 彼こそがロキ・ファミリア団長フィン・ディムナ。誰もが認める小人族の【勇者(ブレイバー)】。

 それに向かい合うは、アンリマユ・ファミリア副団長ランスロット。礼節を弁え機知に富み、精霊すら見惚れる甘い容貌持つ【湖の騎士(サー)】。()()()()()()()()()()()()()

 

 一昨日の豊穣の女主人での一件を詫びに、菓子折り持参で訪問してきたのだ。

 

「この身が代理として応対したこと、お許し願いたい」

「あぁ、頭を上げてくれ。急に訪ねたのはこちらなんだ。まして名高きランスロット卿に歓待を受けて、不満なんてあるわけがない。むしろ、先の件含めて詫びるのはこちらの方さ」

 

 同盟派閥の団長直々の訪問を、同じく団長であるアルトリアが直接応対できなかったことを詫びるランスロットと、苦笑しながらその律儀さを受け入れるフィン。

 しかし、とフィンは続ける。

 

「あのアルトリアが寝込むとは、どうやら今回の件、ずいぶんと嫌な思いをさせたようだ。場合によっては次回の遠征、ベートの配置を考えなきゃいけないかな……」

「それに関しては心配は無用です。我が王ならば、自らへの配慮で軍の力が削がれることをこそ、気に病まれる。ベート・ローガとも喜んで轡を並べるでしょう」

「ッ……あ、あぁ、そうだね。彼女はそういう人だ。さて、そろそろ本当にお暇するよ。遠征の件は、またあらためて話し合おう」

 

 堂々とした、しかし普段の勇者を知る者ならばわずかに首をかしげる忙しなさで帰り支度を始めたフィン。

 同時に、勢いよく開く応接室の扉。

 

「たっだいまー! あ、やっぱりここにいた! ねぇねぇバーサーカー、見てよこれ! セイバーのおしゃれ用に色々買ってきちゃった! 今から持ってってあげたら喜ぶかな!? あれ、フィンじゃないか、どうしたの?」

「こんにちは、アストルフォ。先日の酒場の件で、お詫びに来たのさ。あいにくアルトリアには会えなかったけどね」

「そうなんだー、どっちかっていうと、悪いのはキャスtむぐむぐゲフンゲフン、ボクは何にも言ってないよ! あ、せっかくだからセイバーの顔見てく? 部屋まで案内するよ?」

 

 キャピッ☆とポーズを取りながら何かをごまかすアストルフォ。

 天真爛漫を絵に描いたような桃色騎士に苦笑しつつ、自派閥のアマゾネス以上のその無邪気さを心地良いものと受け取るフィン。

 だが、次の瞬間、ほんの僅かにその顔が強張る。

 

「こらこら、ライダー。お忙しいロキ・ファミリアの団長サマの邪魔しちゃダメだろー? オレらみたいな暇人と違って、色々やんなきゃいけないことがあるに決まってるデショ」

 

 気の抜けた声で部屋に入ってきたのは一人の少年神。

 ヒヒヒ、と人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる彼こそが、アンリマユ・ファミリア主神、アンリマユそのひと──いや、その神だ。

 

「呼び止めてすみませんでしたー、勇者サマー。ほら、うちの馬鹿どものことは気にせず帰った帰った。モタモタしてたら頭から食べられちゃうぞー?」

「……それでは、お言葉に甘えて。あぁ、ランスロット、パラケルススにお礼を伝えてもらえるかな? 彼の万能薬に遠征先で随分と助けられた。アストルフォ、アルトリアの部屋に行くならその菓子折りも一緒に持っていってほしい。都市で流行りの品……らしいからね」

 

 丁寧に別れを告げながら、しかし慌ただしく立ち去るその姿は、見るものが見れば、警戒、のようなものが見て取れるものだった。

 

 

「お疲れ様ッス、団長!」

「やぁラウル、待たせたね」

「いえ、お気になさらず! でもいくらベートさんのためとはいえ、団長がお一人で向かわなくても良かったんじゃないですか?」

「彼らは頼もしい同盟者だからね。最大限の礼は尽くすさ。ベート本人は自室で凹んでて、とても謝罪に連れて行ける雰囲気じゃなかったしね」

 

 キャメロットを出たフィンは、付き添いの年若い団員と話しながら帰路に着く。

 見た目にそぐわない落ち着きと穏やかな声音の彼は、もういつものフィン・ディムナに戻っている。

 しかしその内心は、穏やかならぬものだった。

 

(アンリマユ……ロキですら警戒を怠らない()()。アルトリアたちが悪に加担するとは思わないけど、それならこの指の疼きはなんなんだろう)

 

 ペロリ、とラウルには見えない位置で親指を舐めるフィン。

 危機を告げる親指は、キャメロットに入った時点から疼きだし、アストルフォとの会話中には痛みすら覚えていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そこまで考えて、フィンは馬鹿馬鹿しいと頭を振る。

 

(彼らはこの十年、オラリオの正義の最前線を担ってきた。今さら疑ってどうする。何よりアルトリアの高潔さは、僕自身よく知っているじゃないか)

 

 初めて会った時は、恐怖をこらえて戦う健気な少女に過ぎなかった。

 敵にも味方にも甘く、幼い正義に振り回されるその姿は、英雄に至るため合理を突き詰めひた走るフィンが思わずハラハラしてしまうほど危なかしかった。

 なのに闇派閥との戦いには積極的に参戦し、罪なき市民を身を呈して庇い続けた。文字通り、身を呈し、自らの負傷を省みず。それも団長に引きずられるように、ファミリア全員が底抜けのお人好し。

 

 剣士としての才はともかく、戦士としての才は乏しい──ガレスやリヴェリアと共に彼らの行く末を案じていたフィンだが、その杞憂は共に戦う内に払拭されていく。

 

 恐怖は勇気に、甘さは誇りに、幼い正義は純白の気高さはそのままに力強く。

 

 かつて騎士姫(リリィ)と揶揄された少女は、騎士王と皆に讃えられるようになった。

 妹のように見守っていたはずの少女が、自分たちといつの間にか並び、そして追い越していったその姿はフィンにとってもあまりに眩く、嫉妬すら遠くて──

 

 とにかく、アルトリアたちの裏切りはありえない。

 

 

 だが、同時に思うのだ。

 

 ならば、あの指の疼きはなんなのだ、と。

 

(体調の悪いアルトリアにボクが近づくことを嫌がった? なぜ? 今までだって彼女が傷ついた時近くにいたことはあったし、僕が救ったこともある。なのに、今回だけこの指が警告したのは、いつもと何が違った?)

 

 そもそもの話、たかだか酒場で揉めた程度で寝込むほど、騎士王は柔弱か? 

 何十人もの闇派閥をただ一人で平然と迎え撃ったあの英雄が? 

 ありえない。彼女が精神的な理由で体調を崩すなど、約束されていた安寧が予想外に予想外の事態が発生し予想外の不手際で予想外に対処を誤り予想外の発展を遂げてひっくり返りでもしない限り、想像できない。

 

 だが実際、彼女は寝込んでいる。

 

 まるで精神的な疲れと見せかけて、毒でも盛られたかのように──

 

 

「だ、団長? 大丈夫っすか?」

「ん……何がだい? ラウル」

「い、いや、なんか、すごくおっかない顔に見えたから……」

「……そうかい? 考え事をしてたからかな」

 

 心配そうな団員に笑い返して安心させながら、フィン・ディムナは()()()を想う。

 

 もしもアルトリア・ペンドラゴンを──他者のために血を流し、他者の幸福にこそ幸福を覚え、暖かな笑みを浮かべてソレを見守る心優しき彼女を騙し、裏切り、傷つけ、害そうとする身近なモノがいたなら……

 

 

 きっとフィン・ディムナは許さない。

 

 それは英雄だからではなく。

 

 人として、友として、兄として。

 

 彼女の幸福を願う、一人の男として。

 

 フィン・ディムナは許さない。

 

 

 

 時間経過(そのひのよる)

 

 

 ガネーシャ・ファミリアのホーム『アイアム・ガネーシャ』。

 

 巨大化した主神の股間が出入り口系住居という前衛的にも程があるこの建造物に、今宵、多くの神々が集っていた。

 人であれば絶世や傾国と謳われるような美男美女が高価な衣装で着飾り老若問わず並ぶ様は壮観ではあるが、そこはそれ、神々にとっては今さら何がどうということもない。

 思い思いに談笑しながら旧交を温める者、悪だくみに花を咲かせる者、あるいは貧乏な武神を指差しながらフヒヒと笑う者など、それぞれ楽しんでいた。

 

 そんな中で異彩を放つ神が一柱。

 

 いや、抜きん出た美貌がーとか、奇抜な被り物をしていてーとかではなく、タッパーに宴で出てきた食料を詰め込んでるから目立ってるだけなのだが。

 

 彼女の名前はヘスティア。

 団員一名の零細ファミリアの主神であり、本日はその可愛い可愛い団員(ベル・クラネル)のために一肌脱ぎにきた決意の女神である。

 より正確に言うと、古い付き合いの鍛治神に自分の眷属のための武器を作ってもらうために交渉にきた、友神に一肌脱いでもらうため土下座の決意を固めた女神である。

 

 幸い友神はすぐに見つかった。

 少し苦手な女神が同行してたので気後れもしたが、今はお願いをする機会を虎視眈々と窺っている。心の中ではいつでもファイティングポーズ。大丈夫、怒られるのなんて怖くないコワクナイ。

 

 しかしそんな風にモタモタしていたのがいけなかったのか、ヘスティアは天敵に目をつけられてしまった。

 

「ヤッホー、ファイたーん、フレイヤー……」

「ロ、ロキ……! いったい何の用だい!?」

「あら、ロキじゃない。久しぶりってアンタえらく落ち込んでない? 何かあったの?」

「本当に。珍しいこともあるのね」

 

 声をかけてきた天敵(ロキ)に露骨に嫌な顔をするヘスティアと、その異様な雰囲気に驚くヘファイストスとフレイヤ。

 言われてヘスティアもはたと気付く。いつも憎ったらしい笑みを浮かべているこの絶壁女神が、今日はやけにテンションが低い。

 なんなら背中に雨雲でも背負ってるのかというジメッ気だ。

 

「よその子やねんけどうちのお気に入りの子がなー、なんか彼氏おったらしくてなー、男っ気ない子やから大丈夫おもてたのにメッチャ熱弁されてもうてなー、傷ついてんねーん……」

「く、くだらない……」

 

 正直な感想をこぼすヘスティアだが、そういえば今日は一部の男神に元気がない。陰気だ。訝しんで接触した別の男神にもその陰気さが伝染し、さらにその神から他の神に……と気づけば、会場の湿度がすごいことになっている。

 迷惑そうな女神たちの視線の矢がザクザク突き刺さってるだろうに、いったい何事だ。

 

「あぁ、あの子のことね……」

「うん? ヘファイストスも知ってるのかい?」

「えぇ、オラリオ有数の有名人よ。たしかにちょっと見ないくらい可愛いから、男神たちにもすごく人気があるの。ロキが気に入るのも納得ね」

「はー、子供達の恋愛も祝福できないなんて、ボクには理解できない狭量さだね」

 

 お前が言うなとツッコム神もいないまま、ヘスティアはビシッとロキに指を突きつける。

 

「だいたい、そんな陰気な顔で宴に来られても迷惑じゃないか! 帰ったらどうなんだい!?」

「あぁん? それは逆やろドチビ……。元気がないからこそ……せっかくの宴にみすぼらしい私服参加のドチビ女神を笑って元気出さななぁ!! ギャーハハハ!!!!」

 

 こいつウゼエええええ!!!! な顔をするヘスティア。

 即座に言い返そうとするが、その目が今まさに入場してきた一柱の神を捉えた。

 

「服装なんて自由だろー!? ほら、ボク以外にもものすごいカジュアルな格好もいるじゃないか! 誰かは知らないけど!!」

「あぁん、そんなもんおるわけってアレは……うわぁ、今日一番見たくないやつ見てもうた……」

 

 ヘスティアの視線を追い、件の神を視界に入れたロキ。

 とたん、ふだん怖いもの無しが服を着てるような彼女が露骨に嫌そうな顔をした。

 予想外のリアクションにキョトンとするヘスティアに、いつの間にか背後から忍び寄っていたフレイヤが耳元で囁く。

 

「彼はね、さっきロキが言っていた子供の主神なの。失恋を思い出して辛いのね」

「うひぃ!? そ、そうなのかい? ところで、耳元でいきなり話しかけるのはやめてほしいんだけど……」

「あら、ごめんなさい」

 

 クスクスと笑いながら離れるフレイヤ。

 

「聞きたいことも聞けたし、私は少し彼と話してくるわ。まだ食べてないモノがあるって、幸せよね?」

「同意を求められても困るんだけど……」

「あのエロ女に話合わすのが無駄な努力やねん……」

 

 自由な美の女神に毒気を抜かれたのか、珍しく普通に話す宿敵二人とその共通の友神。

 

「しかし、あのフレイヤが自分から男に寄り付くなんて、ちょっと意外ね。てっきり彼女は追われるのを楽しむタイプだと思ってたわ」

「そりゃそういうこともあるやろうけど、()()()に関しては別やろ、ファイたん。なんせあの色ボケ女神は、アイツとアイツのファミリアに二回も煮え湯飲まされてんねんから」

「フレイヤが煮え湯? よくそんなことをして無事だったね、彼は。彼女のファミリアはオラリオでも最大なんだろ?」

「最大派閥の、一つ、や。最大最強はうちの子供たちや!!」

 

 細かい訂正をしつつ、しかし、ロキはうむぅと唸った。

 

「まぁアイツのファミリアも、規模は小さいけど、かなりのツブ揃いやからなぁ。フレイヤもそう簡単には戦争を挑めんやろ。……最大最強はうちの子供たちやけど、おんなじ人数で戦ったら……もしかしたら、最強はアイツの子供たちかも知れん」

 

 ヘスティアは素直に驚いた。

 ロキのファミリアは、彼女が自慢する通り確かに都市最強派閥だ。

 それは人数だけの話ではなく、【勇者】や【九魔姫】など派閥幹部の精強さも含めての話だ。

 その彼女にこうまで言わせるとは、いったいあの神は何者なのか。

 好奇心に目を輝かせるヘスティアと、対照的に顔をしかめるロキ。

 

「あかん、うちとしたことが、子供を疑うようなことをよりにもよってドチビに言ってしもうた……。ほんまに不調やな……。顔見たくないやつも来たことやし、ドチビの貧乏さに腹抱えて笑ったことやし、うちもう帰るわー。またなー、ファイたーん」

「さっさとカエレ────!!」

 

 ヒラヒラー、と手を振りつつ立ち去る断崖女を見送り、ヘスティアは友神を振り返る。

 

「で、結局彼はどこの誰なんだい、ヘファイストス。天界では見たことないんだけど」

「そりゃそうでしょうね。私も名前こそ知ってたけど、実際に見たのは下界に来てからだし。

 彼の名前は──」

 

 

 

 一方、二柱の女神から離れたロキは、例の男神に鉢合わせないよう、壁沿いに進みながら思案にふける。

 

(アルトリアたんのことで気が滅入ってたとはいえ、ドチビの前であんなこと言うてしまうとは不覚や……)

 

 しかしそれも仕方のないことだとも思う。

 その神に対しては、天界でトリックスターと名を馳せ、数多の神々を殺し合いへと誘ったロキでさえ、否、ロキだからこそ、穏やかではいられない。

 

 眷属の中でも幹部たちには、彼のファミリアには気を許しても、彼にだけは気を許すなと常々言い含めている。

 彼がファミリアを通して行ってきたこと、その神意は別にある、と。

 彼がロキの睨む通りの神物なら、間違いない。

 

(アルトリアたんたちは、あいつのことをどれだけ理解してるんやろうな?)

 

 

 都市の秩序? 重んじるだろう。

 正義の啓蒙? 不可欠なことだ。

 闇派閥の駆逐? 当然、全霊をかけるとも。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 悪神として名を連ねた存在ならば、皆が皆、多大なる敵意と、警戒と、疑心と、嫉妬と────僅かばかりの敬意を抱く存在。

 

 

 

 彼こそが天界にその名を轟かせ、しかしはるか古に葬られたはずの存在。

 

 偉大なる光の神と対をなす魔王。

 

 その名は────この世全ての悪(アンリマユ)

 

 

 

 視点変更(フィンがかえったあとくらい)

 

 

 

「オレ、アンタらのことマジで理解できないんですケドォ!?」

「うるさーい! アンリマユに衣装なんていらないんだよアタック!」

 

 ライダーの怪力により、着衣状態からバリン! とギャグみたいに真っ二つに裂かれるオレの一張羅(予定だったコート)。中から出てくる腰ミノ半裸のオレ。

 いや。普通に酷くない? イジメじゃない? これ。

 仮にも主神ぞ? 我、主神ぞ? 

 

 

「アンリマユ・ファミリアの掟、第三十九条!!」

「いや、無いだろ。勢いで捏造しないでもらえます?」

「あれ、そうだっけ? とにかく! アヴェンジャーに巌窟王のコートなんて似合わないの!」

 

 こいつ、身も蓋もないことを言ってくれる……! 

 

 いや、しかしいい加減こっちだって我慢の限界だ。真冬に腰布一枚で外を出歩く男の気持ちがわかるか? 人、神問わずにマジかこいつ……みたいな目で見られるんですよ? 

 普通に寒いっつーの。風邪ひくっつーの。

 

 しかしそんな当然の抗議は目の前の理性蒸発桃色騎士に通じるはずもなく、ビシィ! と指を突きつけられた。

 

「みんなで一番最初に約束したじゃないか! 姿を借りてる英雄に恥じない行いをしようって!」

「したなぁ」

「うん、だからコートは没収」

「あぁ、なるほど。……え!?」

 

 いや、待て待て。

 お前らがオレに頑なに服着せない理由ってそれ!? 

 

「オレが服着たらアンリマユに恥じる行為なの!? むしろ半裸の方が色々辱めてると思うんですけど!?」

「だって……ただでさえボクたち何ちゃってサーヴァントなのに、宝具もスキルも使えないアヴェンジャーが衣装チェンジまでしちゃったらアイデンティティが……」

「ご心配ありがとうございます! 余計なお世話だ!」

 

 十年越しに明かされる驚愕の事実に徹底抗戦の構えを取ろうとしたオレだが、外野のキャスターから制止の声がかかる。

 

「お二人とも、静かに……つられて彼が興奮します」

「Beeeeeeeeetooooooo……Finnnnnnn……◾️◾️◾️◾️……」

「落ち着け、バーサーカーよ。アヴェンジャー、今日は一体何があった」

 

 その視線の先には鎖で雁字搦めに縛られながら暴れるバーサーカーと、それを押さえ込むランサー。

 いつもはセイバー(寝込んでる)、アーチャー(逃走中)、ライダー(バカ話中)も混ざって四人がかりでやってるだけに、なかなかに大変そうだ。

 っていうかライダー、お前オレとこんな話してないであっち手伝わなくていいのかぁ? 

 と、それより暴れてる理由ねぇ。

 

「今日、フィンの応対してたんだが、そん時に自分でアルトリアは喜んでベートと轡を並べる的なこと言ってたな」

「Beeetoooooo……Dorobouinuuuuu……」

「こええよ。あと、ライダーがフィンをセイバーの寝室に連れてこうとしてたか」

「Finnnnnnn……Oneshotaaaaaa…………◾️◾️◾️…………ッ」

「こええって」

 

 もしオレがフィン追い返してなかったら、セルフでブチギレて狂化して暴れてたんじゃねえかな。ファインプレーでしょ、オレ。

 もしかして指疼いてたりして。さすがにそれはないか(笑)

 

「なるほど、状況は理解した。案ずるな、バーサーカー。セイバーにはお前も含めて路傍の石と変わらん」

「!? ◾️◾️◾️◾️、Arthur……Arthurrrrrr……!!」

「ちょっとちょっとランサー、その言い方じゃ誤解しちゃうよ! あのさ、バーサーカー、ランサーはつまり、セイバーが仮に襲われたとしても返り討ちに出来るから心配いらないって言ってるんだよ?」

「Arthurrrrrr……Arthurrrrrrrrrrrrrrr!! ◾️◾️◾️◾️……Arthurrrrrrrrrrrr!!!!!!!」

「なんで余計に興奮してるのこいつ!?」

「……やむを得ません。セイバーがいない以上、ここは私が責任を持って……それっ」

「Arthurrrrrrrrrrrr!! Arthアッーーーー!?」

「投薬完了。このまま寝室に運んできます」

「うわぁ、あんなぶっとい注射を奥まで……」

「問題ない。ヤツには物足りないくらいだ」

「それ、バーサーカーなら痛くても我慢できるって意味だよね? …………だよね!?」

 

 ソローリ、ソローリ。

 

 馬鹿騒ぎに紛れて離脱の準備。ライダーがセイバー用に可愛い服を買い漁る横でシレッと買っておいた巌窟王風の服を手に取り、こっそり逃げ出す準備。

 扉まであと3M……2M……1M……! 

 

「直感:A!!」

「持ってないだろアストルフォならさぁ!!」

 

 脱出失敗。そのまま首根っこ掴まれて引きずられていくオレ。ライダー? 痛いんですけどー? 

 

「このまま神の宴に送り出したら、また無駄遣いしそうだからボクが送ってあげる」

「いや、勘弁してください。っていうか無駄遣いっていうならさっきからそこそこ高い服破きまくってるお前の方が……」

「セイバーが寝込んでる今、ファミリアの風紀はボクが守る!」

 

 フンスとやる気十分なのは見た目だけは可愛いが、風紀一番乱してるのお前だからなー? 

 

 

 そんなこんなでヒポグリフ便でガネーシャ・ファミリアのホームの前に落とされたオレ。

 だから寒いって。まだ割と冬だって。

 仕方なしに腰布一枚で入ってくと、おぉ、いつも通りギョッとした目で見られる見られる。

 あんま見てるとお代頂いちゃうぞー? 

 

 顔馴染みの神に話しかけながら進んでると、妙な視線を感じる。これはいつもの服装絡みだけじゃないっぽいけど、理由がわからない。

 

 うーんと首を傾げていると、ア、しまった。ヤバいのと目が合った。

 身を隠す暇もなく、ヤバい女神に近づかれるオレ。

 

「久しぶりね。アンリマユ」

「おー、これはこれはフレイヤ様。ご機嫌麗しゅうございマスデス」

「ウフフッ、貴方も元気そうで何よりよ」

 

 この女神サマは苦手だ。というか基本的に神は苦手だ。

 ただでさえ天界の知り合い0という珍しい立場のオレだ。

 下手なことを言って不審を抱かせたら、神としての立場まで失いかねない。

 

 あ、ちょっと近い近い。柔らかい柔らかい。

 嬉しいけどやめて、オレはビシッとしたキャリアウーマン風だけど私生活ダメダメなエロボディ系お姉さんに貞操捧げてるから。もしくはどエロい格好した変態性癖もちの人格破綻者のくせに妙なところで少女めいた小娘とか。あれ、フレイヤ様ちょっと該当する? 

 

 益体も無い思考を続けるオレの頬にそっと手を添え、他者には聞き取れないよう囁きかけるフレイヤ様。

 

「聞いたわよ、貴方の大切なお姫様の噂。彼女が貴方に従ってるのは、その【彼】が関係してるのかしら?」

「さーて、私めには何を言ってるのやらさっぱりと」

「フフッ、相変わらず何も教えてくれないのね? 好きよ、貴方のそういうところ」

「ハッハッハ」

 

 違うから。教えて欲しいのはオレの方だから。

 誰? オレのお姫様って。もしかしてセイバー? いらんこと言ったら即座に暴力で返してくるポンコツよ? オレが従ってるくらいデスヨ? 

 つーか彼って誰? 衛宮士郎? それに関しては、ガワ被ってるオレにもうちょいくらい優しくしてくれても良いと常々思う。

 

「カルナとの決闘でオッタルは都市最強の名を失い、私のファミリアは一段堕ちた。ロキの子供たちと貴方の子供たちはずいぶん仲が良いみたいだけれど、少し入れ込みすぎじゃないかしら? 

 そして貴方のファミリアは当然、貴方を深く信じているんでしょうね……。どこまでが貴方の狙い通りなのかしら?」

 

 何一つオレの意思は関与してません。

 

「フレイヤ様の考えすぎですよー? オレなんか、その場その場で流されてきた凡神なので」

「フフフッ、そういうことにしておいてあげる。……でも、私のモノの中で、あんまりイタズラしちゃダメよ?」

 

 フッ、と耳に息を吹きかけて離れていくフレイヤ様。

 

 腰が抜けるかと思った(いろんな意味で)。

 

 一番厄介な女神は去った。

 フレイヤ様ほどじゃないが、神会といい宴といい、いろんな連中がオレに話しかけてくる。知らねーよ、陰謀ごっこなら他所でやってくれよー。

 悪巧み系は耳に入るたびにギルドにチクってるから、最近はあんまりそういう話を振ってくるやつはいなくなった。

 まったく、セイバーたちはオレの苦労をわかってない。神なんて奴らはどいつもこいつも厨二病で、付き合うのも結構大変なんデスヨ? そこんところあいつらもわかってほしゲブほぉあ!? 

 

「やぁはじめましてアンリマユボクの名前はヘスティア昨日は君のところのロビン君にうちのベル君が世話になったみたいで感謝するよいやほんとはその前に君のところの別の子供に助けられてるんだけどそれは一旦置いといてだねズバリ教えて欲しいことがあるんだが!!」

「……はい」

 

 ワンブレスで話す肉弾魚雷もといロリ神じゃなくてヘスティア。

 わーい、原作メインヒロインだー(白目)。

 

「……君のところのアルトリア何某君に、彼氏がいるって噂は本当かい?」

 

 え、ロキじゃなくてオレに聞くの? 

 あ、そう言えばセイバールート突入してたわ。

 

 んで、士郎のことはベルきゅんから聞いてないっぽい? せいぜい酒場の話を噂で聞いたレベル? 

 あー、あの子真面目っぽいからな、もろにセイバーの過去()に関係してるその辺の話は、ヘスティアにも話してないのか。

 そういうとこポイント高いぞベルきゅん。まぁ捏造100%なんだが。

 

 とにもかくにも、ここでセイバーに男がいるって言うのは無しだ。

 いくら相手が士郎(いない)とは言え、清廉な騎士王で通してきたあいつのイメージをオレが壊すわけにはいかない。清廉(笑)。

 

 答えようとして、周りの視線に気づく。

 男神どもと、一部の女神どもが血走った眼でこっち見てる。必死すぎだろアンタら。

 しかし、ここまで期待されて応えないわけにはいかない。

 オレはゆっくり口を開く。

 

 

「うちのセイバーに、現在特定の恋人はぁ〜」

 

 ゴクリ、固唾を呑む音。

 

「いま〜〜〜〜」

 

 カチャ、食器を握る手に力が入る音。

 

「ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル〜」

 

 イラッ、青筋が立つ音。

 

「ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、はあードゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、もういっちょドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル「「「「「「「「「「長いわ!!!!」」」」」」」」」」ぶはぁ!」

 

 まぁ、神のこういうノリの良さは嫌いじゃない。

 

 

 

 

 

 平話(あたらくしあ)

 

「酷い目にあった……」

「アンリマユ、超お疲れ様! そして俺が、ガネーシャである!」

「あ、おひさっす……」

「俺は、カルナが信じるお前のことも無論! 信じているぞ!!」

「あ、どもっす……」

「まぁ他の皆はお前に対して怒ったり怯えたり面白がったり利用しようとしたり色々あるみたいだがな! あ、それでは閉会のスピーチがあるのでこれで失礼する! 最後まで聞いてくれたらガネーシャ、超感激!!」

「え、ちょ、何その情報ガネーシャ様。オレ他のみんなにどんな噂されてんの!? ガネーシャ様ぁ!?」




ロキファミリア「アンリマユは眷属を利用している。眷属はアンリマユを理解できてるのか?」
フレイヤさま「三大派閥にアンリマユの手が食い込んでいる。面白いから見逃してるけど、あんまりオイタしたらメッする」
ポンコツども「このポンコツどものこと何一つ理解できない」×7

アヴェンジャーもどきさんは本人というより、アンリマユの悪名甘く見すぎてる系ポンコツ
他の神々は表面上仲良くしつつ、絶対コイツが黒幕だろ……面白っ!と生暖かく見守ってる。一部は尻尾掴もうと走り回ってる。
闇派閥に勧誘されたのをそのまま密告して結構役に立ってたけど、自分がラスボスになるための下準備くらいに思われてる。
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