ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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予定より遅くなりました。
いや、だってファイナル本能寺が始まっちゃったから……。
ノッブ召喚出来なかったので怒りに任せて投稿です。


第5話

 ヒュッ、と風を切って短刀が走った。

 ウォーシャドウの横殴りの一撃にカウンター気味に放たれた一閃は、狙い違わず怪物に致命傷を与え塵に帰す。

 

(やっぱり前よりずっと強くなってる……)

 

 モンスターがいなくなった迷宮で、ベル・クラネルは一息ついた。

 ほんの数日前、危うく殺されかけたモンスターを容易く仕留めた自分に精神的な違和感はあるが、肉体的には特に不調はない。

 筋繊維ごとズタズタにされた左腕も、ロビンフッドに貰った軟膏を塗って一日放置したらすっかり塞がっていた。握力、反応共に問題なし。

 加えて急激な成長による全能感にも似た高揚……控えめに言って、絶好調だ。

 

 しかし、とベルは自分を戒める。

 

(足りない、なんてものじゃない……そんなことを言う資格さえ、僕にはまだない)

 

 

 ロビンフッドに救われ、男としての願いを託された後、ベルは大いに奮起した。

 ホームに帰ることを勧めるロビンフッドの制止を振り切り、再びモンスター退治に大いに励んだ。

 先ほどまでの自暴自棄な戦いではない。託された願いの、そして自らの誓いに背を押されての闘志の発露。強く、誰よりも強くなるという決意を秘めての自身を高めるための戦い。

 最初は怪我の重さから渋っていた弓兵も、ベルの熱意に絆されたのか本当に危ない場面は助けると言った後は、黙って戦う少年の背中を見守った。

 

 自分よりはるかに強い冒険者が、憧憬の彼女と轡を並べる英雄が自らを見守ってくれている。

 

 その誇らしさもベルの背を押し、結果的に朝まで不眠不休で戦い続けた少年は大きな戦闘終了後に力尽き、一歩も動けなくなったところをロビンフッドに担がれてホームに帰還した。

 第一級冒険者が下級冒険者をわざわざホームにまで送り届ける。申し訳なかったし、街中で騒ぎにならないだろうかと危惧したが特に誰かに声をかけられることもなく帰還できた。

 一応彼のマントを頭から被せられてはいたが、そのくらいで誤魔化せるものだろうか? 

 

 疑問はさておき、そこからは大変だった。

 

 怪我自体はほとんどロビンのポーションで回復していたものの、短刀一本でダンジョンに挑んだ代償に着ていた服はズタボロの泥だらけ。

 帰りを待ってくれていたヘスティアの悲鳴がまだ耳に残っているようで、ベルとしてはなんとも申し訳なく思っている。

『ボクのベルくんをこんな目に遭わせたのはキミかぁ〜〜っ!』とロビンに激怒するヘスティアの誤解を解き、一人と一柱で何度も何度も感謝をしまくって最終的に緑衣の弓兵にドン引きされたのが一昨日の話。

 神の宴に出掛けたきり帰ってこない主神が心配ではあるが、何せヘスティア・ファミリアは零細派閥。先立つ物が無くては生きていけないのは、夢と希望と浪漫に溢れた迷宮都市でも変わらない。

 心機一転、ダンジョン攻略に挑み金策と修行に励むベル。

 だがその鍛錬は、突如終わりを告げる。

 

 ズドン! という腹に響く轟音と共に、ベルの足元が大きく揺れた。

 

「うわっ、とっ、と!?」

 

 急な出来事に体勢を崩しかけたがなんとか踏ん張り、その隣で転倒して隙を晒してるモンスターたちにトドメを刺していく。

 結果的に討伐の助けとなったが、いったい何が起こったのか。

 震源地に向かい足を進め、

 

 

「あっ……」

 

 

 憧憬の輝きを、見つけた。

 

 少女が、翠の瞳を閉ざし、ただ立っていた。

 

 鎧こそ身に纏っているものの、武器すら持たず立ち尽くすその姿は一枚の絵画のような美しい静けさを保っていた。

 女神すら霞む可憐な姿は今は、静かに閉ざした瞳と固く結ばれた口元により不可侵の神秘性を醸し出す。

 もしベルが詩人であったなら、百万の言の葉を尽くしてでもその麗しさを讃えただろう。

 

 思わぬ邂逅に、呆然と立ち尽くすベル。

 ダンジョンという死地であることすら忘れ、少女の姿に見惚れ続けた。

 

 

 ──そして、そんな獲物を見逃すほどダンジョンは甘くない。

 

 無防備な頭上から忍び寄る影。

 迷宮の壁を自在に這い回るダンジョン・リザードが、飛びかかってきたのだ。

 

「くぅ!?」

 

 驚愕。迂闊さへの怒り。対処への切り替え。

 一瞬で意識を戦闘に向け、短刀に手を伸ばす──より速く、蒼銀の影が疾った。

 

 無手であるはずのその腕が振るわれた瞬間、真っ二つになる怪物。

 忘れもしない、初めての出逢いを思い起こす美しい剣閃。

 何よりも真っ直ぐで凛とした一撃は、少女の気高さを象徴しているようであり、積み重ねられた練磨を感じさせた。

 

 ふわり、と音も無く着地をした少女はこちらを見ると、厳しく結んでいた眉を解き、小さな、しかし暖かな慈悲を感じさせる笑みを浮かべる。

 

 

 

「今度は、手放さなかったのですね」

 

 向けられた笑みが、言葉が、自分へのものだと気づくのに数秒……

 

 

「?」

 

 何の反応も取らないこちらを不思議に思ったのか、コテン、と首をかしげる少女。

 

(あ、凛々しい姿しか知らなかったけどそんなポーズだとすごく可愛い────)

 

 

 

「ほわああああああああああああああああ!!?!??!!?」

「!?」

 

 

 驚愕。羞恥。動揺。興奮。

 

 一瞬の内に湧き上がったいくつもの感情が暴走し、ベルの身体は逃走を選んだ。

 

「あああああああああああギュブエ!?」

「落ち着きなさい。何も取って食おうとしているわけではありません」

 

 ベル は にげだした。

 しかし くびねっこを つかまれてしまった。

 きしおう からは にげられない! 

 

「ごごごごごごめんなさいぃ!?」

「何を謝っているのですか貴方は……」

 

 混乱のあまり、わけもわからず謝罪するベルを見て、少女──アルトリア・ペンドラゴンはフゥ、とため息をつきながら額に手を当てた。

 小さな声で「こんなはずでは……」や「セイバー見て逃げ出すとか……」など断片的に聞こえるが、困惑が強い声音だ。

 

 憧憬の彼女を自分が困らせている。

 その事実にますます惨めさを感じ思わず俯いた視線の先で──かたく握り締められた短刀が目に入った。

 

 

『今度は、手放さなかったのですね』

 

 

 不意に蘇る彼女の言葉。

 

 ハッとして顔を上げると、穏やかな目でこちらを見る彼女と目が合った。

 

 彼女と出会った時、自分はミノタウロスに追われていて、逃げるのに必死でギルドから支給された短刀も何処かに落としてしまっていて、追い詰められた先で反撃の手段すら無くて、ただ震えて死を待つだけだった。

 そんな自分を救ってくれた彼女は、見覚えのある短刀を差し出しながら問うてきたのだ。

 

『貴方がこの剣のマスターか?』と。

 

 厳かに、力強く響いたその言葉は、その情景は、まるで物語の一頁のようで、見惚れた自分は言葉を返すことも出来ず、熱に浮かされた頭で彼女から武器を受け取り──直後、いっぱいいっぱいになって逃げ出した。さっきみたいに。

 

 それは、ベル・クラネルにとってまさに、運命の時だった。

 

 アルトリア・ペンドラゴンという少女に出逢い、その美しさに心奪われ、憧憬を刻まれた瞬間。

 彼にとって、新たな自分が生まれたような瞬間であり、たとえ地獄に堕ちようと忘れることのできない宝物だが、彼女にとってはただの惨めな新米冒険者その一程度だと思っていた。

 ロビンフッドから、気にしていたとは聞いていたが、彼女の生真面目さ故のことで……しょせん良くある人助けの一環でしかないと、覚えておく価値もない出来事だと思っていた。

 

 

(覚えていて……くれたんだ……!)

 

 みっともなくて無様な姿だった。忘れていてほしい。ほんの今まで、そんな風に思っていたのに、彼女の中に自分が残っていたと気づいた瞬間、胸の中に温かいものが満ちた。

 直後、くしゃ、と頭に添えられる手。

 

 

「ずっと、気に掛かっていました。私のせいで、貴方の運命を歪めてしまったと。貴方の意思を挫いてしまったと。ですが、貴方は武器を手放さなかった。自らの運命を自ら切り開く姿を見せてくれた────私にはそれが、何より嬉しい」

 

 柔らかな手が髪を梳くたび、彼女の言葉が胸に染み込む。

 

 叫びたかった。否定したかった。

 

 違うんです。僕は貴方に救われたんです。貴方みたいになりたいと思ったんです。貴方に相応しい男になりたいと思ったんです。貴方が助けてくれたから、僕は変われたんです。変わろうと思えたんです。

 

 

 だけど、言葉は一つも出てこなくて、口にしたら、想いが汚れてしまうような気がして、結局何も言えず、ベルはただ俯いて少女の手を甘受することしか出来なかった。

 

 

 

「落ち着きましたか?」

「ひゃい!? お恥ずかしいところをお見せしてしまって……!」

 

 なんとかベルが平静を取り戻せた後、二人は並んで座っていた。

 アルトリアは立ち去ろうとしたのだが、真っ赤な顔をしたベルが一世一代の覚悟で『お礼が言いたいんです!』と叫んだことで、なんとか引き止めることが出来た。

 しかし呼び止めたところでベルは初心な田舎少年である。

 女の子と話すネタなどなく、ただアワアワとしていた。

 

(助けて、ロビンさん……!!)

 

 思わず知り合ったばかりの緑のお兄さんに助けを求めるが、イメージ映像の彼は『オレ、彼女いたことないぜ?』とサムズアップしてきた。

 自分の失礼な妄想を打ち消すベル。あんなに強くてカッコよくて気遣いの出来る彼がモテないわけがないのに。ごめんなさいロビンさん。

 

 脳内お兄さんに謝罪を終えたところで進展はなく、もういっそのことエミヤ・シロウと自分で似てるところがあるかとか気の狂ったような質問すら思い浮かび始めた頃、アルトリアが口を開く。

 

「改めて、自己紹介を。私はアンリマユ・ファミリアのアルトリア・ペンドラゴンです。どうか貴方の真名を教えてほしい」

「ぼ、僕はヘスティア・ファミリアのベル・クラネルです!」

「ではクラネルさんと」

「そ、そんな! さん付けなんて畏れ多いです!?」

「ではシロげふんげふん、ベルと。ええ、私にはこの発音の方が好ましい」

「は、はい……?」

 

 好ましい発音と言いながら、思いっきり噛んでいたような気がするが気のせいだろう。

 麗しの彼女があの緑の人みたいなトンチンカンなことをするわけがない。

 それより自分の名前を呼んでくれたことを喜ぶのだ。うん。

 

「あ、あの! アルトリアさん、この前は助けていただいてありがとうございました! きょ、今日も! なのに逃げたりして……!」

「構いません。新人冒険者がミノタウロスに遭遇すれば、動転して当然です。むしろ貴方は生き延びたことを誇るべきだ。そして先ほどのことにしても、貴方は私が手を出さずとも自力で切り抜けていたでしょう。私は、余計な手出しをしたに過ぎません」

「そ、そんなことないです! 気を取られてて、間に合わなかったかも知れませんし!?」

 

 ダンジョンで獲物を奪うのはご法度。

 その不文律に沿って謝罪しようとするアルトリアを押しとどめようと言葉を重ねると、彼女はわずかに眉をひそめた。

 

「むっ、それはいけません、ベル。ダンジョンでは一瞬の油断が死に繋がる。たとえステイタスに余裕のある階層でも、気をぬくべきではありません。だいたい、モンスターと岩しか無いこの場所で、何に気を取られていたというのですか?」

「へぇ!? そ、それは……」

 

 貴方に見惚れてました、とは言えない少年心。

 口ごもるベルの頬を、アルトリアはムニュリと両手で挟んで無理やり自分に向けさせる。

 

「目を逸らさずキチンと答えなさい。そういう油断や動揺の種は、早めに解決するのが大切なんです」

「はぅ!? いや、ほんとその、逆に集中出来なくなるというか、あ、嘘です嘘です嘘です! もう解決しましたから手を離してください〜!?」

「そうなのですか? それなら良いのですが……」

 

 

 釈然としない表情を浮かべながらも、手を離すアルトリア。

 ベルはホッとするとともに、頬から離れる温かさに名残惜しさを感じてしまう。

 

(いや、これじゃまるで僕変態みたいじゃないか!?)

 

「そ、そういえばアルトリアさんはどうしてこんな上層に!?」

 

 自分の中に潜む獣から目を背けるため、話題転換を図る。

 ベルにとってはただその程度の気持ちだったのだが……

 

 

「理由、ですか」

 

 ──思わず、ゾッとした。

 

 妖精のように可憐な容姿から一切の表情を消したその顔は、ベルの背筋を凍えさせるのに十分だった。

 

 思わず固唾を飲み次の言葉を待つベルに、アルトリアは告げる。

 

 小さく、頼りなげに、まるで告解する罪人のように。

 

「上層には、良く来るんです。自分だけでは、どうにもならなくなった時。自分の力が及ばなかった時。自分を……自分の力を、見つめ直したくて」

 

 ──自分の弱さを確かめるために。

 

 

 言葉にならない、そんな想いが確かに聞こえた。

 

 ガツン、と頭を殴られたような衝撃。

 彼女は何を言っているんだ。レベル6という、都市どころか世界最強の一人とも言える力を持ちながら、何を確かめるというのか。

 

 思い出すのは、緑衣の弓兵の言葉。血を吐くような彼の懇願は、このことだったのか。

 

 

 ──それはきっと、彼女の贖罪なのだろう。

 

 

 紅い背中を幻視する。

 

 かつて剣士は、少年の道を肯定した。

 その先に待つ破滅を予期しながら、それでもなお、彼の尊さを否定できなかったのだ。

 結果、少年は正義の味方に至り、約束された破滅を受け入れた。

 愛する者を奪われた少女は、それでも彼が歩んだ道が間違いではなかったと証明するために、茨の道を進み続ける。

 それが少年の道を肯定した自らの責任なのだと。

 彼を守れなかった自分の責務なのだと。

 

 小さな身体に、この都市に住まう人々の平穏を背負い、少女は歩き続ける。

 

 

「ベル……?」

 

 黙って立ち上がった自分に、アルトリアの困惑の声が聞こえる。

 甘やかな声で自分の名を呼ばれると、思わず留まりたくなる。

 

 だが、それは許されない。

 アルトリアは何故今日、このタイミングで、自分の弱さを見つめ直そうなどと思った? 

 

 考えるまでもない。

 名も知らぬ少年を、ベル・クラネルを傷つけてしまったからだ。

 ベル・クラネルを傷つけずに助けられなかった自分を恥じて、ここに来たのだ。

 

「ベル、どうしました? 私が何か、気に障ることでも──」

「アルトリアさん、僕、強くなります!! 今日は、ありがとうございました!!」

 

 ベルの手を取ろうとしたアルトリアを、自分でも驚くほど力強い声で拒絶した。

 

 恥じる。恥じる。恥じる。

 自らの無力を恥じる。

 彼女に、要らぬ心労をかけた自分が恥ずかしくて、憎くてたまらない。

 そして、失敗とすら言えない些細な出来事に胸を痛める少女が痛ましくて、愛おしくて、激しい感情が溢れ出る。

 今までなら、心の中の激情に振り回されて遮二無二走っただろう。

 だけど、もうそれも出来ない。

 

 

 

『お前が、あいつの英雄になってやってくれ!!』

 

 

 彼女の仲間の叫びが蘇る。

 

 こういうことか。彼女の英雄とは、これほどの責務か。

 

 あぁ、まさしく全てを救う正義の味方でなければ、彼女の心は救えない。

 

 

 武器を手に駆け出す。

 

 暴走ではなく、確かな想いを抱いて。

 

 求める理想は未だ遠く。

 

 それでも歩み続けなければ至ることは出来ず。

 

 ならば、ベル・クラネルの悔悟になど意味は不要ず。

 

 この身はきっと────彼女を救うためにあった。

 

 

 

 

 

 視点変更(まきもどし)

 

 

 

 

 

 ヒャッホーウ! 上層でオレTSUEEEE楽しいです! 

 

 どうも、恐怖の怪文書アタックにメンタルをやられてたセイバーもどきです! 

 いやぁ。今までも嫌がらせとかはあったんですけど、原作初っ端から破綻するとかファンタスティックな出来事と重なったせいでまぁまぁキツかったですね。まさにどうしてこうなった! どうしてこうなった!(AA略)

 

 まぁ、ガネーシャ・ファミリアでアヴェンジャーが上手いこと言ってくれたらしいので、大丈夫でしょう多分。何言ったのかは知らないですけど。

 今はそんな感じで開き直ってダンジョンアタックに来てます。

 

 アーチャーがいれば顔のない王借りてこっそり来るところでしたが、あいにく例の酒場の一件以来ホームに戻ってこないんですよね彼。

 正直何やらかしたのか問い詰めたい気持ちでいっぱいです。アホトリアと呼ばれた恨みは忘れてません。

 

 まあそれはさておき、変装してダンジョンに入った私は、目に付いたゴブリンやコボルトといった雑魚モンスターを見敵必殺しまくった。

 正直、カリバーンだったら折れてんじゃね?と思うレベルの騎士道?何それ?な弱い者イジメですが、このくらいではエクスカリバーが折れないのは確認済みです。

 まぁ約束された勝利の剣ってくらいですし? その他大勢なんて全て弱い者扱いですし? これからもこの調子で頼みます先生。

 

 そんな感じで調子に乗りつつ広いルームに出た私。

 

 おるわおるわ、雑魚どもがウジャウジャと。

 

 よく分からないキャラをインストールしながら、風王結界に包まれた聖剣にわずかに魔力を流し、黄金の斬撃を放つ。

 ズドン! と想像以上の快音を立てながらモンスターを一掃した余韻に目をつぶりながら浸っていると、直感スキルに反応が。

 

 うん? 冒険者とその頭上にモンスターがいるっぽいですね。

 気づいてないみたいですし、騎士王的にここは助けてあげますか! 

 

 そんな軽い気持ちで魔力放出ジャンプの大人気/zeroな一撃を蜥蜴に叩き込んで、助けた冒険者から見て一番いい角度でキメ顔。

 しかし直後、デジャヴを覚える。

 なんか前にもこんなことあったような……

 

 嫌な予感を覚えつつ冒険者の顔を見ると────はい。出ました主人公! 

 

 正直、ちょっと笑っちゃいましたよね、逆に。

 あ、またこのパターンか! みたいな半笑い出ちゃいましたよ。

 

 それでも何か言わなければ、と考えてると彼の手元にこないだ私が拾った短刀が。

 

「今度は、手放さなかったのですね」

 

 流石に運命の夜二回連続でやるのはマンネリですからね。感心感心。

 

 しかし、目が合ってからしばらく経つのにベルからは何のリアクションも無し。

 あっれー? また私何かやっちゃいました? 

 そんなくだらない事を考えていると、奇声を上げながら逃げ出そうとする原作主人公。

 ビックリして、反射的に首根っこ引っ掴んで引き止めちゃいましたよ。

 いや、なんでそうなるんだよと言われると私も困ると言いますか、こんなはずじゃなかったんですが、でもセイバーの顔見て逃げ出すとか失礼じゃありません? 

 中身はともかく外見はセイバーですよ、セイバー。

 

 誰にともなく言い訳してると、顔を上げたベルの目が潤み始めた。

 

 ちょちょちょ、待ってください、今回私まだ何もやってませんよ。

 色々早すぎてついていけないんですけど! 

 

 とは言え、今の彼に思うところが無いわけでも無い私。

 この際、ちょっと言っておきましょうか──そう、感謝をね! 

 

 ポン、とベルの頭に手を乗せて、言葉をかける。

 

「ずっと、気に掛かっていました。私のせいで、貴方の運命を歪めてしまったと(ヒロイン的な意味で)。(酔った勢いで)貴方の意思(憧憬一途)を挫いてしまったと」

 

 ええ、私も人の子ですからね。運命の相手と出会えなくしてしまったのは申し訳なく思ってますよ。ましてやキャスターが悪いとは言え、初恋の相手に他の男の話される苦しみは私もよく分かってますよ。経験があります。あ、今余計な傷口開きましたね。

 

「ですが、貴方は武器を手放さなかった。自らの運命を切り開く姿を見せてくれた────私にはそれが、何より嬉しい(原作遵守的な意味で)」

 

 正直アイズから私に憧憬の対象が変わったと聞いた時は、絶対成長補正低いと思ってたんですが、動き見た感じ、レベル1でも中堅くらいには動けてますからね。

 私の理想としては憧れてはいるけどすごく遠くて手が届かないなぁ、対等な関係なんて夢のまた夢だなくらいの距離感でベルを育てつつ、然るべきタイミングでアイズとくっついてもらうのがベストです。

 あ、違いますよ? 自分の都合だけじゃないですからね? 

 

 ベルが原作通り強くなれば、アイズも気にすると思いますし、接点が増えればアイズの方からベルに好意抱くじゃないかもしれないですか。

 そしたらホラ、ベルもキチンとしたヒロインゲットでアイズも自分の英雄見つけられて万々歳でしょ? 

 さすが完璧な王としか言いようのない完璧な作戦でしょ? 

 

 自分の作戦の素晴らしさに酔いしれながら、私はしばらくベルの頭を撫で続けたのだった。

 いや、なかなかフワッフワで悪くないですよ。

 

 

 ベルが落ち着いた辺りで(私が)これ以上余計なことしでかす前に立ち去ろうとしたら、ベルに呼び止められた。

 お礼が言いたいとのことですが、一向に話し始める気配もなくモジモジするベル。

 ウチのアーチャーを思い出しますね、このウブっぷりは。

 顔が良いから女の子の方から寄ってくるのに、前世での経験値の無さのせいで全力で逃げますからね、あの緑茶もどき。

 まぁ女子に免疫つけようと色街繰り出そうと一念発起したタイミングで、イシュタル・ファミリアと私が揉めたせいで出禁になったのは流石に哀れみを覚えましたが。いや、私は悪くないですよ。フリュネが悪い。

 

 しかしこのままでは埒があきません。私の方から話し始めますか。

 

「改めて、自己紹介を。私はアンリマユ・ファミリアのアルトリア・ペンドラゴンです。どうか貴方の真名を教えてほしい」

「ぼ、僕はヘスティア・ファミリアのベル・クラネルです!」

「ではクラネルさんと」

「そ、そんな! さん付けなんて畏れ多いです!?」

 

 ハッ、このシチュエーションならあのセリフが言える! 

 

「ではシロげふんげふん、ベルと。ええ、私にはこの発音の方が好ましい」

「は、はい……?」

 

 セーフ、ちょっと噛みましたけどセーフです! やった、セイバーのセリフ言えました! 

 

 私が密かに達成感を覚えてる横で感謝の言葉を述べるベル。

 うんうん、お礼を言われて悪い気はしません。原作でも思いましたが、こういう素直なところは美点ですね。ウチのポンコツどもの往生際の悪さったら酷いですからね。

 

 しかし話を聞いていると、彼はダンジョン内で集中を解く悪癖があるらしい。

 それは良くない。それでは危機を乗り越えられません。具体的にいうとたしか小説4巻目辺りの。

 

 問い詰めてもしどろもどろな答えを返すのみ。

 むむ、これはキチンと叱らなければ。

 

 ベルの顔を両手で挟み、無理やり目を合わさせる。

 ちょっと強引ですけど体罰とかじゃありませんよね? ウチのファミリアで説教中に目を逸らそうものならケツバット(聖剣)ですし。

 

 私の真摯な説得の甲斐あってか、改めることを約束してくれたベル。

 うんうん、良いことです。

 

「そ、そういえばアルトリアさんはどうしてこんな上層に!?」

 

 私の満足感は、しかし次の瞬間、強い語調で放たれたベルの言葉に打ち砕かれた。

 

「理由、ですか」

 

 ──思わず、ゾッとした。

 

 え、これ、見透かされてます? 

 まさかですけど、私のライフワーク、見透かされてます? 

 

 いや、そんな馬鹿なと思いつつ、ベルに返答する私。

 ヤバイです。めっちゃ声震えます。気分はまさにまな板の上の鯉。(一度食べてみたいです)

 

 

 

「上層には、良く来るんです。自分だけでは、どうにもならなくなった時。自分の力が及ばなかった時。自分を……自分の力を、見つめ直したくて」

 

 ──自分の強さを確かめるために。

 

 

 言葉にしなかった、そんな想いが確かに聞かれた気がした。

 

 

 いや、だって仕方ないじゃないですか。

 レベル6ですよレベル6。

 原作でも一握りしかいない、ほぼ頂点みたいなもんですよ? 

 セイバーのチートボディのスペックありきとはいえ、ここまで上り詰めるのにまぁまぁ苦労したんですよ? 

 なのに深層とか行ったら普通に死にかけますし、オッタル相手とか普通に負けそうですし、正直たまに嫌になるんですよ。

 私、RPGは適正レベルより10くらい上で戦うタイプなんです。自分が強くなったら敵も強くなるシステムのゲームは嫌いなんです。

 それでストレス解消に上層でちょっと暴れるくらい良いじゃないですか。

 

 ね? ね? わかりますよね? 

 

 そんな私の想いも虚しく、ベルは無言で立ち上がった。

 

 あ、これヤバくないですか? 

 私の内心、完全に見透かしてませんか? 

 憧憬一途消えるとか現実的な問題もありますけど、原作で好きだったキャラに軽蔑とかされたら結構ツライんですけどちょっと待ってください心の準備プリーズ!! 

 

「ベル、どうしました? 私が何か、気に障ることでも──」

「アルトリアさん、僕、強くなります!! 今日は、ありがとうございました!!」

 

 セ、セーーーーフ!? 

 セーフなんですか、これ!? 

 

 先ほどまでの少年と同一人物とは思えない力強い声に動揺してる隙に気づいたら立ち去ってしまったベル。

 いや、まぁ、敵意とか軽蔑とかは感じませんでしたし? なんならなんか親近感みたいなオーラ感じましたし? 

 た、たぶん大丈夫でしょう! そういうことにしときます!! 

 

 

 しかし、危うくセイバーの姿をしときながら、雑魚狩りの汚名を被るところでした。

 ちょっとライフワークは控えますか……。

 

 若干凹んだ私は、トボトボと帰路に就いたのでした。

 

 っていうか、本当に嫌われてないですよねぇ!? 気になって仕方ないんですけど!! 

 

 

 

 そして日は流れ【怪物祭】当日。

 ランサーの強い希望により、我々アンリマユ・ファミリアは毎年全員参加でお金を落としまくっています。正直今年はそんな気分じゃないんですが……。

 

 微妙な気分でいると、今朝になって流石に帰ってきたアーチャーが私に声を掛けてくる。

 

「セ、セイバー? オタク、酒場の後、ベルに会ったりしました?」

 

 なんかのカマかけてます? こいつ。

 

「い、いえ? 知りマセんよ?」

 

 おっと、声が上ずりました。

 いや、正直に言わなければいけないとはわかってるんです。

 ただ、原作外でイベント積んだとか知られたら、またなんか言われそうじゃないですか……。

 

「そ、そうか! それなラ良いんだ!」

 

 いや、こいつもなんか隠してますよね!? 

 ちょ、いったんこいつ吐かせます。お前なにやらかしたんですか!? 

 

「し、知らねぇ! オレは何もしてねぇ!!」

 

 !? 

 往生際の悪いアーチャーをとっちめようとしていると、突如直感スキルが警鐘を鳴らす。

 

 街中でこの感じ、モンスターでも出ましたか? 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、考えられるとすれば例の食人花……まぁ、アレはロキ・ファミリアの面々が対処するので大丈夫でしょう。

 そんなことを考えながらもアーチャーを屋根に登らせて偵察を頼むと、途端に顔面蒼白になる緑茶。

 おい、やめてください、何があったって言うんですか。

 

 

 

「おいヤベェぞ!! なんかベル君とヘスティア様が食人花に襲われてる!!」

 

 な、なんだってーーーーーー!?




このセイバーもどきさん、ヒロイン力足りないな→会う回数増やせば単純接触効果で多少はマシになるかという安直な発想で差し込まれたイベント。
男時代の感覚を地味に残してるので切ない少年心は理解しながらも、十年間ポンコツどもと肉体言語で接し続けてきた弊害でスキンシップの塩梅がわかんなくなったという夕鶴にとって都合の良いポンコツ設定。正直、すまんかった。
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