ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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ポンコツサイド、お待たせしました。
読む前に一言だけ。オラリオの広さを信じてください(懇願)


第6話の②

「どうしてこうなったー!?」

 

 開幕早々騒がしくてすみません、セイバーもどきです。

 

 いや、本当に色んなことに理解が追いつかないんですが! 

 おかしい、自主的に見回りに行ったランサーを除いて、我々は今の今までのんびり祭りを楽しんでいたはずなのに、何故こうも急転直下の事態になってるんです? 

 

 屋根の上を全力疾走で現場に向かいながら、私は今の状況を整理する。

 

 第一にモンスターの脱走騒ぎが起きない。

 これは理解できます。二年前にランサーがやらかした結果ですから、当然予測済みでした。

 第二にベルが食人花に襲われてる。

 はい、この時点で1アウトですね。え、何がどうしてそうなりました? 

 第三にロキ・ファミリアの四人娘がいなさそうとのアーチャーの報告。

 よし、2アウトです。彼女たちが早めに対処してくれることを期待してたから我々呑気にたこ焼き食べてたんですけど! 

 

「あー、そういえばロキ・ファミリアが動けた理由って、ガネーシャ・ファミリアのゴタゴタに気付いたりギルドに依頼されたから、だったよな」

「ベル達も、シル捜してるならあちこち歩き回ってもおかしくないよね」

 

 ヒポグリフに運ばれながら思い出したように言うアヴェンジャーとライダー。

 え、オレついてく必要ある? とか抜かしてましたが、闇派閥に恨み買いまくってる主神をほっとくわけにもいかないのでライダーがお守り中です。

 それはさておき、なるほど、それでモンスター脱走が起きてない今回はロキ・ファミリアがいないと。

 ついでにベル達もシルバーバックに襲われないままシルを捜してたから、たまたま食人花の出現場所に居合わせてしまったと。

 つまり我々の責任ですねわかります。ヤバいじゃないですか!? 

 

 い、いえ、落ち着きなさい、私。まだ2アウト、試合は始まったばかりです。

 もう全然わけわからない状況ですが、食人花が神フレイヤの魅了にかかってるわけではありませんし、この時点で魔法も使えないベルが優先的に狙われることは無いでしょう。

 後は我々が可及的速やかに現地に赴き怪物を討伐すれば、事態は収束します。

 よし、まだ間に合う! 

 

「ああ! ベルが食人花に突っ込んでって一発でやられた!!」

 

 3アウトおおおお! 

 じゃなくて、何やってんですかあの子! あの花確かレベル4くらいはありましたよね!? え、生きてます!? 

 

 テンパる私の肩を、キャスターが安心させるように叩く。

 その目はどこか遠くを見ているようであり、使い魔と視界リンクをさせてるようです。

 

「ご安心を、セイバー。アーチャーの依頼で、ベル・クラネルの護衛としてこっそり配置していた風の元素結晶(エレメンタル)を起動しました。被弾の瞬間、風の防壁を発生させましたので、ダメージは大幅に削減しています」

「本当ですか、でかしましたキャスター!」

 

 こっそり自分の使い魔もどき配置とかストーカーじみててこいつら本当にキモいですが、今回ばかりはグッジョブです! 

 

「えぇ、術式は問題なく作動しましたので怪我の具合は………………致命傷ですね」

「ダメじゃないですか!?」

「微妙に起動が間に合わなかったようですね。私の元素結晶もダメージを受けて壊れかけましたし。まぁそれすら無ければ即死だったので、フィフティフィフティかと。もっともあの様子ですと、持って数分の命というところでしょうか」

 

 この外道、ストーカーするならきっちり守りなさい! 

 

「落ち着くのです、セイバー。ここに私が調合したポーションがあります。一滴で瀕死の老人も三日三晩戦えるこれを使用すれば、問題なく治療可能です」

「なるほど素晴らしいですねここからどうやって使うのかという問題にさえ目を瞑れば!!」

「……あっ」

「あほおおお!」

 

 ええい私、脳をフル回転させるのです! 大丈夫、私のボディはアルトリア・ペンドラゴン。常勝不敗、理想の騎士王!! 

 自分を鼓舞し終えた私は、やっべー、という顔をしてるキャスターに質問する。

 

「キャスター、そのポーションは、気化してても効果はありますか?」

「? えぇ、必要量さえ負傷部位に触れるか、体内に取り込めば」

 

 ……よし、それならば! 

 

「キャスター、手持ちのポーションやエリクサーをありったけ出しなさい! そしてバーサーカー、貴方はそれをベルのところまで届けるのです!」

「お待ちを、セイバー。たとえバーサーカーの俊足と言えど、戦場に辿り着く頃にはベルは息絶えているでしょう。ライダーのヒポグリフでも、ギリギリ間に合うかどうか……」

「考えはあります! キャスター、貴方は回復薬をどんどん気化させなさい! そしてバーサーカー、貴方にはこれを託します。使いこなして見せなさい!!」

 

 シュバッ、と私が取り出したるは、縁日のお約束の品、屋台でたこ焼きと一緒にもらった『祭りうちわ』!! 

 

 おいそこの緑色と黒いの! 『ついに頭が……』『いや元々たいがい……』とかこんな状況じゃなかったらぶちのめしてますよ!? 

 

「バーサーカー、貴方の力でこれを宝具化しなさい! そして気化ポーションを扇ぎ、風に乗せて戦場方面に散布するのです!」

 

 ライダーのおお! という尊敬の目が心地良いです、こんな状況じゃなかったらもっと楽しめるのですが! 

 

 しかし自信満々に告げた私に反して、微妙な表情の我が騎士。

 おい、どうしたというのですか。

 

「恐れながら我が王よ。それは難しいかと……」

「ハァ!?」

「我が力の原典、ランスロット卿の『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』は手にした武器を宝具化するものです」

 

 知ってますよ? 

 

「そう、武器を宝具化するものなのです…………さすがにうちわを武器と思うのはちょっと」

「原作のランスロットは丸太でも箸でも宝具化してたんですよつまらない固定観念なんか捨てなさいこの野郎!」

 

 ええい、グダグタ言ってる暇はありません。気は進みませんが、ここは……! 

 

 懐から穴に糸を通した5ヴァリス硬貨を取り出し、バーサーカーの目の前で左右に揺らす。

 

「バーサーカー、これを見なさい。はい、貴方はだんだんうちわが武器に思えてくるー思えてくるー」

「我が王!? 流石にそんな稚拙な催眠術でうちわが武器には……ぶきには……Weapon……うちわ……◾️◾️◾️◾️……! Weapooooooooon!!」

 

 よし、完了。

 狂化スキルがあるとはいえ、ホント簡単に正気失いますねこいつ。

 

 バーサーカーは私からうちわを奪い取ると、即座に宝具化して振り回しまくる。

 おお、バッヒュンバッヒュン風が吹き荒れてますよ。

 

「うわぁ、普通自分に仕える奴を狂わせます……?」

「しかもあんな子供騙しみたいな催眠術でだぜ? バーサーカーが哀れでならねぇよ……」

 

 悪いことしたとは思ってますよ! 

 

「私は素晴らしい采配だと思いましたよセイバー。……えぇ、やはり貴方は『こっち側』です。友だちになりましょう」

「やめなさいキャスター! 私を貴様と同じ外道サイドに入れるな!」

 

 原作のパラケルススならともかく、貴様と同じカテゴリは嫌だ! 

 

「ふふふ、照れなくても良いんですよ……ついでに状況報告すると、下級冒険者たちが助っ人に現れました。今はベル・クラネルに憑けていた元素結晶を分割し、彼らの盾役と食人花の妨害に回しています。ダメージの軽減と、いくらかの行動の制限にはなるでしょう。初手でダメージを受けていなければ、元素結晶だけで倒すことも出来たのですが」

「お、おぉ……妙に真っ当な行動ですね」

 

 この外道にしては珍しく人命優先な行動に少し動揺する私。

 

「人命優先は、私も違えたことのない信念です……。えぇ、決して、途中で逃げ出そうとした冒険者に憑けている元素結晶の魔力を活発化させて食人花に優先的に狙わせることで、逃げる気を無くさせる為とかではないですよ?」

「私の感動を返しなさい!」

「ふふふ……あっ」

 

 有効なのは認めますが、やはりこの男、色々台無しにしますね! 

 しかしやはりバチは当たるものなのか、あるいはポーションの気化とバーサーカーへのパス、遠隔で複数の元素結晶の操作、視界のリンク、あと私との無駄話を全力疾走しながらは無理があったのか、レベル5の第一級冒険者のくせに足を滑らせて屋根から落ちるキャスター。

 流石に空中で体勢を立て直し、スタッと着地を決めはしたものの、危ないですね。危うく下にいた人を踏みかけ──ってそこにいるのは! 

 

「うぉわあ! なんや!?」

「あれ、パラケルスス?」

「ム、キャスターか。いきなり空から降ってくるとは、何事だ」

 

 ロキとアイズ、おまけにうちのランサー! 

 

「おや、ランサー。奇遇ですね。我々に隠れてデートですか?」

「趣味の悪い話だ。彼女たちと俺では釣り合いが取れまい。……俺には過分な栄誉だ」

「カルナはホンマ、殊勝なやっちゃなー。あのアホ神の眷属なんが勿体ないで!」

「偶然そこで会ったんだ。それより、パラケルススは一人? アルトリアたちは?」

「いやぁ、それが複雑な事情がありまして」

 

 アハハ、ウフフ〜。

 いや何呑気にお喋りしてるんですかあのアホ! 

 

 私は屋根の上から声を張る。

 

「ランサー、緊急事態です! 合流してください! ……可能であればアイズも!!」

「ム。何かわからんが承知した」

「! ……ロキ、良いですか?」

「ん、構わんよ。手伝ったり。ウチも追っかけるから」

 

 主神の承諾を得たアイズと、ポンコツ2名が合流。

 走りながら経緯を説明すると、アイズも真剣な顔で頷いてくれた。

 

「わかった。街中でモンスターが暴れてるなら、早く退治しなくちゃ。一緒に戦おう、アルトリア」

 

 あー、ホント良い子ですね。アイズは。ウチのポンコツと違って打てば響くというか、素直というか。

 長い付き合いですが、常に可愛い。ホント幸せになってほしい。ヒロインになってほしいです。

 

「俺も承知した。ガネーシャ神の祭りを汚す者は、我が炎を以って焼き尽くそう」

 

 カッコいいこと言ってますけどアイズがのんびりデートしてる時点で違和感覚えなさいよランサー!(責任転嫁)

 

 

 そして走りに走ってようやく我々の目にも戦場がハッキリ見えてきました。ベルはまだ気絶中。助っ人の冒険者達は、パラケルススが使役する風の元素結晶に巻きつかれ、動きに精彩の欠ける食人花と交戦中。怪我した端からバーサーカーがバッヒュンバッヒュン飛ばす気化ポーションで回復しながらモリモリ戦ってますね。

 

 よし、ここらで気を引き締め直しますか。

 

「総員、聞けぇ!」

 

 久しぶりの腹の底からの号令。

 

「これよりモンスター掃討を開始する! 失われなかったはずの命が、我らの失態により奪われることはあってはならない!! 心して掛かれ!!」

 

 

 私の発破にファミリアの顔が引き締まる。返ってくるそれぞれの気合いの声。

 えぇ、私含めて馬鹿ばかりですが、やる時はやる仲間(ポンコツ)ですとも! 

 

 いやホント、ベルや名前も知らない冒険者達がストーリー変わったせいで死んじゃうとか、あり得ませんから。

 

 あーでもアイズ、貴方に言ったわけじゃないですよ? やめてください、そんな『さすが、良いこと言う!』的なキラキラした目で見られると罪悪感で死にたくなります。つらみ。

 

 おや、あれはベルが起き上がっていますね。良かった、怪我は問題なさそうです……ハッ、ティーンときましたよコレは! 

 

「アイズ、先行してもらえますか? 貴方の風が一番速い」

「わかった。アルトリアもすぐ追いついて!」

 

 風を纏ってぶっ飛んでいく剣姫。よしよし、良い感じです。

 思わずニヤついてしまう私に、ヒポグリフを寄せながらライダーが気味悪そうに話しかけてくる。

 

「なんでアイズだけ先行させたの? スピードならランサーやバーサーカーだって負けてないと思うんだけど。なんなら、ボクのヒポグリフだって」

「レベル5だった頃ならともかく、今の貴方じゃ下手したら食人花に負けるじゃないですか」

「ひどい!?」

 

 ひどくないです。

 

「それに見てください。ちょうどベルが起きました。一発で負けた以上、多少慎重になり攻めあぐねるでしょう。そんな絶望的な状況下、舞い降りる剣姫。一閃のもと斬り伏せられる食人花。どうです? ミノタウロスの再現としては、なかなか良いシチュエーションでしょう?」

「うわぁ、まだヒロイン降りる気満々なんだね」

「往生際悪いよなぁ、ウチのポンコツ騎士王様は」

 

 フハハ、理性蒸発&最弱英霊コンビが何か言ってますが、私の完璧なプランの前にはどこ吹く風。

 

 勝ったぞ綺礼! この戦い、我々の勝利だ!! (ヒロイン争奪戦的な意味で)

 

 

 

「ヤベーぞセイバー! ベル君がまた突っ込んだ!」

「嘘でしょアーチャー!?」

 

 うわ完璧にクラウチングスタートしてるじゃないですか! 

 アイズまだ間に合ってませんし! 

 

「キャスター、バーサーカー!!」

「すでに!!」

「◾️◾️◾️◾️────!!!!」

 

 キャスターはベルに憑けている元素結晶以外全てを活性化させて、バーサーカーは宝具化したうちわの魔風で、魔力を狙う食人花の注意を逸らす。

 直後スタートを切るベル。

 っていうか速い! 知ってるつもりでしたが、憧憬一途の補正半端ないですね!? 私じゃなくてアイズだったらもっとマトモに成長出来たでしょうにほんとすみません!! 

 

 ああ、でも残ってた一本でかち上げられた、何やってるんですかキャスター! しっかり囮してください! 

 あ、でも体勢整えて、ウソ、触手蹴って加速!? スゴい! 

 

 ああでも触手が戻ってます! 一本追いつかれる! 

 

「アーチャー!!」

「はいよぉ!!」

 

 ベルを捉えんとしていた触手を超長距離狙撃で紙一重に弾き飛ばすアーチャー。流石です! 

 

 そのままベルは食人花にナイフを────って、あぁ、止まった! 

 ランサーも攻撃体勢に入っていますが、彼の力では余波だけでベルが死にかねない。

 マズい、あのままでは……ええい、ベル、貴方の耐久を信じます!! 

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!!」

 

 限界まで出力を絞った宝具をベルの背中に叩き込む。

 お願いですから届いてください────!! 

 

 

 !! 

 いったああああああああ!! 

 

 

「よっしゃあああああ! ベル、良く頑張りましたああああ!!!!」

「大好きだ主人公おおおお!」

「素晴らしい戦果だ。素晴らしい戦果だ」

「今回のMVPほぼ私ですよね?」

「◾️◾️◾️◾️────!!」

「あれ、よく考えたらボクとアヴェンジャー何もしてなくない? こうしちゃいられない、突撃するよ、アヴェンジャー!!」

「は? え、ちょ、待っ、オレが行く意味あああぁぁぁぁ!!」

 

 歓声を上げながら、現場にようやく到着。どんだけの距離走ったんでしょう。

 喜びのままにジャンプして広場に降り立つ私たち。

 アヴェンジャーが急加速したヒポグリフに振り落とされてましたが、まぁ些事です。

 

 っていうかよく見たら、アイズがベルを抱き抱えてるじゃないですか! しゃあ! 来ましたコレ!! なんか後ろで三匹くらいニョロニョロ出てきたっぽいですけど、心底どうでもいいです!! 

 私は喜びのままにアイズに手を差し出す。

 

 

「これ以上の(私がヒロインポジという)悪逆を許すわけにはいきません。アイズ、力を貸してくれますか? (恋愛要素的な意味で)」

「……! うん!」

 

 あぁ、なんて力強い返事でしょう。天使に見えます。

 万軍を得たような心強さ。これからもよろしくお願いします。

 

 まぁそんなこんなで今回の事件はなんとか無事に終わりました。

 

 え? 戦闘描写いります? ネタバレしてる格下相手に完全武装の第一級冒険者複数名によるタコ殴りですよ? 

 女騎士と触手なんてフォーリナー案件も発生してませんし、強いて言えば逃げ遅れたアヴェンジャーがヒギィッな目に遭いかけたことくらいですかね? 

 

 

 まぁあえて締めるならば……

 

 

 

 

 

 勝ったっ! 第1巻完!! 

 




あとはエピローグ的なものを書くか書かないかで原作一巻はとりあえず終了です。お付き合いありがとうございました。
皆様のご感想が本当に嬉しくて、初投稿ですがなんとかここまで書けました。まだエピローグ的なものあるかもですが。
少し間は開くかもですが、二巻以降も頑張って書いていくつもりです。お付き合い頂ければ幸いです。

以下は今回の収支報告です。

原作での被害→ベル、レフィーヤ(そこそこ重傷)、アマゾネス姉妹の拳(痛めた程度)、ゴブニュファミリアの剣(高価)
原作で得た物→ベルの成長、レフィーヤの成長

ポンコツ被害→ベル(致命傷後謎の完治)、下級冒険者多数(割と重傷後謎の完治)、キャスターのヤベー薬代(超高価)、キャスターのヤベー薬散布により一部地域の住民がギンギンになりすぎて数日の睡眠障害、ゴブニュファミリアの剣(高価)
ポンコツ利益→ベルの成長、下級冒険者多数の成長、一部地域住民の持病改善
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