IS lamentation   作:夏陽

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どうも、挨拶が遅れた夏陽です。
初めての作品なので至らないところがあるとは思いますが
よろしくお願いします。
 
改善点がありましたらバシバシ感想をください。
ただ、批判は勘弁ください。




 死神

『死神。後5分でそこをアメリカ軍輸送部隊が通過する。護衛にはオリジナルISが2機、量産型が5機確認している。手段は問わない。とにかく、動くものは殺して、輸送車両を確保するんだ。間違っても壊すという真似はしでかすなよ?失敗は許さん、以上だ』

 

 了解と、短く返事を返し通信を一方的に切断、作戦エリアを再確認していく。

 カナダ中部のゴーストタウン。2年前の戦争により廃墟と化した街。

 大都市というのにふさわしく高層ビル群があったらしいが、戦争の戦火によって倒壊。

 ただし、倒壊を免れたビルもあり隠れる場所は多々ある。

 

 死神は、閉じていた目をゆっくりと開ける。

 それと共に眼下に広がっていく廃墟の街なみ。戦火に包まれる前までは賑やかだったとは到底思えない、それほどまでに人の気配がない。

 だが、別にどうでもよかった。昔戦争に巻き込まれた街だからと言って、特別な感情を抱くこともない。

 これからするのは人殺し。

 こんな程度で揺らいでいたら傭兵などというものを続けてなどいけない。

 人を何も思わず殺せるほどには、心を捨てていた。

 

「   」

 

 ポツリと誰かの名前を呟く。それは大切な少女の名前だったが、吹き荒れる風にかき消されていく。

 首にぶら下げたペンダントに収められている写真をただ意味もなく眺める。

 幸せそうな笑顔を浮かべる少女と、困ったような、呆れているような苦笑いを浮かべる自分が映る。

 こんなふうに笑えていたのか・・・・・となんとなく思う。

 今の自分にはない表情。素直に笑顔を浮かべることが今は出来ない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ギュッとペンダントを握り締めたあと、首にかけ直す。

 そろそろ時間が近づいてきた。

 ゆっくりと自分に与えられた機体へと乗り込む。

 アーマードコアと呼ばれる人型機動兵器と呼ばれるものとは似て非なる機体。

 アーマードコア・ネクストと呼ばれるものだ。

 コジマ粒子を使ったコジマ技術で成り立つ究極とも言える機動兵器。

 アーマードコアをすら過去の遺物としてしまう最高のスペックのそれ。

 操縦するためにAMSと呼ばれるシステムを使い、AMS適性がなければ動かすことが出来ない、選ばれたもののみが使える力。

 

「AMS接続、開始」

 

 首元に設けられたアダプタにプラグを接続し、起動コマンドを音声入力。

 脳内に直接電気信号が流し込まれ意識が混濁しかける。体を焼き尽くすような猛烈な激痛。

 何十回と訓練を続けたのにも関わらず、多大な負荷が全身を駆け巡る。

 低いAMS適正が足を引っ張る。適性があれば、こんな負荷に耐えることもなかったのだろう。

 

 初期接続の負荷に耐え切ると、自分とネクスト一つになる。

 元から自分の体だったかのようなそんな感覚。

 メインカメラから送られてくる映像が自分の視界と重なる。

 ゆっくりと腕を動かす。

 ネクストに操縦桿など必要ない。AMS接続によって自分の体のように動かすのだから。

 

―――ジェネレーター稼働率100%到達。

  KP出力開始。

 

 

・・・・・・KP出力値40%突破、プライマルアーマー展開。

 

 

 

 ジェネレーターEN出力安定稼動確認。

 ジェネレーターKP出力安定稼動確認。

 プライマルアーマー展開完了確認。

 AMS接続異常なし。

 

――――アーマードコア・ネクスト起動完了

 

 莫大な出力を誇るブースターに炎が灯り、機体を宙に浮かべる。

 PICを使い自由に空を飛ぶISとは違い、あまりにも原始的な飛行方法。

 だが、ブースターが灯す炎は新時代を照らす光にしか見えなかった。

 

 空へと飛び立つ。 

 全てを破壊する悪魔が。

 

 

 

 

 

「ったく、なんで休暇なのにこんなことしなきゃいけねぇーんだよ」

 

「落ち着けって。これ運び終われば一億ドルだぜ?やっすい仕事だ」

 

 後ろの荷台を指さしながらマイクが言う。

 

「そりゃ、そうだけどよ。IS運ぶのにここまで護衛がいるって、今のご時世のせいなのかね」

 

「もしかしたら死神が来るかもな、くくく」

 

「おい、バカなことは言うんじゃなねぇよマイク。本当に来たらどうすんだ」

 

「そりゃお前、死ぬだけだろ?ま、誰だかわかる程度に殺されたいもんだけどな」

 

「・・・・・・馬鹿な事言うんじゃねぇよ。死神が残酷な殺しをするようになったのはつい最近。何があったんだか」

 

「ん、知らないのか?噂じゃ女が胸を撃たれたらしい。ま、量産型ISだったから即死しなかったらしいが」

 

「女、ね。死神にもいるもんだな」

 

「さぁな。本人にでも聞け。で、死ぬことはなかったらしいが、あとは知らん。それしかカメラに映っていなかったからな。専門家からすればいつ死んでもおかしくないくらいの重症になるらしいが」

 

「へぇ。さぞかし辛いだろうな死神とやらも。人殺しをしすぎた罰って言われればおしまいだけどさ

」

 

「そりゃそうだ。胸糞悪い話だよ」

 

 そう言いながらタバコを吸うために窓を開け、やめる。

 ここのあたりは強い風が吹くことで有名で、しかも近くに砂漠があるおかげで砂埃がひどい。

 ろくに窓も開けられない。

 

「ったく、ろくにタバコも吸えねぇのか」

 

 そこまで言いかけ止まった。

 車両に取り付けられているセンサーが反応を示していたからだった。

 

「あ?NBC警報?」

 

 Heavy Metals,Raidiation detect(重金属と放射線を検出)とモニターに表示され、毒性と汚染がグラフとなって出ている。

 グラフは既に危険領域に達しかけていた。

 放射能汚染で言うと約50ミリシーベルト程度。ガンの発生率が上がるとされている数値。 

 だが、グラフは止まることを知らないらしい。

 反応を示してから数秒経った時には既に5シーベルトを超えた。

 過半数が死に至る線量に匹敵する。

 

「オイオイ・・・・・・!ヤバイぞコレ!?」

 

 そう叫んだのと、進路上の地面が大爆発によって抉れたのは、ほぼ同時だった。

 

「クソッ!!」

 

 ハンドルを急旋回し、爆発によってできた穴に落ちることはどうにか回避はできた。

 だが、それを狙っていたと言わんばかりに、あたり一帯が大爆発によってえぐれてゆく。

 それと同じく、爆発の衝撃で男たちは頭を強く叩きつけられる。

 闇の底へと意識が落ちていった。

 

 

 

 

 次に男が目を覚ましたときは風が吹いていただけの景色は既に無く、銃声と、爆発音が轟く戦場と化していた。

 数年前に篠ノ之束が使用したと言われるアーマードコアに似た機体。

 あの戦争から生き延び、本物を見たからこそ言える。

 

「なんだ、アレは・・・・?」

 

 空を自在に飛び回り、瞬間的に10Gを超えそうな超音速機動。機体の周りに緑色に輝く光の膜が見えた。

 どう見てもアーマードコアではない。

 

 ズヒャァ!!と轟かせ量産型ISとの距離を詰めた巨人が左腕のブレードを振るう。

 それだけで量産型ISは両断され爆散した。操縦者諸共。

 

 その巨人の近くでは生き残りと思わしき護衛部隊が応戦していた。空に向かって打ち上げられる縦断とミサイルの雨。

 そして突撃していく量産型ISとオリジナルISの操縦者たち。

 

 だがその全てをことごとく回避されていた。従来のISをすら含むアルゴリズムを遥かに凌駕した

常識を覆す機動性能。

 オリジナルISですらそのスピードに翻弄されていた。

 

 このままじゃまずい。

 

 そう、本能が語りかけてくるものの、爆風で飛んできたがれきにやられたのか左足が無い。それに辺り一帯が巨大な穴で埋め尽くされ歩けたとしても逃げ切れない。

 相棒の姿が見えない。無事でいればいいが。と内心男は思う。トラックは離れたところに有り、衝撃で投げ出されたのかもしれない。

 

「なんとしても積荷だけは・・・・・ッ!?」

 

 護衛部隊のリーダーを中心に爆発が巻き起こる。巨人の肩に榴弾砲が構えられているということは、隙を突かれ撃たれたのだろうか。

 爆炎が晴れた後、リーダーの姿はなかった。あの威力に機体ごと吹き飛んだらしい。

 馬鹿げた威力だった。

 

 そしてその後の戦闘は既に先頭とは言えない、一方的な蹂躙。

 次々と穿たれるライフル弾によってシールドを貫かれる。その威力はもはやシールドが意味をなさず、被弾の度絶対防御が発動する。

 視界いっぱいに広がるミサイルの嵐。それはただのミサイルではなく近接信管式、生半可な回避をしたために爆炎に飲まれてゆく。

 少しでも隙を見せたものは一撃必殺のブレードで両断される。

 榴弾砲で跡形もなく吹き飛ばされる。

 それは、まるで悪魔のようだった。

 

 

 

 焼け焦げ、高熱でねじ曲がった金属の塊。茶色の大地を微かに染める紅い色。炭になった人の遺体。

 体らしき一部が散乱してすらいた。

 唯一無事なのはトラックの荷台、そして何事もなかったかのように立つ巨人。

 

「・・・・・・あれが目的だったって事かよ」

 

 声に気づいたのかゆっくりと、巨人がこちらへ歩いてくる。

 どうやら此処までらしい。

 懐からタバコを取り出し火をつける。最後の一服。味わうようにゆっくりと吸う。

 

 ライフルのレーザーポインターが自分を照らす。でかい銃口が鈍く輝く。

 

 煙を吐き出す。

 

「クソッタレが」

 

 ズドン!と男を銃弾が吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

「ねー、なーくん」

 

 パタパタとベットに横になりながら足を動かす女性。その女性はまさしく世界を混乱のさなかに陥れた篠ノ之束でしかなかった。

 そして、その視線は椅子に座るひとりの男に向けられている。

 死神と呼ばれる傭兵だった。

 

「なんだ」

 

「何でもないよ?なんとなく名前を呼んでみただけ」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 まるで恋人に投げかけるかのような、そんな会話。だが、束は死神と呼ばれる傭兵に特別な感情を抱いてるわけでもなく、抱く予定もない。

 ただ単に暇つぶしにしていただけに過ぎない。

 そもそも、自分より8歳ほど年下の子供に恋愛感情を抱くこともない。

 

「ぶー、なーくんってば無視しないでよ。このいけず」

 

「煩いな。お前の暇つぶしに付き合う必要はない」

 

 その言葉を聞いたとたん、束の顔からヘラヘラとした笑みが消え、複雑な感情が混ざる表情を浮かべた。

 が、対する死神は気にする素振りもなく、ただ意味もなく手元の書籍に目線を落としている。

 

「・・・・・・・・昔はそんな事、言わなかったのにね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「もう、笑ってくれないの?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「誰も喜ばないよ?そんな事して、さ」

 

 死神と呼ばれる男の、死神と呼ばれる前を知っている束が投げかける言葉。

 昔は、こんなんじゃなかったのに・・・・と束は思う。

 それなりに笑い、それなりにはしゃぎ、それなりに強い少年だった。比喩無しだとしても、責任感が人一倍強いという点を除けば、どこにでもいそうなという言葉がとても当てはまる。

 世界の裏を見ても歪むことなくまっすぐ生きるその姿は憧れたものだった。

 

 人を殺すことに抵抗を失くし、淡々と依頼があれば殺害する。生き延びるためには手段を問わない。時には味方ですら見捨てる。

 感情をどこかに忘れたかのように平淡な表情に声。

 自分の命でさえ大切に扱おうとしない。

 

 昔の面影はどこにもなかった。

 

「そんなことしてたら悲しむよ?なーくんの大切な人が。ううん、それだけじゃない。たくさんの人が悲しむ事になる」

 

「・・・・・・どうでもいいんだよ、そんな事は。俺はアイツを絶対に許さない。それだけが原動力だ」

 

「復讐なんてくだらないよ?そんな事無駄でしかないのに・・・・・・・・」

 

「わかってる、わかってるさそんな事。だけどどうでもいい事さ。アイツに絶望を味あわせてやれればソレでいい。もちろん、計画遂行の障害にならないようにはするがな」

 

 死神の脳裏に映るのは大切な恋人を撃ち抜いた人物が映る。なぜ、あそこで殺さなかっのか、それだけの終わることのない後悔の念に襲われる。

 だが、今から殺してやればいいことなのかもしれない。

 ただ、殺すのではつまらない。絶望を味あわせた上で殺してやれば良い。

 

 その思考が行き着く先にあるのは、絶望した表情の中、自分に打ち抜かれる”アイツ”。

 部屋には口元を残酷に歪める死神、そしてそれを心配そうに見つめる束の姿だけがあった。

 

 

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