転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第89話 ヒヨコたちの情報を聞こう(PARTⅣ)

その日の夜。

 

傷が治ったリーナがあまりの可愛さにイリーナ、サリーナに連れて行かれ、ルシーナちゃんも加わって夜の女子会を開催するらしい。

ほとんど拉致られるように連れて行かれたリーナだが、お姉さんたちとゆっくり寝る様に伝えておいた。

 

そして俺は、王都に入って最初の夜、情報の精査を行わなければならない。

 

部屋の窓を開ける。

 

「入れ」

 

『ははっ!』

 

ヒヨコ隊長率いるヒヨコ十将軍が勢揃いで部屋の中に入ってくる。

 

『ボス、ヒヨコ隊長及び十将軍揃いました』

 

自分でヒヨコ隊長って言うのもどうかと思うが、それは置いておく。

 

「ついに王都に入った。王都の情報を精査した上で、明日からの活動方針を決める。また、情報によって追加の調査指示を出す。それでは報告を頼む」

 

『ははっ、それでは序列一位レオパルド』

 

『ははっ! まずは本日マンマミーヤのマミちゃんのお店に行って頂き感謝します』

 

「店のパンはかなりのレベルにあった。コルーナ辺境伯家の皆さんにも食べてもらったが、非常においしいと言う判断だった。何がピンチなんだ?」

 

『はっ!実はかなり客足が遠のいており、売り上げ的には店の継続が困難なレベルにあります』

 

「・・・? パン自体は非常に美味しかったぞ。なぜ客が入らない?」

 

『はい、実は半年前にマミちゃんのお母さんが流行り病で亡くなっているのですが、その後、同業者との間柄で関係がうまくいかなくなっているようです』

 

「ふーむ、それで客が入らないとなると、同業者からの嫌がらせか、何かの影響が店にかかっている可能性が高いな。レオパルド、もう少し突っ込んで調査出来るか?」

 

『ははっ!お任せください』

 

『次!序列二位クルセーダー』

 

『ははっ!まずはリーナちゃん救出誠にありがとうございました』

 

「うむ」

 

『リーナちゃんの情報はこれで完了になります。別途追う情報が無ければ他の将軍のサポートに回ります』

 

「そうしてくれ」

 

『次、序列第三位クロムウェル』

 

『ははっ!王都バーロンの南地区にあります教会にて、シスターアンリがピンチです。地上げ行為でほとほと困り果てております』

 

「地上げを行っている者達の特定は?」

 

『はっ!ダズグール商会の手の物と判明しております。教会の敷地を安く買い取って再開発の足掛かりにしたいという意図の他、ダズグール商会を手助けしているボンヌ男爵の長男がアンリちゃん自身を狙っているため協力しているようです』

 

「ふむ、王都の教会について再調査がいるな。それからダズグール商会とボンヌ男爵の関係も調査しろ」

 

『ははっ!』

 

『次!第四位センチュリオン』

 

『はっ!未亡人となりましたハーカナー男爵元夫人が狙われていると言う報告をさせて頂きましたが、テラエロー子爵の卑怯なやり口により、屋敷なども差し押さえられてしまいかねない状況です』

 

「どういうことだ?」

 

『テラエロー子爵はハーカナー男爵を謀殺しただけでなく、その後偽の借用書を持ってハーカナー元男爵夫人を追い詰めています。もともと貧乏貴族だったハーカナー男爵家ですが、屋敷まで取り上げられてしまうと、ハーカナー元男爵夫人の身の振り先が無くなってしまいます。それが狙いで支援するふりをしてテラエロー子爵が近づこうとしています』

 

『許せぬな。テラエロー子爵が謀殺したと言う証拠を掴め。それから偽の借用書と借金取り立ての連中との関係も洗い出せ』

 

『ははっ!』

 

『次!序列第五位ヴィッカーズ』

 

『はっ!王都バーロンの西地区にある商業区画の一店舗にあります「定食屋ポポロ」の姉妹が限界を迎えております』

 

「いや、定食屋ポポロの姉妹が限界ってどういうことよ?」

 

この話が一番意味不明なんだよな。

 

『この姉妹めっちゃくちゃいい子達なんですよ!俺たちに残り物のコロッケくれる心優しい子達なんです!』

 

コロッケかい!

 

「で、どう限界なんだ?」

 

『まったく客が入っておりません!』

 

「そりゃ限界だろーね! メシ屋に客が入らなきゃやってけねーよ」

 

『なんとかっ!なんとかボスのお力で!』

 

「・・・とりあえず、明日にでもその定食屋で食事してみるか。次」

 

『はっ!序列第六位カーデン』

 

『ははっ!大聖堂の下働きのアリーちゃんにピンチが続いています。聖女の機嫌が悪いため、ずっとアリーちゃんにつらく当たっており、半ばいじめに近い状態が続いております』

 

「随分と俗物的な聖女だな。まずは教会と聖女の関係、それから聖女がどのように認定されるかを含めた聖女にまつわる情報を全て洗い出せ。それからアリーが何故大聖堂で働いているか、その背景も調査せよ」

 

『ははー!』

 

『次!序列第七位カラール』

 

『はっ!南地区のゴミ収集などを作業しているマリンちゃんですが、足の怪我が悪化したのか、ゴミ収集の仕事にも影響が出ており、仕事の日銭も満足にもらえていないようです。現在もスラムに近い町の路地裏で寝ているようです』

 

「・・・朝一で様子を見に行こう。足の怪我は<生命力回復(ヒーリング)>で治るといいんだが。それにしても、回復してもその日暮らしのストレートチルドレンは変わらずか・・・、何かいいアイデアを検討せねばなるまい」

 

『御意』

 

『次!序列第八位キュラシーア』

 

『はっ! 王都バーロンでの王都警備隊隊長に就任したばかりのクレリア・スペルシオですが、かなり有能な人物である事が分かりました』

 

「どれほどだ?」

 

『スペルシオ家は、貴族ではありませんが現在の王都でもトップクラスの豪商で、その名を知らぬものはおらぬほどです。そしてそのスペルシオ家の長男、グラシア・スペルシオはこのバルバロイ王国、王国騎士団の騎士団長を務めております』

 

「この国の騎士のトップなのか」

 

『はい、それもかなり若く、騎士団の団長就任は大抜擢だったようです。ただ、その実力は本物であり、現在王国騎士団の中でも最強の実力を持っている事は間違いないようです』

 

「それほどの人物の妹、というわけか」

 

『はい、その妹であるクレリアも類稀なる剣技の持ち主の様で、スペルシオ家当主、アンソニー・スペルシオは「我が家に麒麟児が二人も生まれるとは」と大層驚いていたとのことです』

 

「ふーむ、実力は本物なのか。ならば、足を引っ張る物は妬みか、派閥争い的なものか?」

 

『一番は妬みかと。王都警備隊に、プレジャー公爵家三男のサンドリック・フォン・プレジャーが在籍しており、先日の王都警備隊隊長就任をめぐってクレリアと争っております。実際のところ、剣技は三流で、コネと金と公爵家という後ろ盾のみで伸し上がっております』

 

「かなり面倒だな。王都内で治安が悪くなるとクレリアの責任問題になるわけか」

 

『まず間違いなく直結するかと。必ずサンドリックから隊長に対する責任を問う声が上がり、公爵家もそれに賛同するかと』

 

「サンドリックも警備隊に配属されているんだから、自分の責任問題でもあるだろうに」

 

『そのあたりは全て隊長であるクレリアに責任を押し付ける形で糾弾するつもりかと』

 

「それがまかり通る公爵家の力・・・あ~、権力ってイヤね」

 

『すでに公爵家からいくつかの貴族へ通達があり、王都内で暴漢を装って暴れたりして、治安に不安を与えているようです』

 

「クレリアを追い落とすためには、何か決定的なダメージを与えて来るだろう。それが何か、調査し浮き彫りにしろ。逆手にとってクレリアの手柄とすれば一気に評価を逆転できる」

 

『ははっ!』

 

「プレジャー公爵家とつながりのある貴族、それから敵対する貴族も洗い出せ」

 

『プレジャー公爵家と敵対する貴族もですか?』

 

「そうだ、王都の治安に不安があることをアピールするのに、暴漢に敵対勢力を狙わせるのは一石二鳥の戦略になる。ターゲットになる相手が分かれば対応しやすくなる」

 

『ははっ!』

 

「それから、序列第九位ティーガーと第十位センチネル」

 

『『はっ!』』

 

「お前たちは俺という存在が王都内、王宮内で今だに情報としてあがっていないか、もしくはあがっているとすればどの程度か調査をせよ。また、暗殺者集団『黒騎士ダークナイト』という組織とその首領カイザーゼルについても調査せよ」

 

『『ははー!』』

 

『ボス、最後は私からになります』

 

「カッシーナ王女か?」

 

『はい、先ほどのリーナちゃんの傷を治した奇跡の御業。ぜひともカッシーナ王女にも』

 

「・・・そうだな。5歳から周りに気を遣わせないよう、自分を幽閉状態にするほどの娘だ、助けてやりたいな」

 

『はっ!』

 

明日はフェンベルク卿が王都へ俺の到着を連絡する予定だ。その上で王との謁見の日程が決まれば、王都での調査日程がある程度確定する。その上で優先順位を決め、ヒヨコたちの情報上がった人物たちへの対処を行っていく必要がある。

 

・・・とりあえず明日はリーナの服も買いに行こう。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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