転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

103 / 332
第90話 マリンちゃんを助けに行こう

「ふぁ~」

 

窓から心地よい光が差し込む。

多分気持ちの良い朝が来たと推測するね、俺は。

 

「・・・・・・」

 

何故か腰のあたりがあったかい。

何かがガッチリ抱きついている感じ。

 

「え~」

 

一瞬イリーナかと思ったが、感触が小さいので、おやっと思ったのだが、やっぱりリーナだった。

昨日リーナの顔と左肩の傷を治したら、メチャメチャ可愛かったので、イリーナやサリーナ、ルシーナちゃんたちに拉致られ、イリーナの部屋に連れて行かれていた。

てっきりイリーナたちと一緒に眠っているものだとばかり思っていたのだが、なぜか俺の腰にガッチリしがみついている。

 

それにしても、スライム流変身術<変身擬態(メタモルフォーゼ)>はだいぶ慣れて来た。矢部裕樹の姿のままベッドで眠っても、デローンと戻ったりしない。

ちなみに最初に寝た時はデローンMr.Ⅱに戻っていてちょっとびっくりした。

 

とりあえず上半身を起こして掛布団を横にずらす。

やっぱりひしっと俺の腰に食いついているリーナが・・・

足を絡めているので、ワンピースがはだけている。そして可愛いお尻がぷりんと。

 

「パンツを履きなさい!!」

 

「ふええっ!?」

 

むにゅむにゅと寝ぼけ眼を擦りながら起き出すリーナ。

 

「パンツどうしたの!? パンツ!」

 

俺はリーナを捕まえて膝に座らせると、聞いてみる。

 

「あ、おパンツはイリーナお姉しゃまがお洗濯してくれましゅた」

 

手を上げて元気よく説明するリーナ。

ついついよくできましたとリーナの頭を撫でてしまう。

 

「にへへー」

 

リーナの顔がにへっと笑う。くっそ可愛いな~。

 

とりあえずイリーナとサリーナにお小遣いをたくさん渡して、リーナの服と下着を山のように買って来てもらおう。

 

「おーい、ヤーベ。そろそろ朝食に・・・」

 

そう言って毎度の如くノックも無しに俺の部屋のドアを開けて入ってくるイリーナ。

そして、俺に膝の上抱っこされているリーナを見る。

 

「キィィー!」

 

またまた目に涙を一杯溜めて、口に咥えたハンカチを引っ張って奇声を上げるイリーナ。

そんなに羨ましいなら夜中に忍んできなさい。

 

「さ、リーナ朝ごはんに行こうか。ご飯食べ終わったら、イリーナとサリーナと一緒に洋服と下着を買いに行きなさい」

 

「えっ!? 私に洋服を買っていただけるでしゅか?」

 

「もちろんだよ。リーナはも大事な俺の家族だからね」

 

「ふおおっ! ごじゅじんざばー!!」

 

またも号泣して抱きついてくるリーナ。

 

「さあさあ、朝ごはんに行くよ?」

 

俺の腰にひしっと抱きついて離れないリーナ。イリーナはそれに対抗するべく反対側の腕を取りギュッと引き寄せる。

・・・両手に花って、歩きにくいよね。

 

 

 

「えええええ!?」

 

朝食のテーブルにて。

フェンベルク卿の奥様、フローラさんが、声を裏返して驚く。

 

「これは・・・一体?」

 

フェンベルク卿も目を見開いている。

やっぱり驚くかな、リーナの傷が綺麗になったのは。

 

「リーナちゃん、カワイイ!!」

 

いきなり自分の席を立ち、リーナに突撃すると、抱きあげてクルクルと回る。

 

「ふわわっ!?」

 

「リーナちゃん、何てカワイイの!? ぜひうちの子になりなさい!」

 

「こ、こらこら!」

 

フローラのぶっ飛んだ発言にとりあえずツッコミを入れるフェンベルク卿。

 

「だ、ダメでしゅ・・・とてもうれしいでしゅが、リーナはご主人しゃまの奴隷です! 頑張ってご主人しゃまのお世話をしないといけないのでしゅ」

 

ふんすっとやる気を出すリーナ。

 

「でも、ヤーベちゃんがルシーナと結婚すれば、リーナちゃんも娘みたいなものね!」

 

「ふええっ!?」

 

リーナを抱きあげたままクルクルと回り続けるフローラさんが落ち着くのはもうしばらくたってからだった。

 

 

 

フェンベルク卿が王城へ出かけて行った。

とりあえず俺の王都到着報告と謁見の予定を確認に行くとのことだ。

ちなみに今回は俺が同伴する必要はないらしい。

 

「ごしゅじんざばー!ごじゅじんざばー!」

 

泣きながらイリーナに担がれていくリーナ。

一緒に行ってやってもいいが、リーナは少しご主人様離れを経験するべきだ。

(実質二日目)

 

さて、俺は朝ごはんの後、ローガを連れて南地区へ歩いて行く。

 

ちなみに、朝ごはんの追加で昨日

マンマミーヤで買ったパンを分けてやったのだが・・・

 

『むむっ、ずいぶんとスカスカで歯ごたえがないですな』

『確かに、あまり噛み応えがないですな』

『この黒いのはそこそこ歯ごたえがありますが』

『噛んでいるとほのかに甘みがありますな』

 

なんだかんだで食べたのだが、あまり喜ばれていないようだ。

やはりコイツらには肉が良いらしい。

 

南地区に入る前に大通りで焼き鳥やスラ・スタイルを買い込む。それから、日持ちするクッキー(ほぼ乾パンな感じ)や干し肉も買い込んで袋に入れる。

 

『その食料をどうするのですか?』

ローガが首を傾げて聞いてくる。

「お前の分じゃないぞ、お前はさっきアースバードのスラ・スタイルを10個も平らげたばかりだろ」

 

『いえ、まあ我の腹具合は良い感じなのですが、その食べ物をどうするのかな、と』

 

「昨日ヒヨコ十将軍序列第七位のカラールが言っていたんだ。マリンちゃんが路上で寝ていると」

 

『なるほど、そのマリンという娘への差し入れですな』

 

「そう言う事」

 

そう言って露店の中で中古服を売っている店の上着を買う。

大きさは子供が来たら多少大きいかな、くらいの物を選ぶ。

 

「カラール、居るか?」

 

『ははっ!』

 

「マリンちゃんの所へ案内してくれ」

 

『お任せ下さい!』

 

勢いよくカラールは羽ばたいて行った。

 

 

 

奥まった路地裏。

マリンちゃんと思われる少女は壁に寄り添うように丸まって寝ていた。

着ている服はかなり薄汚れ、不衛生な事を伺わせる。

 

「王都だかなんだかしらんが、こんな子供一人養えない町なんて・・・」

 

俺は溜息を吐くが、心ではわかっているつもりだ。地球時代だって、すべての子供たちが何不自由なく幸せに暮らせていたわけではない。

 

「それでも、何かできる力があるなら、目の前の不条理を何とかしたくなるのが人間の常ってやつだよな」

 

俺はマリンちゃんの隣に座る。

 

「え・・・、きゃっ! ど、どなたですか?」

 

「俺? 俺はヤーベってんだ。よろしくね」

 

よろしくって言ってもローブを被った不審人物的な感じだけど。

 

「あ、あの・・・何か御用でしょうか?」

 

不安で目が泳ぐマリンちゃん。

 

「とりあえず、腹ごしらえしようか」

 

そう言ってアースバードのスラ・スタイルを取り出してマリンちゃんに渡す。

 

「え・・・いいんですか?」

 

「もちろん!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そう言ってすごい勢いで食べ始めるマリンちゃん。

 

「もう一つどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

もう一つもすごい勢いで食べ尽くした。

 

「はい、お水」

もちろんウィンティアの加護で清められたおいしい水を飲ませる。

 

「ぷはっ!おいしいです!」

 

一心地ついたのか落ち着くマリンちゃん。

 

「じゃん!このあったかハーフコート、マリンちゃんにプレゼントするよ」

 

「ええっ!? そんなの凄すぎます!」

 

「じゃあもっとすごいことしちゃおうかな」

 

そう言って四大精霊を呼び出す。

 

「ジャジャーン!ヤーベ呼んだ?」

「ヤーベちゃんお待たせ~」

「お兄様、お待たせいたしました」

「ヤーベ、やっと呼んでくれた!」

 

ウィンティア、ベルヒア、シルフィー、フレイアがそれぞれ顕著する。

 

「ええっ!? もしかして・・・精霊様?」

 

「なんだ、詳しいんだな。ベルヒア、鍋くらいの器を2つ作ってくれ。ウィンティアは鍋に水を、フレイアは鍋の水を暖かくなるまで熱してくれ。熱くし過ぎないようにな。綺麗な布を用意してあるから、ぬるま湯で濡らしてその子を綺麗に拭いてやってくれ。それからここで髪も洗っちゃおう。もう一つの鍋でその子の服を洗濯しちゃう。シルフィーにフレイア、二人の力を借りて、温風魔法を作るぞ。洗濯した服と洗った髪を温風で乾かせるようにしよう」

 

「「「「はーい!」」」」

 

「ななな、なんですか!?」

 

とりあえず精霊たちも女子だからいいよね?

俺がちゃぷちゃぷ服を洗濯している間に、ごしごしと磨かれていくマリンちゃん。

綺麗になったマリンちゃんは一旦毛布で包まっている。

 

「さあ、シルィー!フレイア!新魔法行くよ!<温風波ドライヤー>」

 

ブオーン!

 

綺麗に洗った服も<温風波ドライヤー>の魔法で一気に乾かす。

 

「はいっ!しっかり乾いたから着てごらん」

 

「わあ!いい匂い・・・」

 

頑張って洗濯したからな。喜んでくれると嬉しい。

 

「あったかい・・・」

 

プレゼントで持ってきたコートを着ると嬉しそうに喜ぶ。

 

「はい、これもプレゼント」

 

長持ちする食料が入ったリュックを渡す。

 

「どうして、こんなに私を助けてくれるんですか?私、何も返せませんよ・・・?」

 

「ふふふっ、君はコイツに食べ物を分けてくれたでしょ?」

 

そう言ってカラールを呼ぶ。

 

『ぴよー!(恩返しに来たよ!)』

 

「あ、あの時のヒヨコちゃん!」

 

「君がお腹を空かせているのに、ヒヨコのカラールに食べ物を分けてくれたでしょ? カラールはまあ俺の使役獣だからね、そのお礼に来たんだ」

 

「でも、こんなにたくさん・・・悪いですよ」

 

マリンは俯いてしまう。

 

「全然悪くないさ。君の今の状態でご飯を分け与えるのは相当厳しい事だよ。俺は多少お金があったから、たくさんマリンちゃんを助けるのは当然のことだよ」

 

「う・・・ありがとうございます」

 

マリンちゃんは丁寧に頭を下げる。礼儀正しい子だな。

 

「そんなマリンちゃんにはもう一つとっておきのプレゼント」

 

「え・・・まだプレゼントが? もう幸せすぎてどうかなっちゃいそうなのに」

 

俺はマリンちゃんが痛めた足首を撫でる。

 

「わわっ・・・」

 

驚いたマリンちゃんが声を上げるが、気にせず続ける。

 

「<生命力回復(ヒーリング)>」

 

温かい光がマリンの足首を包み込む。

 

「い、痛くないっ!すごい!お兄さんありがとう!」

 

俺の手を取り、ブンブンと振ってお礼を言ってくれる。

 

(こんな笑顔の子供が、苦労をする町は間違っている・・・なんとか出来ないものか)

 

俺は空を見上げながら、思案するのであった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。