転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第92話 定食屋で昼ご飯を食べよう

ヤーベ達が南地区の教会でシスターアンリと会っていた頃、コルーナ辺境伯家の庭ではゲルドンが狼牙族を相手にトレーニングをしていた。

 

『あのオーク、ボスに言われてトレーニングしてるんだって?』

『ああ、一応俺たちを殺すつもりでハルバードを振れって言われたようだが』

 

四天王の一角、雷牙と氷牙がゲルドンを見ながら話していた。

 

『だが、オークなんだろ? オークなんぞ鍛えたって役に立つのかねぇ』

 

雷牙は多少嘲りの色を持って呟く。

 

『侮るな! あのオークはボスの使役獣となった特別なオークだぞ。それでもボスは俺たち狼牙族ならば危険なことは無いと信頼して俺たちを殺す勢いでやるこのトレーニングの指示を出していらっしゃるのだ。だが、万が一に備えてヒヨコ隊がそこに控えている。万一、一撃貰って大けがでもした場合、すぐに緊急念話がボスに届くようになっているんだ。俺たちを信用して任せてくれ、且つ心配して緊急時の手配を済ませてくれている。これほど俺たちにとってありがたいボスがいるだろうか。いやいないぞ!』

 

風牙が涙を流しながら力説する。

 

『お、おお・・・』

 

熱すぎる風牙の弁舌に若干引き気味の雷牙。

 

『だが、ハルバードの一撃は万一当たりでもすれば致命傷になりかねない。それこそ部下の連中にもいいトレーニングになるであろうよ。もう少しゲルドン殿が攻撃になれて来れば、躱すだけでなく、コンビネーションで攻撃に転じるトレーニングがあっても良いだろう』

 

氷牙が冷静にトレーニングを分析する。

 

『くくっ! ハルバードを振るうだけでもとんでもなく疲れるだよ!』

 

ぶつくさいいながらも周りに配置される狼牙達を次々に狙っていく。

 

ゲルドンのトレーニングはヘトヘトになるまで続くのであった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「アンリさん、少し早いですが、みんなでお昼ご飯に行きませんか?」

 

俺はアンリさんに孤児のみんなと一緒に食事に行こうと誘った。

 

「え、ええ・・・? ですが、それほど予算も今はありませんし・・・」

 

「もちろん私が食事代は持ちますよ。ご心配なさらずに」

 

「よろしいのですか・・・?」

 

おずおずと聞いてくるアンリさんの肩をポンポンと叩いて、

 

「さあゴハンに行きましょう!」

 

新たにマリンちゃんを加えた9人の孤児たちを連れて食事のため、ある店を目指して出かけようとした。

 

「あら、お出かけ? お気をつけて」

 

「オソノさん、すみません、留守番お願いしますね」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

オソノさんというおばあさんに見送られて食事するお店に出発した。

 

目指すお店は・・・そう、「定食屋ポポロ」である。

だが、定食屋ポポロは西地区にある商業区画のお店だ。徒歩では遠いし、子供たちもいる。無理はさせられない。

 

だが、そんな俺様は秘策を用意している。

 

「タララタッタタ~ん! ローガのローシャ!」

 

『ボス・・・もう少し名称に気を使って頂けるとありがたいのですが』

 

「え~、ダメかね?」

 

俺が取り出したのは大きめのリヤカーのようなもの。

馬車ばしゃならぬ、狼車(ろうしゃ)だ。

 

早速ローガにつなぐことにする。。

 

「さあみんな乗って乗って」

 

「「「わ~い!」」」

 

子供たちが喜んで荷台に乗る。

 

「あ、アンリさんもどうぞ」

 

手を差し出し、荷台の前部に引き上げる。

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

手を握ったためか頬を赤くして俯くアンリちゃん。かわゆし。

 

「さ、出発しますよ」

 

俺はローガに手綱で合図を送ると、ローガが元気よく歩き出した。

 

「わー!すごーい!」

 

子供たちが大はしゃぎだ。

 

 

 

 

 

「さて・・・、ここがお目当ての定食屋さんです」

 

定食屋ポポロの前に着いた俺たち。

 

「わあ・・・なんとなくですが、レトロな定食屋さんですね」

 

アンリさんがお店の前で呟く。

うん、もう少しストレートに言うと、ボロいねこの店。

 

「「「お腹空いた~!」」」

 

子供たちが元気に声を上げる。

 

「じゃあ、早速お店に入ってご飯を食べようか」

 

「「「はーい!!」」」

 

子供たちは元気よく返事をするのだった。

 

 

 

「まいど~」

 

俺は建て付けの悪い格子戸を引いて扉を開ける。

 

「あ、いらっしゃいませぇ」

 

お盆を持った少女が奥からタタターっと走って来た。

 

「全員で11人だけど大丈夫かな?」

 

 

聞いては見たけど、大丈夫だろう。

何せ店にはお客がゼロ。誰もいないのだから。

はっ!? 11人分も食材がないという可能性が!?

 

「はいっ!どうぞこちらの席へ」

 

だが、少女は笑顔で俺達を席に案内してくれた。

とりあえず食事が出来そうでよかった。

子供たちを席に座らせて早速メニューを見る。

 

「・・・・・・」

 

メニューを見るが、いくつかが消されて、現在選べるのは・・・

 

『野菜炒め定食』

 

その一択のみであった。

 

金額は銅貨5枚。

 

「・・・これしかメニューが無いんだね。えっと、みんなこれでいいかなって、ダメでも他にないんだけどね」

 

俺は苦笑しながら子供たちに伝える。

 

「ふふっ、子供たちは食べ盛りですから、なんでもおいしくいただいちゃいますよ!」

 

アンリさんが笑ってくれる。

じゃあ早速注文しよう。

 

「注文お願いしまーす」

 

「はいっ!お待たせしました。何にいたしましょう・・・って、今は野菜炒め定食しか出来なくて・・・すみません」

 

そう言って頭を下げる小学生高学年くらいの女の子。

 

「そうなんだね。とりあえず野菜炒め定食11人前でね」

 

「はいっ!ありがとうございます! お姉ちゃん野菜炒め定食11人前入りまーす!」

 

「わっ!そんなにお客さん来てくれたんだ・・・、お姉ちゃん頑張って腕を振るうよ!」

 

フライパンでジャッジャッと野菜を炒める音が聞こえてくる。

 

「さあお待たせしました。野菜炒め定食お待ちどう様ですー!」

 

出来立ての野菜炒め定食が出てくる。

湯気が立ち込める野菜炒めは中々にうまそうなのだが・・・

 

よく見れば、明らかに野菜が切れ端や欠片のような端材で出来ている。

一口食べてみる。味自体は悪くないと言えば悪くないのだが・・・。

プロの味ではない。素人の家庭料理といったところだ。

何より、素材が悪い。悪すぎるといってもいい。

素材さえマシならば、家庭料理とはいえ、そこそこ食える料理になりそうなんだが。

 

「おいしー!」

「あったかーい!」

「シャキシャキー!」

 

子供たちには好評のようだが、正直この値段で、このメニュー一択。材料もいい物を使えていない。

 

(ないわぁ・・・)

 

なぜ姉妹が定食屋など開いているのか不明だが、どう考えても客が入る要素が無い。

 

(これはやっかいな案件になりそうだな・・・)

 

俺はお店の天井を見つめて溜息を吐いた。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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