転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第95話 貴族の派閥について勉強しよう

 

王都の商業ギルト中央本部を出た俺はコルーナ辺境伯邸へ向かっている。

俺の後ろには頭にヒヨコ隊長を乗せたローガが歩いてついて来ている。

 

「王都を歩いているが、<調教師(テイマー)>には会わないな。特にローガのような大型の魔獣を使役している人なんて全然見ないんだよな。そう言えば城塞都市フェルベーンでは肩に鳥っぽい生き物を連れている人は見たんだけど」

 

『我のような比較的中型の魔物までならともかく、大型の魔物は使役しても連れまわすのに大変だからではないでしょうか?』

 

「そうだな、ドラゴンやコングヘッドなんて大型魔獣は町に入れてくれないよな」

 

『確かにそうですな』

 

わふわふと笑うローガとしゃべりながら町を歩いて行く。

夕方のこの時間、人通りが多く歩きにくいため、2つほど大通りから入った裏路地を歩いていた。裏路地と言っても入り組んでいるわけではなく、馬車も通れるほどの広さがある。

 

「ちょっと! 指定した量と違うじゃない! いい加減な仕事しないでよ!」

 

どこかで聞いたことがある様な声が聞こえてくる。

 

『随分と剣呑な声ですな。棘がある』

 

ローガにもダメ出しされるほどの対応。

 

「やっぱり・・・」

 

見れば、そこは「リーマン商会」と書かれた看板が。

どうやらここはあのサラ・リーマンが会頭を務めるリーマン商会の店舗のようだ。

 

「最初からその量は無理だって言ったじゃないっすか・・・」

 

「こっちの希望を通せないような仲買必要ないのよ!」

 

「そんな無茶な・・・」

 

どうやら仲買が買い付けて来た品物にケチをつけているようだ。

 

「仲買とうまく付き合えないような商会、長く続かないだろうよ」

 

『声を掛けるのですか?』

 

「いや、やめておこう。今行っても機嫌が悪いだろうし、助けた時の報酬でもねだられに来たのかと勘繰られるのも気分が悪い」

 

『なるほど、だいぶ感じの悪い話ですな』

 

「まったくだ」

 

俺たちはローガと苦笑しながらコルーナ辺境伯邸に帰った。

 

 

 

コルーナ辺境伯邸に着いた俺はローガに庭でゆっくり休むように伝えると、執事さんの案内で屋敷に案内された。

入ってすぐ、リーナが声を掛けて来た。

 

「ご主人様!」

 

 

ズベベッ!

 

 

リーナの格好に思わずコケる。

 

「な、なんでメイドさんの格好なんだ!?」

 

リーナの完璧なるメイドスタイルに思わずツッコむ。

 

「リーナはご主人様をお世話(おしぇわ)しないといけましぇんから! メイドしゃんスタイルでかんばりましゅ!」

 

フンスッと両手でゲンコツを作るリーナ。

カミカミだが、リーナのやる気だけは伝わってくる。

 

「メイドさんスタイルはわかったけど・・・、ちゃんと普段着も選んでもらったか?後パンツ」

 

「ヤーベよ、子供とは言えリーナも女の子だ。女性に向かってパンツ買ったかなどと問いかけるのは些か気配りが出来ていないのではないか?」

 

「デリカシーってヤツが必要だと思うよ、ウン」

 

振り向くとそこにはイリーナとサリーナが。

サリーナもウンウンと頷いている。

 

「イ、イリーナがまともな事を言っているだと・・・!?」

 

俺は驚愕の表情を浮かべる。

 

「こら~~~~! どういう事だ!」

 

俺の胸に飛び込んでポカポカパンチを繰り出すイリーナ。

なぜかやたらと可愛さをアピールしてくる。

ププッと笑いを堪えるサリーナ。

 

イリーナを抱きとめると、その顔を覗き込む。

 

「どうした?イリーナ」

 

「う・・・、リーナちゃんが来てから、ヤーベはリーナちゃんとばかり一緒にいて、私とは一緒にいてくれないから・・・」

 

いや、リーナが来たのは昨日の午後だぞ。ほぼ一日くらいしか経っていないのに、何を言っているのだろうか?

 

「ふみぃ、おくしゃま申し訳ないでしゅ。リーナの事はお気になさらずご主人しゃまとどんどんイチャイチャしてくだしゃいませ!」

 

如何にも申し訳ない、という表情でリーナがとんでもない事を言う。

 

「ふえっ!? イチャイチャ!? うん、ヤーベ、かんばりゅ」

 

顔を真っ赤にしてろれつが怪しくなるイリーナ。

 

「それはそうと、ちゃんとリーナの服や下着の替えをたくさん買ってきたかい?」

 

肝心の買い物の成果を確認する。

 

「ああ、たくさん買って来たぞ。メイド服だけでも5着くらいあるぞ。その他、可愛く見える服を中心に毎日変えても大丈夫なようにたくさん買って来た。肌着もパンツも数を揃えたから大丈夫だ。もうリーナがノーパンで寝ることは無いかな。残念か?ヤーベ」

 

ニヤニヤしながら俺に聞いてくるイリーナ。

俺を煽るとは珍しい。

 

「じゃあお前がノーパンで俺と寝てくれ」

 

「ひゃああ!? わ、私がヤーベとノーパンで!? ううう、うん、がんばりゅ」

 

再び顔を真っ赤にして俯いてカミ出すイリーナ。

何を頑張るんだか。

そしてサリーナ、君は笑いすぎだ。

 

「さあさあ、皆さま、夕食の準備が出来ましたよ」

 

執事さんの呼びかけにみんなはダイニングに向かうのだった。

 

 

 

「そんなわけで、フェンベルク卿に貴族の繋がりをお教えいただきたいのですよ」

 

夕食後、俺はフェンベルク卿に面会を申し込み、貴族の繋がりや派閥について教えて欲しいと依頼した。そこでフェンベルク卿は酒を用意しながら話をしてくれることになった。

 

「基本の話から行こう。このバルバロイ王国には三大公爵家がある。リカオロスト、プレジャー、ドライセンの三つだ」

 

「ああ、聞いている」

 

「基本的に、公爵家が三つあるのだから、派閥もおのずとこの三つを頂点としている」

 

「派閥のトップは公爵家なわけね」

 

「まあそうだ。そのうち、リカオロスト、プレジャーはそれぞれ派閥に強い力を注いでいる。逆にドライセンだけは派閥といっても、派閥そのものには力を入れていない。ちなみに俺もドライセン派という事になっている」

 

「なっている?」

 

「ドライセン公爵家当主のダリル・フォン・ドライセンが派閥に対してそれほど力を入れていないと言うのが実際のところだ。逆にリカオロスト、プレジャーは派閥をがちがちに固め、あらゆるところにその影響を及ぼそうとしている」

 

「ドライセン公爵家だけが、静観していると言ってもいいのか?」

 

「そう言ってもいいのだが、貴族からすれば、リカオロスト、プレジャーとも極端に欲望に忠実で利権を抑えに来るイメージがある。この派閥に取り込まれると、うまくすればうまい汁を吸えるかもしれないが、逆に言うとにっちもさっちもいかなくなる可能性もある。だから多くの貴族は日和見して派閥に取り込まれるのを嫌う。その受け皿があまり派閥を締め付けていないドライセンなんだよ」

 

「アンタもそうなのか?」

 

「まあそうだな。明らかにリカオロスト、プレジャーとも派閥がキツイ。しかも悪党臭が消えない気がするね」

 

「近づきたくないね。ところで、テラエロー子爵って、どこの派閥?」

 

「テラエロー子爵はプレジャー公爵家の派閥だな。かなり自分の欲望に忠実で汚い手段も使うって話だな。付き合いたくない人物だよ」

 

「ハーカナー男爵を暗殺したって話だけど?」

 

「マジか!? そんな話をどこで? ハーカナー男爵はドライセン派になるんだが、当主が無くなって、夫人との間に子供もおらず、男爵家をどうするか揉めているらしいんだ。なんでも男爵が借金をしていたって話もあってな」

 

「あ、それテラエロー子爵のでっち上げだよ。ハーカナー男爵元夫人を手に入れるための策略みたいだよ。土地と建物も奪おうとしているみたいだけど」

 

「なんだと!?」

 

「コルーナ辺境伯の名前使っていいなら、テラエロー子爵潰しに動くけど?」

 

「むっ・・・」

 

「俺って、使えるコネと権力は全力で使う主義なんだよね」

 

「・・・もちろん協力は惜しまないが、対応は気を付けろよ? 証拠もそうだが、貴族は自分本位の判断をする者が多い。下手に手を出すと、全力であらゆる角度から潰しに来るぞ?」

 

「メンドクサイ話だね・・・。今となっては実力で排除してしまう方が簡単になるなんて。ただ、俺や俺の仲間に牙を剥けてくる奴には手加減できる自信が無いね。そんな奴が出て来ないことを祈るだけだけど」

 

「俺はお前の実力を知っているからな・・・本当にそんな奴が出て来ないことを祈るだけだがね」

 

フェンベルク卿は苦笑しながらそう言うのであった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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