転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
俺の右腕をロックしたままずんずんと進んで行くフィレオンティーナ。
「どこかで朝ごはんでも食べられるといいですわねぇ」
きょろきょろと周りを見回しながらフィレオンティーナ。
『ボス、序列第十位センチネルであります。僭越ながら、朝ごはんに丁度良い店がございます』
「おお、見事なりセンチネルよ!早速案内を頼む!」
「どうしたのです?旦那様」
「フィレオンティーナ。俺はまだ旦那様ではないよ」
「あら、わたくしを迎えて頂けるお気持ちがあるだけで感激ですわ」
俺の苦笑に満面の笑みで答えるフィレオンティーナ。
本気で嬉しそうだよ・・・、マイッタネ。
「ウチのヒヨコちゃんがおススメのお店を見つけて来たみたい。そこへ行ってみようか?」
「お任せ致しますわ!」
ウキウキと組んだ腕を放さず歩いて行くフィレオンティーナ。
「ヒヨコのオススメって・・・」
馬車をゆっくり進めながらパティが頭を捻っていた。
『ボス、ここです』
裏通りに入って少し。喫茶店のようなお店の前に到着した。
「喫茶<
俺のカンがビンビンと伝えてきている。この店はウマイ!
「しかしこんな朝早くからやってるんだね・・・」
そう言って扉を押し開ける。
チリンチリン。
扉についているベルが可愛く鳴った。
「いらっしゃませ!おはようございます!」
元気のよい声が聞こえてくる。
エプロンを付けた可愛い少女が出迎えてくれた。
「んっ?」
出迎えてくれたすごい美少女。だが、頭についているのは・・・でっかい耳?
「あっ、珍しいですか? 私、狐人族なんです。だから狐の耳と尻尾があるんですよ?」
くるんとその場で回ると、スカートの下からもふもふした尻尾が見えていた。
「あら、とってもかわいいのですわね!」
フィレオンティーナも狐の尻尾にびっくりしているようだ。
「ステキなお嬢さんのお名前を聞いてもいいかな?」
「私、リューナって言います。よろしくお願いしますね!」
元気に挨拶してくるリューナ。
「こんなステキなお嬢さんのお店に来れたことを感謝しなくてはね。朝ごはんを軽く食べたいんだが、何かオススメはあるかな?」
「もちろんです! どうぞこちらの席へ。今メニューお持ちしますね!」
そう言ってテーブルに案内してくれる。
俺にフィレオンティーナ、<
「こちらメニューです。朝は三つのセットがありますよ! 飲み物も下のメニューから付けられますよ」
笑顔の狐っ娘さんが説明してくれる。
セットのメニューは、焼き立てパンとサラダと飲み物、スープ系の物とサラダと飲み物、卵料理とサラダと飲み物のようだ。セットとは別に追加として単品で焼き立てパンやスープ、卵料理も注文できる様だ。
みんなの希望を聞いて注文する。追加単品もたくさん注文する。
「再び会えた奇跡に乾杯だ。ここは俺の奢りだ。たくさん食べてくれ」
「おおっ!ヤーベ殿太っ腹だな」
「いいのか?」
「ヤーベさん、悪いですよ」
口々に遠慮の言葉が出るが、俺は制す。
「せっかく王都で再会できたんだ。パーッと行こうよ」
そんなわけで、たくさん料理を出してもらった。
「おいしー!」
「このパンすごく柔らかいな!」
「このスープも絶品だよ」
<
フィレオンティーナも上品に卵料理をナイフとフォークで食べている。
「んんっ・・・、このオムレツ、火加減が絶妙ですわ!」
オムレツを絶賛するフィレオンティーナ。
その食事の所作を見ていると、イリーナやルシーナちゃんよりよっぽど貴族の令嬢っぽいんだけど。
「それで、ヤーベ様。奥方様は増やされるんですの?」
「ブフッ!」
フィレオンティーナの問いかけに食後の紅茶を吹いてしまう俺。
「いや・・・今の所増える予定はないけど」
「う~ん、そうでしょうか? 何か心に引っかかっているものがありますよね?」
とても鋭い。さすが占いでゴハンを食べて来ただけはある。
「まあ、今は王都での人助けに忙しいから。フィレオンティーナはどうするの?」
「もちろんヤーベ様のお傍にずっとおりますわ。お手伝いさせてくださいまし」
ありがたい申し出ではあるが、宿泊をコルーナ辺境伯邸に依頼してもいいものかどうか。
「<
「俺たちはタルバーンの街に帰るよ。フィレオンティーナ様に依頼完了のサインを貰ったら、王都の冒険者ギルドで完了確認をしてもらってから戻るさ」
「そうか、気を付けてな。俺も王都での用が終わったら戻るから、その途中でタルバーンにも寄るけどな」
「戻るってヤーベ殿はどこに住んでいるんだ?」
「カソの村って辺境だよ。近くの町はソレナリーニと言ってね。コルーナ辺境伯の領地だよ」
「おいおい、ずいぶんと遠くから王都に来たんだな。また何で?」
リゲルの何気ない質問に俺は馬鹿正直に答える。
「いや、王様に呼ばれてさ」
「「「えええっ!?」」」
心底驚いたと言った表情の<
「とんでもないとは思っていたが・・・」
「本当にとんでもない奴だったな」
「ヤーベ様は王様に・・・」
「パティ!? ちょっとパティ!? 現実に帰って来なさい!」
放心状態の連中をさておき、フィレオンティーナの顔を見る。
「フィレオンティーナ。本当に俺について来るのか? 俺はただ旅しているだけで何も展望が無い男だぞ?」
その覚悟を問う。
「ヤーベ様は何もお気になさらずに。わたくしが貴方のそばにずっといるだけの事ですわ。すでに自宅は売り払って来ましたので、戻る場所もありませんし」
覚悟ハンパねぇ!!
「・・・そうか。まあ、好きにしてみるといい。きっとすぐに俺のことなど飽きてしまうと思うしな。それに、王都滞在中はかなり忙しいぞ。あまり時間を作ってやれないと思うし」
いろいろ言い訳じみたことも言ってみる。
「お気になさらずに。わたくしがただ旦那様について行くだけのことですわ」
輝くような笑顔で、何の迷いもなくそう宣言される。
ヤバイ・・・ちょっと惚れそう。
ふとイリーナやルシーナちゃん、なぜかカッシーナの顔まで浮かんで来たので、俺は両手でほっぺをパンパンして気合を入れなおした。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!