転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第105話 知りえた情報を掛け値なしに語り尽くそう

王城――――――――

 

王族が住むお城の事である。

このバカでかいお城には王様やら何やら王族やその関係者がたくさん住んでいる事だろう。

 

「ここに王様がいるんだね~」

 

「当たり前だろう、王城なのだから」

 

俺の独り言を拾って突っ込むイリーナ。

 

「いや、初めて来たんだから、少しは感動させてくれよ」

 

「そうか、ヤーベは王城に来たのは初めてだものな。感動するのは仕方ないか」

 

なんだが偉そうに納得するイリーナ。

 

コルーナ辺境伯が城門前で馬車を止め、参上の理由を伝えている。

王城に来たのはフェンベルク卿と俺、イリーナ、ルシーナ、フィレオンティーナ、サリーナ、リーナの七人だ。

 

そう言えば、昨日御揃いのワンピースで出迎えてくれた時に、サリーナだけいなかった。

フィレオンティーナの話では、サリーナはずっと錬金術師ギルドに行っていたらしい。

ルシーナと体型が似ているため、ワンピース自体は購入してあったのだが、俺がコルーナ辺境伯邸に帰って来た時にはまだサリーナは錬金術師ギルドから帰って来ていなかったので、お揃いで並ぶみんなの中にサリーナが居なかったのだ。

 

だが、今日は俺たちと一緒に来ている。王城に訪れるチャンスだもんな。だいたい、王城は勝手に入っていいところではない。今回の様に呼ばれたりしない限り入れないのだ。サリーナもぜひ一緒にと希望してきたわけだ。

 

今日のところは4日後の謁見の流れを事前に打ち合わせするのと、謁見時の衣装見立て、採寸を行うために呼ばれているらしい。

 

コルーナ辺境伯はもちろんザ・貴族のいで立ちの服装だが、イリーナたちも一張羅の服を着込んでいる。サリーナは昨日着られなかったワンピース姿だ。後で似合っていると褒めておかねばなるまい。俺と言えばもう今は矢部裕樹の姿をずっと維持している。ローブ姿だが、さすがにフードをかぶっていては怪しい、なのでフードは外して顔を晒している。

そしていつも通りリーナは俺のローブをしっかと握りしめている。

 

許可が出たのか、馬車がゆっくり城門をくぐってゆく。

石作りの城壁の内側を抜けて、王城の入り口前に馬車が止まる。

 

「お待ちしておりました、コルーナ辺境伯様」

 

如何にもザ・従者と言った感じの壮年の男が現れる。

 

「うむ」

 

「まずは皆様を来客の間までご案内致します。私について移動をお願い致します」

 

「わかった」

 

案内人について移動する。

王城の廊下も石作りだ。どこも重厚な造りが続く。

 

案内された来客の間は大きなソファーが目を引く部屋だった。大きなソファー以外にも小ぶりなソファーもあり、大人数が分かれて座れるようになっていた。

 

「コルーナ辺境伯様、謁見の流れにつきまして宰相様が相談したいことがあるとのこと。ご案内致します」

 

「うむ」

 

コルーナ辺境伯が案内されて部屋を出ていく。

 

少しして、今度は女性の侍女が部屋に訪れる。

 

「女性陣の皆様は別の部屋でドレスの採寸を行わせて頂きます。ご案内致しますので私について来ていただけますでしょうか?」

 

「おお、ついに採寸だな」

「イリーナちゃんはドレス持ってないの?」

「うむ、そのような物は旅には不要だったのでな。ルシーナこそ、王城の用意するドレスなど必要ないのではないか?」

「王城のドレス 、気になるじゃないですか」

「王への謁見ですからね、粗相などあってはならぬものでしょうし、ここは王城のドレスをあてがって頂き、万全を期するべきですわ」

「そうですね。王城の方に見繕って頂ければ間違いありませんね」

 

フィレオンティーナの王城におんぶにだっこの戦略をサリーナも全面支援する。

 

「ではご案内致しますね」

 

「ふおおっ! ご主人しゃま~~~~~!」

 

イリーナに首根っこを掴まれズルズルと引きずられていくリーナ。

そしてみんなも移動していく。

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

そして誰もいなくなった・・・いや俺は残っているけど。

先のメイドさんがお茶を入れて行ってくれたので、お茶をすすりながら一人で待つ。

・・・寂しい。

 

 

 

「おっ! 一人かね?」

 

見ればいつの間にか一人の男が部屋に入って来ていた。

金髪のイケメンロン毛。イケメンだが、ちょいワル親父?壮年ぐらいに見えるが、どちらさまだろうか?

 

「ええ・・・、コルーナ辺境伯は打ち合わせに、連れ合いはドレスの採寸に呼ばれましてね」

 

「それでは一人でヒマをしていると言うところかね」

 

「・・・まあ、そうですかね」

 

王城に呼ばれて来ているのに、ヒマしているという状況を肯定していい物かどうか?

だが、ボーッと一人で座っていたのだし、忙しいと答えては単なる嘘つきだ。

 

「いつこの王都に来たのかね?」

 

「4日前ですかね、王都は初めてなので何を見ても目新しくて興奮していますよ」

 

「そうかねそうかね、王都は楽しいかね」

 

嬉しそうに話す金髪イケメン親父。

 

「ですが、王都の闇と言いますか・・・」

 

「どういうことかね?」

 

真剣になる金髪イケメン親父に俺は王都に来る前からヒヨコが仕入れてきた情報と、王都に来てからの体験をつらつらと話していく。

 

南地区でマリンちゃんが路上生活をしていた事、教会でシスターアンリが孤児たちを面倒見ているのに、王都の聖堂教会が圧力を掛けて地上げや子供やシスターアンリ自身を狙っている事、聖堂教会の大聖堂で聖女が傍若無人の振る舞いで、下働きの少女が苦しんでいる事、商業ギルドの一部が弱い者へ不当な取引を押し付けていた事、王都警備隊隊長のクレリア・スペリオルが足を引っ張られて王都の治安が揺らいでいる事、対策として警備配置図を宰相と王国騎士団の騎士隊長に提出させた事、ハーカナー元男爵夫人がテラエロー子爵の陰謀で夫を殺され、館も取られそうになりその身を狙われている事など、調べて掴んでいる事を包み隠さず喋った。

 

通常ならこの男がいったい誰なのか、どの派閥についているかもわからない状況で調べている手の内を全て話す何てことは愚の骨頂でもある。

だが、どうしてかこの男との会話は言葉が進んでしまう。

ならば、全て情報をさらけ出し、その反応を見てみるとしよう。

敵側ならば、俺に対してアクションがあるだろう。

 

俺は掛け値なしで王都の悪しき闇を語った。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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