転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
どうしてこうなった?
俺は今、騎士たちの訓練用に用意されていた刃引きのロングソードを片手に、王国騎士団団長のグラシア・スペルシオと向かい合っている。
グラシア団長と言えば、刃引きしてあるとはいえ、両手持ちでも使えるバスタードソードを肩に背負うように持っている。バスタードソードは肩手持ちでも両手持ちでもどちらでも使えるような柄と刃の長さをしており、非常に汎用性の高い武器だ。
俺のロングソードが一般的な騎士の装備だとすれば、バスタードソードはそれより少し長く、僅かだが間合いが長くなる。使いこなせれば有利となる武器だ。
(10人目がグラシア団長とか、どんなムリゲーだよ。俺に安息の時間をくれ!)
俺は心の中で愚痴をマシンガンの様に展開する。
「ふおおっ!ご主人しゃまー!ファイトなのでしゅ!」
「旦那様~頑張って~」
「ヤーベさん、勝利のブイ!」
「ヤーベよ、無理はするなよ」
「イリーナさん?一人だけ「わかってます」みたいな雰囲気出すのは抜け駆けですよ!」
リーナ、フィレオンティーナ、サリーナの応援についで、イリーナの応援が俺を気遣う者だったため、ルシーナがクレームを入れている。
でもイリーナたち全員が手をブンブン振りながらがんばれーと応援してくれている。
そして、若手の騎士たちからは羨望とヘイトを集めまくっている。人によっては血の涙を流している。
時を少し戻そう。
「午前中は基礎訓練でしたのでね、午後からは実戦形式の訓練を増やす予定なんです。ですので今日は模擬戦を中心に訓練するつもりです」
グラシア団長の説明にコルーナ辺境伯は頷いている。
「模擬戦か、見るだけでも勉強になるな」
「ヤーベ殿、少し体を解しておいてくれないか」
「え・・・もう模擬戦するんですか? まだ皆さんの模擬戦も見ていませんが」
「もちろん部下たちは準備が出来ているので、模擬戦を先にスタートします。ヤーベ殿の準備が出来たら声を掛けさせていただきますので」
いや、なんなら声を掛けずにそっとしておいてくれるとありがたいですが。
そして騎士たちの模擬戦が始まる
ハードな剣撃が聞こえてくる。結構マジなトレーニングだ。
剣を飛ばしたり、鎧に当てたりしている。
下手すればダメージが通っているだろう。
「ヤーベ君、そう言えば武器を携帯していないようだけど、どんな武器を使用するのかな?いつも使っている武器に近いもので刃引きの武器を用意するけど?」
「武器ね・・・」
実は俺、武器ほとんど使用してなかったりするんだよね。
今まではスライムボディで吸収する事が多かったし、人から見られる場所では精霊魔術で対応する事がほとんどだった。近接戦闘は格闘技系なんだよね。
というわけで、武器による近接戦闘はほとんどしていないんですね~。
だいたい、地球時代でも剣道を高校の授業でやった程度で、武器による戦闘経験なんてゼロだぜ、ゼロ!
え?格闘技はやってたのかって?
全然やってません。
でも、格闘技というか、体術のイメージはある程度付く。
所謂カンフー映画の大ファンだった。ジャッ〇ーとかね。
カンフー漫画も大好きだ。空手や柔道なんかもイメージが付くかな。
そして、ぐるぐるエネルギーでスライム細胞を活性化して強化していくと、まるで時間が遅くなったような感覚になる。そこで、体術のイメージで体を動かすことにより相手を圧倒することが出来るようになる。
だが、剣術はイメージがほとんどない。槍術や棒術もそうだけど、流れるような技のイメージが出来ないのだ。
さて困ったと思っていたら、
「旦那様、そう言えば私を救出頂く際に悪魔王ガルアードと戦われておりましたが、あの時悪魔王ガルアードに叩きつけた剣は粉々になってしまいましたわよね? 新しい武器はもう手に入れられておりますの?」
フィレオンティーナがそんなことを言う。
俺は信じられないと言う目でフィレオンティーナを見つめる。
それって、内緒にしている事ですから、残念!
「あら・・・何かまずい事を言ってしまいましたでしょうか?」
フィレオンティーナがしれっと宣う。
「悪魔王ガルアード・・・と戦った? それホントの事なのかい?」
「あー、何と言いますかね、タルバリ伯爵領の話ですし、銅像だかストーンゴーレムだか、よくわかんないヤツでもありまして。それで普段の武器でしたっけ? とりあえずロングソードでいいですよ」
「・・・そうか、では刃引きしたロングソードを用意させよう」
はー、いろんな情報が流れ出ちゃうよ。フィレオンティーナ、メッ!
「王国騎士団第三軍第一小隊所属、トランであります。胸をお借りいたします」
「ヤーベです、よろしく」
「はじめっ!」
トラン君の振り回す剣の軌道を見極め、何度か躱すうちに剣を握る柄の上あたりを狙って絡め捕る様に一撃を入れる。
トラン君の刃引きした剣が弾かれ、くるくると宙を舞う。
カララン
弾き飛ばされたトラン君の剣が足元に落ちる。
「そこまで!勝者ヤーベ殿!」
「まいりました」
トラン君が礼儀正しく頭を下げる。
その後も若い騎士たちが志願して模擬戦を行うが、すべて躱しながら相手の剣撃に合わせてカウンターを入れ、武器を弾き飛ばす。
そんなことをやってかれこれ9名に連続勝利。
そんな俺に王国最強の騎士が挑んで来たのだ。
「さあ、ヤーベ君模擬戦を楽しもうじゃないか」
「楽しめるようなレベルに無いですよ」
「謙遜はいらないよ、さあ行くよ!」
副官が審判をやってくれるらしく、「始めっ!」と掛け声がかかった。
その瞬間、すでに目の前にはバスタードソードを振り上げているグラシア団長がいた。
速いっ!!
僅かに体を捻って剣撃を躱す。
鋭く突くように剣を突き出すが、すでにそこにグラシア団長の姿は無い。
瞬間<気配感知>に左死角からの一撃を捕らえる。ギリギリでしゃがんで躱しながら体勢を整える。
「さすがにやるね!」
爽やかを通り越してヤバそうな笑顔を浮かべるグラシア団長。
「次!行くよっ!連撃百裂斬!」
目の前には連続して振るわれる剣撃が。
俺は刃引きのロングソードを最小限で振り回しわずかに剣撃を逸らす。
まるで嵐のように迫りくるバスタードソードの切っ先をずらし、打ち落としていく。
「いや~、これも凌ぐか。まいったね」
まいったならもうあきらめて終了してほしいのに。
だいたい、王国最強の騎士に模擬戦とはいえ、勝っちゃダメでしょ。忖度しないと。
「いや~、手がしびれまして、これ以上はもう・・・」
えへへ、参りましたって感じを出そうとした俺をグラシア団長が喜々として褒める。
「いや、想像以上だね、全く。これならヤーベ殿に手加減なんて失礼に当たるね!」
「いやいや、全然失礼には当たりませんよ。逆に手加減してください」
俺の苦笑いを無視してグラシア団長が剣を構える。
「受けるなら気を付けてね・・・行くよっ!【剣技:龍の顎】」
再び瞬間に間合いを詰められてしまう。上から真っ直ぐに振り下ろされるバスタードソード。上段から振り下ろされる剣筋は先ほど見た。俺は素早くロングソードを横なぎに振るいながらグラシア団長正面から右に体をずらして胴を薙ぐ。
が、しかし。
ガッキィィィィン!
「なっ!?」
確かに上からの斬撃だった。剣筋を見て横にズレながら胴を薙ぐために剣を横振りに振り出したのだが、まさか斬撃が下からも来て俺の剣を搗ち上げるとは思わなかった。
躱せると思い攻撃に転じたため、変化した斬撃に認識が及ばなかったのか。
全く気付くことなく下からの剣撃に自分の剣を弾かれ、その衝撃で柄から手が離れ剣を飛ばされてしまった。
俺の後方で落ちたロングソードがカラランと乾いた音を立てる。
「参りました、さすがに騎士団長だ」
俺が掛け値なしに褒めると、グラシア団長は子供のように満面の笑みを浮かべるのだった。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!