転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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閑話14 王都のとある日常

「国王様、こちらをご覧ください」

 

とある日の王城。

宰相であるルベルク・フォン・ミッタマイヤーはある資料を手にしていた。

 

「どうした?」

 

宰相ルベルクの持ってきた資料はこの王都の地図であった。

所々に印が付いていた。

国王であるワーレンハイド・アーレル・バルバロイ15世は地図を覗きながら尋ねた。

 

「最近王都で暴漢やならず者が暴れると言うトラブルが続発しております。先月王都警備隊隊長に女性初の隊長としてクレリア・スペルシオが抜擢されたのですが、その後軽犯罪が頓に増加しております」

 

「ふむ、分かりやすい嫌がらせ・・・か?」

 

「その通りです。内偵でもプレジャー公爵家三男のサンドリック・フォン・プレジャーが隊長に昇格できなかったことに端を発していると報告が出ております。プレジャー公爵自体も力を貸しているようですし、傘下の貴族たちにも圧力を掛けて軽犯罪を起こさせているようです」

 

「随分と最低なことだな」

 

ワーレンハイド国王はシンプルに軽蔑するように言うと、深いため息を吐く。

 

「クレリア殿も随分と苦労されておるようで、てこ入れが必要かと思ったのですが、そこでこの地図なのです」

 

「ふむ、この地図の記しに意味があるのか?」

 

「はい、王都警備隊のどの隊がどこに配置されているか記されているのです。つまり、暴漢やならず者が暴れた場所を照らし合わせると、どの隊が近くにいたかわかる様になり、その隊が働いていたか確認できるようになるのです。つまり足を引っ張る連中にこの地図から仕事が出来ないという評価を下せるのです」

 

「なるほど、手引きして犯罪を増やして、その責任を隊長に押し付けるつもりが、この地図から自分たちが働いていないとバレてしまうということか」

 

「その通りです。すばらしいアイデアですな」

 

「ふむ・・・そのクレリアなるもの、なかなかの切れ者よな」

 

「ところが国王。隊長に抜擢されたクレリア殿が腕利きなのは間違いないのですが、この地図のアイデアを出したのは別の人物とのことです」

 

「ほう、誰だ?」

 

「国王が面会を求めた男、ヤーベ殿ですよ。現在はコルーナ辺境伯家の賓客となっている」

 

「なんと、ヤーベ殿か。どうなのだ、実際のところこの御仁は?」

 

ワーレンハイド国王は面白そうに宰相であるルベルクに問う。

 

「一言で言えば規格外ですな。どう見ても本当とは思えない報告ばかりです。ですが、これらの情報は全て精度の高いものであると言わざるを得ません」

 

「ざっとは報告を受けている。だから呼んだわけだが。再度確認しよう」

 

「はい、最も信じられない偉業はソレナリーニの町で起こった<迷宮氾濫(スタンピード)>にて約1万匹の魔物を討伐した、という実績です」

 

「うーむ、1万匹というのは確かに物語の世界の話に聞こえるな」

 

「この情報がソレナリーニの町冒険者ギルドのギルドマスター・ゾリアだけのものであれば、私も信じなかったでしょう。ですがこれは条件付きでソレナリーニの町代官のナイセーからも同じ情報が報告されています」

 

「ナイセー・・・何年か前に王宮の内政官を務めていた切れ者か」

 

「そうです。王宮の権力争いで酷い目にあったらしく、人間不信になって潰れかけていたところをコルーナ辺境伯に拾われた男です。正直もったいなかったですな、私がもっと早く事態に気が付いておればあのような有能な男を田舎に行かせるような真似はしなくても済んだでしょうに」

 

「まあ、過ぎたことだ。そのナイセーからも情報が?」

 

「はい。ヤーベ殿は組織に束縛されることを望まず、その力を利用されることを嫌うようです。例え叙爵を打診しても受けないであろうと」

 

「1万匹の魔物討伐は事実なのか」

 

「そのようです。その他『城塞都市フェルベーンの奇跡』と呼ばれる事象では、多くの瀕死患者を回復させたとか。その他使役獣によるバハーナ村の大量に発生したダークパイソンの討伐、商業都市バーレールでのオーク軍1500匹の討伐など、奇跡とも思えるような数々の偉業があります」

 

「これらをちゃんと評価すると、どれほど褒美を準備せねばならぬことか」

 

ワーレンハイド国王は苦笑する。

 

「偉業を説明しても信じぬものが多いでしょう。褒章は少し渋めにするしかありますまい」

 

「難儀な物よな。それほどの男を繋ぎ止めるのに褒賞が渋いとか、切なくなるわ」

 

大きく溜息を吐くワーレンハイド国王。

 

「事前に段取り説明と謁見用の服を製作するために王城に呼んでおります。その際には私がコルーナ辺境伯と面会しますので、国王の方で・・・」

 

「うむ」

 

二人の打ち合わせはしばらく続いた。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「どうなっておるのだ!」

 

とある警備隊詰所。

プレジャー公爵家三男のサンドリック・フォン・プレジャーは取り巻きの部下を怒鳴り散らしていた。

 

自分を差し置いて隊長に抜擢されたクレリア・スペルシオを追い落とすべく、人を雇って暴漢が暴れていると言った軽犯罪を増やし、王都の治安低下を引き起こし、クレリア・スペルシオの責任として追及する予定だった。

初めはうまく行っていたのだ。

ところが、各隊の配置を地図に出した途端、状況が変わった。

翌日にはサンドリックとその取り巻きの部隊が近くで起きた暴漢の事件を全く対処できていないと厳しく叱責されたのだ。

あの地図は誰がどこに配置され、どのエリアに責任を持たなければならないかが簡単にわかってしまうため、サンドリックたちが仕事をしていないことがばれてしまった。

それも当たり前のことではある。なにせサンドリックたちが手引きしているのである。

 

「くそっ! 順調だったのに!」

 

苛立つサンドリック。

対策として、自分たちの配属エリア以外で暴漢たちが暴れる様に位置を変更した。

ところが・・・

 

「なにっ! 大半が捕まっただと!?」

 

クレリアたちが暴漢の大半を捕縛したのだ。今までは逃げきれていたのに、その多くが捕まってしまったのだ。

この辺りはヤーベの想像通り、サンドリックたちが自分たちのエリアを外して暴漢たちが暴れる様に指示したため、クレリアたちの対策エリアで対応することになり、比較的事前予測がしやすくなり、大半が捕まってしまったのだった。

 

「くそっ!くそっ!くそっ!」

 

テーブルに拳を叩きつけてサンドリックは悔しがるのであった。

 

「見ていろ・・・こうなったら父上に相談して・・・」

 

サンドリックの澱んだ瞳に黒い炎が灯るのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

王城の北東にある塔。

バルバロイ王国第2王女カッシーナは今日も空を見上げながら涙を流していた。

 

生まれて初めての感覚だった。

あの人は自分の全てを叶えてくれた。

夜の空を文字通り2人で飛んだデートは忘れられない思い出だ。

そして、自分の体を奇跡の技で治してくれた。

 

「ヤーベ様・・・」

 

不思議な体をした人だった。最後去り際には後姿だったけど、人の姿を見せてくれた。

あの日、体の傷をすべて治してもらったことを、まだ誰にも伝えていない。

今まで着替えを手伝ってもらったり、体を拭く手伝いをさせていたメイドたちもあれ以来自分でやるからと肌を見せていない。

ヤーベ様への感謝もまだ出来ていないのに、他の人へ傷が治った事を伝えてしまったら、今まで見向きもしなかった連中が押し寄せて来るに違いない。それにリカオロスト公爵家の様に権力のみを見てくる連中もより力を入れてきてしまうだろう。

傷を治してもらったことは今は内緒にしておく方がいいだろう。

 

「どうして、私を連れて行って下さらなかったのですか・・・?」

 

ずっと、空に語り掛けながら涙を流す。

それが今のカッシーナ王女にとっての日課になってしまっていた。

 

その時だった。

 

「!?」

 

この王城に、かすかだが、ヤーベ様の魔力を感じた。

カッシーナは左半身にダメージを受けた際左目が見えなくなった代わりに<魔力感知>の能力が高くなった。ずっと塔に籠っていたカッシーナは暇を持て余していたこともあり、魔力感知のトレーニングを続けていた。そのため、今はその魔力の大きさと色をイメージで確認できるようになった。

その能力で王城内を何気に観察していたのだが、かすかにヤーベ様の魔力を感じた様な気がした。

 

部屋をバターンと飛び出そうとして、自分が今部屋着であり、外に出るような恰好でないことに気づいた。

 

「ひああっ!」

 

慌てて部屋に戻ると、メイドたちに声を掛ける。

 

「城内に降ります!着替えをお願い!」

 

けたたましい声で指示を出せば、まさか王城へ降りるなどというとは思っていなかったメイドたちが、慌てて「はいっ!」と小気味いい返事をする。

バタバタと洋服を着替え、髪を整えて準備を終える。

 

・・・結果として、カッシーナはその日ヤーベに会う事は出来なかった。

だが、有力な情報を得ることが出来た。

 

(4日後に謁見のために登城する・・・)

 

カッシーナは4日後の謁見時にどのように立ち振る舞うか、脳内会議で検討するのであった。

 

(何としても、ヤーベ様に・・・)

 

カッシーナの瞳は決意に燃えるのであった。

 

 




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