転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第110話 叙爵の打診は断っておこう

 

「ヤーベ殿、ずいぶん製作発注したのだな」

 

鍛冶師からとりあえず今日出来た分の刺又(さすまた)50本を受け取った。

 

「ええ、王都警備隊隊長のクレリアに差し入れです。今王都の治安を不安に陥れようとしている暴漢たちの抑制にはちょうどいい武器ですからね。叩いて良し、抑え込んで良しの優れものですよ」

 

ニコニコしながら俺は刺又の1本を握ってみる。

 

「曲線と直線の棒をつなぐところは俺の技を駆使してつなげてある。それにしても面白い武器だな」

 

ドワーフの鍛冶師、ゴルディンは感心していた。

刃物を鍛えるという熟練の技無しに、鉄をパイプ状にして中を空洞化しながら円筒状で強度を出すように指示された。先の部分の半円系の曲線部で敵を抑え込めるようになっている。

 

「コレ、俺たちの工房でも作っていいか?」

 

「ん? ああ、いいよ、どうぞどうぞ」

 

「いいのか? ヤーベ殿のアイデアだろう?」

 

コルーナ辺境伯の確認も俺は気にしない。

 

「利権とか気にしないし。いいものはどんどん使ってもらった方がいいしね」

 

「ヤーベ殿は本当に欲がないのだな」

 

実際は欲だらけですけどね!

利権とかこの世界のルールがよくわかってなくて面倒くさいだけですから。

 

「アンタ、随分と気風が良いな。気に入った。200本の注文貰ってるけど、少し負けとくよ」

 

「おっ、そりゃありがたいね!」

 

「納品は一日50本程度で勘弁しといてくれ。他にも依頼があれば何でも相談してくれ。出来る限り力になるぜ」

 

「魔法付与がある武器も対応できる?」

 

「高くはなるが、出来んことも無いぞ。魔石の種類と付与内容によるがな」

 

「2m少々のハルバードに強力な攻撃系の魔法付与がある武器が欲しいんだが」

 

ふむ、とゴルディンは自慢の髭をなすりながら考える。

 

「火の魔石と風の魔石があるから、ハルバードに組み込んで火炎系の魔法攻撃と爆裂系の攻撃魔法を組み込むことは出来るかな?」

 

「おおっ! それ良いね。製作頼むよ」

 

「いいのか?魔石二つも使って品質のいいハルバードを作るとなると、金貨7~800枚くらいはかかるぞ?」

 

「かまわないよ、やっちゃって」

 

「はっはっは、そういう勢いのある奴は好きじゃぞ」

 

「じゃあよろしく頼むよ」

 

「うむ」

 

俺はゴルディンとがっちり握手して店を出た。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

その日の夜。

 

コルーナ辺境伯家に戻って夕食を済ませた後、フェンベルク卿に誘われてリビングに集まっていた。

フェンベルク卿に娘のルシーナちゃん、奥さんのフローラさん。

俺に、イリーナ、サリーナ、フィレオンティーナ、リーナ。

 

「それにしても、ヤーベ殿には感謝しかないな。我がコルーナ辺境伯家の戦力がものすごく評価されてしまっていたよ」

 

苦笑しながらフェンベルク卿が話す。

 

「どういうことです?」

 

「現在庭にヤーベ殿の使役獣である狼牙族がたくさん休んでいるし、午前中はゲルドン殿が狼牙を相手にものすごいトレーニングを行っているのでな。我が家にやってくる人たちが見て行くのだよ」

 

どうやら、トレーニングでゲルドンの振り回すハルバードが目にも止まらないと話題になっているらしい。そして、その目にも止まらないハルバードをひょいひょいと躱す狼牙も話題になっているらしい。

 

そんな規格外級の実力がある者たちがコルーナ辺境伯家に集まっていると言う噂が立っているようだ。

 

「そんなわけで、やたらと声を掛けてくる連中が多くなってね。まあありがたいつながりも出来たから助かっている部分もあるけどね」

 

「役に立てたのならいいですけどね」

 

俺は執事さんが入れてくれた紅茶を少し飲む。

 

「さてさて、大事な話をしておこう。王城で衣装合わせした際に俺は宰相のルベルク殿と打ち合わせをさせてもらってきた。国王との謁見の流れの確認だな」

 

「どんな感じになるのです?」

 

「王の前に出るのはヤーベ殿だけだが、後ろに控えるのは許可をもらった。だからイリーナ嬢他、皆が同じ謁見の場にいられることは確認した」

 

「ふおおっ! リーナもご主人しゃまと一緒に王様に会えるでしゅか!」

 

リーナが興奮して手を上げて聞く。

 

「うむ、リーナ殿も王様に会えるぞ! しっかりおめかしして行かないとな」

 

「はいなのでしゅ!」

 

リーナが元気に返事をする。

 

「ヤーベ殿には褒美が下賜される予定なんだ。出来れば男爵に叙爵するから受けて欲しいという事だったんだが・・・」

 

「お断りいたします」

 

「やっぱりか、貴族になりたいという人間は多いと思うのだがね」

 

「そうですわ、旦那様。叙爵と言うのは名誉なことではありませんか?」

 

「俺には不要のものだな。そのような義務を果たせるとも思えんし」

 

フィレオンティーナの言葉にも俺は首を縦に振らなかった。

 

「ふむ、確かに貴族には義務もついて回るだろう・・・だいたい、貴族になりたいのなら私と結婚すればいいのだ・・・もにょもにょ」

 

イリーナの発言は最後の方声が小さくなって聞き取れなかった。

 

「私の寄子になってもらえるとありがたいのだがね」

 

「何となくですが、賓客よりランクが落ちている気がしますよ」

 

俺の苦笑にフェンベルク卿も苦笑する。

 

「そう言えばそうですわね。ヤーベ様にはあまりうれしくない話でしょうか」

 

奥さんのフローラさんも笑ってくれる。

 

 

 

「そうすると、国王から頂く褒賞をどうするか、悩むところだな」

 

「別にいらないですけどね。悩むなら金貨でいいですよ? それが一番簡単でしょう」

 

「それが無難か」

 

紅茶をすすりながらフェンベルク卿は呟いた。

 

「ところで明日なのですが、ハーカナー元男爵夫人への訪問をお願いしたいのですが」

 

「うむ、すでに先振れをお願いしているよ。俺ではなく、寄子のコルゼア子爵にお願いしてある」

 

「助かります」

 

明日はまた王都を回らなければならない。そして、今まで集めた情報から、ヤバイ計画を練っている連中をどうにかしなければならない。

・・・尤も俺は暗殺者でも仕事人でもない。動き出す前にぶっ潰すわけにもいかないしな。

俺は頭の中で明日の予定を組み立てることにした。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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