転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第111話 商会を立ち上げて一儲け企もう

「ところで・・・コレで遊んでみませんか?」

 

取り出したのは所謂リバーシの盤。

サリーナに頼んで、錬金術で金と銀を薄く丸いコイン状に仕立てて、それぞれをくっつけた状態にしたものを一つの駒としている。

 

「これは・・・どうするんだい?」

 

「これは、ゴールド側とシルバー側の二手に分かれて対決するゲームです。

金色の向きで2枚、銀色の向きで2枚の駒を最初から配置し、駒を挟んでひっくり返し、自分の色にしていくゲームですよ」

 

俺は駒を配置させながら説明する。

 

「どんな風に遊ぶんだい?」

 

「先手をとった側が相手の色の駒の隣に自分の色の駒を置いて、挟んだ内側の駒の色をひっくり返し、自分の色の駒を増やすゲームです。実際やってみましょう」

 

そう言って俺は実演する。

 

パチンパチン。

 

駒を置いて真ん中に挟んだ駒をひっくり返し、自分の色になるように増やしていく。

 

「この通り、置いた駒と盤面の自分の駒の間にある敵の駒は全てひっくり返して自分の色にすることが出来ます。最終的に自分の色の駒が多い方が勝ちですよ」

 

「どれ、実際にやってみようか」

 

「そうですね」

 

 

 

ゲームで遊ぶことしばし。

 

「もう一回!ヤーベ殿もう一回勝負を!」

 

フェンベルク卿の泣きのもう一回を聞き続けてどれくらい経ったか。

 

「お父様!次は私たちが遊びますよ!イリーナちゃん勝負しましょう」

 

「うむ、望むところだ」

 

ルシーナが父親であるフェンベルク卿からゲーム盤を奪い取ってイリーナの前に置く。

 

「ああ!まだヤーベ殿との決着が・・・!」

 

「貴方、いい加減になさい!」

 

駄々を捏ねるフェンベルク卿の耳をフローラさんが引っ張る。

 

「それにしても、これは素晴らしいな! 簡単で面白いぞ。王都で売り出すのか?」

 

「伝手のある商人でもいればよかったんですけどね。俺には特に商人に伝手がありませんから」

 

リーマン商会が感じよかったらいろいろと地球時代のアイデアを授けて組んで儲けようかと思ったのだが。

 

「であれば、いっそ商会を立ち上げるか。王家に商品登録を持っていって認められれば3年の独占販売許可が出るぞ。しかも王国のご用達の印がもらえるぞ」

 

「それはすごいですね・・・、それにしても商会ですか・・・名前を決めないといけないですね・・・」

 

商会の名前ね・・・有名なラノベの例だと、南雲なら『サウスクラウド』、竹林なら『バンブーフォレスト』のように日本名からうまく商会や店の名前を付けられるパターンにあこがれていたんだが・・・。

 

「矢部って何だよ!? どーするよ! 矢は『アロー』で行けるだろうけど、部ってなんだよ!ベッて!」

 

「ど、どうしたんだヤーベ殿?」

 

「『べ』に困っているんですよ!『べ』に! いっそそのまま行くか!? 『アローベ』ってなんだ?『アローベ』って!」

 

「なるほど、じゃあヤーベ殿の商会は『アローベ』商会でいいな。明日商業ギルドに出向いて登録するとともに、このゲームを登録に行こう。ゲームの名前は決まっているかね?」

 

「対戦型バトルゲーム『ゴールド オア シルバー』です」

 

俺はただのリバーシに仰々しい名前を付けた。

 

「それでは明日登録に行こう。楽しみだね! きっと大儲けできる気がするよ」

 

・・・いつの間にか商会を立ち上げることになってしまった。

 

「ついでに刺又も登録しちゃおうか。鍛冶師のゴルディン殿には登録使用料免除って事で」

 

フェンベルク卿もなかなか商売上手だな。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

翌日。

 

俺はコルーナ辺境伯の紹介で朝からコルゼア子爵と面会していた。

 

「ヤーベです。コルーナ辺境伯様の元でお世話になっています」

 

「ラインバッハ・フォン・コルゼアだ。今回はハーカナー元男爵夫人への面会が希望とのことだったね?」

 

「ええ、そうです」

 

「ハーカナー男爵とは宮廷で会えば挨拶した程度の顔見知りであったのだが。一ヶ月ほど前事故で亡くなってしまってね・・・。ハーカナー男爵は夫人との間に子供もおらず、ハーカナー男爵家をどうするか、宮廷内でも意見が割れているところなんだ。そんな彼女へ面会って、どういう目的だい?」

 

「一つに、ハーカナー男爵は事故ではなく殺されてます。テラエロー子爵の手の者によって」

 

「な、なんだって!?」

 

「二つに、ハーカナー男爵が多額の借金を背負っていると偽の証文を作って、ハーカナー元男爵夫人に土地と屋敷を引き渡すように求めている商会がありますが、これもテラエロー子爵の息のかかった商会で、でっち上げた証文により詐欺を働こうとしています」

 

「なんとっ!?」

 

「三つに、これら全ての犯罪を仕組み、ハーカナー元男爵夫人を助けるふりをしてテラエロー子爵が名乗りを上げて、男爵元夫人を自分の手に収めようとしています」

 

「とんでもないゲス野郎じゃないか! 証拠はあるのか?」

 

「これに。商会の人員リストです。テラエロー子爵の手の物がずらりと並んでいます。それから借金の証文はハーカナー男爵のサインとは似ても似つかない文字ですよ。後は事故に見せかけて殺した人物への指示書ですね」

 

「コレを衛兵に提出せんのかね!?」

 

「証拠としては決定的な物は少なく、相手が子爵クラスの貴族です。残念ですが、証拠としてはイマイチ弱いです」

 

「むうっ」

 

「ですので、まずはハーカナー元男爵夫人にお会いして、今後どうしたいか伺ってみようかと思いましてね」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「・・・そうですか。テラエロー子爵があの人を・・・」

 

ハーカナー元男爵夫人はゆっくり噛み締める様に呟いた。

コルゼア子爵とハーカナー元男爵夫人に面会に訪れた俺は、いきなり包み隠さずに状況と事実を述べた。

 

「敵を討てるほど厳密な証拠はありませんが、貴女が望むなら『敵』をうつチャンスを貴女に差し上げましょうか?」

 

「敵を討つ・・・」

 

ハーカナー元男爵夫人は虚空を見つめて呟く。

 

「それとも、全てを捨てて、誰も貴女の事を知らない田舎へ行って余生を過ごしますか?」

 

「誰も私を知らない場所・・・」

 

俯き呟くハーカナー元男爵夫人。

 

「もう・・・疲れました。跡形もなく、綺麗に消して頂けますか? そして、誰も知らない場所へ連れて行ってくださいまし・・・」

 

悲しげに瞳を揺らしながら、そう告げる。

 

「畏まりました。その願い、このヤーベが承りましょう」

 

「ど、どうするのだ・・・?」

 

コルゼア子爵の不安げな問いに俺はニヤッとした笑みを浮かべた。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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