転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第114話 キルエ侯爵への襲撃者を退治しよう

キルエ侯爵の馬車を襲撃した賊、総勢50名。

その事如くが叩きのめされ、謎のロープで拘束されていく。

 

「エリンシア! 魔術師を優先的に捕縛! 後前衛を馬車に寄せ付けないで!」

 

「ラジャー!」

 

大柄なローガに跨ったクレリアは刺又を振り回しながら副官のエリンシアに指示を出す。

 

刺又は突いて良し、叩いて良しの優れものだ。

刃物でもないので一撃で殺傷することは難しい反面、相手に攻撃するのに躊躇う事は無くなる。

元々槍にも自信のあったクレリアが操る刺又はローガの縦横無尽の動きと合わさって襲撃者たちはクレリアの動きに全くついて行けず、次々に無力化されていく。

 

具体的には突かれたり叩かれたりして地面に打ち付けられた襲撃者たちがヤーベに拘束されていく。

 

「<スライム的捕縛鞭(スライムチ)>」

 

俺は手のひらからスライムの触手を伸ばし、クレリアたちに叩きのめされたり、壁に刺又で押し付けられた襲撃者たちをぐるぐる巻きにしていった。

ぐるぐる巻きにした上で一度プチンと切って転がしていく。

 

ちなみにムチだから、ぐるぐる巻きにする前に俺の方に襲い掛かって来た襲撃者は触手で滅多打ちにしちゃう。

 

「ひいい~~~!」

 

そんでもってぐるぐる巻き一丁。

 

「な、なんていう戦闘力だ・・・! 俺たち王国騎士団を超えてんじゃねーか・・・」

 

そんな感じで捕縛を続けていたら、王国騎士団長のグラシア・スペルリオが現場に来た。

 

「鞍があるのに、手綱が無い。その代わり鞍に取っ手が付いている。超高速で移動しているのに鞍にある取っ手を片手で握って、片手で長物の武器を扱う・・・。狼牙が乗り手の負荷を考えて動いている・・・? いや、風の精霊の加護もあるのか?」

 

グラシア団長がクレリアたちの動きを見て分析して行く。

 

「狼牙の戦闘力ハンパねーな・・・。馬に乗って騎馬戦挑んでも勝てる気がしねーぜ」

 

「狼牙を騎獣に貸すのは今日だけだよ。心配しなくてもいいさ」

 

「そうなのか・・・ちょっと焦ったぞ」

 

俺の説明にグラシアが本気でホッとしている。

 

「団長自ら出撃したのか?王族の護衛は大丈夫なんだろうな?」

 

少し剣呑な雰囲気を出して聞く。

 

「ああ、副団長のダイムラーに任せてきた。王族の護衛は精鋭を宛がっているから心配ない」

 

「ならいいけどな」

 

襲撃者たちを無力化したクレリアがローガから降りて馬車に声を掛ける。

 

「キルエ侯爵様。王都警備隊隊長のクレリア・スペルシオにございます。襲撃者は全て捕縛できましたのでご報告申し上げます」

 

御者をしていた執事らしい人物が馬車の扉を外から開ける。

馬車から降りて来たのは、シルバーブルーとも言えるような輝くストレートヘアーの美少女だった。

 

「ご苦労様でした、クレリア隊長」

 

鈴のなる様な軽やかな声。

見た目15~16歳くらいにしか見えないが、まごうことなきキルエ侯爵家当主シルヴィア・フォン・キルエ侯爵その人だ。

 

「貴女の救援が無ければ私はこの場で死んでいたかもしれませんね。感謝します」

 

「勿体ないお言葉です。ご無事でなによりです。これよりは王都警備隊が御屋敷まで警護いたします」

 

キルエ侯爵とクレリアが話している間、エリンシアは部下に襲撃者たちを捕縛ロープで拘束するように指示を出して行く。

拘束が済んだ者達から<スライム的捕縛鞭(スライムチ)>を回収して戻していく。

 

ふと、キルエ侯爵が俺の方を向いた。

 

「あの者は?」

 

「はっ、王都の混乱を心配する者で、この「刺又(さすまた)」の考案者であり、この狼牙のマスターでもあるヤーベ殿です」

 

「ほう、何やら捕縛のロープもあの者の魔法なのか? かなり興味ある人物だ」

 

キルエ侯爵が俺を見て声を掛けてくる。

 

「その方、どのような身分の者か?」

 

「俺ですか?今はコルーナ辺境伯家の賓客として迎えられています。一応明後日王様に謁見する予定ですね」

 

「なんと! コルーナ辺境伯殿の賓客であるか。しかも王との謁見が決まっておるとは。随分と優秀な人物よの」

 

「多分大したことないと思いますよ?」

 

「はっはっは、あまり謙遜が過ぎると嫌みとなるぞ? それでどうだ、コルーナ辺境伯家に世話になっているようだが、我が侯爵家に来てみぬか?」

 

「お誘いは光栄なんですけどね。俺は今の所権力も家柄も特に必要ではないんで・・・」

 

「なんだ、随分と欲がないな」

 

「はあ」

 

「キルエ侯爵の誘いもお断りなのか。贅沢なものだな」

 

グラシア団長が話に加わってくる。

 

「王都騎士団の団長も現場に?」

 

「このヤーベ殿がキルエ侯爵襲撃の噂があると情報をくれましてね。敵は王都を混乱させて貴女の命を狙ったらしい」

 

「碌な真似をせぬな」

 

「ですが、王都の混乱ももう落ち着きました。大丈夫ですよ」

 

えらく爽やかな笑顔で報告するグラシア。お前なんか仕事したのか?

 

「・・・ところで、本当に王族の警護は大丈夫なのか?大体騎士団は男ばかりだろ?女性の警護はどうしてるんだ?」

 

「王妃様には今日だけ倍の人数の女性騎士を警護に当てている。お前のアドバイス通りどんな時でも必ず一人が警護出来る様にしているよ」

 

「カッシーナは?」

 

「え?」

 

「だから、カッシーナ王女は?」

 

「か・・・カッシーナ王女・・・」

 

明らかにしまったと言う表情のグラシア。額には脂汗が滲む。

 

「塔に住むカッシーナの警護は!!」

 

思わずグラシア団長の胸倉を掴みながら詰め寄ってしまう。

 

「カッシーナ第二王女は常に警護が付いていない状況なんだ・・・普段塔から出て来られないから・・・」

 

「じゃあ今もカッシーナには護衛が付いていないのか!!」

 

「ああ、ついていない・・・」

 

「バカタレが!!」

 

俺は思わずグラシアの胸を突き飛ばす。

 

「カッシーナが危ない! <高速飛翔(フライハイ)>!」

 

バシュウ!

 

ものすごい風を巻きながら高速で空を飛んで行った。

 

 

 

 

 

「しまった・・・普段警護が付かないカッシーナ王女の警護追加を指示し忘れるとは・・・このグラシア一生の不覚!」

 

「・・・それにしても、あの男。王への謁見を行うのは初めてなのだろう・・・?」

 

キルエ侯爵が如何にも不思議そうにグラシアに問いかける。

 

「そうだと思いますが・・・」

 

「ならば、なぜあの男はカッシーナ王女を呼び捨てにした? しかも塔に籠っておられるのを明らかに知っておる口ぶりだったが?」

 

「・・・! そう言えば・・・奴は一体?」

 

キルエ侯爵、グラシア団長、そしてクレリア隊長も、ヤーベの反応が理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

俺は念話を行使する。

 

『ヒヨコ隊長!無事か?状況を報告せよ!』

 

『ボス! カッシーナ王女の部屋に怪しいヤツが!』

 

『ちっ! すぐに行く!カッシーナを守り切れ!』

 

そう言って俺は黒ローブと銀の仮面を装備して謎の通りすがりのヒーロー、ダークナイトに変身できるように装備を変えてからカッシーナがいる塔へ大至急向かった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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