転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第118話 お互いの気持ちを確かめ合おう

 

・・・言ってしまった。

地球時代、全くモテず女の子と付き合う事すらなかった俺が。

『お嬢さんを僕に下さい』的なセリフを言うことになろうとは!

 

恥ずかしすぎる。穴があったら入れたい、いや違う、入りたい。

 

「ヤ、ヤーベ・・・本当に、本当に私の事を・・・?」

 

見ればイリーナが涙を流している。

俺の肩に手を置いて、俺の顔を覗き込む。

 

「私を貰ってくれるのか・・・?」

 

「ああ、ずっと俺のそばにいてくれないか?」

 

俺はイリーナの瞳を見つめる。

 

「ヤーベ!」

 

感極まったイリーナが俺に抱きついてくる。

俺の胸に顔を埋めて名前を呼んで泣きじゃくる。

 

「ヤーベヤーベヤーベヤーベ!!」

 

俺はそっとイリーナの体を抱きしめて頭を撫でてやる。

 

「どうしたイリーナ?」

 

「だってだってだって・・・ヤーベが私を受け入れてくれるなんて、夢みたいで・・・すっと、ずっとこんな日が来ることを夢見ていたのに、本当に現実になる日が来るなんて・・・」

 

俺の胸に顔を埋め泣きながらずっとその思いを吐露する。

 

「泉の畔で会った時から、元気いっぱいで、明るくて、笑顔が素敵だったイリーナの事が好きだったよ。特に、この先どうやって生きて行くか迷っていた時だったから、イリーナの明るさにとても助けられたんだ。よければこの先もずっとそばにいて欲しいと思っているよ」

 

「ヤーベ・・・嬉しいよぉ・・・嬉しいよぉ・・・」

 

顔を上げずにずっと俺の胸に埋めながら泣くイリーナ。

 

「いやはや・・・まいったね・・・」

「貴方?これ以上は無粋ですわよ?」

 

ダレン卿と奥さんのアンジェラさんが見つめ合う。

ダレン卿がやや苦笑しているのに対して、アンジェラさんはいっそすがすがしい感じもする。

 

「イリーナ。良かったわね、そんなに思い焦がれる人から結婚を申し込まれて」

 

「お母様・・・」

 

「それほどの覚悟があるなら、もう何も言えないね。コルーナ辺境伯ともよく相談するけど、イリーナの事はヤーベ君に任せる事になりそうだね」

 

ダレン卿が力無く笑った。

 

「それこそ急な申込で大変申し訳ないと思っています。ですが、どうしても明日王城にて謁見する前にお伝えしたかったものですから・・・」

 

「謁見は男爵以上の貴族は全て招集が掛かっているんだよ。よほど君の事を王家が気にしているみたいだね。君は一体何者なんだい?」

 

「自分は何者でもなく自分だと思っているんですがね・・・。とりあえず田舎でのんびり暮らすことを目標にしていますよ」

 

煙に巻くつもりなのかとも思うが、心からの気持ちともとれる。

ダレン卿はヤーベを掴みかねていた。

 

「まあ、明日の謁見で君の晴れ姿を見せてもらう事にするよ」

 

ダレン卿は今度こそ屈託のない笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

その夜。

漆黒の夜空に淡い星々の光と月だけが瞬いている頃。

 

ヤーベはあてがわれた部屋のベッドに腰かけて窓から零れる月の光を見ていた。

 

ついにイリーナの両親に挨拶することが出来た。

挨拶から結婚申し込みというのは自分でも想定外だったが。

 

「ま、外堀はガチガチに埋められていた気もするしな・・・」

 

自分が何者か・・・

ダレン卿の質問には今も答えられない。

なぜなら、自分でもわかっていないのだから。

 

自分がスライムである事。そしてこの世界ではスライムが認知されていない事。

魔物でも一度も見ていない事。

だからこそ、自分が「スライム」だと言いきれず、この先イリーナたちとずっと一緒にいてもいいのか、実際にいられるのか、何も確認のないままイリーナたちに勝手に気持ちを伝えて期待を持たせることにも罪悪感があった。

 

だが、<変身擬態(メタモルフォーゼ)>をマスターしてから、町でも生活自体は問題なくなるだろうと言う想定の元、彼女たちとの生活を考えるようになった。

 

コンコン

 

控えめに部屋の扉がノックされる。

 

「はい?」

 

ガチャリ

 

そっと扉が開いて、顔だけ覗かせたのはイリーナであった。

 

「ヤーベ、まだ起きてる?」

 

「ああ」

 

「入ってもいい?」

 

「いいぞ」

 

部屋におずおずと入ってくるイリーナ。

ワンピースのような寝間着に枕を抱えている。

 

とてとてと歩いて来たイリーナは、ベッドの縁に腰かけていた俺の横にちょこんと座った。

 

お互い無言の時間が流れる。

 

「・・・初めて会って、命を救われた時から、ヤーベは私の王子様だったんだ」

 

イリーナはゆっくり話し始めた。

 

「スライム・・・、不思議な姿だったが、何故か嫌な感じはしなかった。何よりヤーベの温かさが直接伝わってくるような気がして、ずっとヤーベのそばにいたいと思った」

 

俺の方を見ずに前を向いたまま話すイリーナ。

 

「最初はリカオロスト公爵家の執拗な求婚から逃れたい気持ちも強くて、ヤーベに早く抱かれて既成事実を作ってもらえば、求婚に答えなくて済むと気が焦ってヘンな事を言っていた時もあった。でもずっとヤーベのそばにいて、ヤーベと旅をしてきて、私は何もできなかったけど、ヤーベが困難に立ち向かって人々を救っていくのを見て、胸が熱くなった。なんてすごい人なんだろうって。自分に何が出来るかわからないけど、ヤーベの事を支えたいと思った」

 

イリーナがゆっくり俺の方に顔を向けた。

 

「ありがとう。イリーナの気持ちが聞けて嬉しいよ」

 

俺はにっこりと笑顔を向けた。

 

「君の両親の前でも伝えたけど、俺自身がこの先どうやって生きて行こうか不安だった時から俺のそばにいてくれて、元気をくれたイリーナの事が好きだったんだ。だから、今こうしてイリーナと一緒にいる事が出来て本当に幸せだよ」

 

「ヤーベ・・・」

 

そっとイリーナが頭を俺の肩にもたれ掛けさせる。

 

「ヤーベ・・・私を、ヤーベのものにしてくれ・・・」

 

「・・・いいのか?」

 

「・・・奥さん・・・増えそうだから」

 

ちょっとぷっくりほっぺを膨らませながら、冗談気味にジトっと睨んでくる。

 

ヤーベは苦笑しながら、イリーナの肩を引き寄せ、ベッドにそっと横たえた。

 

「アレ・・・言ってくれる?久々に」

 

イリーナは顔を真っ赤に染めて視線を逸らした。

 

「くっ・・・犯せ・・・」

 

「よろこんで・・・」

 

お互いの唇を重ね合わせる。

そして二人の影が重なって一つとなっていった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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