転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
俺は今、一人で巨大なベッドに腰かけている。
俺の男爵叙爵おめでとう食事会的なものが終わり、奥さんズからは先にお風呂にどうぞと言われ、ものすごくゴシゴシしてから風呂から出た。
何故か新品の新しい寝間着が準備されていたのでそれに袖を通す。
巨大ベッドのあるこの部屋はいつも俺が寝泊まりさせてもらっている部屋ではない。
コルーナ辺境伯家の最大級の部屋、貴賓室と呼ばれる部屋らしい。
ものすごくいい笑顔でコルーナ辺境伯の奥様フローラさんから「ごゆっくり」と言われ、メイドさんに直接部屋まで案内されてしまった。
何だか知らないけど、ちょっといい匂いのするお香まで焚いてあるようだ。
「・・・みんなで同衾って・・・大丈夫なのか?」
俺は改めて腕を組んで考える。
食後、コルーナ辺境伯と奥さんにルシーナの件でお話を・・・と探りを入れたら、フェンベルク卿自身は逃げてしまった。フローラさんが鬼の形相でフェンベルク卿を睨んでいたが、「ヤーベさん、分かってますから!大丈夫!」といって素晴らしい笑顔を向けてくれた。いや、何がわかってるのか、若干不安なんですが。
貴族の娘さんとの結婚って、正式に婚姻を結ぶ前に手を出すとまずいってイメージだが・・・。
「今更かあ」
ぶっちゃけ、ルーベンゲルグ伯爵邸へ挨拶に行ったその日の夜にイリーナとそうなっちゃったわけだし。
ルシーナはコルーナ辺境伯の長女であるため、父親であるフェンベルク卿と奥さんのフローラさんに面識がある。ぶっちゃけ結婚にもフローラさんは前向きだ。
だが、フィレオンティーナはタルバリ伯爵の奥さんで妹に当たるシスティーナさんと姉妹という以外家族の情報を聞いていない。両親が健在ならご挨拶に伺いたいところだ。例え自宅を処分して身一つで俺に嫁ぎたいとやって来てくれたとは言え。
サリーナはザイーデル婆さんの孫だから、王都へ出発した時に挨拶したし、俺に嫁げって言ってたから、まあサリーナは結婚には問題ないだろう。
リーナは・・・うん、大人になってから考えようか。
カッシーナは一緒にいられるようになってから考えればいいか。
・・・となると、あんまり問題ないのか?
いや、初めてが全員同時って・・・あ、いや、イリーナとは初めてじゃなくなったわけだが。
だいたい、奥さんズが同時にやって来たとして、誰から相手をするかって問題がある。
通常は第一夫人から・・・って、イリーナ以外はみんな初めてになるんだろうし・・・。
ああ、どうすればいいんだ?
・・・どうしよう、イリーナだけがすごいドヤ顔でやって来たら。
ちょっとイラッとしてしまうかもしれない。
あれっ!?
今とてつもなくマズイ事に気が付いた。
「俺、フィレオンティーナとリーナにスライムだって伝えてなくね?」
というかスライムだと伝わらないだろうが、人外だってことは伝えておかないと・・・。
「ん? ルシーナちゃんにも、ちゃんとした姿は見せてないかも」
毒に犯されて命の危険に晒されていたルシーナちゃんを救ったわけだが、あの時はローブを深くかぶった状態だった。ちょっと触手も使ったが、全身を見せていない。
「これはアカンな。ちゃんと結婚前に奥さんになる人たちにだけは姿を見せておかないと」
それによって嫌われたり気持ち悪がられたりして結婚を撤回されても仕方がない。
「そういう意味ではカッシーナには姿見せてるんだよなぁ、俺」
カッシーナに初めて会った時はデローンMr.Ⅱ+翼の姿だったからな。間違いなく人外だと理解してもらっているだろう。
「ヤーベ様、お待たせ致しました・・・」
「旦那様、お待たせ致しました」
「ヤーベさん、お待たせです」
「ふっふっふ、ヤーベとの共寝だぞ、緊張するだろう?」
「ご主人しゃまー!綺麗にしてまいりましゅた!」
ルシーナ、フィレオンティーナ、サリーナがお待たせと言ってくれるのはわかる。
マジでドヤ顔でやって来たよ、イリーナの奴。
そしてリーナよ。なぜピカピカに綺麗にしてきたことを俺に報告する?
「あまりお待たせしても申し訳ありませんし、早速準備させて頂きますね・・・」
そう言ってルシーナが羽織り物をはらりと外す。
薄いキャミソールのような寝間着と言えないような薄手の服?に目を奪われる。
「あら、ルシーナちゃん積極的ですのね? わたくしも負けてはいられませんわ」
そう言ってフィレオンティーナも羽織り物を脱ぐ。
フィレオンティーナの爆乳がわずかに薄いキャミソールの胸部分に引っかかっているという表現が一番正しいだろう。見事な双丘の先にある突起がギリギリ見えない程度に引っかかっているだけなので、大半出ちゃっているのだが。いいのかフィレオンティーナよ。
「私も頑張らなくっちゃ」
そう言って羽織り物を脱ぐサリーナ。均整の取れたプロポーションがはっきりわかる。
「ふおおっ!ご主人しゃまー!リーナは準備万端です!」
そう言うリーナは・・・すっぽんぽんであった。着ろよ!服!
後何の準備だ!いくらなんでもリーナは対象外です!
「さて、みんなのために私が同衾の手本を見せよう。参考にするとよいだろう」
そう言ってイリーナが羽織り物を脱ぐ。
「いやいや、イリーナちゃんはもうヤーベ様と同衾したんだよね?昨日」
「そうですわ。今日はわたくしたちの番ですから」
「イリーナさんは後でね」
三人から次々と言われたイリーナ。
「いやいや、私が第一奥さんなんだぞ!? 常に私からだ!」
「でも昨日抜け駆けしたのイリーナちゃんじゃない」
「うむ」
「そうそう」
「キィィー!」
「キィィじゃなくて。先にルシーナ、フィレオンティーナ、リーナ。お前たちに言っておくことがある」
「なんでしょう?」
「なんでしょうか?」
「なんでしゅか?ご主人しゃま!」
ほぼ同時に尋ねる三人。
「俺は正確には人間ではないと思う。思うというのは、正直自分が何者、とはっきり言えないからなんだ。本当の俺の姿がコレだ。気味が悪いと思ったり、嫌だと思えばもちろん無理に付き合ってくれたり結婚なんて言わなくていい」
そう言って一度ティアドロップ型で可愛い姿になって、「ええっ!」っと驚かせてから、デローンMr.Ⅱの型になる。
「これがヤーベ様の本当の姿・・・」
「これは・・・なんという・・・」
「ご主人しゃま、すごいでしゅ!」
「これが精霊神様の真のお姿なんですね」
サリーナが俺を精霊神と呼ぶ。いや、違いますけどね。
「神様ではないと思うんだけどね。気分は君たちと同じ人間なんだ。でも本当の姿はプルプルしてる粘体みたいな姿なんだ」
「ヤーベ様は私の命を救ってくださいました。今更姿が人とちょっと違うからって嫌いになったりはしないですよ!」
「そうですわ!わたくしも危うく生贄にされて死んでしまうところを命懸けで救って頂いたのです。お姿が多少人間でないからと言って、どうという事はありませんわ」
「ご主人しゃまはどんなお姿でもご主人しゃまです!」
うーん、とても嬉しい気はするけど、この姿はちょっととか多少という違いじゃない気がするんだが。
ただ、俺の姿がどうであれ、好きでいてくれるというのはちょっと感動する。
「よろしく・・・お願い致します・・・」
そう言ってベッドに乗って隣までやって来るルシーナ。
「わたくしも、どうぞ優しくしてくださいませ・・・」
フィレオンティーナもベッドに乗ってルシーナの反対側に陣取る。
「ヤーベさん!私もよろしくお願いします!」
ちょっと元気にサリーナが宣言してベッドに乗り込んでくる。
ふと見ればリーナの姿が無い。
そしてイリーナが大声を上げる。
「ちょっと、まずは私からでしょ!」
そう言ってベッドに飛び乗ると俺の真正面に飛び込んでくる。
「イリーナちゃん、ズルいです!」
「そうですわ!まずは一度なされたのでしょう?少しお待ちになってくださいませ!」
「イリーナちゃんは今日は最後!」
他の三人から総攻撃を受けてイリーナが余計に文句を言い出す。
しまいにキャットファイトの如くキャアキャアと暴れ出した。
「ご主人しゃまー!」
すっぽんぽんのまま、背中から抱きついて来たリーナ。
いろいろ真面目に考えていたのに、コヤツらとくれば、好き勝手暴れ回っている。
しまいに俺は頭に来た。
ブチッ!
「お前ら、いい加減にしろ――――!!」
ズオンッ!!
キレた俺からデローンMr.Ⅱの姿のまま、触手が暴走気味に何本も放たれた。
「わわわっ!」
「キャア!」
「ヒッ!」
「きゃうん!」
「ふおおっ!?」
奥さんズを触手で絡め捕って行く。
・・・その後俺はどうしたのか記憶に無い。
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!