転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第136話 再びの陞爵にも驚かない様にしよう

聖堂騎士団(クルセイダーズ)のロエキーゲ団長の屋敷から狼牙達に乗せられて助け出されて来た女性たち。

狼牙族のモフモフに癒されて狼牙達に抱きついている。

 

「ルーミさん、いるかな?」

 

「は、はい・・・私がルーミですが・・・」

 

見れば二人の姉妹の母親とは思えない程まだ若く見える女性。

 

「ポポロ食堂のレム、リン姉妹が貴女の帰りを待ってますよ。教会で治療を受けたら早めに帰ってあげてくださいね」

 

俺がそう言って微笑むと、ルーミはぽろぽろと泣き出してしまった。

 

「もう・・・もう、あの子たちには会えないものと・・・」

 

「貴女が帰って来るまで、食堂を潰さない様にと毎日奮闘していますよ。どうぞ褒めてやってください」

 

「ううう・・・はいっ、はいっ!」

 

娘達が自分を信じて待っていてくれる、お店を頑張って切り盛りしてくれている。

こんなに嬉しいことは無い。

 

真面な神官たちに教会の治療室に案内させる。体調の良い者達から帰宅することになった。その身分を聞き取りして、教会から賠償という形で金銭の見舞金が渡されることになった。

 

 

「ワーレンハイド国王。とにかく急いで教会内部の腐敗を完全に一掃するためにも、暫定トップに清廉恪勤な人物を当てなければなりません。ここは南地区の教会のシスターであるアンリさんに代行いただくと良いかと」

 

「お、お待ちください!教会内の人事に王国が口を挟むことは・・・」

 

俺が国王に提案していると、神官の一人が口を挟む。

 

「悪いが、教会の自浄作用は信用できないね。ここまで腐敗が進んだのを放置したのは貴方たちだ。聖堂教会という器にメスを入れない代わりに、その人員は王国で見直しを図ってもらうさ」

 

「うぐっ・・・」

 

「ラトリート枢機卿を教皇代理に、シスターアンリを枢機卿トップに据えて教会改革を行ってもらいましょう」

 

「うむ、早々に取り掛かってもらうとしよう」

 

そして王国騎士に呼び出されて連れて来られたシスターアンリは目をぱちくりしていた。

 

「ヤーベさん、今なんと・・・?」

 

「聖堂教会、王都大聖堂の枢機卿トップに就任お願いね! 教皇代理にラトリート枢機卿を置いておくから、分からないことは相談して決めてね!」

 

「いやいやいやっ! まったく意味が分かりませんけど!?」

 

アンリは首を超高速でぶんぶん振ると、意味不明と捲くし立てる。

 

「ファイッ!」

 

俺はものすごくいい笑顔でサムズアップする。

 

「えええ~~~~!?」

 

絶叫するアンリ。

 

「アリーちゃん。この人がシスターアンリだよ。君の面倒もしっかり見てくれるから」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「えええっ!? 何かわかんないけど、よろしく・・・」

 

ここに史上最年少の枢機卿トップが誕生した。

 

 

 

 

翌日、再び王城にて。

 

「皆の者、急の招集であるがよく集まってくれた」

 

宰相であるルベルク・フォン・ミッタマイヤーが謁見の間に集まった貴族たちに声を掛ける。

僅か一昨日、謁見の間に置いてヤーベの男爵への叙爵、カッシーナ王女との婚約が発表されるというサプライズがあったばかりなのにその二日後、またも王城に呼び出されたのだ。

 

「今日は昨日執り行われた聖堂教会の腐敗一掃のため一斉検挙について、その結果と立役者の褒賞を行うため集まってもらった」

 

その説明にざわつく会場。

耳の早い物は教会で大捕り物があったという情報は掴んでいた。

聖堂騎士団(クルセイダーズ)団長の屋敷が急襲され館が半壊したという噂も流れていた。

単なるうわさではなく純然とした事実であったのだが。

 

「聖堂教会ではドムゲーゾ枢機卿、フラメーア枢機卿、聖堂騎士団(クルセイダーズ)団長でもあるロエキーゲ枢機卿の3名が中心となり、多くの女性を誘拐監禁、暴行を繰り返しており、多数の被害者が発生していた。その証拠をつかみ、昨日聖堂教会大聖堂に踏み込んで当該枢機卿たちを捕縛、誘拐監禁された女性たちを無事助け出すことに成功した。その英雄たちを表彰する。ヤーベ男爵、その奥方の一人フィレオンティーナ殿、入られよ」

 

パパパパーン!

 

音楽が鳴り、またも大扉は開き、俺と今度はフィレオンティーナだけが王の前に歩み出る。

 

「よくぞ参ったヤーベ男爵、フィレオンティーナ殿」

 

国王ワーレンハイドが直接声を掛ける。

 

「教会という人々に寄り添わなければならない組織での許されざる犯罪を暴き、多くの被害者を救うことが出来たのは誠に重畳であった。よって褒美を取らす」

 

再びざわつく謁見の間。

貴族たちの話の内容はアイツどんだけ手柄立てんだよ!的なやっかみが多い。

 

「ヤーベ男爵は子爵へ陞爵。フィレオンティーナ殿はヤーベ子爵の奥方でもあるが、一代限りの騎士爵としてその身分を保証するものとする」

 

「「「「「えええええっ!!」」」」」

 

特に下位貴族から驚きの声が上がった。

わずか一昨日、男爵にいきなり叙爵されたばかりだ。

それが二日後に子爵へ陞爵とは。

 

「い、いくらなんでもそれは・・・」

「ありえないっ!」

「そ、そんなばかな・・・」

 

ざわつく一同に国王が声を発する。

 

「実は、この場にリカオロスト公爵とプレジャー公爵が来ていないことはわかっておるだろう。リカオロスト公爵は体調不良を訴え昨日自領へ静養のために王都を出発しているので留守だが、プレジャー公爵は別の理由でこの場にいない」

 

国王の説明に謁見の間がシンとなる。

 

「プレジャー公爵には、様々な犯罪の容疑が掛けられる事となった。その大半はすでに証拠が固められ、ゆるぎない事実と確認が取れている」

 

その言葉にどよめく一同。

貴族階級では最上級である公爵の不祥事。

それも、かなりの容疑が掛けられていると思われる。何せこの場に呼ばれず、弁明の機会が与えられないのだ。

 

「プレジャー公爵は様々な犯罪に手を染めていたのだが、最も大きな罪としてはカッシーナ及びヤーベ男爵の暗殺未遂事件だ。どちらもヤーベ男爵に防がれているが、ヤーベ男爵の活躍が無ければカッシーナは暗殺されていただろう」

 

カッシーナ王女が殺されていたかもしれないという発言にさらにどよめく一同。

 

「合わせてテラエロー子爵、ボンヌ男爵にも捕縛命令が出ている。ハーカナー男爵殺害容疑や、教会と結託しての地上げ行為などが確認されている。これらは全てヤーベ男爵の活躍により暴かれている」

 

国王直々の説明。宰相であるルベルク・フォン・ミッタマイヤーが説明せずに、ワーレンハイド国王自らが説明をする。それだけ、国王自身が内容を重く受け止めているという事だった。それぞれの家をどうするかまでの説明はまだないが、少なくとも当主自身は断罪されることになるだろう。それだけは間違いなかった。

 

「改めて、ヤーベ男爵を子爵へ陞爵、フィレオンティーナ殿を一代限りの騎士爵へ叙爵する。今後とも王国のために存分にその裁量を振るって欲しい」

 

「「ははっ!」」

 

ははって答えたけど、マジでどうしてこうなった!?

男爵に叙爵も断れなかったから仕方ないけど、二日後に子爵へ陞爵とか、どう考えても常軌を逸しているとしか思えないぞ。

横を見ればフィレオンティーナが微笑んでいる。

 

「旦那様・・・これからもよろしくお願いしますわね! あ、子爵様とお呼びする方がよろしいでしょうか?」

 

ニコニコしながら俺にしか聞こえないくらいの小さな声で囁く。

何を言われても落ち着いていようと思ったのに、フィレオンティーナのからかいに俺は心を落ち着ける事は出来なかった。

 




今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!

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