転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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皆様!あけましておもでとうございます!
令和になって初めての新年!お正月ですね。
皆様にとって今年が良い年でありますようお祈りするとともに、益々の発展を願いたいと思います。
この「まさスラ」も新年を迎えて話が加速していきますので、応援のほどよろしくお願い致します!


第143話 敵を殲滅して王都を防衛しよう(フィレオンティーナ編 前編)

コルーナ辺境伯家の馬車で王都バーロンの北門へ移動するフィレオンティーナとゲルドン。

ゲルドンの巨大なハルバードは馬車に持ち込めないため、馬車の側面に括り付けられている。

鍛冶師ゴルディンの力作で金貨にして800枚もの値を払って製作してもらった逸品だ。

 

「それにしても、ヤーベの奥さんを守ってドラゴンと戦うことになるだとは・・・ヤーベに会う前には考えられなかったことだで」

 

ゲルドンは兜をかぶったまま、流暢に話した。

 

「ゲルドン殿も随分しゃべり方が達者になりましたわね。努力のたまものですわね」

 

ゲルドンは普段午前中を狼牙との戦闘トレーニングに充てているが、午後は発声練習と文字の読み書きの勉強に充てていた。

 

「ヤーベにも言われただよ。話せないとヤーベ以外との意思疎通に困るから、何とかした方がいいって」

 

ヤーベ自身はゲルドンと念話で話すこともできれば、なぜかお互いしゃべっている内容がわかった。だが、ヤーベ以外はそうはいかない。ゲルドンが独り立ちできるように最低限人間とのコミュニケーションができるよう努力した方がいいとアドバイスをしたのだった。

 

「現地で敵の状況を見てからの判断になりますが・・・」

 

そう前置きしてフィレオンティーナは作戦を伝える。

 

「先制攻撃でワイバーンを含む全体に攻撃を仕掛けます。但し、この攻撃ではワイバーンを倒せても雷竜サンダードラゴンは倒せません。その後の<雷の吐息(サンダーブレス)>も防ぐ手だてがあります。その後雷竜をしとめる極大呪文を準備します。その間雷竜をわたくしの下へ近づけないようにお願いできますかしら?」

 

「了解しただべ。指示がわかりやすくて助かるだよ。おら、あんまり頭のいい方ではないだで。最近はヤーベの使役しているヒヨコたちにも負けてるんでねーかと心配になってるだで」

 

仮面で表情は見えないが、若干落ち込んでいるかのような雰囲気のゲルドン。

 

「まあ! 朝からハードなトレーニングに精を出し、午後には会話と読み書きを勉強する、そしてどちらもしっかりと成果を出す・・・そんな方が頭が悪いなんてありえませんわ」

 

にっこりとほほ笑むフィレオンティーナ。

 

「それに、あなたを見出したのは旦那様です。旦那様のお眼鏡にかなったのです。あなたはそれだけで超一流ですわよ?」

 

続けざまにほめてくれる・・・若干旦那へのノロケを感じなくもないが。

単純にゲルドンはうれしかった。努力していることを認めてくれる人がいたことに。

 

 

 

馬車は北門に到着した。

城門は固く閉ざされている。

すでに日は登っているので、これから門番が城門を開けて通行が可能になる。

その準備をしていた門番兵はコルーナ辺境伯家の家紋が入った馬車がすでに日が昇っているとはいえ、こんな朝に到着することにいささか緊張した。

 

馬車から降りてきたのは真っ赤な鎧を着た大柄な騎士と、見目麗しい令嬢の様だった。

ただ、令嬢はドレスではなく、魔術師のフードを着込み、杖を装備していた。

 

「ありがとうございます。ここからは歩いてまいりますわ。ここでお待ちになっていてください」

 

フィレオンティーナは御者にここで待つよう伝えた。

 

「よろしいのですか?」

 

「もちろん構いませんわ。まだ時間に余裕がありそうですし、近すぎると、戦いの余波に巻き込まれかねませんので」

 

優雅にほほ笑むと、一礼して城門へ近づくフィレオンティーナと騎士。騎士は馬車に括り付けてあった巨大なハルバードを抱えた。

 

「すみません、急ぎで出ます。あの馬車の紋章からコルーナ辺境伯家の関係者と分かって頂けるかとは思いますが、城門の外へ出てもよろしいでしょうか?」

 

フィレオンティーナに問いかけられた門番はどぎまぎしてしまう。

 

「あ、ええ、だ、大丈夫です。ただ、徒歩で出かけられるのですか? 道中に魔物がほとんど出ないとは言え、盗賊などが出没する可能性もあります。危険なのでは・・・」

 

美しい貴族令嬢が共に騎士を一名だけ連れて王都から出る。あまりにもおかしな話であった。

だが、フィレオンティーナはにっこりと微笑み、次のように言った。

 

「今から王都を出る方々には少しお待ち頂いた方がいいかもしれません」

 

そのフィレオンティーナの説明に、王都を出ようと並んでいた数人の商人が騒ぎ出す。

 

「なんの権利があって俺たちを出さないようにするんだ!」

「横暴だぞっ!」

 

そんな文句を言ってくる商人たちにフィレオンティーナは杖を掲げて北の空を指す。

 

「ほら、こちらに向かっているようですわよ?」

 

「なんだ?」

「何が向かって来ているんだ?」

 

「・・・ドラゴンが」

 

言われて目を凝らして腰を抜かす商人たち。

そこにはだいぶ遠くではあるが、確かに空を飛ぶ竜とワイバーンの姿が見えたのであった。

 

 

 

フィレオンティーナとゲルドンは城門を抜けて北へ歩いている。

ドラゴンの飛行速度を考えれば、そんなに王都から離れられない。

 

「もっと王都から離れた方がよかっただべかな?」

 

「あまり離れますと、帰りが大変ですわ。それに・・・」

「それに?」

 

倒すことではなく、帰ることを考えていたフィレオンティーナに驚きながらもゲルドンは尋ねた。

 

「あまり遠いと、我々が雷竜を討伐する姿を王都の皆様が見学出来ないでしょう。せっかくの竜退治ですから多くの人に見て頂き、ヤーベ様の保有戦力が<竜殺し>(ドラゴンスレイヤー)であることをアピールしなくては」

 

ゲルドンは王都への距離が近いことに不安を抱えるのではなく、絶好の旦那アピールの機会だと考えるフィレオンティーナに若干引いていた。

 




今年も「まさスラ」応援よろしくお願い致します!

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