転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!?   作:西園寺卓也

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第146話 だから、なぜここに来たのか理由を教えてあげよう

「外の・・・魔獣どもの対応が・・・終わった、だと・・・?」

 

ゴルドスターが震える声で俺に問いかける。

後ろのサキュバスちゃんも震えながらダラダラと汗を流している。

集めて煮詰めたらガマの油が取れそうだ。しかもいい匂いがしそう。

 

「そうだけど?」

 

俺は努めて普通に答える。

 

「は、ははっ・・・、どうやらお前の頭はおかしいようだな。『救国の英雄』などと祭り上げられて物事が自分の都合の良いようにしか捉えられなくなったと見える」

 

極めて馬鹿にしたように笑うゴルドスター。

 

「そんな頭の悪いボケた勇者特性持ってねぇよ。俺は天〇河か」

 

だが、俺のツッコミはゲルドンもフカシのナツもいないこの現状、完全にスルーされる。

 

「ならば、アレらの絶対的強者たちに囲まれた王都をどうすると? 絶望の沼に沈みたくなければさっさと王の座を明け渡したまえ」

 

そう言って大げさに手を振り上げ、後ろの王都を指さす。

 

「ちっ!」

 

俺がいきなり舌打ちしたため、ゴルドスターに押されていると貴族たちがざわめく。

そうじゃないんだけどね。

 

「フィレオンティーナ。聞こえるか?」

 

いきなり関係ない事を呟きだした俺をこの場の全員が見つめる。

 

「俺の分身がお前たちの魔力抵抗値を上げておく。油断しないようにな」

 

俺が何を言っているのかわからないため、周りの連中がだんだん怪しい人を見る目になって来た。

 

「頑張れ」

 

そう伝えて通信を切る。

・・・ローガ達との念話と違い、フィレオンティーナが相手なので出張ボスを通じて声を伝える様にしたんだけどね。

 

「はははっ!ついに英雄様は心が壊れてしまったようだな!」

 

高笑いするゴルドスターに俺は言い放つ。

 

「お前こそ、自分の都合の悪い事を認めようとしない癖があるんじゃないか?」

 

俺は北の雷竜サンダードラゴンとワイバーンを指さす。

 

「な、なんだとっ!?」

 

ゴルドスターが俺の指さす方を見る。

釣られて、プレジャー公爵やワーレンハイド国王、その他貴族たちもそちらを見る。

 

 

ドガガガガ―――――ン!!

 

 

雷竜なのに、なぜか雷竜サンダードラゴンとワイバーンたちの方が巨大な雷撃に包まれて撃沈されていく。

 

「なななっ・・・?」

 

ゴルドスターは何が起こっているかわからないと言った感じで慌てふためく。

雷竜サンダードラゴンが反撃に<雷の吐息(サンダーブレス)>を放つが、うまく防御されているようだ。そして、とてつもない雷が天空を切り裂き、雷竜サンダードラゴンを直撃する。そのまま轟沈する雷竜サンダードラゴン。

 

「ばっ!ばかな!!」

 

「お前にとって随分と都合の悪い事が起こったようだが? 現実を受け止めるといいぞ?」

 

「きっ、貴様の仕業か!!」

 

「むしろそれ以外に何かあるとでも?」

 

俺は余裕綽々といった表情で答えてやる。あー気持ちイイ!

 

「ぐぐぐっ!!」

 

プレジャー公爵は顎が外れそうな程驚き、ワーレンハイド国王はちょっと遠い目をしている。助けているんだから、もうちょっと嬉しそうな顔をして欲しいものだ。

リヴァンダ王妃や他の貴族たちも雷竜サンダードラゴンが墜落して行く様を見て信じられないものを見るような表情になっている。

 

「ほれ、次はあっちだぞ?」

 

「な、なにっ!?」

 

慌てて俺が指さした西の方角を見る。

 

そこには、一つ目巨人のギガンテスが目の前にいきなり現れた緑の巨人?に腹パン一発で轟沈されて倒れて行くのが見えた。

 

「・・・・・・!?」

 

もはや言葉にもならないゴルドスター。

ワーレンハイド国王は苦笑している。

 

「さて、チミの用意した、あ~、何だっけ? 「絶対的強者」だっけ? 「絶望の沼に沈め」だっけ? ご要望にはお答えできそうにないんだが、どうするかね?」

 

俺は肩を竦めて両手を上に向ける。

ハハン、みたいに小馬鹿にしているように見えるだろう、というか事実しているし。

 

「・・・まだ、<迷宮氾濫(スタンピード)>の魔物達が残っている。王都へ約一万近い魔物が襲い掛かるだろう」

 

まだ目に光を残しているのか、震えながらもまだ魔物がいるとゴルドスターは睨みを効かす。

 

「お前本当にアホだなぁ。多分、ソレナリーニの町の北で起こした<迷宮氾濫(スタンピード)>の規模で今回も約一万と思っているんだろうけど、ソレナリーニの町の<迷宮氾濫(スタンピード)>を制圧したのは俺だぞ? 同じ規模の<迷宮氾濫(スタンピード)>が成功するとでも思っているのか?」

 

「なんだと・・・」

 

「まして、お前の戦略では真っ先に仕掛けたのが<迷宮氾濫(スタンピード)>だったはずだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()。気が付かないのか?」

 

「なっ・・・!?」

 

「すでに<迷宮氾濫(スタンピード)>の魔物は全て討伐済みだ」

 

ローガからの念話で討伐完了報告と共に、出張用ボスを通じて亜空間圧縮収納に一万近くの討伐された魔物が放り込まれて来たのだ。

俺はすでに制圧済みだと分かってゴルドスターと喋っていたのだ。

すでに戦略をぶっ潰している状態で、何も気づいていない敵と喋る。

・・・なかなか癖になりそうな優越感だ。イカンイカン、きっとラノベの中でも正統系勇者なんかはこんな気持ち持たずに、とにかく悪よ滅びろ、みたいな感じなんだろうな。

 

「うふふ、本当に王国を救っちゃいましたね! やっぱりヤーベ様に叙爵頂いて本当によかったですわ!」

 

俺の左腕をガッチリ取って嬉しそうに言うカッシーナ王女。

子爵に祭り上げられているからな、国のために働くのが当然だ、的な感じでご褒美無かったらどうしよう。

・・・まあ、カッシーナの笑顔が見られたからいいけどさ。

 

「いや~、カッシーナの旦那さんは実に有能だねぇ。プレジャー公爵、実に残念な結果に終わったね」

 

良い笑顔でプレジャー公爵に語り掛けるワーレンハイド国王。

先ほどまで王都を壊滅されるのに十分な戦力が渦巻いていたのに、まさかの瞬殺。

信じられないことに、誰の血も流すことなく王国の絶体絶命なピンチが回避されてしまったのだ。

 

「本当に・・・あの子の人を見る目は確かなものね・・・」

 

リヴァンダ王妃が嬉しそうにヤーベの左手を取るカッシーナを見つめる。

 

「とんでもない男のようだな・・・」

「マジかよ・・・」

「信じられん・・・」

「いやはや、見事なり」

「ふふっ・・・ますます惚れ込んでしまいそうじゃな」

 

ドライセン公爵、フレアルト侯爵、エルサーパ侯爵、ドルミア侯爵、キルエ侯爵も呆気に取られながらも感想を漏らす。

 

「・・・いや、目の前で見たのだから事実なんだろうが・・・一体どんな戦力なのだろう・・・?」

「そうだね、どういった戦力なのか不思議だが、一番の戦力は目の前の彼だからね・・・」

「そうですな、その実績は申し分なし。何せあの悪魔王ガルアードを仕留めているようですからな。でも確かに彼自身の戦闘を目の前で見たことは無いんですが」

 

コルーナ辺境伯、ルーベンゲルグ伯爵、タルバリ伯爵がヤーベの背中を見ながら話している。

 

「くくくくく・・・」

 

ゴルドスターが俯きながら笑い出す。

 

「お前らっ!これで終わったとでも思ったか!!」

 

「おおっ!」

 

絶望の表情を浮かべていたプレジャー公爵に笑顔が戻る。

ゴルドスターが嫌らしい笑みを浮かべて右手を掲げた。

 

ワーレンハイド国王の表情が曇る。

リヴァンダ王妃や他の貴族たちにも緊張が走る。

敵はまだ奥の手を隠しているようだ。

 

「本当に、頭が悪いなぁ、お前」

 

俺は深く深く溜息を吐く。

 

「なんだと?」

 

「なぜ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のに」

 

「どういうことだ!?」

 

「皆まで言わねばならぬとは・・・敵として情けないぞお前」

 

「なんだとおっ!!」

 

顔を真っ赤にして怒り出すゴルドスター。

 

「外の魔獣どもを俺の手を使わず仕留められるのに、俺がここに来たって事は、当然お前の切り札を仕留めるために来たに決まっているじゃないか」

 

俺はゴルドスターとは反対に、出来る限り爽やかな笑みを浮かべて断言してやるのだった。

 


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