転生したらまさかのスライムだった!その上ノーチートって神様ヒドくない!? 作:西園寺卓也
「ふざけるなぁ! ミーナ!奴らを魅了しろ!」
「う・・・わかったよ、え~い!」
サキュバスが魔法を使おうとモーションに入る。
だが、
「<
サキュバスのミーナとやらが魔法を放つ前に、俺が伸ばした左手から触手を発射。
投網の様に広がった触手にサキュバスは捕らえられる。
「な、ナニコレ~、ち、力が入らない~!」
俺の触手に捕らえられたサキュバスがもがくが、段々動きが鈍くなり、しまいに空中に留まれなくなり、落下して地面に横たわる。
「な、なんで・・・動けないの・・・?」
「それを説明してやるほど俺は優しくない」
実際のところは相手の魔力を触手から吸っているのだ。
だから相手は魔力枯渇に陥ることになる。
ぐるぐるエネルギーとして魔力のトレーニングを死ぬほどして来た俺は、一時期外から魔力を取り込もうとしたことがある。まあ、精霊たちにメッチャ怒られたわけだけど。まあ、自然界の魔力を強制的に吸い取る事はあまり良くないことでも、敵に接触して魔力を吸う事も出来るはずだ、という考察を元に完成させたのが<
俺は触手を回収。サキュバスが引きずられ、俺の足元に転がる。
それを踏みつける。
「きゃうっ!」
「さて、もうお前だけだが?」
魔族?とはいえ、超美少女のサキュバス、ミーナを足蹴にするのは俺的に心が痛むが、ゴルドスターに切り札を切らせるためには煽りまくるしかないのだ。
「(ゴメンネ?あんまり痛くない様に踏むから、少しの間我慢してね)」
こっそりサキュバスのミーナにだけ聞こえる様に言う。
「(ひんっ・・・でも、この人ちょっと優しいのかも。今のマスターより断然ステキ!)」
サキュバスのミーナが熱い目で俺を見る。
なんかアブナイ目をしている気もするが・・・。
とりあえずそれは後回しと、俺は今にも飛び出しそうなフレアルト侯爵たちを手で押さえながら、ゴルドスターを睨む。
「ふふふふ、うははははっ! あーっはっはっ!」
笑いの三段活用で狂ったように笑い出すゴルドスター。
「もう、王の座などどうでもいい」
「な、何を言い出すんだ!ゴルドスター!」
プレジャー公爵が喚き出す。
「この王都全体が灰燼に化すのはお前らが俺を追い詰めたからだ!」
そう言って自分の首にかかっていたネックレスを引き千切り、魔力籠め空に投げた。
「出でよ!
ネックレスの宝玉からまばゆい光があふれ、
「ば、ばかな!
「あれは伝説の存在ではなかったのか!?」
「こ、これでは王都は・・・」
貴族たちが三つ首竜の存在に気圧され始める。
「テメエのせいだぞ! さっさと奴を倒しておけばこんな事にはならなかったんだ!」
フレアルト侯爵が俺の胸倉を掴み、大声を上げて罵る。
いやー、どっからどう見ても金ぴかに輝くキ〇グギドラにしか見えないよな。
一応翼もあるが、それほど大きくない。翼の揚力と言うよりは、魔法的な力で浮いているという感じだね。
「あの
狂気の愉悦を浮かべたゴルドスターが俺を指さして叫ぶ。
「そうだ! お前のせいだぞ! どうしてくれる!」
そう言って殴りかかって来るフレアルト侯爵のパンチを躱し、その腕を掴むと捻り上げて引き落とし、地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
転がるフレアルト侯爵を無視して、足で踏んでいたサキュバスのミーナの触手拘束を解かずに上半身を起こして座らせる。
「(大丈夫? もう少しで終わるからもうちょっとだけ我慢してね)」
俺はサキュバスのミーナにだけ聞こえる様に伝えると、パチリとウインクする。
「(は、はいっ!)」
頬を染めて小さく返事をするミーナ。
俺はサキュバスのミーナをその場に残し、ゴルドスターの元へ歩み出す。
「はははっ!絶望したか!クズめ!」
すでに正気を失っているようなゴルドスターの目を見ながら、俺は右腕を引き絞り、勢いよく殴った。もちろん全力ではない。全力で殴ると、ゴルドスターの顔面は木端微塵に吹き飛ぶ。
ドガッ!
「ぐふっ!」
吹き飛び、バルコニーの欄干に激突したゴルドスターに歩み寄り、髪の毛を引っ掴んで立たせる。
「ああ? 俺のせいで王都が亡びるだぁ? どう考えてもアレはお前が出したんだろうが! 人のせいにしてんじゃねぇ! お前のせいでアレがこの世界に顕現したんだよ!」
そう言って床に叩きつけ、その胸を踏みつける。
メキメキメキッ!
「ぐはあっ!」
「お前達クズや頭の悪い猪突猛進な筋肉バカどもはすぐに人のせいにしやがる。自分では出来もしないくせに、できる人間に責任を押し付けやがる。よくその腐った目で見て見ろ。あの三つ首竜はお前が出したんだよ。現実逃避するな。腰抜けの弱虫めが!」
存外にフレアルト侯爵の事を筋肉バカと呼んでいるが、まあ気にしないことにしよう。事実は事実でしかないしな。
「アレは止められんのか!」
ドライセン公爵が俺に踏まれているゴルドスターに怒鳴る。
「アレはどうにかなるのかね?」
ゴルドスターの回答を待たず、ワーレンハイド国王は俺に問いかけた。
「もちろんですよ。先ほども言いました通り、俺がここに来た理由はコイツの切り札を仕留めるためなのですから」
にっこり微笑みながらワーレンハイド国王に伝える。
「な、なんだと・・・?」
その声は足元からではなく。後ろで転がっていたフレアルト侯爵からだった。
叩きつける様に投げたが、それほどのダメージはないはずだ。既に上半身を起こしている。
「アレに勝てると言うのかね・・・?」
ドライセン公爵が俺を真っ直ぐに見つめながら聞いて来た。
「当然です。あれを出させるためにここまで待ったのですから。アレを封印したネックレスを使わせずに奴を捕縛して、その後どこかでアレの封印が解けたら大変なことになるでしょう。だから今ここで仕留めるのですよ。王国にとって後顧の憂いを断つためにね」
存外に王国の事ちゃんと考えてるでしょ?だって貴族に叙されちゃってるもんね。
俺は再度にっこりと笑って宙に浮く